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第75回 (2009年06月)「微笑みの貴公子」



こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。

インフルエンザ騒ぎもやっと落ち着いてきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 一時は街は閑散とし、道行く人は皆マスク・・・と、パニック映画でも見ているようでしたが、やっと人が増えてきてマスクマンも減り、やれやれ・・・という感じです。しかし、なんか騒ぎすぎなんじゃないの?と思うのは私だけでしょうか?・・・こんなこと言うと国や県のお偉いさんには怒られそうですけど・・・。うちも外出を控えたり三宮に近づきたくない方のキャンセルがあって暇になり、アルバイトの留学生たちの学校は休みになって、バイトの途中で学校に行かなくていいのでスタッフはあふれ、マスクは業務用のものも全く手にはいらなくなり・・・と、いろいろ大変でした。京都の患者様からは「皆様は大丈夫ですか??」とメールをいただきましたが、皆なんとか無事で通常診療に戻っております。ご心配いただき、ありがとうございます。



5月末には東京で抗加齢学会があったのですが、前の週の週末になって学会事務局から「政府からの指示があった場合は中止する」というメールが来て、「こんな直前に・・・もうクリニック休みにしてるのに・・・」とぼやいていたのですが、なんとか無事開催されました。K氏やUさんに「ウイルス持って来ないでくださいよ」と言われつつ、検討会兼食事会も無事実現。今回は前回の学会に懲りて、学会会場のホテルに泊まりました。学会に行くのは楽で良かったんですが、東京でもちょっとはずれた場所だったので、今度はグルメに通うのが大変。お勉強とグルメってなかなか両立しにくいものなんですね。


さて、抗加齢学会というのはとても規模の大きい学会です。アンチエイジングというのは美容外科や形成外科・皮膚科だけではなく、内科や婦人科・泌尿器科・眼科など、あらゆる科で大きく取り扱われるようになってきているので、たくさんのドクターが集まるのです。その大きな学会で、長寿の秘訣の常識と謳われているのはまず「太らないこと」。CR(カロリーリストリクション=カロリー制限)という言葉が常識のようにあちこちで使われています。(これはSちゃんにはしっかり教えなくては・・・。)そしてもう一つ大切なアンチエイジングの要素としては「見た目のアンチエイジング」、つまり「皮膚=素肌の美しさ」が重視されています。いつまでも若々しくいるためには、スタイルと素肌を美しく保つことが一番重要だという、当り前のようなことですが、それらがあらゆる角度から科学的に論証されていました。



今回の学会では、美しいスタイルや素肌を保つための新しいサプリメントや化粧品成分の他にも、レチノイン酸クリームなどに応用できる新しいナノカプセルの情報を得ることができました。美しい素肌を保つには、シミとシワの予防と治療が重要なのは周知の事実。予防はまず第一に紫外線防御、そしてシミの治療にはレチノイン酸が活躍します。レチノイン酸療法は見る見るうちにシミが薄くなる優れた治療法ですが、レチノイン酸自体に刺激があるため、赤くなったり皮膚が剥けることが多いのが玉にキズ。そして稀に、お肌のとても弱い方は痒くなったり腫れたりすることがあるため濃度が上げにくく、効果が出にくいことがあります。また、レチノイン酸には真皮のコラーゲンやヒアルロン酸を増やす働きがあるため、基本的にはシワにも有効なのですが、乾燥しやすくなって使用中は逆にちりめんジワが増えたように感じることがあるため、シワには使いにくい薬剤でした。ところが、レチノイン酸を最新の技術でナノカプセル化すると、レチノイン酸の刺激が弱くなるとのこと。これはいいかも・・・と思い、資料を取り寄せてみました。



ナノカプセルとは、薬品をナノメートルの単位まで細かくしたもので、さらにその微粒子が何層にもカプセルのようになっているものをいいます。1ナノメートルは10億分の1メートルに当たり、皮膚は250ナノメートル以下のものなら細胞の間を通すので、ナノカプセルを使えば有効成分を含んだ微粒子を、層構造により徐々に溶かしながら肌の奥深くにまで浸透させることができる・・・というものです。そしてレチノイン酸をナノカプセル化できるのが、APP(アスコルビン酸リン酸パルミテート)というビタミンCです。ビタミンCには水溶性のものとVC-IPのような脂溶性のものがありますが、APPは水溶性なのですが界面活性作用があるため乳化剤やナノカプセル製剤として使える・・・つまり油を包み込んで水に溶かすことができるというものらしい。これを使ってレチノイン酸をナノカプセル化すると、レチノイン酸が徐々に放出されるので刺激が減って安定性が増すという理論です。これは面白い! 最近はどんどん便利なものが見つかって来ますねえ。しかも電気による導入法で浸透しやすくなるということなので、当院で行っているレチノイン酸導入ではさらに効果が上がりそうです。



