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第68回 (2008年11月)「人との出逢い」



こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。

秋も深まり、急に寒くなってきましたが、皆様は風邪などひかれていませんか? 私はもうすでに何回も風邪をひいてしまいましたが、疲労回復(風邪用)プラセンタ点滴でなんとか重症になる前に回復しています。最近はクリニックもやっと落ち着き、朝の通勤時に秋らしくなった街並みを眺める余裕も出てきました。


「柴田美容皮膚科クリニック」もオープンして早4ヶ月。スタッフも定着して、シミ・シワ・たるみ研究所での研究もやっとできるようになりました。オープンから苦労を共にしてきてくれた頭脳派のKさんと、「若いのにしっかりしてる」と患者様にも評判のNちゃんは、マッサージ の研究に取り組んでいます。お互いにマッサージをしあって前後の皮膚温を測定したり、目尻と眉尻の間や目尻と法令線の最下端の間の距離を測定したり・・・。筋肉や血管・リンパ管の走行などの解剖学も勉強し、マッサージの方向・強さ・使用する処方化粧品なども一緒に研究しています。私も何回もしてもらいましたが、マッサージ後は血行が良くなってポカポカ。皮膚温も確実に上昇します。翌日の肌状態も、東京の超高級エステに行った後よりもプルプルでいい感じ!「うん・・・。これは使える!」



もう一人我が研究所のホープは、細胞培養の研究所での研究経験があり、実験が大好きなK君です。私が彼につけた密かなあだ名は「パスツール」。真面目でおとなしく、地味とも言える青年ですが、顕微鏡でPRPの血小板数を数えさせたら彼の右に出る者はいません。「血球計算盤」という目盛りの入った硝子盤にPRPを垂らし、無数の血小板を顕微鏡で見ながらカウンターでカチカチ数える彼の姿は我が研究所の名物と言っていいでしょう。K君が準備した血球計算盤を顕微鏡で覗いたNちゃんは、あまりに多い血小板の数にびっくり。「すごーい!! Kさん、これ数えてるんですかー?? 目がチカチカする・・・」パスツールK君の登場で、PRPの研究は私が一人で研究していた頃に比べて飛躍的に進んでいます。

私が苦手とする地道なデータ整理も彼は得意で、コツコツとしてくれるので助かります。血液を遠心分離した試験管のどの辺にどれ位血小板が集まっているかも解明されてきましたし、PRPの濃度を思い通りに調節できる日も遠くはなくなってきました。この調子で行けば「柴田式PRP注入療法」が更なる発展を遂げることは間違いありません。


そして研究にはまだ参加していませんが癒し系のスタッフも・・・。「のび太君」と患者様にあだ名を付けられた医大生のアルバイト、Y君。田舎から出てきた素朴ないい子なのですが、勉強ばかりしてきたせいか最初の頃は要領を得ず、怒られてばかりでした。自ら「怒られて伸びる子なのでどんどん怒ってください」と謙虚な姿勢がいい所なのですが、アルバイトに来て3ヶ月たった今も、ちょくちょく失敗しては落ち込んでいます。かなりのオタクらしくホームページの作製は得意で、最近は受付などでも頑張っているのですが、ちょっとトンチンカンで笑いを誘う事が多く、見かけや行動パターンがまるでアニメ。新クリニックに来られた方なら、「のび太君」と言えば「ああ、あの子か・・・」と思いつく方も多いかもしれません。彼は非常に真面目で、何でもメモを取ります。しかしメモを取ったことに満足して覚えていないことも・・・。笑ってしまったのは、受付の仕事をKさんが教えている時に、ごく簡単な事もいちいちメモを取ろうとするので「受付のことはメモしなくてもいいよ」と言うと、「受付はメモを取らなくていい」とメモしたとか。Y君のお陰で笑いの絶えないクリニックになってきました・・・。


