
こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。 季節の変わり目ですが、皆様は体調など崩さずお元気でお過ごしでしょうか? 最近はすっかり暖かくなって日中などは少し汗ばむ陽気の時もありますが、概ね気持ちのよい気候が続いていますね。このような心地良い日が一年中続けばいいのに・・・って思うのは私だけでしょうか? こんないい季節はお弁当を持ってピクニック・・・って言いたいところですが、寄る年波からの体力低下は否定できず・・・(^-^)・・・激しい運動と強い紫外線は避けた方がいいという言い訳も覚えたため、それは却下。その代わりにゆったり露天風呂に浸かろう・・・と思いました。(なんとも自分に都合のよい結論になっている事は目をつぶっていただきます。)ただ最近は皆様のお陰でクリニックも忙しく、お休みを取って露天風呂ツアーなんてとんでもない・・・って感じでして、苦肉の策としてお家に露天風呂を設置しよう!って事になりました。


「自宅に露天風呂設置する」なんて言いますととってもセレブな響きですが、実際には、賃貸マンションのベランダに、通販で購入した露天風呂(もどき)のキットを組み立てて、お湯を張って露天風呂気分に浸ろう・・・という極めて庶民的な企画なんです。隣の住人が管理組合に「横の変な人がベランダにお風呂設置したみたいですよ!」とクレームを入れられても困りますから、ホントに小さな風呂桶をアジアンリゾート風の屏風で囲って、キッチンからお湯を延長ホースで投入する事にしました。お風呂に入る間はお湯が冷めてしまわないように「風呂バンス(フロバンス)」という、単なるオヤジギャグなのか真面目に考えたのかわからない保温器具を入れておきます。(ただ名前と裏腹に、こいつはなかなかいい仕事します。)大体マンションのベランダにお風呂なんか設置できるの?って思われるかもしれませんが、世の中は広いもんでそんな馬鹿な事を考える人が他にもちゃんと存在していて、通販で組み立て露天風呂キットなるものが販売されているのです。この露天風呂キットと風呂バンスとお湯を入れるための延長ホースや工事費を全部含めても10万円ちょっと。これで毎日露天風呂に入れるんだったら温泉ツアーに行くよりも絶対に安い!って事で早速この企画を実施する事になりました。組立露天風呂キットは普通に宅配便で届けてもらえて、一人でも組み立てられるようなものです。これだったら引っ越す事があっても全然問題なく運ぶ事ができますし、ベランダに設置してもぴったりのサイズで、万が一の火災の時の避難経路を塞ぐ事もありません。(・・・って火災の避難経路の事を考えたらそもそもベランダにお風呂置いたりしないでしょうけど。ここは大目にみてください。)さすがにお昼の明るい内に裸でベランダをうろうろして警察に通報されてはマズイので、夜になるのを見計らってこっそりお湯を溜め、キリリと冷えたシャンパンを持っていざマイ露天風呂へ! ザブン・・・と浸かるともう「ああ・・・気持ちいい!!」の一言。都会なんで空が明るく星空が見えないのは残念なんですが、ベランダからの神戸の夜景はとっても素敵です。どこにも行かずに自宅のベランダからの夜景とシャンパンと檜の香りのする露天風呂・・・ってなんとも贅沢で最高に気持ちいい。う・・・ん。極楽。これは今年の大ヒット企画!って一人悦に入るのでした。

こんなお気楽モード全開の中にあっても、一人で都会の夜景を見ていると少しは真面目に考えゴトをしてしまうもんなんですねぇ。今って、寒い冬からようやく抜け出して暖かい春になり、新芽も芽吹き桜も咲いて一年の最高の季節ですよね。学校も新学期が始まりますし、多くの大企業は年度の初めを4月にしているので、新入生や新入社員が街中に溢れ、新たな学業に、仕事に、そして恋に、これからの人生に最も期待を寄せる活気のある時期です。普通は・・・。恐らく・・・。多分、そのはず・・・。しかし、5月病という言葉をご存知だと思いますが、現実には5月は一年を通じて最もうつ病患者が増える時期だと言われています。この季節は外来がとても増えると知り合いの精神科医も言っていました。ちょっと暗い話で何なのですが、統計を見ると一年を通じて最も自殺の多い月は3月でして、同じ位多いのが4月、5月とそれに続きます。3月、4月、5月の3ヶ月間に大体、1年の自殺者の半分位が集中しているようです。そうなんです。「春うらら・・・」というのんびりしたイメージとは裏腹に、実際は人間が最も「おかしくなってしまう」季節が春なんです。(特に日本人にその傾向が強くあるようです。)

