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第55回 (2007年10月) 「PRP(多血小板血漿)注入体験記」



こんにちは!異人館通クリニックの柴田です。今年は本当にいつまでも暑かったですねえ。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はこの1ヶ月、珍しく暑さに負けず、東京方面に4回もでかけてしまいました。(グルメではなく研究のためです。念のため・・・。)そのほとんどが皆様待望のPRP関連で、1回は実際にPRPを注入してもらいました。PRPとは、先月号のクリニック通信でも触れましたが、多血小板血漿=血小板を多く含んだ血漿のことです。PRP注入法とは、血小板が止血の際に放出する成長因子の働きを利用して組織の再生を促進する治療法で、10年ほど前から歯科領域で使われていましたが、1年ほど前からシワやたるみの治療にも使われ出したものです。最近マスコミでも話題の再生医療の一つで、自己治癒力を利用する理にかなった治療法です。


PRPを注入してもらったのは、東京のSクリニックのN先生です。N先生は、昨年メソボトックスの研究をしている時に紹介してもらい、ボトックスの特殊な打ち方やプラセンタ顔面注射などの講習をしていただいた先生です。麻酔科の先生ですが美容医療もされていて、いろいろと研究されているので時々情報交換をしていたのですが、最近PRP注入用の器具を買って試されているというお話を聞いて、注入をお願いしたのです。



せっかく東京まで行くのだから・・・と、(やはり)いつものようにグルメ計画を。旬のレストラン情報は例のK氏に聞けば間違いないので、とりあえず電話します。

柴田「もしもし、Kさんですか? 5日に東京に行くんですが、どこか美味しいお店ありますか?」

K氏「まあ先生、東京にいらっしゃるんですか? 何が食べたいですか?」

柴田「イタリアンがいいかなあ・・・」

K氏「それなら、Aフレスカにしましょう! 今東京で一番予約が取りにくいんですが、聞いてみますね!(もう行く気満々)事務長さんもご一緒ですか?」

柴田「いえ、今回はPRPの勉強会を兼ねた食事会をしようと・・・ 」

K氏「あら、そうなんですか。どちらの先生と?」

柴田「SクリニックのN先生と、KクリニックのM先生と集まる予定なんですが」

K氏「KクリニックのM先生ですか? ・・・・カチャカチャ・・・・」

(このカチャカチャと言う音は恐らくM先生の事は御存じなかったようでホームページをチェックしているようです・・・普段はメールも殆どされないK氏ですが、ホームページはかなり活用しているみたい。多分、殆どレストラン情報の検索だと思いますが・・・(^^♪)

K氏「まあ、M先生ってイケメンじゃないですか!これは私の出る幕はありませんねえ!それじゃあ、   Aフレスカは翌日のお昼にでもいかがですか?」



うーん、出る幕って・・・?? 結局Aフレスカは夜しかやってなくてしかも5日はいっぱいだったらしく、姉妹店のKヴィニタリアというお店を取ってもらって、翌日K氏とはRホンダに行くことになりました。Rホンダは「人参のムース北海道産生うに添え」や「ハマグリのフランフォアグラのせトリュフ風味」が美味しそう! それらは前もって予約が要るそうなので予約しちゃいました。

グルメ計画も立てた事だし、いざ東京へ。東京駅から乗ったタクシーは東京にしては珍しく態度が悪く(あ・・・神戸では普通ですけど・・・MKさん以外は)むかついたけど、無事Sクリニックに到着。受付から事務長までこなし、mixiでもコミュニティを立ち上げてQ&Aを一手に引き受けるN先生の右腕、野沢うさぎさんがにこやかに出迎えて下さいました。

「こんにちは! 柴田先生! ホームページいつも拝見しています」

・・・ホームページの更新には結構時間を割いているので、これは嬉しいお言葉です。



先日の美容皮膚科学会でPRP注入法を発表されていたM先生のお話では、顔全体で60箇所も針を刺すということだったので、自作の良く効く麻酔クリームを持って行きました。比較のために顔の右半分に注入をお願いしましたが、学会で会ったPRPのキットを販売している会社の部長さんが片方の手の甲にPRPを注入していて、すごくすべすべになっていたので、右手にも注入してもらうことに。

N先生は「頬は麻酔は要りませんよ」と言われるので手と額だけ麻酔し、採血してPRPを作製するところを見せていただきました。血液を試験管に入れて遠心分離機(脱水機みたいにぐるぐる回る機械です)にかけると、血液の成分(赤血球や血小板など)が底から重い順に並びます。試験管には特殊な分離剤が入っていて、設定された条件で遠心分離すると分離剤の上に血小板が集まり、効率良くPRPが作れるそうです。



ふーん、これが1本何万円もする試験管か・・・。現在のシワに対するPRP療法の難点は何と言ってもキットが高いことです。分離剤が特許を取っているそうですが、試験管が1本何万円もしていては、モニター試験もままなりません。

材料費が高いので治療費も高くなり、現在の相場は1回の注射が30万円前後。もう少し安くできないものか? ちゃんと考えればその試験管を使わなくてもPRPは作製できそうですが・・・。試験管に入っている抗凝固剤(血液が固まらないようにする薬剤)もACD-Aという血球を保存しやすいものですが、N先生曰くACD-A入りの試験管がなかなかないそうです。

そうしていよいよ注入です。N先生は特殊な打ち方をされるので、頬は時々ちくっとするくらいでそれ程痛くありませんでした。手と額はちょっと痛かったけど・・・。 注入直後はだいぶ腫れましたがすぐに引いてきました。2‐3分してからちょっと痛くなってきましたが、10分ほどでさほど気にならなくなり、触ると痛いけどまあたいしたことないや、という感じ。

