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第32回 (2005年11月)「箱入り娘のダイエット・・メソセラピーその後」



こんにちは。 異人館通クリニックの柴田です。

秋も深まり、急に寒くなってきましたね。

皆様はいかがお過ごしでしょうか?

季節の移り変わりは本当に速いと最近つくづく思ってしまいます。

そういえばメソセラピーによる部分痩せの成果を耳にして研究を始めたのは春のことでした…。


あれから夏が過ぎ、もう秋が来てしまいました。いち早くうわさを聞きつけた患者様から「先生、まだ?まだ?」とせかされて焦ってはいるのですが、こればかりはホームピーリング剤に負けず劣らず難関です。特に痩身関係は一定の効果を確認するのに時間がかかると言うのも課題です。新薬の実験などにマウスがよく使われるのは寿命が短く、何世代にも渡る影響などを観察しやすいからです。 もし動物実験に海がめなど寿命の長い動物を使っていると世代が替わる前に実験する医者が先にあの世に旅立ってしまいます。ダイエットもはっきりとした効果を確認するには数ヶ月かかり、その結果をみて方法を変えてみようとすれば、その効果を確認するのにさらに数ヶ月・・。又、新しい治療法なので、他のクリニックでもまだ手探りの状態のようです。



実はメソセラピー(日本では脂肪溶解注射のことをさすことが多い)の噂は「注射するだけでそこが痩せる」と1年程前に聞いていたのですが、「そんなうまい話があるのかな」くらいにしか思っていませんでした。しかし今年になって痩身指導に積極的に取り組むようになり、ダイエットモニターを募集した頃からクリニックのスタッフたちもダイエットに熱心になって 「先生、脂肪溶解注射は入れないんですか?」と 盛んに聞かれるようになりました。 ちょうどその頃、学会に参加した時に「実際に脂肪溶解注射を受けて効いた!」と言う方たちのお話を聞く機会があったのです。クリニックに帰ってスタッフに「脂肪溶解注射のモニターになりたい?」と聞くと若い子達はいっせいに「なりたーい!!」なにしろ痩身指導モニター募集の頃はスタッフのほぼ全員がダイエットしていたというダイエットブーム。脂肪溶解注射にも興味津々です。モニターもいることだし・・・と早速資料を集めにかかりましたが、なかなかいい文献がありません。大阪で美容外科をしている後輩に聞いてみると、


柴田: 「脂肪溶解注射ってしてる?」

後輩: 「ああ、してますよ。」

柴田: 「どう?」

後輩: 「うーん、効く人には効くけど、すごく効くのは10人に1人位かなあ。1/3くらいの人は2-3回で効くけど、あとはあんまり効きませんねえ」

柴田: 「えーっ、そんなに効けへんのにやってんの?」

後輩: 「今流行ですからねえ。値段が安かったら患者さんは来るし・・・」



うーん、彼とはポリシーが違うなあ、と思いながらとりあえず必要な情報を聞いて注射薬の入手先を教えてもらう。そこから早速資料を取り寄せましたが、これがまたお粗末。簡単な薬の混ぜ方とQ&A、タイの美容外科医が書いた説明書の訳だけで、訳は日本語が変で意味がつながっていない文だらけ。海外の薬品なので入手先は輸入業者で、そこに聞いてもいいかげんなものです。


柴田: 「資料はこれだけなんですか?作用機序(薬の効き方の理論)とかの文献はないの?」

業者: 「それだけしかないんですよ・・・。まだどうして効くかって解ってないみたいですよ。とりあえず効くから使っちゃおう、って先生が多いもんで・・・。」

柴田: 「えーっ。そんなんでいいの?どれくらいのクリニックで使ってるんですか?それに実際どれくらい効いてるのかなあ?」

業者: 「関西だけでも何十件と出してますよ。1-2週間に1回打って、1-2回で効くのは1/3くらいで1/3は4回ぐらいで効いて、1/3は全く効かないって話ですけどねえ。目の下にはあまり効かないらしいですよ」


うーん、ほんとかな。後輩の言ってることと全然違うやん。これは自分で調べるしかない、とあらゆるコネを使って文献検索です。ところがせっかくいい文献を見つけて取り寄せたらロシア語だったり、ブラジル語だったり・・・。薬剤の作用機序を調べるだけでも一苦労。生化学の得意なK氏の力も借りて、なんとか主に使われる薬剤の作用機序は解りましたが、それに混ぜる薬剤や注射の仕方などは文献によっても少しずつ違い、どの方法が一番良いかは確立されていないようです。



