
あけましておめでとうございます! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。旧年中は皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。去年もいろいろな事がありましたが、やっと新クリニック3回目のお正月を無事迎えることができました。これも皆様のおかげと感謝に堪えません。今年もその感謝の気持ちを忘れずに、皆様により良い治療を提供するために頑張りますので、どうぞ宜しくお願い致します。
去年は、PRPの学会発表を依頼され、学会活動に大きな時間を割かれた1年でしたが、その間にも旬のボトックスやCDレチノイン酸クリームなどの新しい薬剤を導入したり、メソリフトなどのシステム改善やメソマシンの導入など技術革新に努め、神戸一コスパのいいクリニックを目指してきました。努力の甲斐あって痛さの代名詞のようだったメソリフトやPRPも、昔に比べるとほとんど痛くなくなり、皆様に喜んでいただいてほっとしています。研究面でも、研究員と一緒に研究会に参加したりできるレベルになってきて、やっと研究所らしくなってきました。年末にはちょっとハプニングがあったのですが、それは後でお話するとして・・・。

そんな研究三昧の中でも忘れなかったのはやはりグルメです。一時はモニター試験に明け暮れて1ヶ月コンビニ弁当という時期もあったのですが、学会活動が落ち着くとやはりグルメに走らざるを得ませんでした。(新年早々グルメの話ですいません・・・)その中でちょっと印象に残ったものと言えば・・・ありきたりのようですがロールケーキです。私は普段はそれほど甘い物が好きという訳ではなく、レストランではデザートとコーヒーよりチーズとワイン、和食でも甘味より地酒にカワハギの肝で一杯(ここまでくるとおっさんのようですが)・・・という方なのですが、PRPのモニター試験の時に製薬会社のOさんにいただいた夙川の「ミッシェルバッハ」というお店のロールケーキの美味しさにはちょっと驚きました。そして年末には患者様にかの有名な「堂島ロール」をいただいて、「これは美味い!」と感動し、大学の後輩たちが遊びに来た時は自分で買いに行ってしまったほどです。

12月にはいつも大学の卓球部の6回生追い出しコンパがあり、私は卒業以来毎年出席しているのですが、6月にあった新入生歓迎コンパの際は、以前のクリニック通信に書いたように、学会と重なって忙しいのに泊まりで練習・試合・飲み会とはしゃぎすぎてその後酷い風邪をひいてしまったので、今回はおとなしく一次会で帰ったら卒業生たちとゆっくり話ができず、欲求不満に陥ってしまいました。そこで卒業生を神戸に招待しようと思いつき、次の週にホームパーティーを開く事にしたのです。以前から卓球部の後輩たちが試合で神戸に来た時や、クリスマスなどにパーティーをする事は時々あり、昔は手料理を作っていたのです(こう見えても料理は好きなんですよ)が、最近は近くに持ち帰りのできる安くて美味しい小さなバールを見つけたので、もっぱらそこに頼りきりです。料理はそこに頼んでおいて、ワインはなじみの酒屋さんに配達を頼み、パーティーの準備は万端。去年はそれに加えて近くに美味しいコーヒー豆専門店「銀の豆」を見つけ、そこでは生豆(コーヒーの煎ってない生の豆です)も焙煎してくれるので、以前買った生豆をそこで焙煎してもらい、後輩たちにふるまう事を思いつきました。そしてコーヒーと言えばケーキなので、神戸大丸で堂島ロールを売ってると聞いて大丸まで買いに行ったという訳です。朝なら人も少ないだろうと出勤前に行ったのに、なんと朝から行列が! やっとのことで堂島ロールを手に入れました。
しかし最近どうしてこんなにロールケーキが流行ってるんでしょうねえ。昔は特別ロールケーキを食べたいなんて思ったこともなかったのに。ふと不思議に思ったのでロールケーキブームの理由をちょっと調べてみました。みんな考える事は同じで、ブームの理由をいろいろ探っているみたいですが、シンプルで構造も価格も手土産に手頃、コスパがいい・・・などの点がよく挙がっています。しかし私が考えるに、昔のロールケーキに比べて最近のロールケーキは格段に美味しくなっていると思うのです。昔は生地もこんなにふわふわじゃなくてカステラを巻いたような感じだったし、クリームもこんなにたっぷり入ってなくてクリームの味自体違っていた気がします。素材が違うと言うか・・・。自由競争のおかげでロールケーキも競い合って進化しているんですね。ブームがブームを呼んだのかもしれません。ブームの火付け役は東京の「キハチ」のロールケーキだとか堂島ロールだとか諸説があるようですが・・・。私も数年前に「キハチ」のロールケーキがすごく美味しい、と友人から聞いたことがあります。その他行列ができるので有名なのは「小山ロール」ですよね。ロールケーキの茶色の焼き色のついた面を外側にしたのは小山さんだそうで、そう言えば昔のロールケーキは外側が黄色い生地でしたよね。茶色の皮が外側だと包装用のパラフィンに皮がくっつくので皮を内側に巻いていたそうです。確かに皮が外側の方が美味しそうですが、そうするためには以前の2倍以上の焼き時間がかかるそうです。やはりいいものを作ろうとしたら手間暇がかかるという事ですね。ロールケーキひとつにしてもいろいろな応用研究がなされているんだなあ、と感心しました。そうして進化しているからブームが続くんじゃないでしょうか。
話は戻りますが、やっと手に入れた堂島ロールを持って帰って、コーヒーの生豆を焙煎してもらいに行こうとしたら、もう後輩たちが来てしまいました。後輩たちが焙煎しているところを見たいというので、ぞろぞろと5人も引き連れて「銀の豆」へ。マニアックなオーナーさんは「社会見学みたいですね」と言いながら、嬉しそうにコーヒーの事をあれこれ説明してくれます。「コーヒー豆っていうのは、焙煎したとたんに酸化が始まります。だから煎りたてが美味しいんです!」後輩達は初めて見る焙煎機に大はしゃぎ。そこのお店では、とびきりのコーヒー豆を求めてケニアまで買い付けに行くんだそうな。そしてそれらの豆をブレンドして独自のコーヒーを作るために、何百ものブレンドを試すのだとか。何百本の試験管を使ったPRPの実験を思い出してしまいました。「普通に美味しいブレンドは、誰でも作れます。それらを500、600とブレンドして、これは!という特別なブレンドを見つけた時はやった!という感じ。それはどこにもない、ここでしか飲めないものなんです」素材という基本を極めつつ、他にない独自のブレンドを研究されてるんですね。感心しながらコーヒーを煎ってもらった後は、バールの料理を持ち帰り、ワインを開けて盛り上がりまくり! そして食後には香り高い煎りたてのコーヒーと堂島ロールでパーティーを締めくくる事ができました。

