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第70回 (2009年01月)「新しいチャレンジ」



あけましておめでとうございます。 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。昨年は皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。お陰様で新クリニック初めてのお正月を無事迎えることができ、心から感謝しています。昨年は異人館通クリニックを閉院し、場所もコンセプトも一新して全く新しいクリニックをオープンするという、私にとっては一大事業を成し遂げましたが、このクリニック通信にも書いてきたようにさまざまなハプニングがありました。(初めてクリニック通信を読まれる方はバックナンバー第63・64回をご覧ください。)それらを乗り越えてここまで来ることができたのは本当に皆様のお陰と感謝に堪えません。新クリニックもやっと落ち着いたとはいえ、まだまだ始まったばかりでやるべきことはたくさんありますが、信念を貫いてなんとか軌道に乗せ、皆様に恩返しをしたいと思っておりますので、何卒宜しくお願い致します。



さて、新クリニック初めての新年を迎えるにあたり、未来に向かう目標を立てるためにこれまでを振り返って自分の生き方を再確認しようと、今までのクリニック通信を読み返してみました。クリニックと共に歩んできたこの7年間の自分の生き方は、クリニック通信に端的に表われているからです。これを読むといつ自分が何に一生懸命になり、どういう考え方をしてきたかが良く解ります。そう言えばつい最近、少年隊の東山紀之が雑誌でスタートさせた新連載コラム「これまでと、これからと」で、自分の生き方を見つめ直し、未来に向かうために自らの波乱の生い立ちを告白した・・・というニュースが載っていましたね。 私の場合「波乱の生い立ち」と言うほどではありませんが、これまでを振り返って自分の生き方を見つめ直し、未来への道を切り開いていくことはやはり大切なことだと思います。(しかし去年は私の人生も結構波乱に富んでいたなあ・・・。)


クリニック通信を読み返すと、「ああ、この時はこうだった・・・」と懐かしくなったり、失敗談に自分で笑ってしまったり、結構面白くて、次々と読んでしまいます。クリニック通信は旧クリニックをオープンした次の年、2003年から始めました。今回で第70回なので、我ながらよく続いたと自画自賛。昨年は新クリニックをオープンして、久しぶりの患者様にもたくさん来ていただき、その度に「クリニック通信はずっと読んでいたんです」と言っていただいて、とても嬉しかったです。毎月結構な時間をこの通信に費やしているので、そう言っていただけると頑張った甲斐があるというものです。思えば7年前、「美容生活医療」という新しい分野にチャレンジしようと、「日常生活にやすらぎと豊かさを与える」「効果と安全性を検証した適正な医療を適正な価格で提供する」という目標を掲げ、それに向かって6年間歩んできました。しかし、新しい治療を取り入れようとその研究に取り組む度に美容医療界の問題点に遭遇し、医療の真髄である治療効果の追求よりもサービス重視に変化してしまったこの業界の風潮を疑問に感じてきて、サービスよりも治療と研究に重点を置こうとコンセプトを変更し、治療開発研究所を併設した新クリニックをオープンした訳です。



クリニック通信の根底に流れているのはそういった考え方なのですが、個々の通信を読んでいると、グルメとワインの話題の多いこと・・・。半分以上はそれですねえ。通信を読み込んでいる患者様にはよく「先生、ワインお好きなんですね~」なんて言われてしまいます。自分でも仕事以外に好きなものを聞かれて何かと考えると、グルメとワイン以外にあまりない・・・。学生の頃からスポーツは好きで、高校時代はバレーボール、大学時代は卓球を極めていた(?)ので、昔は夏はダイビング・冬はスキー・春と秋はゴルフ・・・とスポーツ三昧だった時期もあるのですが(勤務医時代に博士号を取った後の1年間だけでしたが)、交通事故に遭ってスポーツをしなくなってからは、もっぱらの趣味はグルメです。もちろん昔から母親ゆずりの旨いもの好きではあったのですが・・・。


