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第248回「世代を超えて…」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。急に寒くなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。新型コロナが5類になって約半年。寒くなるとインフルエンザとの同時感染も心配され、医療機関ではまだまだ油断できない体制ですが、社会では徐々に日常が戻りつつありますよね。私の母校の大学でも、今年は4年ぶりに卓球部の新歓コンパが行われ、コロナ前まで毎年11月か12月に行われていた6回生の追い出しコンパも開催できそうです。コロナ前に2回生だった学年があっという間に6回生。3年も部活動がほぼできない状態で可哀そうでしたが、卒業までになんとか大会やコンパが復活して良かったです。実は私も新型コロナが流行り出した2020年の春頃、足の指が少し赤紫色になって「コロナの指先か??」と焦った事がありました。心配し過ぎだったようで程なく治ったんですが、それをきっかけに(気が早いと言われると思いますが)遺言を作っておこうという気になり、卓球部にも後輩たちのために少しばかり寄付をしようと考えました。しかしよく考えると遺言で寄付しても学生たちの喜ぶ顔も見られないし、どうせなら生きてる間に寄付した方がいいんじゃない? って思ったんです。それならよく知っている今の6回生が卒業するまでにしようと思い、最初は「柴田基金」を作って、大会に入賞したら賞金を出そうと考えました。循環器内科の教授をしている4学年下のM君はじめ、仲の良かった同年代の後輩たちに相談すると「いいですねぇ!モチベーション上がりますよ!」とみんな賛同してくれたので、新歓コンパの前のOB戦の時に、6回生のF君に「ここだけの話やけど」と計画を話すと大喜び。新歓コンパで計画を発表して、追い出しコンパで表彰式をする計画をM君達と練ってたんですが、卓球部の部長をしている9学年下のN君に話すと、何事にも慎重なN君には「学生に現金を渡すのはどうか…って言われるんじゃないですかねぇ…」としり込みされてしまいました。



私の母校では部活動の部長は教授がする事になっています。そして今は卓球部出身の教授が5人もいるんですよね。その中でN君は一番年下なので先輩教授陣にお伺いを立てたところ(教授の中でも上下関係はあるようです)「やっぱり学生に賞金はダメでしょう」と言う人もいたようで…。それを聞いた学生たちはガッカリ。整形の後輩F君にその話をすると「なんで賞金がダメなんですか? 教授はやっぱり頭硬いですねぇ」と言っていましたが…。仕方がないので学生に賞金以外の希望を聞いたら、「コーチをつけて欲しい」と言うので、以前時々卓球を教えてもらっていた神戸のコーチから京都のコーチに連絡を取ってもらって話を進めてたんですが…またもやN君が「まだコロナが落ち着いてないので、外部からコーチに来てもらうのは大学の許可が下りそうにない」と…(^_^;)。それなら、と「卓球場が狭くて暑い」という話が出ていたので、広い所に移転できないか? クーラーを寄付できないか?と検討してみたのですが、聞くところによると大学の建て替えが何年か先にあるらしく、体育館などを使う他の部は一旦活動を休止しないといけないそうで、今の卓球場を死守するのが精いっぱいで移転どころではないようです。そしてクーラーは、電気代が上がって大学全体の電気代だけで何億の赤字が出るらしく、村役場みたいに「電気を消しましょう」という貼り紙が貼ってある中でクーラーを買って大学の電気を使うとなると、ますますハードルが高いそうな。なかなか上手くいきませんねぇ💦。

何かいいものはないか…と考えてると、6回生のF君が「卓球台が1台ボロボロになってるのがあるんですよ。ピン球のバウンドが変になるぐらい。卓球台やったら先生の名前残りますよ!『柴田先生寄贈』って名入れできますから!」ふむふむ。それもいいかも(^^)。卓球台の寄贈なら…(多分問題が起こって部長が責任を問われることはないと思われるので)と、N君もほっとしたようでした。そこで、どの卓球台がいいか探し始めました。



