こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。秋晴れの気持ち良い季節になりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…コロナ禍でずっと行ってなかったお鮨屋さんに、最近2軒続けて行く機会がありました。食に関しては辛口評論家の友人Mとひょんな事から「懐かしの鮨屋巡りをしよう!」という話になり、1軒目はクリニック通信第193回にも登場した「J助」へ。現在の当院のコンセプトにも影響した「客に迎合しない」という自らのこだわりを貫くお店です。15年ほど前、大将がまだ若くて東門近くで今よりカジュアルな鮨屋をしていた頃によく行ってたんですが、2013年に北野に移転して高級鮨店になり、ミシュランの星も取って、超有名店になってしまってからは4回目です。有名店になってからは予約が超取りにくいらしいんですが…私達は運が良いようで、すぐに予約が取れました。電話をするといつものように大将が出て、「お久しぶりです。8時半やったらいけますよ。今月キャンセル出たんこの日だけやけど…」と。しかし実際に行くと、コース終了まで3時間半かかって体中が痛くなってしまいました。(北野に移転してからいつも時間はかかってたんだけど、以前は3時間だったような…今回はさらに30分延長かぁ…。)最近は客層が若くなった気がしたのはこのせいだな。年寄りに3時間半かかるコースはきついよねぇ。2部制で8時半からの部だったので、終わったのは12時過ぎだし…どおりで周りは若い人ばっかりだった訳だ。隣のカップルは大阪から来たって言ってたので絶対終電間に合ってないな…。さすがにこんなに時間かかるお鮨屋さんは日本中探しても他にないかも。

しかし時間がかかる事を除いては、味はピカ一。そして確実に進化しています。前半は少しずつアテが出て来るんですが(このスタイルをやめたいと言いつつなかなかやめられないんでしょうねぇ…)どれをとっても「うん、美味しい!」と唸るものばかり。何年かに1回しか行かないのに昔よく行ってたからか、大将は覚えてくれていていつも大将の前に席を取ってくれるので、最初は「鯵美味しかった!」とか言ってたんですが…どれも美味しいので、毎回言う訳にもいかず…。めちゃくちゃ柔らかいタコやいくらの味噌漬け、ムース状にした鮟肝などそれぞれに工夫が凝らされていて、悶絶する美味しさ…他では絶対に食べられない逸品ばかりです。時々「美味しい!」と言うと大将は「どうも」と短く答えてくれます。普通の鮨屋からしたら愛想ない感じですが、それでもこちらが食べる度に「うんうん」と頷いたりしてるのを見て、ちょっと嬉しそうです。ネットの口コミでは「不愛想」とか「マウント取る」とか酷評を浴びている大将ですが、私達は若い頃を知ってるからか、いつも懐かしそうに話しかけてくれます。「もう開業して18年、北野来て12年ですよ。よう来てくれはった時、僕26とかでしたからねぇ。僕も年取りましたわ…。ちょっと大人になりました」とか…。

一通りアテが終わるとお鮨です。1回目に行った時は一つの鮨を握るのに約3分。そのうち1分は握りを眺める…という作業に費やされていたんですが、今回は眺める時間は減ってたけど握る時間が増えてたな…。大将は長い白木のカウンターの中央で握ってるんですが、相変わらず握りは一人に1つずつ、大将自ら運んでいます。人肌のシャリの温度を保つために、1つ握ってはシャリの入ったおひつの蓋を閉めるスタイルもそのまま。以前行った時は3人組のお客さんが、みんなのお鮨が揃うまで待ってたら「出したらすぐ食べてよ」って大将に怒られてたなぁ。「何のために一つ握ったら一人にわざわざ持って行ってんるか…待ってたら意味ないやん…」と明らかに聞こえる独り言(^_^)。今はお鮨を出されたら人肌のシャリが冷めないうちに即食べる…というルールが浸透したようで、みんなお鮨を出されたら間髪入れずに食べていました。そのお鮨も全てが飛び切りのネタにさらに工夫を凝らしたもの。そして、大将がこだわる温度のシャリとのマリアージュが絶妙です。これで時間さえかからなきゃなぁ…。あまりにも時間がかかったためか、翌朝も体中が痛くて痛くて、、スポーツジムに行った訳じゃないのに…。Mは「再訪はないなぁ。お鮨は最高なのに、残念…。でも体イワしてまで食べるのは本末転倒やしなぁ…」と言っていました。

