こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。随分暖かくなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はと言えば…先月号のクリニック通信でお話した全日本医師卓球大会で次期大会会長と対戦する羽目になり、あまりにも衰えを感じたので「こら、ちゃんと練習せなあかん!」と試合の後コーチと練習したら、急に頑張り過ぎたせいか坐骨神経痛が出てしまいました。練習直後は筋肉痛かと思ってたんですが、足の痛みがなかなか引かないなぁと思っていたら、だんだんL4領域(第4腰神経根の支配領域:太腿の外側から足部の内側にかけて)に痛みが限局してきて、足の内側の痺れと腰痛も出てきました。痛みはだんだん酷くなってきて前かがみが痛いので床のものが拾えなくなり、一時はつたい歩き状態に…(^_^;)。「これはやばい!」…こういう症状は、第4腰神経根が椎間板ヘルニア(腰椎の椎体という骨の間の椎間板という軟骨が傷んで後や横に飛び出した状態)などで圧迫された時によく起こります。来週は整形の後輩でこの通信にも何回も登場しているT君の教授就任祝いがあるという時だったので、コロナ禍でずっとできなかった就任祝いがやっとできるのに出席できないと申し訳ないし、なんとか早く改善する方法はないかと整形の脊椎班の後輩数人に相談してみました。(こういう時は自分が整形外科をしていたのは診断がつき易いので便利ですよね。相談できる後輩も沢山いるし。まぁそんな整形外科疾患にならない方がいいには決まっていますが…。)整形外科は脊椎(背骨)・股関節・膝関節・足・手など部位毎に専門分野が分かれており、腰や首など背骨の病気や怪我を専門に担当するグループを脊椎班と呼んでいます。(ちなみに私やよくこの通信に登場するF君は手の外科班です。)
さてその脊椎班の後輩で卓球部の後輩でもあるO君に、まずはメールで相談してみると…「坐骨神経痛との事ですが、K病院のNに一度相談されてはいかがですか? 彼は脊椎に関して診断・手術ともに非常に的確で信頼感抜群です。たびたび患者を紹介して良い結果を得ています」という返事が来ました。K病院のN君は11学年下で、その学年でよく知ってる子もいるんですがN君とはあまり接点がなかったので、取りあえずO君に電話してみました。O君は「あぁ先生、大丈夫でっか?? メールにも書きましたけど、うちの脊椎班で神戸やったらNに相談するんが一番ええと思うんで、行きはるんやったら連絡しますよ」と言ってくれたんですが、いろいろ話しているうちに「そやけど先生、神戸やったらNがええですけど、うちの大学で一番OP(手術)上手いのはHですわ。M病院におるから京都やけど、頸椎の後方固定とか普通3-4時間かかるOPを1時間でしてしまいますからな。脊椎のOPて普通1日1件で精一杯やのに、1日3-4件するらしいでっせ。S(O君と仲のいい脊椎班の後輩)が一回HのOP見学に行って、めちゃくちゃ速いし的確やてビックリしてましたもん。『もうエアドリル(骨に穴を開ける器械)の使い方から全然違うわ!』て感動してましたわ。ヘルニアのOPだけでも1000件以上してるんちゃいますか。最近は細い内視鏡で低侵襲(体に負担をかけない)のOPも開発してるらしいですしな。そらHやったら間違いない。ただあちこちのOPに呼ばれて、海外とかも行くらしいから忙しいですけどな。そやけどええ奴やから、言うたら『いつでも来てください!』言うて診てくれるんちゃいますか?」と。H君は10学年下で、これまた接点がなく話した事もなかったんですが、そんな「神の手」の後輩がいるならぜひ相談してみなくては。最悪OPが必要って事もあるもんね。「T君の就任祝いにH君も来るかな?」と聞くと「そら関連病院の副院長やし、行くんちゃいますか?」との事。これは頑張って就任祝い行かな。OPの上手い下手って本当に天性のもんですからねぇ。たまたまH君がいるM病院で、卓球部の後輩K君が同じ副院長をしていたので(副院長って数人いる病院もあるんですね)電話してみると、K君もH君の事は絶賛。しかし「H先生の外来は凄く混んでるから予約が取れるかどうか…。お願いしたらいけるとは思いますけど」との事。やっぱり人気あるんやね。
