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第255回「真実はいつも残酷…」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。緑萌える季節ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はと言えば…先月号でお話した「神の手」こと整形外科の後輩H君を何とか昔のシュッとしたイケメンに若返えらせようと奮闘中です。まず先月、1回目の治療ではクマの凹んだところにリジュランカクテルを注入しました。先月号にも書きましたがH君のクマは膨らみの下が凹んでいるタイプなので、凹んだところにリジュランカクテルを注入した場合効き過ぎて膨らんでしまうと全体に膨らんだ感じになってしまうので、最初はFGF(線維芽細胞増殖因子:皮膚のコラーゲンやヒアルロン酸を増やして凹みを浅くする薬剤)をごく少なめにしました。リジュランカクテルの説明書にも書いているのですが、施術直後は少し腫れるので人によってはクマの凹みがすごく良くなったように見えますが、腫れが引くと元に戻ったように思ってガッカリする方もおられるので(実際にはそこから徐々に改善して最終的には注入前より凹みは浅くなるのですが)「直後の腫れは必ず引いて元に戻ったように見えるので、施術直後の状態が続くと思わないように」といつも説明しています。H君にもそこは説明したのですが、やはり施術直後は「わぁ、こんなにクマなくなるんや…!」と感動していたので、再度一旦腫れは引いて元に戻ったように見えるから…と念を押しました。そこはさすがH君、ちゃんと理解してくれたようでしたが、3日後には「クマの方ですが、少し跡はあるものの明らかに凹みは改善してて、目立ちにくくなってると思います!もう少し戻ってくるのでしょうが、先生、すごいです!」というメールをくれました。


2週間後のWEB診察でもH君は「クマましになりましたよ! zoomやったらまだちょっと目立ちますけど、鏡で見たら明らかに良くなってるんですよ! 前はもっとベコ~ッ!!てなって、めちゃくちゃ目立ってたんで…ありがとうございます、先生!」と喜んでくれたんですがzoomではちょっと良くなった程度に見えたので、実際に診察してから次の治療を考える事にしました。H君は額のシワも気になるらしく「子供らに猿、猿って言われるんですよ💦…酷い奴らや😢」と嘆いていたのでボトックスもしようと思ったんですが、ボトックスは効き過ぎると眉がつったり瞼が重くなったりする事があるので最初は少なめに注入し、2週間後の再診時に足りなければ追加するところが、H君はあまりに忙しいので2週間空けて2回来れる日がなかなか見つかりません。なんせH君は鹿児島の最南端の病院に呼ばれて最先端のOPをしに行ったり、4社のメーカーの講師をしているので新しい器械の開発の打ち合わせが東京であったり、全国からOPの見学に来る先生が後を絶たなかったりで超忙しいらしいんです。

H君は額のシワも結構重症で寄せなくてもシワがくっきり残っているので、ボトックスで残っているシワが伸びなければリジュランカクテルを追加した方が良いという話をしたら、ボトックスをする日が確保できないとなると「先生、リジュランカクテルだけでも先にできませんか?」とリジュランカクテルがかなりお気に召したようなんですが、額は筋力が強いのでボトックスをしないとせっかくリジュランカクテルをしても、筋肉でぎゅうぎゅうシワを寄せているとコラーゲンが増えにくいので、やっぱりリジュランカクテルはボトックスの後の方が良いと説明すると「分かりました…😢」と言いつつ、ちょっぴり残念そうでした(^_^;)。


実際の診察の日には、確かにzoomで見るよりクマの凹みはかなり良くなっていました。特に上から光が当たった時にできる影が改善してたんですがクマの膨らみはまだ少し目立っていたので、膨らみを減らす新輪郭注射をする事にしました。新輪郭注射はわりと早く終わったので、その日は法令線にもリジュランカクテルをする事に。新輪郭注射は施術直後はかなり腫れるんですが引くのは早いので、法令線のリジュランカクテルが終わる頃には新輪郭注射の腫れは引いてきていました。そして翌日にはH君は「昨日の注射の跡は、分からないくらいです。いい感じにクマもほうれい線も改善しているようです。本当にありがとうございます!」というメールをくれました。ボトックスをする日もやっと6月末に見つかり、若返り作戦は少しずつですが順調に進んでいます(^^)。