そんな楽しいひと時を過ごした後、クリスマスも近いのでポインセチアを買ってルンルンと出勤すると・・・研究員が一人来ていない。「え??」突然病に伏してしまったらしく、全く復帰の見込みなし。最近は少数精鋭で回していたので、そうなるとスタッフ一人の日も出てきてさあ大変。折りしも年末で予約はいっぱいだし、募集を出してもすぐには来ないしどうしよう・・・。新クリニックオープン延期のハプニング以来の窮地です。苦しい時の神頼みならぬ後輩頼みで、卓球部にバイトの募集を出し、旧スタッフにも連絡しまくるなどてんやわんや。1週間はほとんど寝ずに、どうやって患者様に迷惑をかけずにクリニックを運営するかの策を練ることに・・・。しかし努力の甲斐あって後輩たちや旧スタッフが駆けつけてくれ、なんとか窮地を脱する事ができました。残ったスタッフもすごく頑張ってくれて、毎日新人教育して超バタバタでしたが、なんとか切り抜ける事ができたのです。卓球部では主務が全員集合をかけてシフトまで作成してくれ、結婚退職したり別の道を選んだ旧スタッフまでもが忙しい合間を縫って応援に来てくれて、中には「お世話になったお礼なんでバイト料は要りません」なんて言ってくれる人までいて、涙ちょちょ切れ。改めて周りの人たちの暖かさが身にしみました。そして、人間あきらめなければなんとかなるもんなんだなあ、と思ったのです。

先日の追い出しコンパでは、私もまだまだですが一応卒業生よりはかなり年がいってるので、何かためになる話をしなければと思い、卒業生に贈る言葉として下記のような話をしました。それを改めて自分でも実感した訳です。
<社会で成功するためには>
1.素直で謙虚である事。
無知の知=自分が何も知らない事を知っている、自分がまだまだであるという事を知っている人が成長し、社会に求められる。
2.自分に厳しく、人には寛大になれる事。
3.感謝の気持ちを忘れない。
4.相手の立場に立って考える。
・・・どんな仕事でも、自分の都合ではなく、相手の都合を考える人が成功する。
5.何事もあきらめない。
・・・「人生の最大の見方は自分であり、最大の敵も自分である」・・・という言葉があります。失敗や挫折の原因は自分に負ける事。もうだめだと思わず、自分に負けなければ成功する。逆境を乗り越えれば強くなる。逆境は成長するための試練なのです。
そう言えば「小山ロール」の小山さんは店を出すにあったって、ロールケーキやシュークリームなどの「どこにでもある定番」をとびきり美味しく作ろうと心に決めていたそうです。なぜなら、定番は誰でも一度は食べた事があり、それに対する味の基準が明確にあるから、「ロールケーキならあの店が一番美味しい!」という記録があるはずなので、その味の最高記録を塗り替えようと思ったのだという事です。そしてその「抜きん出て美味しい定番」を作るために、3年間も構想をめぐらしたそうなのです。そんな中、ある日ロールケーキの皮を外側にする事を思いつき、薄くて上質の「皮」を思わせるリッチな質感と優美な姿を実現するために、以前の2倍以上の焼き時間をかけ、数ヶ月もかけてあの小山ロールを開発されたそうです。
そして、小山ロールを作るたびに、モノ作りにおける大切な基本を思い出されるのだとか。「モノは、手間をかけて丁寧に、心を込めて作らないといけない」という・・・。

小山さんがケーキの基本中の基本であるロールケーキで最高のものを提供したいと思い、そのようなケーキを世の中に出したという事実は凄い事なんですよね。私が卒業生達に贈った言葉の内容をすべて実戦してみせたという事だと思うのです。実際にこれだけ定番となっているロールケーキの基本を崩さずに、新たなアレンジを加え、日本一美味しいロールケーキを手頃な価格で提供するという事は、気の遠くなるような小さな努力の積み重ねがないと実現しないと思います。言葉にする事は簡単ですが、それを実践して形にするという事は非常に難しい事ですよね。たかがロールケーキ。されどロールケーキ。私も後輩たちに次回は贈る言葉と共に、一つでもその言葉を実戦した結果を形で示す事ができるよう、努力を続けたいと考えています。
「基本に忠実に、しかし固定概念にとらわれず、新しい感動をエッセンスとして加え、新しいものに応用する・・・」研究開発にもこの事を忘れず、新年は心を新たにもう一度基本中の基本に戻ってみたいと思います。皆様も何か一つ、今年は基本を「形」にしてみませんか?