皆様の中で卓球台買った事ある人います?…って普通はないですよね。もちろん私も買った事ありません。なので一から調べていくとメーカーもいろいろあるし、セパレート式や一体型、高さ調節のできるものなど山ほど種類があって、何がいいかよく分かりません。今まで卓球はしてても、卓球台にはそんなに注目してなかったからなぁ。コーチに聞くと、メーカーはサンエイ(三英)かニッタク(日本卓球)の台が質が良くてセパレート式が移動させやすくて良いだろうとの事。質が良いというのは、球のはずみの安定性とか耐久性が良いんだそうです。調べてみると、競技用の卓球台で最も人気があるのは三英ブランドの卓球台だそうで国内外の主要スポーツ施設への搬入実績が多く、シェアは7割とも言われているらしい。リオオリンピックでも三英のInfinityという大胆なデザインの卓球台が使用されたそうです。三英ブランドの卓球台は独自に保証制度が設けられており、シリアルナンバーを登録する事で、天板や蝶番の破損に対応してもらえるんだとか。卓球台のカラーも、レジュブルーというInfinityにも採用された三英オリジナルカラーが選べます。確かにこのレジュブルーという緑がかったブルーはネットで見る限りなかなか綺麗な色です。昔は卓球台と言えば地味~な深緑って相場が決まってましたが、今は明るいブルーやこのレジュブルーなど、綺麗な色の卓球台があるんですね。実はこれは1980年代に「笑っていいとも!」でタモリが「卓球って根暗だよね!」とコメントしたため翌年中学生の卓球部入部人数が激減するという“事件”が発生し、イメージチェンジを図るために青色の卓球台を製作したのがきっかけなんだそうです。そのせいか、ユニフォームも昔は深緑かえんじ色しかなかったけど、今はカラフルになってますよね。



さらにメーカーや代理店に電話してみると、どこの会社にも「卓球台に超詳しい」というおっちゃんが必ず1人はいるようで、こちらが聞いてない事までいろいろ教えてくれました。(ワインの世界でいえばソムリエなんだろうけど、卓球界ではそんなカッコいい呼び名はないから、一般の認識では単なる卓球台オタクのおっちゃん…ですよね。なんかカッコいい名前を付けて世間での認知度を上げなきゃねぇ。)おっちゃん曰く、天板は厚みがあるほど弾みが均一で反りにくく、耐久性や硬度も高くなるので25㎜以上のものが良く、材質はメラミンよりもパーティクルコア天板という集成材を使用した天板の方が反りや歪みが少なく高強度で、大会でもよく使用されるんだとか。そして日本卓球協会や世界卓球連盟の検定があって、世界卓球連盟の検定がついているものは国際試合でも使えるらしい。さらに、オリンピックでどのメーカーの台を使うかは入札で決まるという事まで教えてくれた人もいました。どんな世界も突き詰めていくといろいろ奥が深いもんですね。そうやっていろいろ検討しやっと三英のIS400-Dxレジュブルーに決めました。これで一安心と思ったんですが、その後にこの安心が間違いだったと思うような問題が怒涛のように起きてくるとはその時は思いもしませんでした…(^_^;)。 

まず、メーカーでは販売はしていないので代理店に申し込まないといけないとの事。いざ代理店で買おうとすると、受注生産なので納期が2ヶ月以上かかると言われて、「ええっ、2ヶ月??」と思わず叫んでしまいました。三英は日本で卓球台の天板を製造している唯一の会社らしいんですが、それでも2ヶ月って、山から木切り出すとこから始めるんちゃうん?? 名入れのプレートを付けるつもりだったので、それを作るのに1-2週間かかるという事でしたが(それもプラスチックの板に名前書くだけやのに、なんでそんな時間かかるん?って思たけど)それを台に貼るだけやから、2週間もあれば余裕やろ!と思ってたのに…。卓球台業界を完全になめてました。(…ってか、業界体質古すぎでしょ?? 囲碁とか将棋の板ならともかく…)学生たちと台の入れ替えの時期を相談して10月末頃という事にしていたので、10月初めに台を探し出したんですが(2週間でもギリギリやけど、何でもギリギリになる性分なので(^_^;))、2か月以上もかかったら12月初めにある追いコン(6回生の追い出しコンパ)にも間に合えへんやん!! 追いコンの前には、決まってOB戦(現役部員とOBチームの対抗戦)があるので、それには絶対間に合わせたいのに…。慌ててまたメーカーの「卓球台に詳しいおっちゃん」に電話です。



柴田:「12月2日に大学のOB戦があるので、それには絶対間に合わせたいんですけど」おっちゃん:「えっ、12月2日ですか?? 間に合うかなぁ…? 在庫があればいいんですけど、最近代理店も在庫置いてないとこが多いんですよね…。一応調べてはみますけど…」