グルメ話のついでに、グルメの敵のお話を・・・。グルメの敵と言えば、つい先月あったルミナリエとクリスマスです。クリスマスと言えばレストランはかき入れ時。どこもかしこもクリスマスディナーコースを出しますが、私はクリスマスディナーコースに旨い物なし、と思っています。大昔、まだ世間がそんなにクリスマス、クリスマスと騒いでいなかった頃は、ちょっと洒落込んでクリスマスにディナーを・・・とでかけても美味しいものは食べられましたが、レストランのクリスマスディナーが流行り出して混み合うようになってからは、その時期美味しいものにあたったことがありません。私はジャン・ムーランが北野坂にあって有名になる前から通っていましたが、10年ちょっと前のクリスマスに行ってがっかりしてからは、クリスマス時期にレストランに行くのはやめました。考えてみれば、多人数分を一度に作るディナーコースが美味しいはずがありません。神戸一と言われるイタリアンレストランの仲良しのソムリエ君も、その時期に予約の電話を入れると「○日からはクリスマスディナーになりますので避けられた方が・・・」と親切に教えてくれるので、その期間は避けて行くようにしています。



・・・という訳で、クリスマスはもっぱらおうちでディナーです。そうは言っても昔はクリスマスが大好きだったので、今も少しは飾り付けをします。新クリニックの付近は商業ビルなので、11月ともなるとあちこちにツリーが飾られ、周りのお店もクリスマスの飾り付けを始めました。私はツリーやポインセチアを見るとうきうきしてくるので、クリニックにも近くの花屋さんでコニファーのツリーを買って玄関に飾ったり、ポインセチアも一つずつ買っては院内に飾ったりしてみました。ポインセチアが4つ目に達したところでスタッフに「もういいんじゃないですか?」と言われてションボリ。


そして昨年、クリスマスに先立って遭遇したのがルミナリエです。異人館通クリニックを運営している間は北野にいたので、その時期は北野坂がイルミネーションで飾られるくらいで、ルミナリエというものは他人事でした。近づきさえしなければ被害はあまり被らなかったのですが(数年前ルミナリエの時期にまだ3時だから大丈夫だろうと大丸に買い物に行ったらみるみるうちに人が増え、えらい目にあったのでその後はルミナリエの付近には近づかないようにしていました)、昨年はクリニックそのものがルミナリエの近くだし、悪いことに自宅はさらにルミナリエに近づく場所なので避けて通れない状況・・・。普段は仕事が終わって帰る頃には閑散としている地下道に人が急に増え、週末ともなると人があふれて歩けないくらい。お店はどこもいっぱいだし、食材が切れて仕方なくそごうに買いに行ったら混雑で死にそうになりました。しかし付近の飲食店はかき入れ時なので、営業時間を延ばしたりしています。笑ってしまったのは近くの蕎麦屋までが「ルミナリエ御膳」と書いたメニューとのぼりを立てていたこと。(どこまで便乗するねん!)



・・・と話がずいぶんそれてしまいましたが、クリニック通信を読んでいると、どんな時何がきっかけでどんな事を考えたのかとか、目的を達成するためにどのように行動してきたかなどを思い出すことができます。ボトックスを導入した時、ホームピーリング剤を作ろうと奮闘した時、メソセラピーの研究をした時、メソリフトの開発に苦労した時・・・その度に周りには真剣に治療の開発に取り組む人が非常に少ないことが判り、この業界における研究の必要性というものをひしひしと感じてきました。PRPの研究を始めた時にやっと研究が大好きなKクリニックのM先生と出会い、「PRP友達」になる事ができましたが、そういう人の少ないこと。ドクターでも少ないのですから、スタッフはなおさらです。しかし私は、組織というものはみんなが同じ目標に向かって進まないとうまくいかないと思っています。当院の使命は、美容医療を通じて多くの人を幸せにすることであり、そのためには最も安全で確実な効果を出せる治療法を研究開発しなければならないと思っていますが、当院にいる限りはスタッフも同じことを考えていないといけないと思うのです。医療の真髄は治療効果の追求とそのための研究であると考え、メスやレーザーを使わない「安全で確実な治療」についてはどこにも負けないクリニックを目指すのは、私だけではいけないのです。私の考え方や医療に取り組む姿勢をいいと思って来てくださる患者様は、当然スタッフにも高度な知識を求められます。患者様にすれば、スタッフが治療内容やその分野の知識に詳しいのは当たり前。当院で受付と診療補助を分けていないのは、受付こそ治療内容に詳しくないと患者様に説明ができないからです。しかし旧クリニックではなかなかそういう方向には進めませんでした。