そしてその翌週、懐かしの「魚M」へ。実はこのお店は2000年問題(西暦2000年にコンピュータの年号認識システムが混乱し、さまざまな影響が現れると懸念された問題。飛行機が落ちるとか銀行のお金が全部凍結されて引き出されなくなるとか、色々な噂ありましたよねぇ…覚えてます? ノストラダムスの大予言以来の世界を騒がした都市伝説ってところですが…)が騒がれていた1999年の年末に、Mと初めて会ったお店なんです。まだ勤務医だった頃によく行ってたお店なんですが、IT音痴の私が大将に「2000年問題って何なん?」って聞いたところ、大将が私の隣に座ってたMを「丁度ええやん、近くでITの会社してるMさんに説明してもろたら」って紹介してくれたんですねぇ。その時Mは「一人で蟹食って飲んだくれてるヤバそうな人がいる…」と私の事を奇異の目で見ていたそうなんですが(当時勤務していた病院の副院長と意見が合わずもめて、一人で飲んで不貞腐れてたんですが…)大将に言われて仕方なく2000年問題の説明をしてくれ、それからIT関連の事を相談するようになって、私が開業してからもクリニックのITコンサルをしてもらう事になり、25年の付き合いになった…という訳です。

「魚M」は「J助」とは対照的な「気さくな近所のお鮨屋さん」という感じのお店で鮨屋によくある(?)「寡黙な大将とよく喋る明るい奥さん」の組み合わせでしたが、久しぶりだったので事前に「魚Mまだあるんかな…」とネットで調べると「奥さんのマシンガントークに注意」とか「大将も奥さんも飲む飲む」とか書かれてました(^_^;)。さらに奥さんが気さくでお喋りなのはいいけど、お店で結構飲んで奥の部屋で寝てしまうのはどうか?なんて口コミもあったのですがこれがその後の惨事になるとは思いもよらず…。予約の電話を入れると「あら、柴田先生??」と懐かしい奥さんの明るい声。(さすが客商売の人ですね。よく覚えてるもんやなぁと感心。)「今度の金曜日ね! 思い出してくれてありがとうございます~!」と言われたんですが…。
さて当日。タクシーで向かう途中に遅れそうだったので電話を入れて「あと15分ぐらいで着くんですけど」と言うと、電話に出た大将が「ごめん、今日休んでるねん」…??
柴田:「え?? 今日予約したんやけど??」
大将:「え?? ほんま?? 電話で?」
柴田:「うん。火曜日に電話して、奥さんに今週の金曜日って言うたけど」
大将:「え?? ほんま?? ちょっと待って💦」
電話の向こうでは大騒ぎになっている様子。ははーん、奥さんが酔っぱらって予約入れるの忘れたんやな…。ネット情報はほんまやったんや。

タクシーで向かってると言うと、「お任せで良かったら…」とわざわざ私達の為だけに店を開けてくれる事になりました…(^^)。店に着くと、奥さんが「すいません~!! 予約書いた紙が見当たらなくて…こんなん初めてやわ~!」(Mは「絶対初めてちゃうで。酔っぱらって予約なんか書いてへんって」って言ってました。)そして大将が慌てて料理を作っている間、奥さんは喋りっぱなし。私がアンチエイジングのためにお酒をやめたと言うと「え~っつ!!」と驚いた後、「一生分飲んだんやね~!」(…ってそんなはっきり言わんでも…。奥さんに言われたないわ(^-^;)。私は6年ぶりだったので(昔頻繁に行って飲んだくれていたからか)よく覚えてくれてたんですが、Mは20年ぶりだったので奥さんは途中で思い出したようで、「あ!! 思い出した! ITの人やんね? うちで先生に紹介した。あれから時々会ってはったん?」って言われました。「クリニックのITコンサルしてもらってて」と言うと、「今って何でもコンサルやんねぇ! コンサルとか、もう一つ何やったかいな…コンサルやらなんとかやら、そんなんばっかりやんねぇ!」…そして1時間ほど経ってから「あ! 思い出した! エンジニア! 良かった~、出てきて。ボケて出てけえへんかと思たわ~!」(…って、十分ボケてると思うけど…。)そして「今って何でもITやんねぇ! こないだもお父さんと2人でピザ屋さん行ったら、なんか携帯でしか頼まれへんようになってて、頼まれへんで困ったわ~! 年寄りにはあんなん無理やんねぇ!」(最近増えてきた、机の上にQRコードが貼ってあってそれをスマートフォンでスキャンする事でオーダーするタイプのお店ですね。…って、奥さん私より10歳近く若いんやけど…。)「MさんITコンサルやったら、年寄りにも分かりやすいようにしてってお店にもコンサルお願いしますね~!!」パワーアップした奥さんの喋りに、Mもタジタジです。奥さんはとにかく機関銃のように喋りっぱなし。完全に「関西の中年のおばちゃん」になってました…。

