top of page

第88回 (2010年07月)「厄年の誕生日」



こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。6月はやっと寒くなくなったと思ったらすぐに梅雨に入ってしまい、良い気候の日が少なくて残念でしたね。皆様はいかがお過ごしでしたか? 私はと言えば・・・6月はPRPの新しいキットの開発の打ち合わせで東京に行ったり、京都で開催された抗加齢学会に参加したり、結構バタバタでした。そして学会と同じ時期に大学の卓球部の新入生歓迎コンパとOB戦があったので、学会の1日目は学会終了後に後輩達と練習をしてその後ご飯に行き、2日目は学会後にOB戦に出てから新歓コンパに参加して、3日目はまた学会に出てその後は先輩と昔よく行った割烹で鱧を楽しむ・・・という濃厚かつ有意義な計画を立てていたのですが、これは年を考えずに無理な超ハードスケジュールをたててしまった・・・という事に後で気づきました。いつもOB戦の前に1回は練習に行くのですが大抵1-2週間前なので、急に練習しても疲労や筋肉痛はOB戦の頃には治まっているのですが、今回は練習と試合を2日連続でしたので疲労がたまり(常に鍛えていればそんな事はないんでしょうけど、普段全く運動せずに急に本気の卓球をするのでダメなんですねえ・・・いつも分かっちゃいるんですが、なかなか地道なトレーニングができない自分が情けない・・・)、その上若いもんと一緒になって夜中まで飲み歩いたので、学会終了後にひどい風邪をひいてしまい、10日以上熱と咳に悩まされました。学会に行くとただでさえ疲れるのに、OB戦や新歓コンパ、練習や飲み会まで入れてしまったのは不覚だった・・・と改めて体力のなさを反省。ちょうど誕生月だったので、寄る年波には勝てんなあ・・・と思ってしまいました。しかしその頃は、ラエンネック(プラセンタの注射薬)が工場の機械の修理のために製造が止まって欠品状態だったので、うちはいくらかは確保できたのですが足りなくなっては困ると思ってプラセンタ点滴をずっとしていなかったからその影響もあるかも、と自分を慰めつつ・・・。お陰で今年の誕生日は、熱と咳と闘いながらクリニック通信を書くはめになってしまいました。



誕生日と言えば、イベント好きの私は何かしら企画する事が多かったのですが・・・。以前のクリニック通信にも書きましたが、去年はクリニックのスタッフ達と誕生日パーティーをして飲み倒し(その時プレゼントしてもらった皆の写真入り寄せ書きは今も机に飾っています)、一昨年はK氏にいただいた生まれ年のワインをレストランに持ち込んで飲み倒し・・・自宅にジャズピアニストを呼んでジャズパーティーと称して飲み倒した事もありました。(結局誕生日にかこつけて飲み倒しているだけのような気もするが。)しかし今年はパーティーを企画する元気もないまま誕生日が近付いてしまい、不憫に思った友人が食事には誘ってくれたのですが、まだ咳と熱があったので飲み倒せないし、クリニック通信も書かないといけないし、あまりにだるいので「あー最悪の誕生日…」と一人でつぶやいていました。今年はパーティー企画もしていないし、クリニックの皆も私の誕生日なんか忘れてるだろうと(というかスタッフの半分は今年入った人なんで知らないだろうし、韓流B君と青島K君はその日は休みだったので、唯一私の誕生日を知っているパスツールK君はそんな事に気が付くタイプではないだろうと・・・)思ってましたが、当日もやはり誰も何も言わないので、ちょっと寂しく思いながら仕事が終わって帰り支度をしていました。すると、パスツールK君が大きな紙袋をおもむろに持ち出して「・・・今日は先生の誕生日なんで、これ皆から・・・」中には綺麗なフラワーアレンジメントが・・・! そして「ケーキもあるんです」と、私の好きなショコラ・リパブリックの可愛いロールケーキまでもらっちゃいました! いつも仕事熱心で昼休みも30分くらいしか取らないK君が今日は1時間半昼休みが欲しいと言うので(本当は昼休みは1時間半なんで普通なんですが)不思議に思っていたら、昼休みにプレゼントを買いにいってくれてたそうです。そしてびっくりさせようと、個室に隠してたんだとか…。「わーい!! ありがとう!」皆でお花とケーキを飾って写真を取りまくり、一転して幸せな誕生日になったのでした。



ところで、日本では誕生日の人は食事に行くとたいていご馳走してもらえますよね。外国では反対の事が多いって知ってました? 誕生日が近付いたある日、韓流B君と青島K君に母国の誕生日はどんなのか聞くと、韓国ではわかめスープを飲み、中国では麺を食べるそうな。(若い人はケーキを食べる事が多いそうですが・・・。)そしてだいたい自宅に友人を招くこともあり、誕生日の本人が皆にふるまうらしい。面白いと思って外国の誕生日の風習を調べてみると、やはりフランスやスペイン、イタリアなどでもそのようです。スペインでは誕生日の人がケーキを買ってみんなにふるまい、イタリアではバルなどで顔見知り、時には全く知らない人にでもグラス一杯とかコーヒーくらいの支払いだったら誕生日の本人が払うんだそうです。(ドケチな人はそれが嫌で誕生日には外出してもバルなんかには入らないのだとか。)フランスでは誕生日だけでなく結婚、出産、昇進などの祝い事があると、そのめでたい本人が自腹を切ってパーティーをし、歓迎会も入ってきた人、送別会も転出する人が行うらしい。要は何かと理由をつけて飲みたいだけなのかもしれない、とフランス在住の人は言ってました。そういう意味では私も国際的なのかも?と勝手に納得。



