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第38回 (2006年05月)「保険診療と自費治療 その2」




こんにちは。異人館通クリニックの柴田です。


新緑が眩しい季節となりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 日本にいながら外国のようにテラスで食事をしたり、オープンカーをオープンにできるのはこの季節と秋口くらいですよね。短いこのいい季節を存分に楽しみましょう。

でもこういう季節は外が気持ちいいから外を歩こうとか走ろうとか、スポーツや山歩きを楽しもうと思っても、元気でなくてはできませんよね。健康って大切だなあってつくづく思う今日この頃です。 このように外が気持ちがいいので、テラスで食事を・・と思う事自体が健康な証拠なんですよね。以前整形外科医として勤務していた時には寝たきり入院をされているような患者さんも多く、外に出るなんて事すらできない方も現実には沢山おられます。 今回は久しぶりにまじめに・・?・・健康の事を考えてみたいと思います。いきなり暗い話で恐縮ですが、皆様は死亡原因のワースト3をご存知ですか?毎年日本では約100万人の方がなくなるのですが、第一位は悪性新生物(つまりガン)、第二位は心疾患、第三位は脳疾患となっています。これらの3つで死亡原因の6割を占めます。事故による死亡が4%程度に対して自殺は約3%(毎年3万人も自殺している事になります)、老衰はわずかに2%強。残念ながら私たちは老衰によって静かに人生を終える事ができるチャンスは殆どない・・・と言う事になります。人間としては生きる余力があるにも関わらず、一部の臓器の疾患によって亡くなる事が殆どなのです。だから癌の患者さんは人間として生きる機能は衰えていないのに、一部の臓器が壊死していくので、大変な痛みや苦しみを感じながら死んでしまう事になってしまうのです。痛みを感じる神経や脳がピンピンしていれば当然ですね。・・・なんだかいきなり怖い話ですみません。



いきなり暗い話で恐縮ですが、皆様は死亡原因のワースト3をご存知ですか?毎年日本では約100万人の方がなくなるのですが、第一位は悪性新生物(つまりガン)、第二位は心疾患、第三位は脳疾患となっています。これらの3つで死亡原因の6割を占めます。事故による死亡が4%程度に対して自殺は約3%(毎年3万人も自殺している事になります)、老衰はわずかに2%強。残念ながら私たちは老衰によって静かに人生を終える事ができるチャンスは殆どない・・・と言う事になります。人間としては生きる余力があるにも関わらず、一部の臓器の疾患によって亡くなる事が殆どなのです。だから癌の患者さんは人間として生きる機能は衰えていないのに、一部の臓器が壊死していくので、大変な痛みや苦しみを感じながら死んでしまう事になってしまうのです。痛みを感じる神経や脳がピンピンしていれば当然ですね。・・・なんだかいきなり怖い話ですみません。



上記の死亡原因ワースト3は生活習慣に密接に結びついているので、生活習慣病という事もできます。私も医者の片割れとして、ここは皆さんに知っておいて頂きたい事だと思っています。例えば喫煙習慣は肺癌と大きく相関関係があります。また太りすぎや塩分の取りすぎは心筋梗塞や脳梗塞に大きな関係があります。逆の見方をすれば統計的に、きちんとした生活習慣をする事で、死からは免れませんが、少なくとも「苦しみながら死ぬ」事からは遠ざかる事ができるということです。


生きている間は生き生きと健康でいて、死ぬときは静かにコトリ・・と死ぬ・・というまさに理想的な人生は生活習慣によって左右されるという事を統計が示している事になります。しかも私が思うに生活習慣病を予防するには4つの事を実行するだけでよいと考えています。


1、禁煙

2、バランスのよい食生活 (特に太り過ぎない)

3、規則正しい生活

4、適度な運動


あまりにも教科書的なお話なのですが、この4つを実行できればまず、普通は健康な体を維持できると思います。それだけ、現代の生活は誘惑が多く、こんな簡単な事を実施できないのですね。(ああ、私も誘惑にはついつい負けております・・・反省)