そこで移転を機にコンセプトを大きく変え、「院長は研究所長、スタッフは研究員と考える」とした訳です。研究員はシミ・シワ・クマ・たるみに関するエキスパートメンバーであり、院長と共に治療方法の研究開発を行うだけでなく、自らも研究テーマを持って研究と情報公開を行い、そのジャンルの専門家を目指して向上していく、とした点が以前と大きく違います。スタッフにとっても専門家として独立できるという将来性がないと良い人材は来ないし、スタッフがプロ意識を持って、専門家を目指して勉強することが本人の人生の役に立ち、クリニックの発展にもつながって多くの人を幸せにできると思ったからです。一言で言えば、人に必要とされる人間になりなさい、ということなのですが、その近道がその道のプロになって人の役に立つ事だと思うのです。

しかしプロを目指すというのはなかなか簡単な事ではありません。私も大学の研修医の頃は1日も休まず、週に2日は徹夜して、平均睡眠時間は2~3時間という生活でした。研修医仲間と恐る恐る時給を計算したら、確か176円だったような・・・。それでも給料をもらえるだけましで、昔は研修医は修行期間ということで無給だったんですもんね。大学の研修が終わって関連病院に派遣され、少しはましな生活になるかと思いきや、アメリカ帰りの鬼部長に当たり、さらに厳しい生活に・・・。毎日怒鳴られ、毎朝病院の玄関が5時に開いてから帰り、病院の仕事の他にも次々と学会発表などを課せられて、体がいくつあっても足りん・・・と思うことも。しかしあの頃があったから今の私があるのだと、当時の部長にはとても感謝しています。

もちろん今は時代が違うので古い時代の常識をそのまま適用しようというつもりではないのですが、やはりプロになりたいという意識を持つ事の必要性は 今も昔も変わりはないと思っています。



しかし最近はなかなかしんどくてもプロを目指そうという人は少なく、常に人員不足・・・という状態です。聞けばどの業界も同じのようです。その一方で不況だからと言って派遣社員の首切りが大きな問題になっています。本来であれば、社員を必要ない会社から必要としている会社に移動できる大きなチャンスのはずなんですが、なかなか上手く行かないですね。結局は社会が必要としている人材(不足している人材像)と本人が求める甘い生活・・・が完全に乖離してしまっている事が問題なんですね。どこの会社や組織でも「必要とされる人材」がいないのですから、それを永遠にぼやいても始まりません。その点は私達も同じ競争の場にいます。


そこで今年は、人材を広く世界に求めることにしました。経営者仲間の集まりでも、「最近の若いもんは・・・」ではありませんが、最近の日本の若者は甘やかされ過ぎていてダメだという意見が多く、外国人を雇うところが増えてきています。友人Mなんかは、最近の日本の若者は甘やかされていてろくな人材がいないと、すでに中国に会社を作ってしまいました。M曰く「中国でビジネスするとトラブルが多いとか色々と問題がある事ばかりマスコミは書き立てるけど、それこそ問題を人のせいにする象徴みたいなもんだね。日本人だって中国人だってベトナム人だって同じ人間で幸せになりたいと思っている。幸せになる手伝いをしてくれる人の言う事は聞くけど上手く利用して上手い汁を吸おうという人の言う事は聞かない。それだけの事なのよ。ただ、圧倒的に「幸せになりたい。その為の努力は惜しまない」というアグレッシブな人は日本より海外の方が多い。これだけは間違いない。日本の若者は棚ぼた式に落ちてくる幸せは望むけど、幸せを自ら勝ち取ろうというハングリー精神はもうなくなってしまったかもしれないなぁ・・・ 」と言っていました。



