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第246回「そもそも治療って何?」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。暑いですねぇ。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…3月に痛くなった膝がやっとましになってきました。クリニック通信6月号では京都の病院の副院長をしているF君に診てもらう前までお話しましたが、今回はその続きです。膝がなかなか良くならないのでF君に相談すると、鮮明に写る3TのMRIを撮った方が良いとの事でF君の病院で診てもらう事になりました。F君が話を通してくれていたので受付はすぐに済み、診察室へ。

F君:「あ、先生。遠いとこお疲れ様です!」

柴田:「これ神戸土産♪」

F君:「すんません! また先生、高級なお菓子ちゃうの?」(全然高級ちゃうねんけど…(^-^;)

神戸の病院で撮ったレントゲンや骨密度などのデータはCDに焼いてもらってたのでそれをPCに取り込んで診察してもらい、例の3TのMRIを予約してもらいました。

F君:「MRI専門病院は2つあるけど、どっちがいい? 京都駅から行きやすいのはどっちかなぁ」

柴田:「どっちでもいいよ、どうせタクシーで行くから…」

F君:「あ…そうか。先生、バスなんか乗った事ないんちゃう? お嬢ちゃんやからな~」

(なんか美容系の医者をしてると、セレブ生活してると勝手に勘違いしてる人が多いけど、全然そんな事なくってストイックな生活してるのに。そもそも膝が痛いからタクシーで行くしかないじゃん…(^_^;)大学の近くの病院にしてもらい、予約を取ってもらいましたが1か月待ちでした。



1ヶ月後、MRI専門病院で両膝のMRIを撮り、CDに焼いてもらってその足でF君の病院へ。膝専門のH先生もスタンバイしてくれてました。H先生は「お久しぶりです。柴田先生とはS病院にバイトに行った時に一度一緒にオペ(手術)に入らせていただきました。その節はどうも…」とご挨拶いただきました。へぇ…そうだったかな。そんなんよう覚えてるなぁ…(^-^;)。さて3TのMRIの画像なんですが、さすがに細かいところまで綺麗に見えます。左膝の軟骨に5㎜程の欠損があり、右の外側半月板の後方が少し傷んでるかもしれないという事で、軟骨欠損は卓球で踏み込んだ時に起こったのかも…という感じでした。以前PRPを勧められた話をしたので、F君がH先生に「PRPとかどう思う?」と聞くとH先生は「まぁ…お金があり余ってるんやったら…」(^-^;)。

明らかな半月板損傷などはなく、痛みの原因があまりはっきりしなかったので

F君:「K大学のK教授知り合いなんやったら1回診てもらう? 予約も取れるし紹介状も書きますよ」

柴田:「そしたら、そうしよかな…」

という事になり、K先生の予約を取ってもらいました。



K先生に以前相談した時PRPを勧められたので、事前に少し情報収集をしておこうと思って、PRPをしている宇治の病院の副院長S君に電話してみました。S君も吹田のS病院で一緒に働いていた後輩です。

S君:「先生、ご無沙汰してます!」

柴田:「久しぶり! 先生、膝のPRPやってるよね? どんな感じか教えて欲しいねんけど」

S君:「100例位しかやってませんけど、はっきり言うて勧めません。理由は1年も効かへん人が多いのと、術前10の痛みが3から4になったらええかな、ちゅうくらいで全然効かん人もいるからですけど。30万出して効かんかったら刺されてもいややしね。相続税のためにやってはる人とかいますけど」

そ、相続税対策かぁ…(^-^;)。もっと他にやる事あるだろうにねぇ。ちなみに私はこのクリニック通信でも何度か書いているのですが、美容としてのPRPは以前はかなり力を入れていました。ただ最近は行っていないため、皆様の中でもPRPが何かをご存知ない方もいらっしゃると思いますので簡単に説明しますと、自分自身の血液を採取して、血液中にある血小板という成分を遠心分離機で圧縮し濃度を高めた血小板を自分の組織に注入して、その組織の細胞分裂を活発にする治療です。怪我をした時に治るのはこの血小板が細胞分裂を活性化させるおかげなんですが、その血小板の濃度を高めて細胞分裂を強制的に高める訳で、最近流行りの「再生医療」の一環になります。美容の場合は組織を盛り上げてシワやたるみを目立たなくするという事になり、「綺麗に盛り上げる」事を目的にしているので、当然「怪我の治療の為のPRP」と「美容目的のPRP」では同じPRPでも目的や効果が全然違います。私の場合は何度も実験した結果、美容目的の時は血小板の濃度をどの程度にするかが結果に大きく作用するという事が分かっていました。ただ今回は膝の治療なので美容目的のPRPとは違うのですが、どうしても血小板濃度をどの程度にするのか? というのが気になってしまいます。ちなみにPRPは、自分の血液を採取して自分自身の血小板を濃縮して自分に注射するので異物を入れる訳ではありません。その為副作用が出ないという大きなメリットがありました。しかし、いい加減な医者が成長因子などを適当に混ぜて乱用した為に、「組織が盛り上がりすぎた」とか、「盛り上がった組織が元に戻らなくなってしまった」などの問題が噴出。ついに厚生労働省が規制に乗り出し、PRPを治療目的で行う事について申請などの手続きが非常に煩雑になり、事実上使えない治療になってしまった経緯があります。



