
こんにちは。異人館通りクリニックの柴田です。
少し暖かくなり、春の到来を感じるようになりましたね。 皆様はいかがお過ごしでしょうか? 季節はずれのインフルエンザがはやるようなこともありますので、十分お気をつけください。
少し前ですが、久しぶりに中学の同窓会のようなものがあり、行って来ました。同窓会といっても大きな集まりではなく、本当のこじんまりとした仲間うちの集まりです。ただ、本当に久しぶりに会う人たちもいて、いい刺激になりました。
人のことは言えないのですが、男の人たちは見事なまでに「おっさん」になっていて・・・
(^_^.)・・・中学当時のかわいげな面々がこのように変わってしまうのかと思うと、年をとることになんだか一種の「恐れ」を感じてしまいますね。 もっとも同級生が年をとるということは自分も同じだけ年をとっているわけで、楽しさ半分、ため息半分というところでしょうか。

私の年になると大抵の男の人は体に何かの変調があるようで、私が医者だと 知ると 「最近、腰痛がひどくてさぁ」 「今、肝臓の数値が異常に高いと いわれてるんだよ」 「自分でも驚いたけど、糖尿病にかかりかけている みたい」 ・・・とまぁ、あるわあるわ。 殆ど病気自慢大会です。 同窓会に来てまで悩み相談を受けるのはちょっと勘弁して欲しいなぁ…
今回の集まりにはもう一人、医者になったK君が来ていました。 K君は呼吸器系の専門医で大学の医局に所属し、大きな病院に勤務 しています。 あまりお互いによく知らなかった仲ですが、やはり彼も 同じような質問を浴びせられて困っていたので、お互いに「やれやれ・・」 と言うようなことで自然と話をすることになりました。

K君 : 「柴田さんは今、開業しているんだよね?」
柴田 : 「うん」
K君 : 「専門は何?」
柴田 : 「美容系が中心かな」
K君 : 「じゃ、、T須クリニックみたいな?」
柴田 : 「ううん。 私のところでは美容整形手術は行わないの。一言で言うのは難しいけど、美容・生活医療っていって皮膚科治療と体質改善とを融合したような感じかな。 普通の病院と違って病気の人はあんまり来ないけどね・・(^.^)」
K君 : しばらくしばらく沈黙・・・・
「へぇ。気を悪くしないで欲しいけど、 僕らの感覚からすればちょっと邪道かな・・って感じがするけど・・」
私はK君の沈黙と遠まわしな表現の意味がすぐにわかりました。私もかつては大学の医局に所属し、大きな病院を中心に15年以上も勤務医をしていましたので、当時の私達の感覚をよく知っています。簡単に言いますと医局を辞めるだけで、「落ちこぼれ」と思われるような雰囲気がある中で、ましては「美容」方面に転身するのは「金儲け」に走る医道を外れた輩・・・というふうに思われているからです。

柴田: 「K君のいわんとすることはよくわかるよ。でも今の社会保険制度じゃ、病気というまではいかないけど、なんか調子悪い人とかを助ける事はできないでしょ」
K君: 「へぇ。じゃ保険診療はやらないわけ?」
柴田: 「ううん。できる時はするけど、やっぱり自費治療が圧倒的に多いかな」
K君: 「じゃぁ、結構儲かるんだね?」
柴田: 「えぇ!何考えてんの?社会保険の方が儲かるに決まってるじゃない」
…とこんなやりとりが続きます。医者の世界は非常に狭く、価値観も妙に閉ざされています。
私もそうでしたが、勤務医をしているころは同じ勤務医か製薬会社のプロパーさん、せいぜい病院の看護婦さん・事務の人くらいしか付き合いがありません。医局とは学生時代の部活のような雰囲気で「辞める」と言い出すのは「根性なし」と思われてしまい、その後いい噂を聞かなくなります。もっと言えば、大学教授を中心とした一種の徒弟制度でして、ピラミッド型の権力構造なので、そこからの離反者をなくすような制度になっていると言ってもいいと思います。 そのような中からあの「白い巨塔」みたいなドラマが生まれるわけですね。

