
こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。
1月は本当に寒かったですねえ。まだまだ厳しい寒さが続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はあまりの寒さに、珍しく新しい服(カーディガンやセーター、コートなどの防寒具)を買ってしまいました。買い物好きのスタッフKさんに、「先生が服を買うのはそういう理由なんですね」とあきれられましたが・・・。私は世の中の多くの女性とは違って、ショッピングやバーゲンが苦手なんです。服を買うのは必要に迫られた時が多く、今回のように寒かったり、学会用の服がない時などですね。服の場合はファッション性もさる事ながら着易さや暖かさなどの機能重視です。「美しい女性」になる・・・という事にはもちろん興味があり、だから美容の世界にいる訳ですが、「美しい女性」の基本は素肌美人であり、それを引き出すのが服や宝飾品であると思っています。だから「服が歩いている・・・」というような人を見るとどうしても感心できません。一昔前は「機能とファッション性は両立しない」というのが定説でしたが、今は軽くて暖かいにも関わらず十分にファッショナブルという服が増えて来たのは嬉しい限りです。Uクロを筆頭とした安いカジュアルウエアも最近はお洒落になったように思います。ところで私の場合は服やバッグなどの装飾品にあまり興味がない代わりに、グルメやワインには目がなく、普通の女性よりもかなり熱心な気がします。(普通の女性もグルメには熱心ですが、ワインよりもスイーツですよね?)

1月はあまりに寒かったので例のごとく外出は最小限。暖かい部屋で読書にふける・・・という日も多かったのですが、本は専門書以外はグルメ本が多く、ガイドブックを眺めて「次はここに行こう・・・」なんて計画を立てるのが好きです。ガイドブックと言えば、昨年は「ミシュラン東京ガイド」が話題になりましたね。マスコミでも相当話題になっていましたのでご存じの方も多いと思います。この方面ではミーハーな私はもちろんすぐに買いましたが、発売当時は本屋の店頭ではどこも売り切れで、楽天ブックスで何週間か待って手に入れた記憶があります。東京が世界一星付きレストランの多い都市になったと、世間が騒然となっていました。やっと手に入れた「ミシュラン東京」を読んでみると、東京のグルメおやじ(おじさま?)K氏に連れて行ってもらったレストランやお鮨屋さんも載っているではありませんか。ミシュランの三つ星は「そのために旅行する価値がある卓越した料理」、二つ星は「遠回りしても訪れる価値があるすばらしい料理」、一つ星は「そのカテゴリーで特に美味しい料理」を出す店なんだそうな。最初は「ミシュランで三つ星を取った店って、どんな店かな?」とか、「三つ星レストランには一回行ってみたいなあ」とか、「あ、ここ、前から行ってみたかった店だ」とか、夢をふくらませながら読んでいたのですが・・・。読み進むうちに、何か物足りなさを感じてきました。写真は綺麗だけど、何か内容が薄いような・・・。店の特徴や、「ここではこれは逃せない!」的なメニューの紹介もなく、なんとなく全体的に褒めているだけなので「ここに行きたい!」という感じが湧いてこないのです。もちろん、ミシュランは世界一を誇る権威のあるレストランガイドですから「ミシュランに載っているんだから・・・」と思う反面、「何かが違う・・・」という違和感がぬぐえません。なんだか「Hot Pepper クーポンマガジン」と似ているような感じを受けてしまうのです。