一体どうしてなんでしょうね。実際にこの原稿を書いている今も、「貧乏アイドル」で有名だった方の自殺のニュースが大きく取り上げられています。一般的に言われているのは、企業が決算を迎えるために雇用契約の更新があり、3月末で更新をしない人の多くが失業者となってしまうため、経済的に苦しくなったり絶望する人が増えるとか、4月に新学期を迎える学生達の多くは精神的ストレスがピークを迎えるからだとか言われています。確かに私も子供の頃はなんでクラス替えがあるんだろう・・・って真剣に悩んだ事があります。せっかく仲良くなった子と別々のクラスになってしまって、知らない子達とまた一から友達にならないといけません。子供にとってクラス替えって相当ストレスが大きなイベントなんですよね。更に進学によって学校が変わる、就職して新たな仕事につく、転勤によって新天地に生活の場所を移す・・・といった社会的な変化の波を最も多く受けるのが春なんですね。そのため、この変化に対応し難い人達の間では精神的に過剰ストレスになってしまい易く、そのストレスが継続するとある時に「プツン・・・と緊張していた糸が切れる状態になる」のが5月病だと言われています。

また、「ああ・・・暖かくなってきて気持ちいいねぇ」なんて言っていますが、動物の毛が生え変わる季節ですから、実際の人間の体内では、冬から春というのは大きな変化を迎えます。ホルモンバランスも大きく変化する事で崩れやすくなりますし、逆にその変化によって「恋する季節」になるとも言われているのです。ただ、先日あるテレビで医療評論家の先生が「春に始まった恋は成就しない事が多い」と言っていました。その理由は体内のホルモンバランスの変化などで「体が恋する事を求める」状態になっているので、大して好きでもない人が素敵に見えてしまう事があるからだそうです。体の変調が落ち着いてくると春に出会った人の多くは「なあんだぁ。出会った時は素敵に思ったんだけど、よくよく落ち着いて考えると全然イケてないじゃない!」って事になる確率が高いそうな。ま・・・確かにそれは一理あるような気もします。皆さんも経験ありますか?

つまり春は「変化」の季節であり、「新しい事が始まる」季節なんですね。変化や新しい事っていうのはそれを受け入れる力のない人にとっては非常に大きなストレスになるのは間違いありません。人間が最初に受ける最も大きなストレスは誕生(お産)であると言われています。それまではお母さんのお腹の中で「ヌクヌクと気持よく」過ごしてきたのに突然ある日を境に自分で呼吸して自分で栄養を摂取して生きていかねばならない環境に出される訳ですから、そりゃ・・・もうストレス以外の何者でもないですよね。なかなか起きられない冬の寒い朝に布団の中に丸まっていたところを突然、母親が「早く起きなさい!」って思いっきり布団をひっぺがすようなもんでしょうか・・・。(う・・・ん。ちょっと違うけど、まぁいいか。)実は「変化」とか「新しい試み」なんて事は一個人にとっては何もいい事なんかなくて、ヘタすればストレスにさらされるだけ・・・って事が多いように思います。「新たな事へチャレンジする喜び」なんて言いますが、それは運良く成功した人が後から言っているだけで、チャレンジしている最中は地獄の苦しみって事の方が正しいのでしょう。そんなストレスが多い事ばかりの「変化」をなぜ受け入れなければならないのでしょうか? それはやはり、「個人にとってはストレスでしかない事でも、社会全体とか人類という種全体に取っては害より利益の方が多いから」って事なんだと思います。大きな組織になるとトップの人事には任期があり、任期を過ぎると強制的に交代させられます。一人の権力者が長い間その権力の椅子に座り続けると害の方が大きくなるのは最近のテレビ報道でも明らかですね。結局新たな変化を強制的に起こして新しい事にチャレンジし、そのストレスを乗り越えて行くことは人類全体を発展させ、社会の活性化を促進し、社会全体としては害より利益の方が大きいと思います。(社会全体の利益を得るためにストレスに弱い個人はその犠牲になっているという面は否めませんが・・・。)小学校の時のクラス替えや、進学、新学期などはこの社会の「強制的な変化」からのストレスを受け入れるための訓練なんだ・・・と言われれば納得できない事はありません。そんな事でちょっと真面目に「春」の実態を考えてみた次第です。
ところで、私達のクリニックもそんな「変化」の波から取り残されている訳ではなく、この春から新たなスタッフが2名入って来ました。一人は茨城県の大学院の博士課程から入ってきたS君。そして、以前に当クリニックにいた子の親戚で、中国からの留学生Hちゃんです。ま・・・とにかく二人は「明るい」。(無駄に明るいという話もあるが・・・。)彼らのお陰で暗い冬から一気に春になったような感じで、クリニック全体の雰囲気がパッと華やかになりました。特にS君は大学院でも色々な研究をしていたような人で、当クリニックへの志望動機も「給料とか休みとかじゃなくて、好きな研究や仕事がしたいからです」という泣かせ文句で私のハートを大きく動かしました。私たちは大きな大学病院などとは違い、研究と言ってもクリニックで診療をしながら時間を見つけては研究をするという事しかできませんので、正直言って相当しんどいです。大企業の専任研究員のような恵まれた待遇もなければアカデミックな環境もないけど、その中で何とかいい物を探していきたいと思ってやって来ました。だからハートがない人はどうしても「キツイので続きません」と言って辞めてしまうんですよね。そのような決して恵まれていない環境の中にあっても、「何かを追求したい」とか「研究をしていきたい」と言ってくれる人に出会うという事は、私に取って非常に大きな喜びなんです。ただ、まだまだ慣れてないせいか失敗も多く、毎日の日報に「本日の失敗」という項目で本人が失敗事項を記載していたのですが、最近はさらにパワーアップして「本日の大失敗」というコーナーもできました。これが定番の連載にならない事を期待していますが・・・(^-^;)。ただ、失敗しても「ガビ~ン!」と明るく、私がボロクソに怒っても前向きに明るいのでとってもやりやすい。彼はぬくぬくとした大学院生活をあっさり捨てて茨城から神戸に来るぐらいですから、変化に強く、つまりはストレスに強いんでしょうね。Hちゃんも大陸根性たくましく、二人のおかげで久々に笑いの絶えないクリニックになってきました。