美容外科というとテレビCMをバンバン行っているチェーンがあったり、以前に巨額脱税で捕まった人がいたりと一般の人のイメージではずいぶんと儲かっていると思われているようです。 これが「自費治療」=「儲かる」と言うイメージにつながっているようですね。 ただ確かに顔の整形手術とか豊胸手術などは一回に100万円以上とるような所もあり、これらの手術を行っている美容外科はかなり利益が上がることは容易に想像できます。 私は決してこれらのことを批判するつもりはありませんが、皆様ご存知の通り異人館通クリニックはでこのような手術は一切行っていませんので、かなり慎ましく運営をさせてもらっております・・・(^_^.)。
ただ、「自費治療」=「儲かる」 の誤解だけは払拭したいという思いがあります。 社会保険(国民健康保険)治療はご存知の通り、治療費の7割以上を国が補助してくれます。皆様にとっても経済的に負担が少なくなる制度です。 よって、多くの患者様は社会保険が使えるのであれば、使って欲しいと願って おられるでしょうし、私もできる限りそうしたいと思います。 誤解を恐れずに言えば、病院の経営だけを考えると保険診療のみをすることが 一番簡単でリスクのない方法なのです。

ビジネスを行っている方は容易に想像がつくと思いますが、売り上げの7割を誰かが補填してくれるというような環境がもしあれば、いかに楽な経営であるかお分かりいただけるはずです。
又、社会保険に定められた診療を行う限り、よっぽどの事がなければ、患者様が死んでしまうような事態になったとしても医者が責任を問われるような事はまず起こりません。(なぜならば、社会保険診療規定にはどのような病気にはどのような治療を行ってよいかがこと細かく規定されており、それを行う限りにおいては国のお墨付きをもらっている事と同然だからです。)
そういう意味では自費治療はリスクが多く(ヘタをすると訴えられる)、経済的には割りが合わない治療方法であることが多いのです。保険診療をしていれば患者様は自己負担額が3割以下なので比較的高額な医療でも気軽に受けられますし、医療機関に入る額は患者様負担の3倍以上な訳ですからね。

それに比べて自費治療では、保険の全額負担以上の価格にすれば儲かる訳ですが、そこまで高い価格はつけにくいですし、あまり高額になると患者様が集まりません。おまけに全額自己負担ですから、高額でも患者様が納得できる高いレベルの治療を提供しなければならない訳です。それだけの自信がなければ、自費治療はできません。よって、豊胸手術のような非常に利益率が高いものを除いては多くの開業医は自費治療を「割りの合わないもの」と考えているはずです。皆様のご近所の病院でプラセンタとかビオチンの治療を行っていないのはその為なのです。
そのような状況の中で異人館通クリニックではなぜ自費治療を多く取り入れているかと言いますと、それは開業当初のコンセプトを守るためです。 通常の病院は「病気になった人」を治療するところです。
しかし、当クリニックは
1、 健康な人がそもそも病気にならない予防的治療を実践する
2、 病気と認定されることはないが、疲労・肩こり・腰痛など日常生活に支障があるものを取り除き、よりよい生活を実践したい
3、 「美しく生きたい」という願いをかなえたい
というような目標のもとに開業を決意しました。

正直に申し上げて一旦病気になった人を完治させることよりも、健康な人の健康を維持するほうがずっと簡単で、社会的コストもずいぶんと低いと思います。近年、国家予算の4分の1以上が医療費といわれます。社会保険の財源がパンクし、その制度そのもの大幅な改革が必要とされています。 つまり、一旦病気になってしまうとそれを完治もしくは改善させるには莫大な費用がかかるわけです。現実にアメリカなどでは日本のような社会保険制度はなく、民間医療保険なので、一旦病気をして手術をすると大きな借金をかかえてしまい、自己破産するケースがかなりあるそうです。ですから、欧米は病気予防にとても気を使っています。
しかし残念ながら現在の日本の社会保険制度は、病気になった人の治療を目的としており、病気を予防するとか現在の健康を維持する、よりよい生活を行うなどの目的では適用できないのです。でも本当は、病気になってから悪戦苦闘するより、病気になるのを防ぐ方がずっと大切だと思いませんか?