「ミシュラン東京」に載っている店の中には以前自分で行ったことがあった店もあり、その中のいくつかは「あれ? ここ、そんなに美味しかったっけ?」と思わせる店でした。そこで、「これはミシュラン東京に載った店を実際に食べ歩いて検証しなければ」と、グルメ友達Mと「ミシュラン検証本」を作って出版しよう!! なんて計画(妄想?)を立てました。K氏も「そんな話なら乗りますよ!」とやる気満々だったのですが、新クリニックオープンにかかわるさまざまなハプニングであっという間に日が過ぎてしまい、その計画は日の目を見ることなく埋もれて行きました。 そして気付いた時にはもう「ミシュラン検証本」が何冊か出てしまっていたのです。みんな同じような事考えるんですねえ・・・。それならば今度は「ミシュラン検証本」の検証をしなけば・・・という事で早速検証本を取り寄せます。その中で今回、特に気に入ったのが「ガチミシュラン」という辛口の評価本です。グルメに興味あるお方は是非一読をお勧めします。その内容がめちゃめちゃ面白い!この本の題名にある「ガチ」とは、「八百長などによる意図的な影響の入らない真剣勝負やそれに類する状況」を指す言葉で、「癒着などのない真剣な、本物の評価本」という意味のようです。
「ガチミシュラン」は「ミシュラン東京」に載った半分以上の店を著者が自腹・覆面で食べ歩いて徹底検証した本だそうですが、著者に言わせると、日本の飲食業界を取り巻くマスコミには検証精神に基づくジャーナリズムが皆無だそうで、レストランジャーナリストや料理評論家は店の経営者や料理人と癒着し、読者や一般客への裏切り行為に奔っているとのこと。原稿料が安いので、まともに食事代を支払って取材していては赤字になるらしく、そのためほとんどの評論家が料理をタダで提供してもらって過大評価を書いたり、店の宣伝をして対価をもらったり、ファンを集って割高な食事会を開催し、参加費と店への支払の利ざやをかすめる・・・といった、評論家にあるまじき事をしているのだとか。

なるほど・・・今までガイドブックですごく評価されている店に行ってがっかりしたことは何度もあるので、ガイドブックはあまり信用しないことにしていたのですが、世界的権威のミシュランだけは別格・・・と信じていたのに・・・。「ブルータスお前もか?」って感じです。(もちろん私はこの業界の人間ではないので本当のところはよくわかりません。あくまでもこの本を読んで想像のレベルで「そうなんだろうな」って思う次第です。)「ガチミシュラン」の著者はそんな日本の飲食業界の悪癖を暴き、完全覆面・自腹で食べ歩いて、癒着のない本物の評価をしていると明言しています。もちろん言うだけだったら誰でもできるのですが、評価の文章を読んでもその信念を崩さない姿勢が感じられるので信用できそうです。
この著者の文章を引用すると・・・ この世には
・ 利益を必要以上に追求する(特にワインの値付け)
・ レストランと癒着しているかのような宣伝文句しか書かないライターを使って大げさな 「ホラ吹きキャッチ」をマスコミに垂れ流し、客を釣る
・ 肝心の料理でなく、内外装の奇抜さで客をひっかける
など、一般客には「百害あって一利なし」の店が多すぎる! とのこと。
これも、私もかねてから思っていたことなので、大いに共感しました。日本のレストランは何でワインに市価の2倍・3倍の値付けをするのか? 海外とは大違いのあくどさです。そして雰囲気だけ良くて料理のまずい店のなんと多いことか! 著者に言わせると、プロの料理人が利益ばかりを考えずに本気で調理すれば誰でも美味しい料理が作れるはずなのに、世に美味しくない料理、CP(コストパフォーマンス)が悪い店が存在するのは、料理人を含めた「経営陣」の経営方針が客を見ていないからだ、とのこと。これもおっしゃる通り。この著者とはますます気が合いそうです。

