
こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。
朝晩はめっきり涼しくなり、秋の気配が感じられるこの頃ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
今年は梅雨明けが遅く、夏が来たと思ったらあっと言う間に過ぎてしまった感じがしますね。私は今年の夏は、毎年楽しみにしている花火を見ることができませんでした。ちょうど神戸の花火大会の日に新潟での美容皮膚科学会が重なってしまったのです。学会と言えば春と夏に多いのですが、この学会だけはいつも真夏に開催されます。「何もこんな暑い時にせんでも・・・」と思うのですが、学会にかこつけてグルメなんかしようとする私のような不謹慎者を戒めるためでしょうか? しかし美容皮膚科を名打っているからには美容皮膚科学会に行かない訳にはいきません。「新潟かあ・・・」うーん、東京の方がグルメにはいいような・・・。いや、いかん、いかん。そんな不謹慎な考えは捨てて、いざ新潟へ。

しかし、新潟と言えばやはり米どころ、美味しいお米と日本海の魚・・・となればお鮨を食べないわけには行きません。と、やはりグルメ魂がムクムクと・・・。そんな時の情報源はやはり東京のK氏とUさんです。K氏は全国のグルメ情報を持っていて、「金沢で素敵なフレンチ見つけました」なんてメールをくれたりするので、新潟のグルメ情報も知っているのでは・・・と思って聞いてみると、やはり知っていました。さすがK氏。「新潟ですか? そう言えば座敷まで大将が出向いて握ってくれる鮨屋がありましたねえ」 元トップ営業マンのUさんも、「新潟の後輩に『手頃でおいしい穴場的なお店』を聞いてみました」と、3軒のお鮨屋さんを紹介してくれました。そうしてお鮨を楽しみに、新潟行きの準備をしたのです。
しかしいつものごとく、ギリギリまで仕事が片付きません。新潟行きは伊丹空港からですが、伊丹までバスでは時間がかかります。仕方ない、クリニックで法人契約を結んでいる○Kタクシーを呼ぶか・・・。
柴田 : 「柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今日19時の伊丹発新潟行きのJALの最終便に乗るんですが、三宮を何時に出たら間に合いますか?」
配車係 : 「いつもありがとうございます。・・・そうですね、18時に出発すれば十分かと」
柴田 : 「では18時にさんプラザの北側に東向きでお願いします。乗車は1名です」(ここの会社は「ご乗車は何名様ですか?」と聞かれて面倒くさいのでいつも先に言っておく)
配車係 : 「さんプラザの北側に西向きでございますね?」
柴田 : 「東向きです! 伊丹空港やねんから、東向きに決まってるでしょう?」
配車係 : 「失礼いたしました。さんプラザの北側に東向きでございますね? ご乗車は何名様 でしょうか?」
柴田 : 「さっき1名って言うたやん!」 だんだん腹が立ってきます。マニュアルの癖がついてるんでしょうけど、ボケ老人じゃあるまいし・・・。この会社の配車係はこういう事がしょっちゅうです。クリニックにも何回も呼んでるのに場所が分からなかったり、電話番号も登録してるのに何回も聞かれたり・・・。スタッフが私とタクシー会社の電話のやり取りを聞いて、「先生、いつも同じこと何回も説明してはりますよねえ。何とかならないんですか?」とあきれるほど。