このクリニック通信では何度も医者の内輪話を書いているので昔からの患者様にはおなじみの話ですが、外科系の病気で手術をしなければならなくなった時には担当してもらう医者が誰になるか…は、どんな病気になってしまったか…よりある意味重要です。「そりゃ大雑把すぎやろ!」という批判を恐れずに分かりやすさ第一で申し上げると、内科系の病気は薬で治して外科系の病気は手術で治すというのが基本です。勿論、内科系の病気で手術を必要とするケースもありますが、手術そのものは外科が担当します。その意味で病気の原因は内科系でも手術を必要とするとなれば外科系の病気になったと認識してもらっても良いかと思います。そして、薬で治す内科系の病気において、治療に必要な技量の多くは過去の症例検索です。世の中には原因不明の難病などはありますが、統計的に見て普通の皆さんがそのような難病にかかる確率は非常に低いです。医療の歴史は何百年と続いているので、普通の人間がかかりやすい病気・症例・治療方法などはデータベース化されており、基本的にはそれらの蓄積された知識を基に治療方針が決定され、治療薬の知識をプラスして治療がされると言っても良いかと思います。その意味で内科医に求められる技量で一番大きなものは「知識と経験」、簡単に言い換えると「頭の良さ」と言えるのではないでしょうか。(重ねて申し上げますが、分かりやすさを重視しているためかなり大雑把な把握です。)
その点では、内科医は一応大学の医学部を卒業して国家資格を取っているし、その後の研修を重ねて医師になっている訳ですから、一定の信頼をして良いと思います。更に言えば、近年はインターネット上に溢れる情報を患者様自身が調べる事も可能ですので、医者の診断を自分でもネットで比較検討する事も可能です。自分が納得いかない場合はネットで仕入れた知識でも良いので素直にぶつけてみると良いと思います。まともな先生であれば、「そんな素人の聞きかじりを…」というような対応はしないはずです。必ず真摯に受け止めて先生の考えを説明してくれると思いますし、逆にそのような先生を担当医として選ぶようにすれば良いと思います。
一方で外科なんですが、これはそう単純な話ではありません。なぜなら、手術というのは一種の職人技を必要とする世界だからです。一言で言えば、手先が器用な人が知識と経験を持って対応する世界なのです。知識と経験については「頭の良さ」なので内科医と共通ですが、圧倒的な違いは「手先が器用な職人」としての技量です。これはペーパー試験である医師国家試験に合格したからと言って保証されるものではありませんし、医師免許を取る時に実地試験はありません。いわばペーパードライバーとして免許が与えられ、車の運転を実際してみるのはそれからなのです。また一般的に有名な先生が手術が上手いのかと言うと、必ずしもそうとは言い切れません。有名な先生の中には、自分では執刀せずにオブザーバーとして手術に立ち会い、そこから得られる観察結果を論文にまとめて学術的に優れた研究をする事で有名になっている先生もいるのです。なので、有名な先生が自ら執刀するから安心なのか…と言うと、それはそれで微妙なんです。皆様の知り合いの中にも、学生時代に成績はトップクラスなのに「字がめちゃくちゃ汚い人」っていませんでした? 本人は学業と字の綺麗さは関係ないので気にしていないと思いますが、じゃぁその成績トップの人が、仕事に必要だからと言って字を練習して綺麗に書けるようになるのか…というのは、かなり怪しいですよね? 手術の技量も結構それに近いものであって、生まれつきの不器用というのは圧倒的な壁になっている事が多いんです。