さてダイエットの方ですが…最初クマにリジュランカクテルをした日から「本気でダイエットします!!」という事だったので、食事や飲酒・運動・体重・腹囲などをつける生活習慣記録表(メニュー表)をメールに添付し、糖質制限の目安(100g以内/日)や血糖値を上げにくい低GI食品から食べる事、体重は毎日、腹囲は週1回は測る事、などダイエットのコツを送るとH君は「いろいろ細かくご説明いただき、誠にありがとうございます。ダイエット、頑張ってみます!」という返信をくれました。ところが2週間後のWEB診察では「学会が連続やったんで、メニュー表まだつけれてないんですよ…💦。ご飯は減らしたり、お菓子はめちゃくちゃ我慢してるんですけど…」との事だったので「ざっくりでいいですよ。会食とか、お菓子とかポテチとか…」と言うと「あ、それでいいんですか? 中華コースとか…(と、ここで中華が出てくるところがH君らしいが…(^-^;) それやったらつけれます! でもつけるってなったらほんまに変なもん食べれないですよね(^-^;。それが良いのかもしれませんけど…二次会でラーメンとか。学会でも誘われたけど、かたくなに拒否しました! ラーメンはやめよって…。ラーメンダメですよね💦…でもラーメン旨いですよね、飲んだ後の…。最高って思うやつはダメなんですよね、たいがい。ちょっと我慢します。今我慢せんと絶対一生このままやと思うんで…ちゅうか、悪化する一方なんで。先生とお会いさせてもらったんをきっかけにちょっと変えます。ありがとうございます、先生。ちゃんとつけて送りますので、また宜しくお願いします。先生、ご都合悪くなったら遠慮なくおっしゃってください。ありがとうございます、先生。来週また宜しくお願いします」(…と、またまためちゃ低姿勢。)


まぁダイエットに関しては私も沢山の患者様を診てきましたが、本当に難しいですね…(^_^;)。それに比べると美容系の治療の方が本当にずっと簡単だなと思います。こう言うと語弊があるのですが、美容系の治療は私の知識と手技を向上させる事でかなりの部分をカバーできる…言ってしまえば自分が努力をすれば良いという世界ですが、ダイエットは私が努力するのではなく、患者様に努力してもらわねばならない…というのが根本的に違う訳です。それからダイエットに関してはほとんどの方が過去の経験や友達からのアドバイスなど色々な情報がすでにお腹一杯インプットされていますし、その状態であっても現実には痩せていない…という事実を考えると、本当にどれほど難しいチャレンジなのか…という感じです。巷には簡単にダイエットは成功できるという話が溢れていますが、私の経験で言えば「そんな事は100%ありません!」です。なぜかと言うと、人間は食べ物が周りに豊富にある環境にあって自分の意志で食べる量を減らす事ができない…もしくは非常に強い意志がないとできないからです。まぁこれは麻薬中毒になった人が自分の意志で中毒を脱却する事が難しいのと全く同じです。そして一番の問題は「ダイエットには食べる量を制限しなくても他の方法で痩せられると信じている人が多い事」だと思っています。残念ながらこれも私の経験では食べる量を減らす以外でダイエットに成功した例はありません…(残念でした?? 病的な太りすぎや糖尿病の治療などのケースでは、薬を使って体から強制的に糖分を排出させる手法は有効なんですが、副作用との兼ね合いがあり誰にでもお勧めできるものではありません。)


これに関して一つ、非常に面白い本をご紹介します。タイトルは「運動しても痩せないのはなぜか:代謝の最新科学が示す 『それでも運動すべき理由』」というもので、人類学者のハーマン・ポンツァー氏が書いた本です。彼は非常にユニークな研究をしており、2001年にアフリカのサバンナで暮らす原住民であるハッザ族を調査しています。彼らは現代文明とは切り離された生活をしており、農耕も一切行わない完全な狩猟採集を行っている民族です。人間の石器時代にほぼ近い生活スタイルですね。なので、狩猟を行う男たちは一日に24kmも移動する事があるそうです。まぁ…そりゃそうですよね。相手の動物だって必死で生きているので簡単には捕まらないでしょうし。まぁ、このハッザ族がどのような毎日を過ごしているかは、皆さんの周りに絶対そんな人はいなくても想像はつきますよね?? …で、ここからが問題です。皆さんの周りにいるオフィスワークをしているお友達の男性が1日に消費するカロリーと、このサバンナで狩猟を行って1日に24kmも移動する男性の消費カロリーって、どちらが多いと思います? 「そんなん、決まってんじゃん! 私だって狩猟採集民族の生活すれば、この”ぽよよん”…ってしたお腹なんか一発で凹むはずよ!」って思われました?