さて、18時にタクシーが来て、乗ってからもパソコンを出して仕事の続きです。ふと気付くと道が混んでいて車が進んでいません。
柴田 : 「あれ? 今どこですか?」
運転手 : 「東灘です。道が結構混んでまして・・・」
柴田 : 「え? まだ東灘? 間に合いますか? 19時のフライトやねんけど。今日の最終便やから、乗られへんかったら困るねんけど!?」・・・時計はもう18時半を過ぎています。
運転手 : 「すみません。ぎりぎり、19時前には着くかと思うんですが・・・」
柴田 : 「え?! 19時前ってあんた、国内線でも15分前にはチェックインせなあかんでしょ??そんな事知らんの??」
運転手 : 「えっ、そうなんですか?? す、すみません!! ・・・JALに確認してみます!」
JALに確認しも、自動的に15分前にチェックインを切るので、15分前に着かないと搭乗できないとの事。
柴田 : 「えーーーーーっつ!!! どうしてくれんのん!! まさか配車係も知らんかったんちゃうやろねー!! 19時のフライトやから、何時に出たら間に合うかって聞いてんでー!!」
運転手 : 「も、も、申し訳ありません!! 確認してみます・・・」確認すると、なんと配車係も15分前チェックインを知らなかったらしい。
柴田 : 「天下の○Kが何でそんな事知らんねん!!?」・・・もうガックリ。しかし学会は明日の朝一番からなので、何としてでも最終便には乗らないといけません。ホテルのキャンセルも当日ではできないし・・・。
柴田 : 「とにかく最終便には間に合えへんと困るねん!!! 明日朝一から学会やねんから!!」
運転手 : 「は、はい!! な、何とか頑張ります!!」
それから運転手さんは必死です。今にも事故を起こさんばかりのスピードで飛ばしまくりながら、JALや会社と交渉して、何とかチェックイン締め切りを待ってもらうように頼んでいます。
運転手 : 「なんとか10分前に着いたら乗れるかもしれません・・・」
柴田 : 「乗れるかもしれへんでは困るねん!! 空港着いたら荷物持って走ってくださいよ!!」
運転手 : 「ハ、ハイ!! 走ります!!」
そしてフライト時間の10分前に空港に着き、久しぶりに全力疾走しました。JALのグランドホステスに誘導されながら、走る走る・・・最近運動してないので足腰痛いし、息切れるし・・・もうえらい目に遭いましたがな。

やっと新潟行き最終便に間に合って新潟に着き、ホテルに着くと、○Kのコールセンターの副所長という人からお詫びの電話がありました。この辺はさすが○Kです。
副所長 : 「こ、この度は、ま、誠に申し訳ありませんでした!!」
柴田 : 「ほんまや!! 乗られへんかったらどうしてたん!!天下の○Kがこんなんでは 困るわ!! 責任者出せ!!!」 (この時はまだ怒り心頭)
副所長 : 「も、申し訳ありません!! 学会からお帰りになったら、すぐにお詫びに伺います!!」
しかし・・・それっきり2週間以上音沙汰がなかったのですが、その後の顛末はまた後でお話するとして・・・。
その日は気晴らしに、Uさんに紹介してもらった穴場のお鮨屋さん「花○ち」に行きました。
カウンターの大将が 「今日はどちらからで?」と気さくに話しかけてくれるので、
「神戸から来たんですけど、今日はえらい目に遭いましてね~」・・・おっさんのように愚痴ることしばし。
大将 : 「そりゃあ大変でしたねえ。まあ、うまい魚でも食べて、癒してください」
このお店で気に入ったのは、大将の誠実そうな人柄とお鮨の美味しさもさることながら、気さくなお母さんのような人がホール(というかお酒係)で、とても親切だった事。「せっかく新潟に来られたんだから、日本酒を飲んでくださいよ」といろいろな冷酒を説明してくれて、一つ頼むと「よかったらこれも味見してね」と、他の種類のお酒をおちょこに一杯サービスしてくれるのです。普段はあまり日本酒は飲まないんですが、つい嬉しくなって何種類も頼んでしまいました。中でもお母さんお勧めの「越の影虎」というのがすごく美味しかったので、「これ、買って帰れますか?」と聞くと、「ここでも買えますけど、酒屋さんの方が安いですよ」と、酒屋さんまで教えてくれたのです。なんて正直で親切な・・・。新潟の素朴な人情に触れてとても嬉しくなり、○Kへの怒りも収まってしまいました。

翌日は無事朝から学会に参加することができました。講演を聴いた後ポスター会場に行き、エレクトロポレーションの評価方法についての実験に見入って「なんか難しいなあ・・・」と思っていると、「私、このポスターの演者なんですが、よろしければ説明させていただきましょうか?」と研究者風の青年に声をかけられました。ポスターと言えば俗に「貼り逃げ」と言われるように、貼っただけで質疑応答から逃れるためにそこには近づかない・・・という人も多いのですが、演者から声をかけられるとは珍しい。「あ、はい・・・」
戸惑いながら返事をすると、彼はエレクトロポレーションの基礎から、延々と説明をしてくれました。エレクトロポレーションというのは、電気刺激で細胞膜や細胞間に一時的に小さな穴を開け、有効成分を浸透させるという方法です。学会でも時々発表されていたのですが、発表の内容もあまり論理的でなく、質問しても明快な答えが返って来たことがなかったので、その作用機序には半信半疑でした。ところが彼の説明は明快そのもの。私がいつもの癖で根掘り葉掘り聞くと、ますます嬉しそうに説明してくれるのです。もう研究が好きでしょうがない、という感じがひしひしと伝わってきます。彼は化粧品メーカーでは最大手のS堂の研究室にいるSさんで、生化学系の大学院で10年以上研究を続けておられたそうです。美容皮膚科学会の魅力の一つは、医師だけではなくこういう研究者の方と交流できることです。
柴田 : 「こんな論理的なエレクトロポレーションの説明を聞いたのは初めてです! 初めて 納得できました」
Sさん : 「それは良かったです! 僕たちの研究は基礎的すぎて、興味を持たれる方が 少ないのに、熱心に見ておられたので、思わず声をかけてしまいました。すみません、お時間取ってしまって」
柴田 : 「いえいえ、とんでもないです! 本当に良く解りました。しかし、実験の評価 方法の研究って基礎のまた基礎ですよね」
Sさん : 「マニアックすぎるってよく言われるんですが・・・。やはり皆様臨床効果を 重視されるので・・・」
柴田 : 「そんなことないですよ! 基礎あっての臨床ですからね。私はどんな治療でも、 論理的な裏付けが必要だと思います」
Sさん : 「ありがとうございます! そういう先生がおられると、僕たちも本当に励み になります!!」