特に喫煙については日本ではタバコ産業の力が強すぎるのか、規制がかなり甘いのですが、アメリカはもとよりアジアの国々と比べても日本はタバコ天国のように思います。 逆にヨーロッパを旅行した時はヨーロッパ諸国はタバコについての規制は想像していたよりはるかに甘いと思いました。しかし、同時にマリファナやコカインなどにも同様に寛容?な国が多く、国が規制するのではなく個人の自由に依存している・・と言う事なんでしょうね。(普通に公園のベンチの下に注射器が落ちていたりしてちょっと怖いですが・・)



癌が怖い病気だと言う事は皆様ご存知だと思いますが、もっとも生存率の高い癌は何だかご存知でしょうか? それは乳癌です。乳癌が確認されて5年以内の生存率は8割を超えます。つまり乳癌は発見が早ければ殆どの場合は助かると言う事です。

逆にもっとも深刻な癌は肺癌です。肺癌は発見から5年以内の生存率は3割を下回ります。つまり、肺癌になると5年以内に大半の方が死んでしまうと言う事です。これでもタバコを吸う方は自己責任でどうぞ・・・と言う事ですね。私も特に個人の自由で全くかまわないと思うのですが、二次喫煙のリスクを考えて周りの方への配慮はお願いしたいと思います。さすがに隣の家でアスベストの解体工事をしていたら文句を言うと思うのですが、隣で喫煙する事については何も言えないと言う事はおかしな事ではないか?・・と思っています。(お寿司屋さんって殆どカウンターじゃないですかぁ。大好きなお寿司を食べている間は隣の人にタバコを我慢して欲しいと言う思いをどうやって伝えようか・・と知恵を捻ってみました・・(^○^)・・カウンターのお店では皆様、禁煙にご協力を!・・)



次に問題なのは「食べ過ぎ、飲みすぎによる太り過ぎと、それにともなう運動不足の連鎖」でしょうね。こちらは完全に現代病と言えると思います。誘惑の多い現代にはこれを克服する手段は残念ながらストイックな生活の実施を心がけるより他はなさそうです。

又、健康についてはこれ以外にも「背骨や姿勢の歪み」を指摘する人もいます。背骨が歪んでいると上記の4つを守っていても脊柱から全身に出る各種の神経に圧迫が起こり、体に異変が起こる。しかも内臓などの疾患について気づかなくなり、脳から疾患を治す指令がでなくなってしまう・・という理屈です。この事を回避するために背骨をまっすぐに矯正しようと言うのがカイロプラクティクスであったり各種の整体などになります。又、最近はヨガやウオーキングが人気のようですが、ダイエット(ボディメイクキング)と健康を両方手に入れることができるという事ですね。私の知り合いは腰痛の防止策としてヨガとストレッチを始めたのですが、先日会社の健康診断で身長が3cmも伸びていた・・とびっくりしていました。背筋や骨盤をまっすぐにする事で40歳にもなる人でも身長が3cmも伸びると言う事は現代人の生活はかなり問題があるともいえますし、ヨガって凄いんだな・・とも思います。 もう皆様もお気づきだと思いますが、「健康」って維持するものであって作り出すものではないんですね。 病気になってから直すよりは、健康な体を維持する方が何倍も簡単だし、費用も比べ物にならないくらい安くつくのです。



しかし、日本では社会保険医療制度もあって予防医療はなかなか実施できません。簡単に言ってしまうと予防では保険が適用できない為「儲からない」のでやりたい医者が少ない・・と言うのが実態だと思います。以前のクリニック通信でも書きましたが、残念ながら現在の日本の社会保険制度は、病気になった人の治療を目的としており、病気を予防するとか現在の健康を維持する、よりよい生活を行うなどの目的では適用できないのです。もちろん日本の社会保険制度は、誰もが病気になってもある程度の治療は保証されるといういい面もありますが、その安心感からか日本人には健康を維持しようという意識や努力が欠けているような気もするのです。病気に対する危機感を社会保険制度が邪魔しているような気さえしてしまいます。しかもこの社会保険制度というものはいろいろな縛りがあり、本当に必要な治療が十分にできるかどうかは疑問です。また、同じ目的に対しては自費治療と保険診療を同時にはできず、その場合はすべて自費になってしまうという混合診療の問題もあります。