それから、私の母校の卓球部の後輩たちも京都から時々手伝いに来てくれています。自分で言うのもなんですが、うちの卓球部は体育会系で厳しく、躾はしっかりしているのでどの子も よくできた子たちです。(キャプテンが私のめがねにかないそうな躾の行き届いた子を送り込んでいるのかも。)最近はそんなメンバーで、和気藹々と楽しく仕事ができるようになりました。



さて、自宅もクリニックの移転のために三宮駅近くに引越してから半年が経ちました。駅近に引越したらお店はいっぱいあるし、グルメできる!と期待していたのですが、美味しいお店はまだ数えるほどしか見つかっていません。そんな中、先日三宮駅近くで久しぶりに美味しい中華料理のお店を見つけ、北野の旧クリニックの近くでよく行った中華料理屋さんを思い出してしまいました。その北野のお店は元T塚の超有名な男役トップスターOさんの妹夫婦が経営していたのですが、味はめちゃいいけど親父が偏屈で、Oさんの妹さんは常にお客さんに謝っている…というようなお店でした。華やかなトップスターのお姉さんとは全く違った地味な人生を送っている妹さんに同情の声が集まっていたものでした・・・。旧クリニックのすぐ近くだったので、皆様も行かれたことがあるかもしれませんね。



そうそう、T塚と言えば、最近ひょんな事から元男役トップスターのWさんとお知り合いになりました。ところがT塚にうとい私は最初そんな有名な方とはつゆ知らず・・・知り合って何週間も経ってから、かの「ベル○○」の主役などをされためちゃくちゃ有名な方と知ってびっくり! 今でもディナーショーは定員の1000人がすぐにいっぱいになってしまうとか。


今年のショーはもうすぐで、「もういっぱいだけど特別に席を確保しましょうか?」と言ってくださったので、ミーハーな私はすぐにお願いしてしまいました。席数をその日に即答しないといけなかったので取りあえず2枚お願いしたのですが、さて誰を誘おうか…。そこで思い出したのがTファンのTさん。Tさんは私が大学生の時、卒業旅行でヨーロッパに行った時に知り合った人です。Tさん夫婦は新婚旅行のツアーがつぶれ、旅行会社の人に切符とホテルだけ取ってもらって旅行されていたのですが、ドイツで英語が解らず困っていた時にちょっと助けてあげたらえらく感謝されてランチをご馳走になり、その後偶然スイスで再会してまた宴会した・・・という出逢いでした。久しぶりに電話すると、浜松から来てくださることに。ずっと年賀状のやり取りをはしていましたが、卒後一度遊びに行ったきりお会いしてなかったので、なんと20年ぶりの再会です。そう言えばWさんのディナーショーの題目も「再会」でした。今から両方の再会が楽しみです。人との出逢いって本当に不思議なものですね。



出逢いと言えば、クリニックにはいろいろな方が来られるので、それぞれの出逢いも楽しみです。先日もリンパマッサージを中心としたサロンを経営されているFさんが来られ、「最近の若いもん話」で盛り上がってしまいました。


Fさん:「最近の若い子はあかんわー! ちょっと怒ったら次の日来ませんからねえ。先生も大変な思いしてきはったと思うから、きっと飲みに行ったら盛り上がると思うわ~!」 (うん、うん。)

Fさんはとても楽しい気さくな方で、彼女こそが「のび太君」の名付けの親です。


Fさん:「先生のとこの男の子って雰囲気似てますよね~! のび太君とお兄ちゃん、って感じで・・・。でも、お兄ちゃんはどこ行ってもやっていけるんちゃいます~?」

うーん、よく見ていらっしゃる。つまりのび太君はどこでもやっていけるタイプではない・・・って事ですね。実は私も「この子ほんまに医者になれるんかなあ?」と思う事もありました。うちでかなり鍛えなければ・・・と使命感に燃えてしまいます。