「これは実際に試してみるしかないな・・・」ということになりましたが、方法も効果もまちまちという情報なので、モニター募集をするわけにもいかず、まずはクリニックのスタッフや知り合いに声をかけてみました。 ここで登場したのがいつも新しい治療法を取り入れる時にはモニターになってくれる関連会社のNさん。彼女は高校生の息子がいるとは思えないくらい若く見える金髪にへそピアス。趣味はコスプレだとか・・・。かなり強烈なキャラですが、なんでも「やる、やる!」と積極的だし、痛がらないし恐がらない、また何をしても良く効いて副作用も出ない体質、ときているのでクリニックとしては助かります。


脂肪溶解注射の主になる薬剤はAというものですが、赤くなったり腫れたりすることが多いので、それを緩和する目的や脂肪溶解の効果を上げる目的でいろいろな薬剤混合して使うようです。まずは日本で一番多く使われているという組み合わせで試してみました。

薬剤Aに、脂肪の代謝を促進するBという薬剤を混ぜて注射します。もちろん麻酔も混ぜるのですがこれがかなり痛い!足に打った人は「痛たたた・・・」と15分ほどは歩けないくらい。二の腕に打ったNさんだけが平気な顔。「ちょっと痛いけど、大丈夫ですよー」個人差なのか、部位による差なのか??目の下とお腹は痛かったと言ってたから部位による差かな?でも痛がり方が他の人とは違うけど・・・。きっと個人差もあるのでしょう。でもすごく痛がってた人でも15分ほど冷やしていると痛みは消えました。皆少し赤くなって腫れましたが、これもNさんだけがほとんどなんともない。



2週間後、測定と写真撮影。太ももやお尻に打った人たちは1cmほどサイズダウンしたけど、見た目にはちょっと減ったかな?という程度であまり目立った変化はありません。ところがNさんだけはお腹は皆と同じくらいの変化でしたが、二の腕と目の下の脂肪が目に見えて減り、大喜び。「減りましたよー! 腕も目の下もスッキリ!目の下なんかハリまで出て大満足!」とご機嫌です。何でもよう効く人やなあ、と感心してしまいました。


痛いのはどうもBという薬剤を混ぜるせいだという情報を得たので、今度は腕や足の反対側にAだけを注射してみました。すると今度はあまり痛くなく、皆に好評。Nさんなんか全く痛がりません。「こっちの方がいいかな?」と思いましたが、Aだけだと痛くない代わりにあとの腫れが強く、すごく腫れた人もいました。これは顔には向かないなと思いましたが、Nさんは目の下もほとんど腫れず、たるみがさらになくなって大満足。本当に個人差というものはいろいろです。


そうしているうちに海外で使われているCという薬剤の情報を入手しました。これは9割以上の人に効き、特に目の下やあごのたるみによく効くとか。早速試してみようということになり、Cだけの注射と、CとAを混ぜた物で試してみました。 すると、これは凄いです。 本当によく効きました。 今まであまり効かないな・・・という感じだった人にも効き、大げさではなく凹んだ感じの人までいました。特にCとAを混ぜた物がよく効くようです。



皆もう打つ所がなくなってしまい、もう少しモニターの人数も欲しかったので、大阪から事務長の友人であるYさんと、そのお姉さんのHさんに来てもらう事にしました。 このYさんという人がまたかなり濃いキャラです。恐らく、皆さんも待合で一緒になったら

「ああ・・おそらくクリニック通信のYさんはこの人だろう・・」と気づくはずです。事務長の数少ない変わった友人の中でもYさんはピカイチ。Hさんはおとなしいのに、よくまあ姉妹でこれだけ違うなぁ・・。

Yさんは超アクティブでおもしろく、クリニックに来てもずっとギャグを飛ばしながら喋りっぱなしです。基本的にオーバーアクションで、俳優なみに顔の表情を変える事ができる上に、写真撮影中もずっと喋っているので「ちょっと黙ってて下さい」と止めなければ写真が撮れません。おまけにYさんは自由奔放で、夫も息子もいるのに年に何ヶ月も海外へ行ってしまったかと思うと、アイルランドでカバンの工場をやったり、イタリアで家を買ってみたり。この前も電話があって

「イタリアでさぁ、美味しいワインがあるから、200本仕入れたのよぉ。少しわけてあげようか?ホント美味しいから別に売れなくても自分で飲めばいいし・・」ってワイン何本飲む気やねん!?