・・・と、意気投合。1時間以上彼と話していたので、ポスターセッションが終わって懇親会が始まってしまいました。じゃあ、懇親会にちょっと顔を出しましょうか・・・と、Sさんと一緒に懇親会に参加することに。
Sさん : 「この学会には会社から研究室の人間が何人か参加してますので、紹介させて いただけますか?」
柴田 : 「ええ、もちろんです!」
そうすると、続々とS堂の研究室の人達が名刺交換に・・・。総勢7人、まさしく「S堂軍団」って感じです。話を聞くと、うちと良く似た研究もいろいろされていたので、研究談議でめちゃくちゃ盛り上がり、皆でまたお鮨を食べに行ってしまいました。そしてお鮨屋さんでも研究談義とマニアック話で超盛り上がりました。
Sさん : 「先生のクリニックも研究所を併設されてるんですよね。先生も結構マニアック なんですね~」
柴田 : 「え、私がマニアックって判ります?」
Sさん : 「そりゃあ判りますよ! 普通の人だったら、僕達の発表を真剣に見てくれま せんから! やっぱりマニアック同士って魅かれちゃうんですよね~。同じ匂いがする・・・って思いましたもん」
でもSさんはマニアックなだけではなく、とても真面目で信頼できそうな人柄が滲み出ている人です。そしてSさんは「基礎的な事で何かお役に立てそうな事があれば、何でも言ってください!」と、最近私が手こずっているDMAEの研究に協力を申し出てくださいました。 ハプニングはありましたが、いろいろな情報が仕入れられたし、研究仲間もできたし、お鮨三昧もできたし・・・満足な学会でした。

さてクリニックに戻って、S堂の研究室の人たちに刺激され、研究員の教育も充実させねば…と思って毎週ミーティングを開く事にしました。まずは人間としての教育のために訓話をしてスタッフがどう向上すべきかを考え、次にクリニックが向上する方法を皆で話し合うというものです。最初は「人の役に立つ人、人から必要とされる人」になって欲しいという話から。必要とされる人とは、自分で考えて仕事ができる人・成長できる人で、成長できる人とは、素直で謙虚な人です。ソクラテスの「無知の知」ですね。自分に甘い人や危機感のない人は成長しません。ミーティング後にレポートを書かせると、韓流B君のレポートは光っていました。
~謙虚さ、素直さが人を成長させる~
・自分のできていることに自惚れず、足りない所を認めて埋めようとする素質
・’彼は何も知らないのに、何かを知っていると信じており、これに反して私は、何も知りもしないが、知っているとも思っていない’ 無知の知の一節。 -ソクラテスが当時の色々な賢人との話を経て人(自分)の知は完全ではないことを悟った。「私は全てを知ってる」と言える賢人より「私は何も知らない」と言うソクラテスの方が’人は完全でない’という真理を理解していると言わんばかりな言葉です。
~謙虚さを持った人は~
・自惚れず、他人の優れた所に自分を照らし学ぼうとする。
・常に自分の振る舞いについて振り返って見、反省する。⇒自己省察と学ぶ気持ちが人を成長させる。
~素直である人は~
・間違いを指摘する人を憎まず、感謝して、素直に受け入れる。
・指摘されたことに言い訳、口答えしない。⇒自分の不足を解り、埋めようとして成長する。
・・・といった調子です。ここまで理解してくれると、話をする甲斐があるというものです。