えらいこっちゃ! それが金曜の夜だったので、土日はメーカーは休み。気が気ではなくなって土曜日に各地の代理店に電話しまくりましたが、やはりどこも在庫は置いてなくて「メーカーに聞いてみないと」という返事。おまけに、月曜は祭日やん!! どんどん日が経っていくではないか💦。休み明けに再度おっちゃんに電話してみると「工場に在庫がないか確認してみます」って…それ早よしてよ~。そして待つ事数時間。工場に確認って電話1本するだけちゃうん? 工場って全国に2つしかないはずやけどそんな広いんかいな。(それに今時本社で自社製品の在庫把握してへんって、どんだけ昭和やねん?? 普通デジタルで管理してそうなもんやけど…。)とブツブツ言いながら待ってると、やっと連絡が。おっちゃん:「ありました! 全国で7台だけ在庫ありました!」全国って…さっきまで超アナログ管理体制と思ってたら、今度は全国の在庫が把握できるとは…? 一体どんなシステム使ってるのかなぁ? まぁいずれにせよ、あって良かった~。

柴田:「それ1台押さえといてもらえませんか?」 なくなったらまた2ヶ月、て言われたら困るもんね。おっちゃん:「それが…代理店から発注がないと、こちらで押さえるという事ができないもんで…。明日にでも代理店に申し込んでいただいたらまず大丈夫とは思うんですが…2週間後にあるかと言われたら微妙ですけど」



今度は慌てて代理店に連絡です。おっちゃんに一番よく卸しているという代理店を教えてもらったら、楽天とかには出店してなくてホームページも名ばかりでカードも使えない昭和な店でしたが、焦っていたので取りあえずその日のうちに注文を入れました。すると翌日電話があって「送料などを計算するので何日か待ってください」と…。支払方法が銀行振込しかなくて振込確認後に発注するという事だったんですが、振込金額が分からないと振込めません。早よ発注して欲しいねんけど。送料計算するのになんで何日もかかるん? みんな、なんでこんな悠長なんかなぁ。そしてやっと連絡が来たので振込もうとしたら、こんな時に限っていつもは即日振込めるPayPay銀行が、全銀システム障害のあおりのせいか初めての振込先は翌日入金になるとか。えーっ!?その日はもう金曜日だったので、土曜日に入金されてもメーカーは休みです。週明けに発注となると、2週間後にまだあるかは微妙って言われたのにもう1週間経ってしまうやん! また慌てて代理店に電話し、入金が明日になるみたいだが振込はしたのでメーカーに連絡して1台押さえて欲しいと頼みました。すると連絡はしてくれたようなんですが、今度はまた納期が1ヶ月かかると言われてしまいました。

「えーっ?? メーカーのYさん(おっちゃん)が工場に7台在庫があるって言ってたのになんで1ヶ月もかかるんですか??」と言うと、代理店の担当Оさんが「もう一度確認します!」と。その後Оさんから電話があって、「私は違う人に聞いたんですけどYさんが正しくて、在庫はあるので2週間程で出せるそうです」と。



それでも2週間??「在庫があるのに2週間もかかるんですか?」と聞くと「いや~…組み立てたりするんですかねぇ…」って、組み立てるにしても数時間でできそうやけど。しつこくもう1回聞いてもらうと、最短なら発注後2日で発送できるという事が分かりました。なんのこっちゃ。そう言えばおっちゃんが「いつも代理店には受注生産だって言ってるもんで、納期は余裕持たせて言うんだと思います」て言ってたけど、余裕持たせ過ぎやろ。「蕎麦屋の出前」の逆バージョンか??

随分焦りましたが、やっと学生の希望の着日も聞いてその日に届けられることになり、やれやれ…。とほっとしたのもつかの間、今度は着時間の問題が。到着時に卓球台をトラックから荷下ろしするのに2-3人手伝いが欲しいという事だったんですが学生は夕方まで授業があるはずなので、代理店のОさんとの電話の打ち合わせでは一応16-18時着で頼んでおいて、到着する頃にドライバーから学生の携帯に電話してもらう、という事になっていました。ところが代理店から来たメールには「基本時間指定は不可です。時間指定の場合は送料別途見積りとなります。当日配送業者より連絡が入りますので、ご相談ください」とあります。えーっ、話ちゃうやん!! あんなに何回も打ち合わせしたのに。なんぼ学生が暇やからって(最近の学生は、授業も厳しくて忙しいらしいし)着時間も分かれへんのに、1日中ぼーっと待ってる訳にもいかんやろ。それやったら学生に「当日暇な子いる?」とか聞かなあかんやん。また慌ててОさんに電話する事に。「時間指定不可ってメール来ましたけど?? 学生は夕方まで授業あると思いますし、授業中はすぐには出られないと思うんですが」と言うと「基本はそうなんですけどご希望の時間は伝えてありますし、当日ドライバーから『何時頃に着きそうですが大丈夫ですか?』って学生さんに前もって電話をして相談する事になっていますので、大丈夫だと思いますよ」…という事でやっとほっとしましたが、それやったらメールにもそう書いてよねぇ。メール書く人は別の人なんかな? それにしてもメーカーも代理店も、人によって言う事全然違うってどうなんですかねぇ。連携なってないと言うか…ブツブツ。まぁ、なんとか希望通りにはいけそうになりましたが…。