そしてその昭和感満載のお店の料理は「J助」とは真逆で全く進化なく、昔のまま…というか、逆にポン酢の味が濃くなり過ぎてたりして改悪されてたんですよねぇ。元々大将のお父さんが魚屋さんをしてたお店なので、魚の仕入れは良くて不味くはないんですが、突き出しの後大皿に平目のお造り、次に蟹、次に魚と貝の蒸し物がドーンと出てくるという昔と全く同じパターン。生きのいい魚を潰してそのまま出す感じで工夫がなく、量が多いので飽きてきてしまいます。「うちは昔と何も変わってへん」と大将が自慢げに言っていましたが、確かに変わらないというのはいい事もあるんですが、全く進化がないとやっぱり飽きられてしまうと思うんですよね。M曰く、「J助よりさらに再訪はないな…」せっかく思い出に浸ろうと思って行ったのに。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」…思い出の中の情景は綺麗なものだけが残ってるんだけど、実際に行ってみると現実を見てしまうものですね。

でもこの2軒のお鮨屋さんの訪問はとてもいい教訓になりました。クリニックもいい事は変わらず続けていこうと思うんだけど、やはり進化はし続けないと、と…。そして、こだわり過ぎてあまりにも時間がかかるのも良くないな、と…。自分でも、最近美しい仕上がりを追求するあまり、注射の薬の計算や注入の配分などに時間をかけ過ぎかな…とは思ってたんですよね。患者様の中には「最近なんか時間かかるよね…」と思ったり、待ち時間が長くてJ助のお客さんのように体中がバキバキになった方もおられるかもしれません。J助だって海苔を1枚切る度に入れ物に直したりしてたけど、チャック付きの袋入りの海苔にするとか、時短にするための改善点はいくらでもありました。勿論、そんな事を気にせず自分のスタイルを貫いているという事がJ助の魅力でもあり、その為に固定のファンがついているというのは否定はしません。鮨屋は星の数ほどある訳で、いやだったら別のお店に行けばいい…という割り切りこそが、J助のJ助たる所以なんでしょう。そこは十分尊重します。ただあえて言わせてもらえば、味へのこだわりは捨てないで欲しいのですが、非効率なオペレーションはさすがに改善した方が良いのでは?と思っちゃうんですよねぇ…(^_^;)。それにカウンター鮨って、大将の一挙手一投足がすべてお客様に見られていて、そこでの仕事ぶりすらお店の一つのパフォーマンスだし、エンターテイメントなんですよね。ここは私は自分への反省として、「ああ…お客さんというのはお店の主人の動作をすべて見ているんだなぁ…」と思った次第です。

そこで、私もオペレーションの工夫として、患者様のクリニック滞在時間を短くするように考えてみようと思いついたんです。せっかくITの時代になったのでまずはzoomで診察。そして、そこでの相談で治療内容を決めてしまい、事前にできるだけ準備をしておく事にしました。これまではほとんどの場合、ご来院いただいてから相談して治療内容を決め、写真撮影をしてから、ボトックスやリジュランカクテルなどのマーキングが必要な注射はご要望を聞きながらマーキングを行い、その後再度写真撮影を行っていたので、治療箇所が多い方などはここまでで1時間ぐらいかかっていました。それからその日の写真と過去の写真を見比べたりしながら薬の量を決め、さらに各ポイントに注入する薬の配分を考えてカルテに記載し、それらが決まってから注射を作製していたのでかなり時間がかかってたんですよね。何種類もの治療を併用する方は治療毎にその手順を踏むため、さらに時間がかかる事に…。これじゃまるでJ助やん!といたく反省。患者様のご要望はzoom診察の際に聞いておき、薬の計算や注射の準備もできる限り事前にしておいて、ノーメイクでお越しいただいて治療に臨めば、クリニック滞在時間はだいぶ短くなるはずです。これは小さな一歩だけど、他にも色々とあると思います。それらは随時改善を試してみようと思いますので、ご協力宜しくお願い致します。そしてオペレーションを改善した上で、ご相談をじっくりされたい患者様には、しっかりと相談に耳を傾ける時間を取っていこうと思います。これからも改善できるところはどんどん改善して、進化し続けるクリニックでありたいと思っていますので、今後共宜しくお願い申し上げます。