「ガチミシュラン」は「ミシュラン東京」で星の付いた店を著者の評価基準で三つ星から星なしまでに分類しているのですが、その評価基準は料理の味わいだけでなく、ワインなど酒類を含めた値付けつまりCP、さらにその店の経営姿勢も含んでいるそうです。著者の店評価の根幹は「利益追求に奔りすぎる性格の悪い料理人の店に旨いものなし」「多店舗展開会社の店にCPが良い店なし」とのこと。店は料理人や経営者の考え方や経営方針で良し悪しが決まると著者は考えているらしい。これも全くもって同感です。
「ガチミシュラン」の中の三つ星は「CPに関係なくそのジャンルの最高レベルの料理が体験できる店」、二つ星は「CPが良く、季節ごとに訪れたい店」、一つ星は「話のタネに1回、もしくは近所なら訪問可能だが無理してまで訪問する必要のない店」、星なしは「全く傑出した料理がなく、CPも悪い店。ミシュランに惑わされてわざわざ行く必要なし」とされています。
そしてなんと「ミシュラン東京」の三つ星レストラン8軒のうち「ガチミシュラン」で三つ星を獲得したのは1軒だけで、3軒は星なし。また星なしの店の評価が小気味良い。和食の「Kだ」については「味・CP含め、どこを見ても三つ星の要素は皆無」「ミシュラン調査員、自ら和食オンチを露呈か?」。超有名な鮨屋「Sばし次郎」に至っては「’ゴッドハンド’と呼ばれたのも昔の話、今は時代遅れの世界一高額なだけの鮨屋」。ここはおまかせ20個で20分しか座れず3万円以上だったそうで、「時間単価(9万円)が世界一高い料理店としてギネスブックに申請することを提案します」とあります。しかも「味はどうってことない普通の鮨」で、「世界一高い支払をしてまで行く必要はない」とバッサリ切られています。 ああ、行かなくて良かった・・・(^_^;)。
これに対して同じ三つ星の「M谷」は、値段は半分なのに味はずっと良いと評価されています。知り合いで実際にこの2軒の鮨屋に行った人達も同様の評価だったので、辛口と言っても正直な評価に思えます。

そして「ミシュラン東京」で二つ星・一つ星で、「ガチミシュラン」では星なしの店もバッサバサに切りまくられています。例えばフレンチでは結構有名な「シェ・M尾」。「瀟洒な店の雰囲気でも隠しきれない粗悪な料理」「ミシュランのいい加減ぶりを証明する店」「大きなお屋敷が建ち並ぶ住宅街の中の瀟洒な一軒家という雰囲気でも、レベルの低い料理をカバーしきれない、行ってはいけないフレンチ」・・・ここまで書かれると気持ちいい。そして内容を読むとしっかり根拠もあります。「以前はアラカルトがあったのですが、いつの間にか2万円のコース1本にしてしまった営業は、客のことを考えた経営とは思えません。もちろん肝心の料理はもっとダメ・・・」と続く。「これで2名で8万5000円超はあまりに高すぎです」・・・。もう一つ、有名なフレンチ、「レストランHまつ」の評価は・・・「何一つ再訪したいと思わせる要素がない上、低レベルのスタッフや高い支払額にあきれるばかり」「再訪したいと思うような料理に一つも出会えず、ワインは高すぎるの一言。チーズの説明もろくにできないスタッフもおり、これでサービス料を破格の15%も取るのですから、サービスも悪いとしか言いようがない」・・・一人4万円以上するのに料理はまずくてチーズの説明もできず、サービス料を15%も取られたら普通怒りますよね。
六本木にある鮨と鉄板焼きの「M・XEX」などは「’NYスタイル’と豪語する「似非(えせ)」和食店」「料理はマズくCPは最悪で食後の気分は史上最低」 ・・・(^_^;) 「若くしてアメリカへ渡り、似非和食で人気を得た料理人の考え出す鮨を食べたいと思う鮨好きがいるとは思えません」それはその通りかも・・・。

