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第60回 (2008年03月)「蕎麦屋なのにカラオケ♪」



こんにちは、異人館通クリニックの柴田です。 今年の冬は本当に寒かったですねえ。皆様はいかがお過ごしでしょうか。 私はあまりの寒さに先月に引き続いておうちにこもり、どこにも出ない生活が続いてしまいました。その影響もあって、先月号で紹介した「YouTube」で懐メロ映像鑑賞にはまっていました。懐メロといっても、もっぱら70年代後半から80年代にかけてのポップスなのですが、皆さんはCCBってバンドをご存知ですか?(例によって、また古い!)「ロマンティックが止まらない」で80年代に一世を風靡したが、「一発屋」としては久保田早紀・城みちる・円広志と並んで「一発屋四天王」とも呼ばれ、「あの人は今・・」なんかでもよく追跡取材されているポップ・ロック・バンドです。(一発屋四天王については、この他にKANや、クリスタルキングなどがはいるべき・・・と言う方々もいますが、この四天王は私の独断です。あしからず。)



そのCCBの唯一にしてかなりの名曲「ロマンティックが止まらない」の替え歌を素人さんが披露している番組をみつけてしまいました。またその替え歌がめちゃくちゃいいところをついている! サラリーマン隠し芸コンテスト・・・というキャプションがあるので、恐らくこの出演者の人はどこかのサラリーマンで、宴会の時に披露したネタが面白く、誰かがテレビ局に応募したところ大ウケした・・と言ったところでしょう。

○「多角経営がとまらない・・・」

インターネットにつながる方は上記のURLにアクセスしてみてください。つながらない方のために替え歌の歌詞を転記します。

(これって一応、替え歌とは言え著作権の問題があるかしら??)

♪ 蕎麦屋なのにカラオケ・・・ Fu,Fu さりげなく 鴨南蛮をはずした Fu,Fu 

メニューから 麺まずく 出しは濃い(ホンダシ)蕎麦屋なのに 店の 売りは酎ハイ 酎ハイ 酎ハイ・・・ 

誰か ダメ親父止めて バカ親父 店が 店が苦しくなる・・・ 

苦し 紛れに ピザに 手を出す普通の 蕎麦屋には Fu 戻れない・・・



一緒に見ていた友人Mと、お腹を抱えて笑ってしまいました。またその素人さんが、CCBの振り真似と歌もうまい! Mも会社を経営しているので、 「これって、いいとこついてるよねえ! そうそう、経営って手を広げすぎるとダメなんだよなあ。そしてそれに気づく経営者は少ない・・・。いったい何屋か分からない店っていっぱいあるもんねえ。サラリーマンの方がこの本質に気づいている人が多いのかもね。経営者にとっては耳の痛い話だから無意識に避けてしまっているのかもしれないねぇ。」 私も開業してもうすぐ6年になりますが、これには笑いながらも考えさせられてしまいました。開業当初はピーリングとイオン導入・プラセンタ点滴くらいしかなかったメニューがボトックス・ヒアルロン酸・レチノイン酸療法・・・と増えていき、メソリフト・メソセラピー・ダイエットまで・・・最近は「メニューが多すぎて何をしたらいいか判らない」と患者様に言われることもあり、メソカクテル・エセリスカクテル・スーパーメソリフト・・・となると「種類が多すぎて覚えられない」と言われる方も。「これはちょっとメニューを絞った方がいいかなあ・・・・・」と思いました。



・・・とここで話は変わりますが・・ 友人Mと毎年恒例で行っていたふぐ屋「H」に、Mが先に行ってしまったのです。 (このHは神戸のふぐ屋さんにあっては間違いなくベストチョイスのお店です)

友人M:「こないだHに行っちゃったよ」

柴田 :「あ、いいなぁ! 今年は私まだなのに! 先越された!」

友人M:「ごめんごめん、家族にせがまれてさ。でも、Hのふぐって美味しいけど、お腹いっぱいになりすぎるよね。あれがちょっといやなんだなあ。雑炊まで食べたらお腹いっぱいで動けなくなっちゃうでしょ・・・。体に良くないよねえ。それだったら、N屋でてっさと焼きふぐ、白子の塩焼だけ頼んであとはお鮨をつまむ・・・って方がいいなあ。そっちの方がよさそうじゃない?」

柴田 :「ふーん・・・。私はHの迫力のある白子の塩焼きがいいけどなあ・・・」

友人M:「まぁ、君の白子へのこだわりは尋常じゃないからねぇ・・・(^^♪でも、鍋と雑炊よりお鮨の方がいいでしょ?」



うーん。そう言われればそうかな・・・。いつも鍋のふぐを減らして焼きふぐに回してもらうし、鍋はなくてもいいかも・・・しかしあの白子の塩焼きは捨てがたい・・・と思いながらも健康オタクのMに押し切られ、N屋でふぐとお鮨のコラボレーションを試してみることに。N屋に問い合わせると前もって言っておけばふぐも用意してくれるとのことで、いざN屋へ!