最近考える所があって、今まで保険診療していたホクロの手術を、自費治療に切り替えることにしました。ホクロというのは稀に悪性であることがあり、良性か悪性かは切除して病理検査という顕微鏡で組織を見て調べる検査をしなければ正確にはわからないので、心配なので調べて欲しいということであれば保険が適用できます。保険を適用すると患者様の負担は非常に少なくなるので、今までは保険が使えるものはできるだけ使いたいと思っていました。


ところが、何年か診療しているうちに、保険診療というものは非常に縛りが強く、不自由なものであるということが解ってきたのです。例えば、ホクロの手術でも、当院にわざわざ来られる患者様はほとんどが傷を綺麗に治したいという理由で来られます。ここなら綺麗に切って、綺麗に縫ってくれそうだから綺麗に治りそうだと・・・。

もちろん、手術の腕には自信がありますし、綺麗に治そうという意欲も誰にも負けていないつもりです。しかし手術の傷が綺麗に治るかどうかというのは、手術の腕だけで100%決まるものではないのです。もちろん手術の手技が大きくそれを左右することは確かですが、その他にも患者様の体質であったり、傷が化膿するかしないかでも傷の治り方は大きく変わってきます。

傷が化膿すると治りが遅くなり、傷跡も残りやすいので、化膿しないようにというのは非常に気を使います。傷跡が残りやすい体質というのは変えようがないので仕方のない部分ではありますが、傷が化膿しないようにする方法はある程度はあります。細菌を繁殖しにくくするために、もちろん手術器械の滅菌や傷の消毒は念入りにしますが、他にも化膿止めの抗生物質の点滴や薬を処方したり、患者様にも傷を塗らしたり汗をかかないように注意し、また患者様の血行や免疫力を高めることも大切なので、血行や免疫力の落ちること-タバコや疲労、睡眠不足などは避けていただきます。



ところが保険診療では、使える抗生物質の量が決まっていて、多くは使えません。使いたくても使えない・・・という状況にもしばしば遭遇し、ハラハラしなくてはいけないのです。また、血行を良くしたり免疫力を高めるにはビタミンCやプラセンタが効果があり、実際、美容や疲労回復目的でプラセンタ点滴をしておられる患者様はホクロの手術をしても傷が化膿しにくく、すごく綺麗に治ることを何回も経験してきました。しかしプラセンタ点滴は混合診療の問題があり、保険で手術をした場合は傷の治療の名目では使えないのです。傷が化膿しかけても抗生物質もこれ以上使えない、こんな時プラセンタ点滴ができたらなあ、と思うこともしばしば。傷の状態が悪い時はプラセンタ点滴を勧めたこともありましたが、それも社会保険庁に注意されてできなくなってしまいました。正直な所、手術希望の患者様が「美白もしたいのでプラセンタ点滴もして下さい」と言われるとほっとし、安心して手術ができるのです。


そういうことを繰り返しているうち、患者様のために保険診療できるものはなるべく保険診療で・・・という考えがはたして正しいのだろうか、と思い始めました。保険診療をしているためにいろいろな事に縛られて、本当に患者様のためになる治療ができていないのではないかと思い始めたのです。これはクリニックを開いた時から貫いているはずの、本当に患者様に喜んでもらえる治療をしようというポリシーに反しています。それはやはり変えなければ・・・と思いました。



そういう思いから、ホクロ手術は自費治療とし、綺麗に治すために必要な治療は何にも縛られずに自由にできるようにしようと思ったのです。もちろん、自費治療にするほうが患者様の満足度を高くしないといけないので保険診療をするよりずっと大変です。しかし本当に患者様に喜んでいただくためには、それにあえて挑戦しようと思ったのでした。保険診療は自費治療よりもずっと楽だということは以前のクリニック通信にも書きましたが、皆様にご支持をいただける限りは自分の路線でがんばりたいと思いますので、これからも何卒宜しくお願い致します。


今回は珍しく?まじめな話で終始しましたが、つまるところ 「死ぬまで美味しいものを食べる事ができる人生でいたい!」って事なんですよね。そして、生きている間は健康で生き生きと、美しくありたい・・・って当たり前の願いを実践したいだけなんです。 皆様も是非、ご一緒に美味しいものを食べて実践しましょう。 (おや・・それって不摂生なんでは?? )



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