そこでこの通信ではおなじみの話になるのですが、同じ病気でも手術を担当される医者によって結果が全く違ってしまう…という事になる可能性がある訳です。しかも、どの先生がどの分野の手術が上手で実績を上げているかというのは、一般の患者様ではほぼ確認する事ができません。医者仲間の間では、学会での発表や病院の同僚の医者から聞き漏れる噂話などで想像がつくのですが、これだけインターネットが普及しても、各医者ごとに手術実績などをまとめて公開している情報サイトはありませんし、病院は絶対そのような情報は公開しません。(おそらく医療事故などがばれて訴訟になるリスクがあるからでしょうね…。)しかし医者も人間なので病気もしますし、時によっては手術が必要な病気にもかかります。その時は上記のような医者同士のネットワークで「誰が手術が上手いのか…」という話が飛び交う訳です。まぁ人間ってどこに行っても噂話は大好きですし、医者のような狭い世界では、一般のサラリーマン社会より逆にこの手の噂話で持ち切り…と言っても過言ではないでしょうね。なので医者仲間の間で「あいつは凄い!」と言われる外科医は手術予約殺到になります。おそらく、皆様が何かの病気で手術をしなければならなくなって、担当の先生は大丈夫かな…と思ったとしても、その先生が所属する病院の関係者に聞いても決して悪い話をされる事はないと思います。(これは当たり前か…(^_^)。)ですから、だれかお医者さんでその先生に手術をしてもらった事があるか…という話は結構良い情報源になるかもしれません。医者が手術するとなれば、必ずこの噂を確認して自分で担当医を選んでいるはずですから…(^_^)。
さてT君の教授就任祝い当日。幸い痛みも少しましになったので、骨盤ベルトを装着してなんとか出席できました。会場の京都のホテルに着くと、事前に状況を話していた教授のT君はじめF君やO君など数人の後輩から「あ、先生。大丈夫ですか??」と声をかけられたので、何人かにH君の事を聞くと、やはりH君の評判は上々です。久しぶりに会った脊椎班の先輩たちにも相談すると「Hに診てもらうんが一番ええんちゃう?」と言われたので、就任祝いは着席の会だったんですが、宴がたけなわになってみんなが席を離れて歓談し始めた頃に、手の外科班で仲のいいR君がH君と同じテーブルだったので、H君を紹介してもらいました。するとH君は海外から呼ばれるほど超忙しいのに、「京都まで来てくれはるんやったら、夕方で良かったらいつでも診ますよ! 先生の都合の良い日をメールしてください!」と言って名刺をくれました。O君の言う通り、ええ人やん!
…と、坐骨神経痛の事ばかりでT君の教授就任祝いはそっちのけみたいになってしまいましたが、教授就任祝いはなかなか盛会でした。出席者は300人以上で、同門会の会員だけでなく同級生の教授や(T君の学年は優秀で、教授が何人もいるんです(^^))病院長や学長、医師会会長や各学会の理事長などのお偉い先生もたくさん出席されていました。(病院長が私の同級生だったり、教授陣の中にも卓球部の後輩がいたりはするのですが…。)
会はオペラの祝歌から始まり、学長や学会理事長・医師会会長などお偉い先生方の祝辞が続いて、さらに先輩や同級生の挨拶が続きます。同級生代表のK君の挨拶が、T君の若い頃の暴露話などで面白かった! T君は生真面目で仕事中は笑う事もあまりなかったらしく、たまにT君が笑うと病棟の看護師さん達が「今日T先生笑ろてはったで!」と大騒ぎになっていたそうな。さらにK君はT君に「今から12時までにこの仕事仕上げるから、俺に話しかけるなよ」と言われたりしたらしい。仕事以外で私なんかと話している時はにこやかに笑っていましたが、仕事中のその真面目さが今につながってるんでしょうねぇ。最後にT君が教授になってからの活動と今後の教室の展望をスライドを使って発表(さながら学会発表のようでしたが、去年の同門会に出席した時、T君と一緒に撮った私の写真も出してくれました!(^^))。その後謝辞を述べていましたが、印象的だったのは出席した人や祝賀会の準備などをしてくれた教室員だけでなく、一緒に出席した奥様の内助の功に対しても謝辞を述べていた事。最後の退出の時は金屏風の前にT君と奥様が並んで全員が一人ずつ挨拶して帰るという、結婚式のような風景でちょっと驚きましたが、会は終始和やかで皆が楽しんで参加している雰囲気でしたし、これだけお祝いしたい人がたくさん集まったのはT君の人望の厚さゆえでしょうね。(前教授のK先生とはえらい違いや…(^_^;)。)