先ほど登場したNさんも事務長関係の人ですが、どちらも奔放な親に似てないまじめな息子を持っているそうで・・・。事務長曰く、「だいたい親がぶっ飛んでる方が子供はしっかりするもんや。ぐれてる暇なんかないし、将来自分は絶対に自立しなあかんと自覚するしねぇ。 逆に箱入り娘とかで厳しく育てられた人に限って大人になると開放されて羽ばたいて飛んでいってしまう人が多いから、なんでも人生良し悪しやなぁ」・・って。



それはさておき・・二人に目の下、二の腕、お腹に試してもらうと、Hさんはかなり体重もあったので少しダイエットしてもらいましたが、Yさんはダイエットもしていないのにみるみる細くなり(濃いキャラの人のほうが良く効くのかなあ)、お腹は3回打って3週間で4cm減り、その後も痩せ続けて6週間でなんと9cmも痩せてぺっちゃんこになってしまいました。Hさんもお腹は7cm減、二人とも二の腕は3cm減って目の下もスッキリ。 Hさんはあごと頬にも打つと、1週間は腫れたらしいのですがその後はシュっと小顔に!

「これは使える!」そして不思議なことに2人とも、下腹部に注射しているだけなのにウェストや背中、お尻や太ももまで痩せてしまったのです。今まではいていたGパンがぶかぶかになって大喜び。


ところがそのうちYさんが「なあなあ、お腹にちょっと色ついてきてんけど・・・」と言い出しました。「スタッフの子らもついてるで」と言われて久しぶりにスタッフの足を見てみると、確かに注射の跡が少し黒っぽくなっています。よく見ると色素沈着というよりは皮膚の色が抜けているのです。それと同時に最後に写真を撮った時よりずっと足が細くなっているのに気付きました。何より太ももの中央までしか上がらなかった制服のパンツが、しゅっと足の付け根まで上がるではありませんか!それも一人ではありません。



慌てて他の人にも聞くと、皆最後の注射をして1ヶ月ほどしてから徐々に皮膚の色が抜けてきて、その後に体重は減ってないのに足がすごく細くなったのに気づいたとか。

不思議なことに膝の上や内側、太ももの外側など1箇所に打っただけで、太もも全体が3-4cm、ふくらはぎまで2-3cm減ってズボンのサイズが合わなくなったと皆口をそろえて言うのです。左右を比べると、ほとんどの人が薬剤Cを多く使った方が痩せています。ところがCを使った方は皮膚の色が抜けている人も多いのです。Nさんのようにすっごく痩せて皮膚の色もなんともないつわものもいましたが・・・。


とにかく今回のモニター試験では数は少ないものの、2回以上注射をした人は全員部分痩せの効果がありました。しかも注射をした部分だけでなく、周りも痩せるというのは新しい発見です。Cという薬剤を使うと部分痩せの効果は大きいけれど皮膚の色が抜けることがあるという問題は残っていますが、皮膚の色は抜けたとしても文献的には数ヶ月で戻るようです。

顔では一人も皮膚の色は変わっていませんし、海外で目の下やあごにCを使っている先生も、そういう経験は一人もないということでした。顔は体よりも血行が良いせいかもしれませんが・・・。体では皮膚の色が変わるのが困るという人は薬剤Aを、色が変わる可能性があっても外には出さないとか目立たない部分だから痩せる方を取るという人はCを使うという方法も良いかもしれません。


ということでまだまだ研究の余地はありますが、メソセラピーによる部分痩せの効果はかなりあるということが解ったので、今月は皆様にモニターをお願いすることにしました。興味のある方はぜひクリニックまでお問い合わせ下さいね。


そうそう、Yさんは大家の箱入り娘でその昔は門限5時の厳しい家庭に育ったそうです。 (やっぱりそれで飛びたってしまったのか・・?もう元には戻らないだろうなぁ。)

私は池田の一般家庭に生まれて、ゆったり、まったりで育ったのでこうやって普通の人生を歩む事ができたのでしょう。平和な人生でよかったなぁ・・と思っていると、事務長曰く

「その点はそうやけど、先生も注意せなあかんよ。池田出身で大阪育ちやもんね。体の中に ‘おばはん’が発症する時限爆弾を抱えている訳やし。いつスイッチが入って’難波のおばはん’になるかわからへんからねぇ。」

(事務長は九州出身で最初の関西に来た時にあった’難波のおばはん’に仰天したらしい。そのインパクトで今も恐怖心を抱いているようです。)


柴田:「そんな事あれへんよ。私は優雅なマダムを目指すんやから・・」 とは言ったものの、自分の中に流れる大阪人の血をちょっと感じる今日このごろ。 もしかすると人間って誰しも本当の自分を自分の奥の方に閉じ込めて生きているのかもしれませんね・・・(^○^)




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