さて、誕生日に騒げなかった原因となった学会(実際には学会が原因ではなく、卓球や新歓コンパなどの飲み会のせいではあるが)では、結構多くの収穫がありました。以前のクリニック通信にも書きましたが、抗加齢学会は内科を初めとして多くの科の先生が集まる大きな学会です。以前は「長寿の秘訣」として内科的なサプリメントなどの話題が多かったのですが、年々「見た目のアンチエイジング」が重視されるようになってきて、特に今年は昨年K氏に紹介していただいた神戸大学の皮膚科元教授のI先生が学会長だった事もあり、美容皮膚科関連の講演が多く見られました。I先生は光老化(紫外線による皮膚の老化)の大家なので、会長自ら光老化の予防や治療についてたくさん講演され、昨年レーザー治療学会でお会いしたソウル大学皮膚科教授のC先生も来られていて紫外線が光老化を起こすメカニズムについて講演されたので、紫外線がいかにシミ・シワ・たるみに悪影響を及ぼすかを再認識しました。I先生の講演によると、紫外線が秋田の2倍多い鹿児島の40歳女性のシミ面積は秋田の60歳女性のシミ面積に等しく、80歳までシミのない綺麗な肌でいるためには1日に3分しか紫外線を浴びてはいけないそうです。また、ビタミンD合成のために必要な紫外線の量は、手の甲に5分間浴びるくらいで十分なのだとか。I先生は光老化皮膚の治療としてPRPを取り上げられ、当院のモニター症例写真を頼まれてお貸ししたので、「この写真は神戸の柴田美容皮膚科クリニックの柴田先生からお借りしたものです。柴田先生はPRPを専門にしておられます」と紹介してくださいました。またC先生ともお話する機会があり、私の勤務医時代の先輩の弟でソウル大学の形成外科の助教授をしている先生の話や、秋にソウルで開催される美容外科学会の話で盛り上がり、「ソウルに来たらうちの研究所を見に来る?」と言っていただいて嬉しくなり、ソウルに行く気満々になってしまいました。



その他、一般講演でもポリフェノールやアスタキサンチン、トレチノイン(レチノイン酸)などによる皮膚老化抑制効果に関するものが散見され、シワの深さや面積率のデータ報告がされていたので、それらの測定方法の情報を収集しました。PRPの新しいキットを開発するための打合せで、写真や患者様の感想以外にも客観的データを取った方が良いのでは、という話になったためです。以前の学会でもT薬品工業の研究員Oさんの発表を見てシワのレプリカ解析(歯型を取るシリコンでシワの型を取り、斜めから光を当てて影の面積からシワの面積率を計算する方法)について質問したら、詳しく教えてくださったのですが、今回もポスター会場でOさんにお会いし、シワやたるみの測定方法についていろいろとお聞きする事ができました。しかしシワやたるみの測定器というのは、大抵何百万円もするので、「高いなあ…」と唸っていると、Oさんが「でも先生、美容外科学会でパネリストをされるんなら、メーカーの名前を出したら貸してくれるんじゃないですか? 神戸の担当者はよく知ってるので、僕が交渉しましょうか」と親切に言ってくださいました。「ほんとですか?? ぜひお願いします!」持つべきものは研究友達!(勝手に友達呼ばわりしている感もあるが。)




学会から帰ったら早速Oさんに連絡しなくっちゃ・・・と思っていたら、学会の翌日にOさんの方から連絡があり、PRPのデータを取るのに適した測定機器の資料を持って来てくださって、機器のメーカーとも連絡を取ってくださいました。おまけに「うちの研究所にはどの機器もありますから、一度見に来られますか?」と研究所まで案内してくださったり、「学会までもう3ヶ月しかないですよねえ」とこちらのスケジュールまで心配してくださったり。なんて親切な方でしょう! 話を聞くとOさんは阪大の研究生でもあり、博士号を取ろうとしておられるそうです。だから研究や学会発表にまつわる苦労は良く解るんでしょうね。PRPにもかなり興味を持たれたようで、研究談議に花が咲きました。やっぱ持つべきものは研究友達です。良き協力者を得てPRPの研究もますます進みそうだし、頑張らなくっちゃ!