あ・・・それから、二人は共に明るいだけでなく、共に太っていてコロコロしています。太ってる人ってなぜか明るい事が多いですよね。細かい事を気にしないからかな? しかし、うちはメソセラピーもしてるのでスタッフがあんまり太ってるのもマズイ。「もうちょっとダイエットせなあかんなぁ・・・」って事で患者さんと一緒にダイエットモニター実施中です。先日も仲良しスタッフたちと一緒に神戸祭りを見に行ったんですが、意外と贅肉の多いサンバチームを見て、二人は自分のスタイルと屋台で食べ過ぎた事を反省した模様。「人の振り見て我が振り直せ」って事ですかね。これから夏に向かうので、皆さんもサンバチームほどお腹やお尻は出さなくても、せめて二の腕や背中のブラからはみ出たお肉はメソセラピーですっきりさせましょう。彼らと一緒に、明るくダイエットを頑張ってみませんか? (^-^)

マイ露天風呂から上がってバスローブを羽織ったまま、ベランダの椅子で夕涼みをしてプチセレブ気分を味わっていると、綺麗な月が出ていました。星空を眺めることはできなくても、明るく大きな月は都会でもはっきりと眺めることができます。こんなにゆっくり月を眺めるなんて何年ぶりなんだろう・・・。そう言えば月を英語ではmoonと言いますがラテン語ではLunaといい、英語の狂気(lunatic)の語源になっています。つまり月が人間の狂気を創りだすとされており、昔から月と犯罪や精神異常については関係が調べられています。(関係があるという学者もいますし、無いという学者もいるので本当のところはどうなんでしょうね? ま、狼人間が満月の夜に生まれるってのはフィクションのようですけど。)ただ、月の引力によって潮の満ち引きが生まれていますし、人間の体にも微妙な変化をもたらしているのは事実のようです。どんな変化でもそれが体外からもたらされるものであれば体はストレスにさらされます。結局は、その変化を乗り越えられるように「自分も変化をする」という事しかうまく生きていく方法はないのでしょうね。明るい月をずっと眺めていると、なんだかその世界に吸い込まれて行くような幻想的な気分になってしまいます。何か自分を別世界に連れて行ってくれるような錯覚がふと湧き上がってくるのですが、意識を現実に戻して、しっかり大地に足を付けて踏ん張らないと・・・と思うって事は自分もまだ正常なんでしょう。 変化に飲み込まれるのではなく、変化と敵対するのでもなく、変化の波に上手く乗っていくという事を肝に命じながら、まだまだやり残した仕事を続けなければ・・・と思う月夜でした。