そんなこんなで人生で初めての買い物である「卓球台」だったんですが、なんと思った通りにいかない事が多かった事か…。逆に、Amazonで注文したものが早ければ当日、遅くとも翌日に着く上に配達時間指定ができるなんて、そんな生活に慣れてしまっていますが、もしかしたら「ものすごい事」なのかもしれませんね。久しぶりに私の若かった昭和時代に戻った気がしました…(^_^)。

いろいろ問題があったものの、その直後に大学に行く用事ができたので卓球場を覗くと…現役部員たちが練習していましたが、「ボロボロになった台」というのは一目で分かりました。昔の深緑色の台で、朽ち果てそうなくらい本当にボロボロです。何十年前の台なんやろ? よう頑張って使こたなぁ…、って感じです。こりゃ昭和を通り超えて大正か明治の骨董品じゃないの?? そんな思いでボロボロの卓球台を見ていると、学生たちが練習を中断して駆け寄ってきて「先生、卓球台ありがとうございます!!」って満面の笑みで、めっちゃ嬉しそうでした! 本当に純粋に喜ぶ顔って久しぶりに見ました。そして、その日練習に来られなかった6回生のF君からメールが来ました。「お世話になっております。Fです。卓球台の寄贈、誠にありがとうございます。部員たちも喜んでおりました。大会でも使われるような、良いものを選んでいただき非常に嬉しく思います。ボロボロになるまで部員一同練習に励んでいきたいと思います。卒業試験中でしたので、せっかく先生にお越しいただきましたのに卓球場に顔を出す事ができず、申し訳ありませんでした。今後とも卓球部をよろしくお願い致します」…と。




うんうん! やっぱり遺言じゃなくて生きている内に寄付できて良かったぁ! いろいろトラブルはあったけどやっぱりこうやって後輩に感謝されると、これまでの苦労が吹き飛びますね。ボロボロになった卓球台もよく考えるとあんなにボロボロになるまでよう頑張ったし、それこそ歴代の部員の練習に時代を超えて付き合ってくれていろいろな選手を育てて、ああやって役目を終えてようやく引退できたんだなぁ…と思うとこれもまた感慨深いものがあります。昔、「大きなのっぽの古時計」という歌が平井堅のリメイク版で大ヒットした事がありますが、まさに「大きなボロの古卓球台」です。ご苦労様でした…<(_ _)>。

ちょっと考えてみたんですが、今まで買ったもので何十年も使い続けたものっていくつあるんだろう?って。最新技術が搭載された最新鋭のiPhoneだっって数年使ったらお払い箱ですしね…。何十年も使ったものなんて本当にないと思いませんか? そう考えると、あのシンプルの極みとも言える卓球台は何世代もの学生の成長を見届けてきたんだから、なんだか偉大に思えてきました。学生の時に私もお世話になったはずです。そして私も年を重ねて今こうして新しい台を寄付したんですが、きっとこの卓球台も、これから何十年も新しい学生たちに使われて、彼らの成長を見届けるのかと思うと「本当にささやかだけど生きている内にお返しができて良かった」と思いました。「世代を超えて何かの貢献をする…」なんて言うと本当に大きな事に思えて、何もできないと思い込んでしまいがちですが、実は非常にささやかな貢献でも十分に「世代を超えて」役に立つ事ができるもんですね。初めから思い込みでできないと思ったり、逆に大きな事をしようとして結果として何もできなかったり…という事は改めないといけませんよね。今回は美容やアンチエイジングには全く関連のない話でしたが、自分が今までしてきた事で少しでもお返しができる事を、これからも探して実践していきたいと改めて思った次第です。今後とも当院を何卒よろしくお願い致します。



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