さて次に、クリニックを向上させる方法を考えてみました。私達の任務は、安全で確実な効果を出せる治療法を提供し、多くの人を幸せにすることです。どんな会社もその存在理由は社会貢献ですから、クリニックも社会に貢献しなくてはいけません。クリニックの社会貢献度の指標は患者様の数です。患者様の数が増えない場合は、支持されていない、任務が遂行できていないという事なので、少しでも多くの患者様に来ていただく努力が必要です。その一つが治療効果を上げる努力ー新しい治療の開発と、今の治療の効果をさらに上げる事です。そこで考えたのが、点滴マッサージサービス。マッサージで血行を良くし、点滴の効果を高めるのです。マッサージ付点滴なら休憩時間などの短時間で疲れが取れ、お肌も綺麗になります。そんな時間もない・・・という方には、5分で済む静脈内注射も始めることにしました。マッサージ付点滴はもう始めていますが、大好評です。多くの方に来ていただくためには、来やすさも大切なので、これも韓流B君の「もし治療を受けても効果が出なかったら・・・という不安を解消するために、効果を保証するシステムがあれば」というレポートから考えたのが、「注射治療は効果を実感されるまで半額で」というシステムです。また、もっと多くの人にクリニックを知ってもらうために、携帯サイトと男性向けサイトも作りました。
そして3回目のミーティング。人が相手の仕事で成功する秘訣は、「相手に得をさせること」。人間関係では信頼関係が最も大切で、失敗した時は、迷惑をかけた人に心から謝罪し、許してもらえるまで誠心誠意努力する事。同時に失敗の原因を分析して対策を練り、繰り返さないように・・・そういう話をしている時に、玄関のチャイムが鳴りました。なんと、タイミングを見計らったかのように、○Kタクシーの所長さんが謝罪に来られたのです。学会の時のタクシー事件で、副所長が「すぐにお詫びに伺います!!」と言ってたのに音沙汰がなかったのですが、こちらも連絡する暇がなかったので○Kタクシーに乗った時に運転手さんに愚痴ると、所長に報告が行ったようでした。

所長 : 「こ、この度は、ま、ま、誠に申し訳ありませんでした!!!」
深々とお辞儀をしたまま5秒以上・・・。
柴田 : 「いつ報告を受けられたんですか?」
所長 : 「それがその、お恥ずかしい話なんですが、本日でありまして・・・
本っ当に申し訳ございません!!!」
所長さんは冷や汗たらたらです。なんとボンクラの副所長が所長に報告するのを忘れていたらしい・・・
柴田 : 「えーーーっ?? そんな危機感のない人、副所長に置いといたらあかんでしょう!?」
所長 : 「ハ、ハイ、全くおっしゃる通りで・・・。私の配置ミスと教育不足からご迷惑をおかけしまして、何とお詫びして良いやら・・・本当に、
も、申し訳ございませんっ!!!」 (またもや深々とお辞儀)
所長さんの謝罪は「誠心誠意」がひしひしと伝わって来ました。そして配車係の対応の悪さについても、一生懸命謝罪すると共に、原因を分析し、対策も練ってこられました。
所長 : 「配車係も慣れた者も少数おるんですが、入れ替わりが多くて教育がついて行っておりませんで・・・本当に申し訳ございません!!」
柴田 : 「でも素材のない人はなんぼ教育しても無理でしょう?」
所長 : 「さ、さすが良くご存じで・・・おっしゃる通りでございます」・・・
やはり必要とされる人は少ないんですね。
所長 : 「そこでその・・・もしご迷惑でなければ、柴田様のお電話はすべて私が 対応させていただこうかと・・・」
柴田 : 「それは嬉しい提案ですね。でも、毎回所長さんを呼び出す訳にもいかんでしょう。 じゃあ教育ができるまで、らちが明かん時だけ替わってもらえますか?」
所長 : 「そ、それでよろしいんですか? ありがとうございます!! 配車係も早く教育して、なるべくご迷惑をおかけしないように努めますので、何卒宜しくお願い致します!!!」
玄関でも深々と最敬礼して帰られる所長さんの誠心誠意の姿勢に、うちのスタッフも学んだようです。
それから○Kタクシーの配車も、かなりスムーズになりました。この所長さんのように、失敗しても誠心誠意努力することで挽回する、という姿勢が大切ですよね。そして何よりも「正直で信頼できる人柄」が滲み出ていたことが謝罪の成功の鍵だったと思います。私も皆様に対して正直に誠心誠意尽くすことで、信頼されるクリニックにできるよう、日々励もうと思いを新たにしました。