私が行ったことのある店では、鴨で有名な「T・Dジャン」。パリにある「あなたの食べた鴨は当店で何羽目の鴨です」というお札(?)をくれる仰々しい店の支店です。「ウリの鴨料理は濃いソースに素材が質負け」「フォアグラは美味なれど、わざわざ行く必要なし」・・・全く同感。私も「フォアグラは美味しいけど、肝心の鴨がなあ・・・」と思いましたし、一緒に行った北海道の先生とその知り合いの医療器械メーカーの人は値段の高さに目を白黒させていた記憶があります。もう一つ、以前行って「高いだけで美味しくない・・・」と思った超有名鮨店「K兵衛」は、「質の悪い大量生産用のタネとレベルの低い仕事」「ブランド力に頼った多店舗展開に美味い店なし」・・・。これだけズバッと切ってくれると嬉しくなり、「やっぱり自分は間違ってなかったんだ」と安心することができます。
逆にこれだけ評価の厳しい著者が高く評価する店には、是が非でも行きたくなりますよね。もちろん好みは人によって違うでしょうけど、大はずれではないはず・・・。単なる辛口の評価本は他にもあるのですが、この著者が書いている後書きを読んで恐らく私と趣味趣向は同じだろう・・・と思ったのです。曰く・・・「ごくわずかな誰もが美味しいと思う店と誰もがまずいと思う店を除いて、大半の店は個々の嗜好によって評価が異なって当たり前です。一般読者は自分と嗜好の合う書き手の評価を参考にすれば良い。よってレストラン評価本は、書き手の嗜好・考え・主張がはっきり読み取れなければ全く参考にならないし、その考えが同じである人の意見を参考にすれば間違えない。」

そうなんですよね。レストランって誰がお勧めするかということで行く前から殆ど決まっているように思うのです。人間って沢山いるので自分と同じ趣味趣向の人は少ないのですが、ほぼ似ている・・・という人が勧めるレストランはやはり外れがないように思います。そして私が信用できる評価を下す人は必ず、自分なりな切り口と考え方をしっかりと持っており、いたずらにマスコミや世間の評判を気にすることなく自分自身で評価している人(そして何よりも会社の経費ではなく、自腹でグルメする人・・・(^.^))のように思います。
「ミシュラン東京」には何か確固たる評価のポリシーが感じられない。それで物足りないと思ったのでしょうね。逆に「ガチミシュラン」の著者と私は結構嗜好が合ってそうです。さらに「ミシュラン東京」の問題点は覆面取材を謳いながらも覆面取材になっていないこと、とも書かれていました。確かに覆面取材では全店であんなに綺麗な写真は取れないでしょう。それに対して「ガチミシュラン」には写真は一枚も載っていません。本当に覆面取材だとそうなるはずですよね。「ガチミシュラン」の評価している店は、やはりCPの良い、「お客様のことを考えている店」。雰囲気ではなく本当に料理が美味しく、価格も良心的で、まずい店に多い「徹底的に儲けたい」「手間をかけずに楽をしたい」というような客を見ない経営方針とは逆の店です。これからの時代はやはりそういう店が生き残るのだと思います。

ただ、他人の評価は簡単ですが自分自身を辛口で評価すると言うのは非常に難しいものですね。「ガチミシュラン」を読んでいて、楽しかった反面、深く考えさせられる事も多々ありました。それは「ガチミシュラン」の評価基準は飲食業界だけでなく、美容医療業界にも当てはまるなあ、ということ。レストランでもクリニックでも、やはり本物が求められると思うのです。雰囲気ではなく料理の味、クリニックで言えば効果と安全性がやはり最も重要だと思いますし、クリニックでもCPは大事だと思います。良心的で、手間がかかっても手を抜かず、患者様のことを考えているクリニックがこれから生き残っていくでしょう。ワインも高けりゃいいってもんではありませんが、美容医療もそうだと思います。ワインに好みの差が大きいように、美容医療も個々の効果の出方や感じ方の差があるので難しいところはありますが、どうしたら満足してもらえるかを常に考えて、それぞれの人に合った治療方法を研究するクリニックが求められているのではないでしょうか。もちろん人によって求める事はそれぞれ違うという事は十分認識していますが、自分自身が美容医療に対する価値観をきちんと定めてそれが最も重要な事と定めている以上は、本質を見失わず、常に手を抜かずに本物を追求し、患者様の方を向いているクリニックでありたいと考えています。
美容医療界でもそのうち、「ガチミシュラン」のような評価本が出てくるかもしれませんね。そんな時に、本物の評価本に推薦されるクリニックにならなきゃ!と思う今日この頃です。