なんか、いい加減なところがめちゃめちゃしている事で真面目にやってる医療機関が締め出されるのは本当に不本意なんですが、国家権力には逆らえず、私もPRPを美容治療では使わなくなりました。(もちろん、PRPをやっていた当時は相続税対策になるような高価な治療じゃなかったですよ…(^_^;)。何がどう転んで膝治療のPRPはそんな高価になっちゃったんでしょう??)

柴田:「血小板濃度とか測ってる?」

S君:「そんなん全然測ってません」

柴田:「膝にはどれぐらいの濃度が効くとか分かってへんのかな? 美容の場合はいろいろやったら皮膚には220万/μLが一番効くって分かってんけど」

S君:「そんなん割り出さはったんですか? それは凄いですねぇ。膝は研究はされてるんちゃいますか?文献は読んでへんけど。膝は軟骨再生する訳ちごて炎症を抑えるだけなんで安静時痛はようなっても階段は痛い言う人多いですな。1回30万円しますから、手術でけへん事情があってお金持ちの人にはええかもしれませんけどね。開業医でもしてて、大阪に本社あって京都にも店あるHクリニックとかえげつないんですわ。いらん血液検査からMRIからいろいろやって総合的に儲けてるみたいですな」

柴田:「…実は私が膝痛なってね。T君(整形の教授で私の後輩)が講習会で『骨粗鬆症と変形性膝関節症の予防には1日6000~7000歩の速歩が良い』て言うてたから、それくらい歩いたら痛なってん」

S君:「教授に喧嘩売る訳ちゃうけど、歩いたところで大腿四頭筋はつきませんよ。エアロバイクがええんとちゃいます? 競輪選手はすごい太腿してるけど、長距離選手は太腿細いでしょ。水中歩行もいいと思いますけど。PRPはまぁ副作用はないんで、先生やったらやってみる価値あるんちゃいますか?」…ふむふむ。いろいろな情報を提供してくれました。やっぱり持つべきものは後輩ですね。



さて、K先生の予約の日。広い大学病院で、受付を済ませて整形外来へ。K先生はたくさんのチームのチームドクターをされているようで、整形外来の廊下には「K先生へ」と書かれたサッカーやバレーのチームの優勝記念のパネルとかがいっぱい貼ってあります。レントゲンや骨密度、例の3TのMRIなどのデータはCDからPCに取り込んでもらいましたが、さすが大学病院…待ち時間はほぼ2時間。やっと順番が回ってきました。

K先生:「先生どうしたん~? 紹介状見てビックリしたわ~!膝そんな痛いん? ちょっとベッド上がって。うん、水は溜まってないね。しかし筋肉が全然ない!! 特に内側広筋(太腿の前内側の筋肉)がなさすぎる~! …しかしこのMRI綺麗な~。どこで撮ったん?」

柴田:「K放射線科クリニック。F先生の病院からいつも外注で出してるらしいです」

K先生:「そうなんや。先生、内反(O脚)もそれ程でもないし、半月板も綺麗よ。左に軟骨欠損? ああ、これか。めちゃ細かい診断付けてくれてるね~。軟骨欠損はあるけど、小さいから痛みの原因にはなりにくいね。直径2-3㎜やもん。卓球で踏み込んだ時に欠けたんかもしれへんけど、これくらいやったら剥がれた時は気付けへんと思う。ロッキングするのは、剥がれた軟骨片が挟まるからかもしれんけど。ただ、将来的にここから軟骨が傷んでくるかもしれへんけどね。女性でO脚で筋力がないのはOAの危険因子やねん。膝にはすごい負担かかるから」…やばい!