ところで学会後、あまりに熱と咳が治まらないので「今年は厄年か??」と思ったのですが、女の厄年は33だったはずだし、こんなに年取ってから厄年もないはずなのに・・・と思って、厄年の事を少し調べてみました。厄年とは、人間の一生のうち苦しみや災いなどの厄難に遭遇する恐れが多い年齢の事を言いますが、元々は病気にかかることだけを指していたらしく、人間を病気にするのは厄病神で、その神が来ないように祈ることが「厄ばらい」の儀式だったそうです。厄年の年齢は地方によっても若干違うようですが、男42歳・女33歳の大厄は有名ですよね。どうしてその年が厄年かというのは、33歳、42歳は中高年期への過渡期で人生の曲がり角でもあり、男性の場合は社会的にも責任が重くなり、精神的・肉体的にも疲労が多く、女性の場合は子育てや主婦として非常に多忙な時期でもあり、不慮の事故やけが、病気なども起こりやすいという説が多いようですが、統計的にはそのような事はないらしい。それに男の42歳は人生の転機を迎えたり疲労がたまって病気になりやすい年・・・っていうのは解るんですが、女の33歳は体力的に20代とは違うというのは解るにしても、病気になるには若すぎない?と思っていたら、昔の女性はどんな男性と結婚するかで人生が決まってしまい、10歳くらい上の人と結婚することが多かったから男42歳に対して女33歳になった、という説もありました。これは結構納得。私も42歳の年は踏んだり蹴ったりで、大学を辞めて開業することを決意したのですが、女性も自立するようになると厄年が42歳になるのかもしれません。(余談ですが、最近スタッフ応募で面接に来た人の中に、自費出版で「人生踏んだり蹴ったりど根性」という本を出したという人がいました。彼女は34歳で自立はしていないようだったので、厄年だったのかもしれません…。)



さらに調べると、大厄の他に小厄というものもあるらしく、門戸厄神の厄年早見表によると小厄は1・3・5・7歳から88・91・96歳まで2-6年おきに22回もあるではないか! これは厄払いで儲けようという神社の企みではないかと思いましたが、その中に私の年があったのです。やっぱ今年は厄年なんかー・・・と妙に納得したのですが、こんなにいっぱい厄年ってあるもんなの? それに3・5・7歳は七五三で普通はお祝いのような気がするし、大厄の最後61歳や小厄の70・77・88歳なんかも還暦・古希・喜寿・米寿と、長寿を祝う年祝のはず。何か変だなーと思って今度は年祝を調べると、「年を重ね、無事に人生を送ってこられた事を感謝し、更に今後の厄災消除、身体健康、延命長寿を祈って神社へ参拝し、お祓いを受ける年」とあります。これも神社の企みのような気もしましたが、厄年と年祝をひっくるめる地方もあるようで、結局これらの伝承は民俗学的には「ある年齢に達して新たな社会的役割を演ずる事になる時に、転換を立派に行なえるよう当人を励ました行事であった」と解釈されているようです。 そこで、私なりに厄年の意義を考えてみました。結局厄年は人生の節目であり、立ち止まって人生を振り返り、これまでの反省をすると共に今まで助けてくれた周りの人々に感謝し、次の進むべき方向を見定める時期なのではないでしょうか。そう言えば、韓国の誕生日でワカメスープを飲むっていう話を聞いてなぜなんだろうって調べてみると…韓国ではお産の時、母親は出産後2~3週間、回復食として毎食『わかめスープ』を食べるそうです。わかめに含まれているミネラルが血液を浄化し、さらにお乳の出を良くすると考えられているからとのこと。誕生日には、出産後母親が我が子の成長を祈って食べた『わかめスープ』を食べることで、自分を生んでくれた母親への感謝の気持ちを忘れないようにするそうです。韓国では、誕生日の本人が『めでたい』というより、『お母さん、生んでくれてありがとう』という気持ちが強いらしいのです。考えてみれば誕生日には祝ってもらうよりも、今まで無事に生きてこられたことを母親や周りの人に感謝する方が自然かもしれないし、各国で誕生日にギブする精神が息づいている理由も解ってきた気がします。そしてこの年になれば、誕生日に誰かにお祝いしてもらおうと思うのではなく、自分がこの世に生を受けた事を感謝する人間に成長していなければならないのですね。本当は厄っていうものはそういう気持を持って行動し、自分で払っていくべきものなのかもしれません。



そんなこんなで私も厄年の誕生日に人生を振り返り、反省と感謝をすると共に、厄年を乗り越えていくつになっても綺麗で生き生きとし続ける方法を考えようと思いました。そう言えば、もう70歳くらいのはずなのに大きな学会を仕切ってさっそうとされていたI先生のアンチエイジングの秘訣は、「1.1日1時間以上歩く事 2.全身の筋肉に負荷をかける事(そのためにいつもリュックを背負っておられるそうです) 3.自分を表現する場を持つ事(学会がその場であるようです) 4.好奇心・向上心を持つ事」だそうです。私は1・2は実行できていないので、もう少し運動をして体力を付ける事は必要だと反省しましたが、3・4に関しては同感です。そして私なりのもう一つの秘訣は、「目標を掲げてそれにまい進する事」。現在のところの目標は、さらに効果的なPRP注入療法の研究開発を行い、PRPをもっと広めて社会の役に立つ事です。そのために今月はPRPのモニター募集を再度させていただきました。皆様、PRPの更なる発展のために、ご協力をお願いいたします!



bottom of page