祝賀会から戻って予定を確認し、H君の病院に行けそうな日をH君にメールすると、H君はすぐにMRIの予約を取ってくれました。その日は脊椎のOPが3件もあるのに、その後で診察してくれるそうな。やっぱり持つべきものは律儀な後輩ですねぇ。祝賀会の時は自己紹介もろくにしなかったので、メールで自己紹介と症状経過、何人もの先生にH君の診察を勧められた事などを書くと、
「柴田節子先生侍史 詳細な経過のご連絡、誠にありがとうございます。何人かの先生が小生の診察を勧めてくれたこと、光栄です(笑)。 自分のやりたいことで開業。尊敬します! アンチエイジングには非常に興味がありますので(最近老化とメタボがやばい↓↓↓)、是非いろいろ教えていただけると嬉しいです(笑)。」
という返信が来ました。海外からOPに呼ばれる程の腕なのに、全然驕ったところがなくて驚きました。やっぱりできる人程謙虚なんですね。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉を思い出します…(^^)。
そして診察当日。H君が副院長権限を使ってくれたようで、「受付でHの診察予約と言ってください」と言われたのでそう言うと待つこともなく、レントゲンとMRIを撮ってから診察室へ。レントゲンではL4の前方すべり(第4腰椎が第5腰椎より前方にずれている事)を指摘されました。えーっ! 今まで何回もレントゲン撮ったけど、そんなん指摘された事なかったのに。レントゲンを見ると、確かにL4がL5より椎体の1/4程前方にすべって(ずれて)います。そして前屈ですべりが強くなる、つまり前後屈で不安定性があるという状態です。H君は「でも先生、MRIはそう悪くないですよ。レントゲン見たら結構悪そうやなって思いましたけど…」と。L4のすべり症があるため椎間孔(神経根の出口)が変形しているので、激しい運動をすると神経根に刺激が加わって痛みが出るのだろうという事でしたが、MRIでは神経の圧迫はそう酷くないとの事。「すぐにOPせなあかん程悪くないですよ」と言われてほっとしました。しばらく安静にしてたら痛みも引くと思うので、痛みが引いたらまた卓球してもいいって言われました。良かった~❣(*´▽`*) でも今度こそ、相手の力を利用する達人の卓球に移行せねば。
神経の痛みに効く薬も出してもらって一通り診察が終わると、H君にアンチエイジングの相談をされました。メタボと目の下のたるみ、法令線が気になるそうな。「どんな事してはるんですか? ホームページ見たら修正中でしたけど…」と聞かれたので(ホームページずっと修正中ですいません(^_^;)「得意なんはシワとたるみを改善する注射♪」とリジュランカクテルや新輪郭注射の話をすると興味津々。最近は男性でもアンチエイジングへの興味はうなぎのぼりですよねぇ…本当に(^_^)。「えーっ、クマが良くなるんですか?! でも高いんでしょ?いくらぐらいするんですか…?」価格を伝えると「結構するんですね…」と少しションボリした感じ。(自分で言うのもなんですが、結構良心価格のつもりなんですけどね…(^^)。でも初めて興味を持った方は、比較検討もできる訳じゃないから仕方がないか…。)それでも注射したそうだったので、翌日御礼のメールに「神戸まで来てもらえるのなら、昨日のお礼にクマを改善する注射をさせていただきますよ❣(*´▽`*)」と書くと「⇑めちゃめちゃ嬉しいです! 是非ともお願いいたします。神戸に伺います。夜は何時頃までされてますか?土曜日もありですか? ご教示いただけると幸いです」という興味深々、アゲアゲの返事が来て、出張帰りにリジュランカクテルをしてあげる事になりました。やっぱり世の中持ちつ持たれつ。H君はその日も九州までOPに呼ばれた帰りのようです。
ネットやAIがこれだけ普及しても、人づての噂話とか人からもたらされる情報が、まだまだ有益な事が多いんだなぁと改めて思い知らされた次第です。私のクリニックも患者様や同業者の口コミで良き評価を得られるように頑張らねばと思います。皆様今後とも、宜しくお願い致します。