ところがどっこい…ポンツァー氏が科学的にきちんとした方法で計測したのですが、両者の消費カロリーは大差ないという事が分かったのです。ええ!! 嘘でしょ!! って思いませんか? でも事実はいつも残酷です。衝撃的ですが、これが事実なんです。

なぜかと言うと人間の代謝は柔軟になっていて、どこかで沢山カロリーを消費すると基礎代謝などを含めた別の代謝で消費するカロリーが落ちて、1日の平均消費カロリーって大体同じくらいになるように調整されてしまうのです。もしこの事実が知られると、〇〇ザップなんてお手軽ジムがタケノコのようにできていますが、どこもが一気に経営危機に陥ってしまうかも…(^_^;)。もし今体重を真剣に落としたいと思われている方が、心機一転アフリカのサバンナに行って狩猟採集生活を始めたとしても(そんな事考える人はいないと思いますが)、今と食べている物や量が同じだと全く痩せない…って事になるんですね。(ただかなり端折った解説なので、詳しく知りたい方は自分で本書を読んでみてください。)…という事で、現時点で太り過ぎている方が痩せようとするのは「麻薬中毒から自分の意志で立ち直る事ができる人」でなければ厳しい世界が待ち受けているんです。


話は変わって1週間後のWEB診察。H君はしっかりメニュー表をつけてきました。しかも朝は有機野菜のジュース、お昼の定食はご飯抜き、お弁当はご飯を半分にしたり一口にしたり、鮨屋で会食の翌日は夕食を抜いたり…とめちゃ優秀で、体重も2.4kg減っていました! ポテチも登場せず、お菓子はイチゴ大福1回だけ。「もらいもんであんまり美味しそうやったんで、嫁が朝やったらええんちゃうって持って来て…」という事だったので、「逆ですよ。すきっ腹に甘いもの食べると血糖値が急激に上がってインシュリンが出過ぎて太るので、甘いものは食後がいいんですよ」というと、「え~っ!!ほんまですか?? 今までめっちゃ悪い事してましたわ~! OP後のすきっ腹にお菓子パクパクって食べるの最悪ですよね💦…やりまくってましたわ~」と…(^-^;。その次の週が2回目の施術日だったんですが、順調に減って2週間でマイナス3.4kg。お菓子は1回も登場していませんでした。さすが、すごい意志の強さです。なにしろH君は、海外にもOPに呼ばれるのに留学経験がないため英語がいまいち得意でなかったからと、3年間毎日外人と話すと決めて成し遂げたという意志の強さの持ち主です。その3年間はとにかく毎日、移動の車の中でも欠かさず外人と話す事を続けたそうなので、やると決めたらダイエットもできる人なんですね。今まで瘦身指導をした中でも、こんなにアドバイスをしっかり実行できた人はなかなかいません。ただ、今までが忙しすぎて最悪の食べ方をしていたので、糖質依存に陥っていたようです。OPの合間に、すきっ腹にお菓子をパクパク食べてしまい、夜も会食でない日は溜まった仕事で病院を出るのが遅くなるのでなかなか食事ができず、もらいもののお菓子を食べてしまっていた…との事。そしてお腹がすくとボ~っとして、お菓子を食べるとスッキリしていたという、完全に糖質依存の症状でした。医師にありがちな食事事情ですがそのままではやばい感じだったので、ぜひこの機会に糖質依存を離脱して欲しいものです。


でもまぁ…さすがですね。やっぱり仕事がバリバリできる人はメンタルも強いし、意志も強いのでやると決めるとやっちゃうんもんですね。でも逆に言えば、意志が弱い人は一人で頑張らずに、誰かの助けに頼ったり指導を受けたり、グループでレッスン受けたりする事で成功している人が沢山いるのもまた事実です。もし自分がダイエットについて意志が弱いと自覚している場合は、指導を受けながら行う事をお勧めします。この医師であり、メンタル強つよのH君ですら指導を受けているくらいなんだしね…(^_^)。つまり彼は、指導を受けないと難しいという自覚があるのかもしれませんね。そうであれば、それはやはり医師として経験を積んで訓練を受けてきた賜物なのかもしれません。ただし指導を受けると言っても、間違っても運動の指導を受けて痩せようとは思わないでくださいね。受けるのであれば、食事の量を減らす方の指導ですよ! ちなみに先に登場した本は副題に「それでも運動すべき理由」がついているように、運動のメリットを否定しているものでは全然ないんです。運動が健康に良い事を否定する専門家は世界中にいないと言ってもいいくらいなんですが、ダイエットに関しては期待するなよ、という事です…(^_^)。H君の後日報告はまた折を見てやっていこうと思いますので、お楽しみに!



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