注入後、K氏に取ってもらった人気のレストラン、Kヴィニタリアに出陣! 実はこのグルメ計画を立ててから、「しまった! 半分腫れた顔で食事会に出る羽目に・・・」と後悔したのですが、レストランに向かう頃にはそれほど腫れていなかったので一安心。



レストランで落ち合ったM先生は

「あれ?腫れてませんね。注入したんでしょ?」

N先生が注入方法を説明されるとM先生も

「ほう。それはいいかもしれませんね」

食事のオーダーも忘れて早速PRP談義が始まります。M先生は美容外科医にしては珍しく研究熱心で、PRPについてもいろいろと研究されています。私は興味を持つと次々疑問が湧く方なので、学会のポスター討論でもM先生を質問責めにしてしまいました。そういう場で突っ込んだ質問をすると答えられない人もいるのですが、M先生は流暢に答えられ、研究が面白くてしょうがない様子でいろいろ話してくださるので、研究好きの私は同志を見つけた気がして嬉しくなってしまいました。 


食事会でもついつい質問してしまう私にM先生は

「いやあ、しかし先生も探究心旺盛ですねえ。ポスター討論でも、あんなに突っ込んだ質問をされたのは初めてですよ」「僕と同じ匂いがする・・・って思いましたよ」

N先生もかなり研究熱心なので、マニアックな3人のPRP談義は盛り上がりまくり、せっかくの料理が冷めてしまうほどでした。 とても有意義な食事会でしたが、残念だったのは料理が噂ほどでもなかったことと、お2人ともお酒が全然飲めないこと。私だけちょっと飲みましたが、めっちゃしらふでした。まあ、いつものK氏との食事会が勉強会と言いながら飲みすぎなんですけどね。



翌日はK氏とのランチグルメと思っていたのですが、あいにく台風が東京を直撃!朝K氏に電話すると 「先生、これはやばいですよ。新幹線が止まると帰れなくなってしまいますから、 早めにお帰りになった方が・・・。特注の料理は私が行って食べておきますから」

帰れなくなるとさすがに困るので、レストランは泣く泣くK氏にまかせ、午前中に帰ってきました。うにと人参のムース、めっちゃ残念だったなあ・・・。


興味津々のPRP注入後の経過ですが・・・腫れは2‐3日で引きましたが、4‐5日は触ると結構痛かった。そして翌日から5日ほど皮がポロポロむけました。それがおさまると手の甲は結構すべすべに。顔はまだ変化が良く判りませんが、若干手触りがいいような・・・。これからが楽しみです。

そしてPRP注入の研究は着々と進んでいます。この1ヶ月はこれにかかりきりでした。ACD-A入りの試験管も見つかったし、効率よくPRPを作製する方法も何種類か分かったので、実際に作製したPRPの血小板濃度を測定してみようと思っています。(「そこまでする先生はいないでしょうねえ」とK氏には言われましたが・・・)

作製方法が確立し、効果が確認できたらまた報告しますね。お楽しみに!



さて、東京から帰ってからK氏に電話すると、例のRホンダはフロアの男性がとても親切で、特注の料理を一人分頼んでたのにもかかわらず「大丈夫ですよ」と言われてキャンセルできたそうです。

K氏「一人でも食いに行きますよ、って言ったんですが・・気の毒だと思われたようで」

いいレストランだなあ、と思ってお詫びがてら次の出張の際の予約を入れようと電話しました。ところが今度はシェフの奥さんらしい年配の女性が出てきて、

「まあ、あの時のお客様ですか。もう料理はお作りしてたんですよね。追求はしませんでしたけれども・・・。高級な食材ですのよ。今後はこのような事があると困りますので、 特別料理じゃなくてその日あるものでお願いしませんと」

ありゃあ・・・。いやみたっぷりでめっちゃ感じ悪~い。

K氏の話と全然ちゃうやん!

「一人でも食べに行く」って言ってるのにいいですよ、と言われたはずなのに・・・。

特注の料理頼んでてキャンセルしたのはそりゃあ申し訳ないけど。だからこそ、お詫びの電話入れて次予約しようとしてるのに。それに台風は私のせいとちゃう・・・とブツブツ。

Rホンダのシェフは奥さんがこんな応対をしてるのを知ってるのだろうか?? 

なんだかシェフがかわいそうになってきました。いくら一生懸命美味しい料理を作ってても、サービスがこれじゃあお客さんはつきませんよねえ。



そのまますぐにK氏に電話すると・・・

「ははは・・・! そりゃあ二度と行くか! って思いますよねえ。私も次行こうかと思ってたけどやめときます」

神戸のフレンチレストランでもその話を愚痴ると、ソムリエ君が声をひそめて・・・「だいたいマダムって渋くてお客さんを逃がしちゃうんですよねえ。うちでもよく困ってます」そうかぁ、マダムってそんなものなのか。

そう言えば、私の好きなお鮨屋さんも大将は「美味しい!!」っておだてると ポンポンといいネタ出してくれて上機嫌なんだけど、何が出ても同じ値段なので 奥さんから後で怒られているんだろうなぁ・・・って思います。予約の時も奥さんはめちゃ怖い感じするし・・・。損して得取れ、とかないんだなぁ。

相手にいい事をしてると、それはいつか自分に返ってくるものです。逆だと自分が損をする。やはり相手の立場に立たなければ・・・と勉強になった一幕でした。

「人の振り見て我振り直せ」と言いますから、私も気をつけなければ・・・と反省する今日この頃です。


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