私の知っている中国人の留学生にも優秀な人が多く、マッサージのアルバイトをしているS君は、神戸大の大学院でソフトウェアのプログラムを作っています。考えてみれば、言葉の壁を乗り越えてでも海外で勉強しようという若者は、甘やかされた日本の若者よりずっとやる気がありそうです。そこでS君の仲間にクリニックで働きたい人を募ってみました。すると中国の看護士の免許を持っているが、日本で看護士になるのが夢で日本に来たというSさんから応募がありました。まだ日本に来て8ヶ月足らずで日本語はつたないですが、日本語学校に通いながら休みなしで頑張ると言うので、採用してみることにしました。中国の医療事情や美容事情を聞くのも楽しみですし、常に新しいことにチャレンジしなければ進歩はないと思うので・・・。


そうして人員を早く落ち着かせて、今年は研究をさらに進めたいと思っています。PRPの研究を進めることももちろんですが、採血がしにくくPRPをあきらめた方で、メソリフトでたるみが驚くほど改善された方もおられたので、メソリフトもやはり捨てたもんじゃないと再認識し、さらに痛みを改善する麻酔や針跡の残りにくい針の研究もしたいし、根強い人気のエセリスカクテル用の新しい針の研究や、新しいビタミンCなどの美白剤、途中になっていた夢美人ローションの研究など、やりたいことがいっぱいです。そして12月から始めた、大人気で予約がいっぱいになってしまった美肌再生プログラム。スタッフが自ら研究を進められるメニューなので、これを発展させて指名が取れるようにし、スタッフも向上して皆様にも喜ばれるメニューにしたいと思っています。



先にルミナリエは私のグルメの敵だと書いたのですが、今年一つ気づいたことがあります。神戸の街を歩いているとルミナリエを設営しているところを偶然に見る事ができました。そこには多くのイタリア人( ・・・恐らくそのはず。)の技師と思われる人が設営に携わっていて、「へぇ・・・ルミナリエって本当にイタリアのイベントを日本に持ち込んだんだぁ」と感心しました。考えてみれば「イタリア発のルミナリエ」って宣伝されているので当たり前と言えば当たり前なんですが、「海外発!」と書いた方が宣伝効果が高いから名前の利用料だけ支払って実態とは関係ないイベントって結構多いですよね。一度もイタリアで修行した事がないシェフがやっているイタリア料理のお店なんて沢山ありますし。「どうしてイタリアンなんですか?」と聞くと「なんとなく・・・。イタリアンがいいんじゃないかな・・・と思いまして・・・」なんて話をよく聞きますよね。日本人の舶来信仰意識を利用して、なんちゃってイタリアンとかが多い中でルミナリエもその一つと勝手に思い込んでいたんですが、そうでもなさそうです。ただビックリしたのはそのイタリア人の技師が日本の工事関係者にイタリア語で指示をしていた事です。日本の作業関係者がまさかイタリア語を完全に理解しているとは思えないのですが、真剣な眼差しで指示を聞いて、うなずいていました・・・。恐らく設計図とかきちんとしたものがある中での指示なのでイタリア語を交ぜて指示しても伝わるのでしょうけれど、本当に「良いもの」は言葉の壁を越えて相手に伝わるものなんだな・・・と感心しました。当クリニックも海外から来たスタッフを迎えると言葉の問題などで患者様にご不便をかけるのではないかと心配な面もありますが、やはり本当に良いもの・・・本物・・・は言葉の壁を越えて伝わるはずだ、と信じています。


・・・という訳で、今年はクリニックの国際化を試み、「シミ・シワ・たるみ研究所」の研究活動を軌道に乗せて、ますます皆様のお役に立てるよう頑張りたいと思っております。本年も何卒宜しくお願い致します!


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