移転してきれいになったN屋のカウンターに座り、ワクワクしながらふぐを待ちます。N屋は大将が大の魚好きでお鮨がめちゃ美味しい上に値段は安く、カウンター席禁煙、シャンパン持込可、しかも持ち込み料なし、という向かうところ敵なしの店。過去に何度も通信で紹介しましたが、あまりにも良いお店でどうしてもお店の名前を出す気になれないところなのです。(それでも患者様の数名の方には、「先生、N屋ってあそこの事でしょ?」って見事に当てられています。やっぱり知ってる人は知ってるようで・・)前に食べた時は鱧もめちゃ美味しかったし、ふぐも期待大。さて、お待ちかねの皮とてっさが出てきました。一切れ、二切れ・・・と口にすると・・・ん? それなりに美味しいのだけど、ふぐ屋Hと比べると、今のところHに軍配。N屋は今まで、どこの魚にも負けなかったのだけど・・・。そして大好きな白子の塩焼きが。・・・うーん、これは残念ながらふぐ屋Hの圧勝です。白子の大きさ、こくのある味など、すべてが全然違いました。がっくり・・・。友人Mも同じような評価。Mは私ほど白子好きではないので、がっくり度は少ないようでしたが・・・。次は焼きふぐです。これもHの圧勝。ボリューム、味ともに全然違います。「やっぱりふぐはふぐ屋かなあ・・・」と二人でため息・・・。今までN屋は「行きたい外食」の中でダントツの王座を譲らなかったのですが、ふぐに関してだけはHの圧勝です。



・・・しかし! ふぐからお鮨になったとたん、N屋は実力発揮! 今までのふぐの不評を吹き飛ばすほどの旨さ! 「旨い、旨い」と二人で連発です。そうして我々の間では、「やっぱり餅は餅屋だ」という結論に達しました。専門家にはかなわない、ということですね。あのすばらしいN屋といえども、ふぐでは専門店のHには負けてしまうのです。しかし、いざお鮨となると、N屋の本領発揮! やはり一つのことを専門的に研究し、追求しているところは、他のところとは深さが違います。 ・・・ここであのCCBの替え歌「多角経営が止まらない」を思い出してしまいます。 (かなり無理のある話の展開ですが・・それはお許しを。) 本業を追求することなく手を広げ、本業を深めることを忘れてしまうと、絶対に店は発展しません。発展するどころか、つぶれてしまいます。しかし本業を極めるところは、たとえ地味でも長続きするものです。レストランでも、本当に大事なのは味だと思うのですが、それを忘れて雰囲気やサービスを重視するところは数多くあり、そういうところは派手でも長続きしないように思います。



かの有名なフランスの三ツ星レストランのシェフ、ジョエル・ロブションも、三ツ星レストランを閉めてしまってから、日本の鮨屋の大将と出会って感激し、「自分の料理を最高に美味しく食べてもらうには鮨屋のカウンターしかない!」とカウンターフレンチを開いたというのは有名な話です。レストランの真髄はサービスでも雰囲気でもなく味、「美味しいものを提供する」というところにある、そのためにはフロアのサービスを切り捨てたカウンターが一番であるというのが彼の持論です。ただ、彼のラトリエ・ロブションはカウンタースタイルで味もいいのだけど、雰囲気やサービスも結構いいですね。極稀にそれらを両立している店がありますが、これはかなり例外だと思いますし、一部の天才をもってしなければ、なかなかできない芸当だと思います。



私は、クリニックの真髄は「治療効果の追求」であり、そのための「研究」であると思っています。レストランの「料理の味の追求」とそのための「研究」と同じようなものですよね。クリニックをオープンした6年前は、まだ普通の病院ではサービスが皆無というところが多かったので、「医療もサービス業である」というコンセプトを掲げましたが、最近ではどこでもサービス、サービス。特に美容系では、ラグジュアリーな内装や家具、心地よいゴージャスなサービスを重視し、治療や研究はどこへ行ったの?という感じで、何かどうしても違和感を感じてしまうのです。患者様はなんとなく「セレブな気持ちになれる」ということで一定の満足はあるのかもしれませんが、私が追求する「安全で確実な治療効果を出す」という路線とは違うように思うのです。何か、蕎麦屋が究極のおいしい蕎麦を追求せずに安易にカラオケをおいて集客しようとしているように思えてしまい、私の当初の思いとの違いに、ある種のフラストレーションを感じていました。


ここで皆様に重大な発表をしたいと思います。現在の異人館通クリニックは6年間に渡り皆様に支えられて運営を行ってきました。しかし、最初のコンセプトであった「日常生活にやすらぎを与える」という役割は現在は終えたと思っています。そこで今年中に一旦異人館通クリニックは閉鎖し、新たに三宮近辺で「治療と研究」を行うための専門医院として再出発したいと考えています。私の中ではこれは移転ではなく、一度現在のクリニックを閉鎖し、新たなコンセプトの元で別のクリニックを再度オープンさせるという気持ちなのです。



私は医者であり研究者であります。よって、私のやるべき事の本質は「安全で確実な効果を出せる治療方法を提供すること」だと認識しています。その事に意識を集中し、治療方法の開発に専念すべきだと思っています。次のクリニックではラグジュアリーな内装やエステのようなサービスはないと思います。(別に今、それがある訳ではないのですが、何か中途半端な状態になってしまっていると思っています。)その代わり、「安全で確実な治療」についてはどこにも負けない日本一のクリニックにするという目標を掲げて、まい進したいと思うのです。蕎麦屋であれば、日本一の蕎麦屋になる事を追求するのが本質であるはずですし、単純に初心に立ち返りたいと思ったのです。・・・とは言え、今まで研究を重ねてきた6年間の蓄積とまったく違う事をするつもりではありません。美容の世界にあって本質を追求するクリニックでありたいと思うだけです。また、最低限場所は三宮の近辺に移転し、より便利な環境で皆様に支えていただきたいと考えています。 来月号のクリニック通信では具体的にどんな計画を考えているかについて書きたいと思います。実際の計画実施はまだもう少し先になると思いますが、どうかご期待ください。



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