Fさん:「それに最近の若い子って、お礼きちんと言えませんよね。ご飯おごったげても、その時は『ご馳走様でした』ってかろうじて言えても、次の日に『昨日はご馳走様でした』とか、次会った時に『先日はありがとうございました』って言われへんのですよね~。それって常識ですやん。そんなん言われへん子には、もうおごったれへん!って思いますよね。最近の親はそんなんしつけへんのかなあ…。何かしてもらった時に『ありがとう』は小学生でも言いますやんねえ。『先日はありがとうございました』って言えて初めて大人やと思いません?」


ポンポンと小気味いい・・・しかし全くもって同感です。私も大学に入った時、母に「先輩にご馳走になった時は次の日もお礼言うんよ」と口をすっぱくして言われましたが、社会に出た時に、やはりきちんとした人は何かちょっとした事をしても次に会った時に必ず「先日はありがとうございました」と言われるので、「これが大人の常識なんだな・・・」と、改めて母に感謝した記憶があります。それから、それが当たり前という社会で過ごしてきましたが、どうもこの数年、きちんとお礼が言えない人が増えている気がします。これは、相手の立場に立てるかどうかにもよると思うのです。何かしてあげた時は次に会った時にお礼を言われた方が嬉しいし、何かあげた時は「気に入ってもらえたかな」と気になるので、「先日はありがとうございました。美味しかったです」とか言われると、嬉しくなってまたあげたくなりますよね。先月号に書いた母の「梨」ではありませんが・・・。


しかし、「最近の若いもんは」という言葉は、はるか昔からあったようです。なんでも古代エジプトのピラミッドの発掘をしていると石版に「最近の若いもんは・・・」という言葉があったんだとか。そうだとすると数千年にわたって人類は「最近の若いもんは・・・」と嘆いてきた訳ですね。私の子供の頃もよく、大人たちは「最近の若いもんは」と言っていました。自分が年をとると、自分の若かった頃のことは忘れて、若い人の礼儀がなっ てないとか考え方が甘い、と思ってしまうものなのかもしれませんね。考えてみると、若いもんはそう言われて社会の荒波にもまれ、成長していくものなのかもしれません。私たちがそうだったように・・・。



そう言えば先日、ちょっと嬉しいことがありました。卓球部の仲のいい後輩が夏休みにバイトに来てくれていて、その子はすごく頑張ってくれて評判も良かったのですが、その後継ぎとして、その子の後輩で最近初めてうちにバイトに来た子達がいました。その子達は大量に送った仕事のマニュアルや資料をちゃんと勉強して来て、1日で仕事も結構マスターしたのですが、バイトが終わって帰りにメールが来ました。その内容は・・・


「 今日はバイトをさせていただいてありがとうございました。仕事中は迷惑ばかりかけてすいませんでした。お忙しい中色々ご指導頂いて本当に感謝しております。またお手伝いしたいと思うので、今度こそ手助けになれるようがんばりたいと思います。今日は申し訳ありませんでした、そして本当にありがとうございました」


ソクラテスの「無知の知」ではありませんが、自分が何も知らない事、何もできない事を自覚していて、指導してもらえることに感謝できる子もいるんですねえ・・・これはFさんに報告しなくっちゃ。身内を褒めるようで恐縮ですが、うちの大学の卓球部はかなり厳しく、「礼を重んじ、先輩を敬い、後輩をしっかり教育する」ことが部の方針なので、少々常識を知らない生意気な子がいても、卒業するまでには驚くほど礼儀正しい子に変わっていきます。先輩たちが常識を叩き込むわけですが、それが本人のためになるからで、それがわが卓球部の伝統とも言えるでしょう。部での先輩・後輩の出逢いも、かけがえのないものですね。



さらに笑ってしまったのは、学園祭の帰りにはMと大学のすぐ近くの美味しい割烹に歩いて寄るつもりだったのに、後輩たちが気を利かせて帰りのタクシーを呼んでしまったこと。

柴田:    「さぁ・・・そろそろ帰るね」

学生一同:「本日はどうもありがとうございました! 先生・・・さぁ・・・こちらに・・・タクシーを門の前に待たせてありますので、どうぞ!」

柴田:    「え? タクシー? 私達、今から歩いて近所までいくんだけど…」

学生:   「えっ・・・。 そうでしたか。 す、すいません。僕の早合点です。しっ、失礼しました!」(かなり引きつっている・・・.)