早速材料を取り寄せて試作してみました。そして使ってみると、なかなか良さそうです。実は以前に、普通のレチノイン酸クリームをシワ治療に使おうと、自分で使ってみたことがあるのですが、私はアレルギーがあるのですぐに赤くかゆくなり、乾燥してボロボロ皮膚が剥け、返って小ジワが増えた気がして2週間で断念してしまいました。炎症が治まった後は若干小ジワがましになった気はしたものの、これは使いにくいなあ・・・と思っていたのです。ところが新しいレチノイン酸クリームは、かゆくならないし赤みや皮膚の剥離もずっと少ない。これなら小ジワやお肌の弱い人のシミにも使えそうです。当院のシワ治療はほとんどが注射なので、注射が嫌な人には敬遠されますが、レチノイン酸がシワやクマの治療に使えれば、治療の幅も広がるというものです。



最初は研究日に、APPの研究所の人に来てもらって試作したのですが、スタッフの皆も興味津々。皆興味深そうに覗き込んでいます。クリニックを移転してシミ・シワ・たるみ研究所を作ってから、何がいいってやっぱり研究好きなスタッフが増えた事です。以前は誰も研究に興味がなかったので、私は昼休みや診療後に一人寂しく実験をすることがほとんどで、教えても興味を持つ人も少なかったのですが、今は皆とても熱心に勉強しようとします。研究所上がりのパスツールK君を筆頭に、モンゴルの風Sちゃんや青島K君も最近は診療内容が解ってきて面白くなってきたようで、いろいろと聞いてきたり、学会で新しい情報を仕入れたなんて言うと目を輝かせて話に聞き入っています。日本語ペラペラの留学生NさんとB君も、入ってまだ1カ月ですが、知識の習得が早い! 日本語が解っているだけではなく、とても勉強熱心だからだと思います。最近の多くの日本の若者とは比べ物にならないくらい優秀です。受付や診療補助はほぼこなせるようになりましたし、特に韓流B君なんかは「とても日本語が上手だし、丁寧で上品ね・・・」と患者様から褒められるほど。日本語が上手なだけでなく、日本に来る前はオーストラリアにいたらしく英語もできて、パソコンを打つのは目にとまらないくらい速く、あらゆるところで活躍してくれるのでスタッフの中でも人気急上昇です。以前は青島K君が(日本語はできないが)母性本能をくすぐるタイプらしく、ちょっと人気があったのですが、今はすっかり韓流B君に人気をさらわれた感じです。B君はいろいろな事ができるだけでなく、爽やかで優しく、何をしてもスマート。ちょっと古いけど「微笑みの貴公子」って感じです。(Sちゃんにはこの言葉は「エ? 微笑ミ、何? 解ラナイ!」と、全く通じませんでしたが・・・。)



「微笑みの貴公子」と言えば、ヨン様はどうしてあんなに人気があるんでしょうねえ? ヨン様だけでなく、最近は「草食系男子」という言葉が流行ったり、明らかに昔人気があった男らしい男性よりも、優しくて爽やか系の男性が人気があるようです。その理由を考えてみると・・・明らかに時代の流れだと思うのです。女性の社会的地位が向上し、男女平等の意識が浸透して、男性がリードし女性がそれに従うという旧来の人間関係モデルが成立しなくなったことが原因ではないでしょうか。女性も自立できるようになると、昔のように自分を引っ張ってくれたり保護してくれる男性は必要でなくなり、男性にも優しさや安らぎを求めているのだと思います。

私の勤務医時代は整形外科と言えば女医は非常に少なく、廻りは男性のドクターばかりでしたが、看護婦さんたちには「先生が一番男らしいわ!」とよく言われたものです。「眼科なんかは女らしい女医さんが多い気がするけど、整形の女医さんなんかすごく恐そ~」と言われたこともあり、医者になった途端にぱったりもてなくなりました。(学生時代は結構もててんけどな~。)まあ、ハンマーやのこぎりを持って骨折の手術なんかするので仕方ないですけど。昔はやっぱり「整形外科なんか女のする仕事と違う」と言われましたが、女性が強くても普通になった今の時代に整形外科をしていたら、もう少しもてたかもしれません。もう一つ、ヨン様の人気の秘密は、韓国ドラマの純粋さにあるような気がします。日本ではもう失われてしまったピュアな恋心というものを、皆は求めているのかもしれませんね。