私も当クリニックを開業する時には周囲の人々には殆ど反対されました。 大学の医局はただでさえ人が少ないので、離反者を出さないために 「手術の腕がもったいない」などと散々引き止められましたが、それ以外にも 自費治療を多く取り入れた新しい分野のクリニックを開くなどと言うと、 皆口をそろえて反対しました。
これから高齢化社会を迎え、生活習慣病の人はますます増えていき、一旦 そのような病気になった人は簡単には治癒しない為、必ずリピートします。 よって、それらの人々を保険診療で診ている限り、病院経営は安泰だからです。
ただ、どうしてもこの方法は私の「人生の価値観」とは違うと思ったのです。こうすれば病気や老化を防げると解っていながら、医師として目を瞑るわけにはいきません。いくら制度にのっとれば楽とはいえ、悪くなってから医療費を無駄遣いするよりは、制度にとらわれずに自分の知識や経験をもっといい方向に生かしたいと思ったのです。

例えば、先月から取り入れている花粉症対策としてのビオチン療法は非常に多くの皆様から、症状が改善されたとのご連絡を頂き、感謝のお言葉を頂き、誠にありがたい次第です。 ただ、これほど効果が確実にでるものがどうして保険が使えないのか・・との質問もいただきます。 これは私も正直に申し上げてなぜだかわかりません。保険の適応か適応外かは、細かい所は社会保険事務所などの偉いお役人の一存で決まってしまうので、以前保険が利いていたのに利かなくなったりして問い合わせをしても、「私共では解りかねますので・・・」と返答されるのが常なのです。ただ、一ついえるのは厚生労働省の価値観(もしくは医師会かも・・)と現実の皆さんの価値観がずれているため・・・という事になると思います。
(昨今のニュースを見ていても役所と民間の価値観は違うのが当たり前・・と言う気がしないでもないですが。)

実際にはこのように確実な効果が出せるのに、保険適用がないために「怪しげな民間治療」と思われているものが世の中には沢山あります。 もちろん、本当に眉唾なものもありますが、制度上の問題で保険が使えないので自費治療になってしまう、というものも多数あります。プラセンタもその一つですね。
自費治療だから効かない…のではなく、自費治療と言う高価なものでも需要があるくらいなので、もしそれが保険適用されれば他の診療をすべて凌駕してしまうパワーを持っているかもしれません。
(そういえば、私が今まで頂いた日本酒でとっても美味しい!…と思ったのは例外なく二級酒だったのですが、これも制度上の問題でしょうか??)
K君: 「柴田さんは日本医師会に入っているでしょう?」
柴田: 「ううん。 入っていないよ。」
K君: 「どうして? 開業する時はみんな入るんじゃなかった?」
柴田: 「そんな事ないよ。 私の場合は入りたくても入れないしね。」
K君: 「どうして?」
柴田: 「日曜日に診療しているし、自費治療が多いので、適格ではないみたい。」
K君: 「へぇ。日曜日も診療しているんだ。 何もそこまでしなくても……」

K君の「何もそこまでしなくても・・・」という言葉の意味も理解できたので、ため息とともにここで会話は終わりました。 飲食店を経営されている方の多くは土日はお仕事だと思います。 私の感覚が間違っていなければ、殆どの方は「好きで人の休みの時に働いているんじゃないよ。休みの日が一番お客さんが多いから・・・」というのが正直な思いではないでしょうか? (・・私も日曜日はお休みしたい!!・・って思ってしまいますから・・ (^_^;))
やはり、長いものに巻かれて生きた方が楽なんでしょうけど、そこから 飛び出して理想を追うのも一つの人生かな・・・って思います。 皆様にご支持をいただける限りは自分の路線でがんばりたいと思いますので、これからも何卒、ご支援いただけますようお願い申し上げます。