友人M: 「あ・・・いいよ、いいよ。そんな。せっかく呼んでくれたんだから、タクシーで行こうよ。本当にありがとう・・・」


Mはそう言いながら強引に私の袖を引っ張ってタクシーに乗り込みます。門の外では10人以上の学生が一斉に並んでお見送り。(なんだか「極道の妻達」みたい・・・。)


運転手さん:「お客さん。どちらまで?」

柴田:    「あ・・・え・・・と。適当にぐるぐるっと回ってその先の交差点まで」

運転手さん:「はぁ? 適当にまわるって・・・。 その先の交差点ですかぁ?」

       (学生達はまだ門の前で並んで見送っています)

友人M:   「あの・・・いいから、いいから。早く車出して言う通りにして頂戴」

運転手さん:「はぁ・・・ 」


結局、辺りを一回りして校門から目と鼻の先の交差点で降ろしてもらったのですが、さすがに悪いので1000円を払ってお釣りは受け取ってもらう事に。でも全く損をした気分にはならないばかりか、なんだか1000円でこんなに嬉しい気分になった事はありません。「最近の若いもん」も捨てたもんではありませんね。



また先日、後輩たちに誘われて大学の学園祭に顔を出しました。私がタクシーで大学の正門に着くと、大勢の部員がお出迎え。全員で「遠いところをありがとうございます!!」一緒に行った友人Mは「ひょえ!さすが体育会系やねえ・・・」とびっくり。部で出している模擬店に案内してくれて、次々とビールや焼きうどんを出してくれます。(ビールと言っても発泡酒や「第三のビール」であるのは学生らしくてかわいかったですけど・・・。)


友人M:「へぇ・・・これってビールみたいに見えるけど、全然違う味がするんだねぇ」

学生: 「え? もしかして第三のビールは初めてですか? 我々はいつもこれですので、これが普通かと・・・た、大変失礼致しました!」 (かなり恐縮)

友人M:「いや・・・そんな事ないよ。 これはこれで・・・でもやっぱりなんか味が薄いよねぇ」

学生: 「あ・・・普段飲まれているのは、やっぱり、この・・・何というかコクがあって・・・苦みがあって、美味しくて・・・そんなものですよね。 普段、僕らの口には入らないようなものなんでしょうねぇ・・・」(生つばごっくん)


おいおい。あんた江戸時代の丁稚じゃないんだから、普通のビールくらい飲んだことあるでしょ。確かに私の大学は貧乏学生が多かったけど、それもしっかり伝統として受け継がれているようです。



・・・それからしばらくして、もうひとつ嬉しいことがありました。クリニックのみんなでご飯を食べに行った翌朝。のび太君が勢い込んで「先生!!」 ・・・何かな、と思っていると「昨日はご馳走様でした!!」 少し前にクリニックでパーティーをした時、翌朝みんなが「昨日はご馳走様でした」と言ってるのに、のび太君だけが言えなかった事を注意したのを覚えていたようです。のび太君も少しずつ大人になっていけそうですね。


「人生において一番素晴らしい出逢いは、良き上司・良き部下と巡り逢えることである」と言った人がいます。人生で一番長いのは仕事をしている時間ですから、それは本当に素晴らしい出逢いと言えると思います。私もクリニックでのスタッフとの出逢いを大切にし、「良き上司・良き部下と巡り逢った」と言えるようになりたいと思います。そしてもちろん、皆様との出逢いも大切にしていきたいと思っています!



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