そう考えると、時代の流れによって人の求めるものは大きく変わるんだなあとつくづく思います。私が開業した頃は、「美容医療」なんてまだまだマイナーでしたし、ごく少数の人が美容外科手術を受けている時代でした。それがここ数年の間に、美容目的の注射やレーザーなど、手術以外の治療の普及によって瞬く間にポピュラーになり、「綺麗になりたい」「若返りたい」という要望は誰もが持つようになったと言っても過言ではないでしょう。「アンチエイジング」が閉鎖的な医者の世界でさえも大々的に取り上げられるようになったのは、やはり時代が求めているものだからではないでしょうか。しかも2年前の抗加齢学会では、「長寿」と「健康」が主な論点だったのに、今年は明らかに「皮膚や見た目のアンチエイジング」に照準を当てた講演が増えています。この時代の求めているものを提供する事こそが私達の仕事なのだと思いました。世の中の流れは、侵襲の大きい手術からより少ないものへ、そして誰もが気軽に受けられる美容医療というものが求められる方向に変わってきています。それらを念頭に置きつつ研究に励まねば、と改めて思ったのです。



そう言えば、「微笑みの貴公子」や「草食系男子」に続いて最近良く使われ出しているのが、「カレセン」という言葉だとか。カレセンとは、「 枯れたおじさん専科 」というような意味で、最近は枯れたおじさんが若い女性にもてるらしい。今までだと「ちょいワルおやじ」がかっこいい中高年というイメージでしたが、どうもいつの間にか「ちょいワルおやじ」からカレセンに移行していたようです。・・・この話を聞いて、先日の学会の時に検討会兼食事会で集まったK氏とUさんを思い出してしまいました。どう見てもK氏は「ちょい悪おやじ」、Uさんは「枯れたおじさん」です。今までは、「もて度」の軍配はK氏に上がると思っていたのですが、最近ではUさんなんですね。本当に時代の流れというものは変われば変わるものですねえ。



そこで私もこれからの必ず流行するトレンドを一つ予測しました。これからは「美・キャリアマダム」の時代なのだ! 男子たるもの生まれた時から「男らしくしなさい!」としつけられて何とか肩肘張って生きてきたのですが、大人になれば男女平等社会が実現(まだ全部実現とは言えませんが、大手企業では少なくとも同じ仕事であれば基本的に同じ給料ですね。)しており、妻子を養うのは男の仕事と思っても、一人でなかなかそんな事はできなくなってきたようです。昔の男子は社会の男女格差のお陰で普通の人でも妻子を養う事ができたのですが、今はヘタすると奥さんの稼ぎがよかったり、完全に奥さんの収入をあてにした生活設計になると「男子たるもの・・」なんて粋がっても仕方がないようです。社会の変化が草食系男子の人気を支えたとすれば、今度は増殖した草食系男子はどのような女性を好むか・・・これがずばり「キャリアマダム」だと思うのです。

「キャリアウーマン」って言葉が既にありますが、そこは敢えて「キャリアマダム」を提唱します。社会のイロハがわかってきて、それなりな責任を背負わされている割に収入がどんどん上がる訳でもなく、相対的に女性がどんどん社会的地位が上がっていく中で草食系男子は「キャリアマダム」とのおつき合いを求めると思うのです。「有閑マダム」じゃダメなんです。彼らは別にジゴロになりたい訳ではないし、しっかり社会人として独立し、家庭を守っていくと言う常識はあるものの、アーパーな若い女の子と付き合うのは疲れるし、仕事の相談ができない有閑マダムとのおつき合いもする気ははない。社会と隔離された話題の合わない専業主婦もダメ。となると人生の疲れを時には癒してくれ、時には仕事の相談もでき、対等な立場として付き合いができるのは、草食系男子にとって「仕事をしている年上の女性」しかないと思うのです。ただし、「オバハン」は彼らの眼中にはないので、やはり「美しきキャリアマダム」・・・って事になるんです。そうなんです。やっと私達の時代が来たのです!! (無茶苦茶、強引かつ自分の妄想が入った話の展開には目をつぶってください・・・。)今のクリニックの患者様の多くは40歳を越えているにもかかわらず、そうは見えないって方が多いのです。もちろん美容に興味があって実際に受診して頂ける訳ですから、年齢の割に綺麗だし、しっかりとした仕事もしている方が多いのは自然な事なのですが、まさに私達が時代の主役となろうとしている訳なのです。皆様で「神戸のキャリアマダム」ブランドを作っていきましょう・・・!



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