以前PRPを勧められたのでPRPの事を聞くと、今はK大ではPRPはやってないらしい。

K先生:「三宮でもあっちこっちでやってるけどね。金儲け主義みたいなとこが…」

柴田:「濃度とか測ってないんですかね?」

K先生:「測ってないと思うよ。めっちゃアバウトやから!」

柴田:「皮膚には濃度測って220万/μLがいいって分かったんで、膝やったらどれ位がいいのかなて思って」

K先生:「え、それでシワ良くなるん? 凄いね~! 膝はどれくらいの濃度がいいかとか分かれへんわ~。キットもバカチョンで、元の血小板濃度の5倍ぐらいって感じやから…」

柴田:「それやったら、元々血小板濃度高い人は効くけど、低い人は効けへんかったりしますよね?」

K先生:「そらそうやねぇ。それに、PRPで軟骨再生は厳しいからね。あれは抗炎症効果やから。今は水も溜まってないしPRPの適応やないと思うよ。それに術後痛いしね。かえって痛なるかもしれへんし」

そうか~。…ガッカリ。そして、メトホルミンで痩せすぎた話をすると

K先生:「えっ、7kgも痩せたん??!」

柴田:「2kg位戻りましたけど」

K先生:「それでも5kg痩せたまま??」

痩せたのとコロナ禍で出歩かなかったので筋力落ちたのでは?とにかく今は筋トレあるのみ、と言われました。

K先生:「軽いのからちょっとずつやったら? SLR(座位から膝を伸ばして足を挙げた位置で止める運動)10秒を朝晩20回ずつとか、軽いスクワットとか。もっとムキムキになってもらわな。それともうちょっと太ってください。筋肉付けたら、また卓球できるようになるよ!」



柴田:「ほんとですか?!」

K先生:「できる、できる~!」

柴田:「それなら、それを目標にして頑張ります!」

K先生:「できたらトレーナーとか付けてね。紹介しますよ! 先生、またいつでもメールください!」

と…。心強い限りです。


今回はアンチエイジング関連ではなく、膝という整形外科分野の話になったので、皆様はちょっと興味を持ちにくかったかもしれませんが、人間の体に関する事って結局アンチエイジングも整形も同じなんですよね。つまるところ自己治癒力でしか治らないって事なんです。よく病院に行って「治してもらった」と言う人がいますが、それは間違いで「自分の自己治癒力で自然に治った」が正解です。そう言うと、人によっては「何年も痛かった膝が手術をして痛みがなくなったので、それは病院で治してもらった訳ですよね?」と言われると思います。確かにその通りなんですが、手術で行う事は「自然に治るように補助している」事がほとんどなんです。例えば本来骨が折れたら自然にくっつくものですが、折れ方が悪いと隙間が空きすぎて、そのままではくっつかない状況になってしまうケースがあります。これを強制的に隙間ができないようにしてネジなどで固定すると、折れていた骨は自然にくっつきます。これってベースは自然治癒力がある事が前提で、それを助けるようなお手伝いをしたという事ですね。そもそも、自然治癒力がなければ何をしても治りません。なので「治している」訳ではなく「自然に治るように補助している」というのが医療の本筋だと思います。おそらくこの考え方に全面的に反対する人はいないはずです。病気や怪我は治る事が自然な姿なんですね。



ところがアンチエイジングはかなり様相が違います。なぜなら人は年を取れば老化するのが自然なので、自然な姿に逆行しようとしている訳です。もうこれって中世ヨーロッパだったら「神様の意志に背く罪」で火炙りにされていたかもしれませんよね…(^_^;)。幸いにして現代は火炙りされる事なく、神様の意志にどうやって背くか…を堂々と研究できるようになりました。その結果、どうやら「神様の意志に背いてないかもしれない…」と思われるところに来ています。どういう事かと言うと「人間が死なない」というようにはできないにしても「死ぬ直前まで病気や癌などにならずに寿命が来たらころりと死ぬ」って事は可能じゃないか…という事を色々な研究が示唆してきているのです。(自然界にいる動物でも「死なない動物」が存在します。しかし、それは非常に稀なケースです。ただし、死ぬまで老化せずにいわゆるピンコロで死ぬ動物は多数存在します)という事は老化するのは自然の摂理ではなく、老化というのが病気の一種であり、寿命が来るまで元気でいるのが自然な姿であるのではないかという考えが近年は支持されるようになってきました。つまり、アンチエイジングで「病気にならないようにすれば」元気なまま寿命を迎える事ができる訳です。「年を取ったら、体のあちこちが不調になるのは仕方がない」という考え方はこれからはなくなっていくかもしれません。そもそも人間がいつか死んでしまうという事が人間という種を繁栄させるためにDNAにプログラムされているのであれば、たしかにそれは神様の意図かもしれません。

人は寿命がある事で個人としては人生が終わるが、人という種族そのものが繁栄するには、そちらの方が良い結果をもたらずとシュミュレーション結果を出している研究者の論文もあるようです。じゃあそれは仕方がないので受け入れるとして、死ぬまでの10年間を病気で苦しまなければならない理由は、ほぼないはずです。わざわざ死ぬ前に癌になったり心臓がうまく機能しなくなるような事をDNAにプログラムしても全く意味がありません。…という事は、老化はプログラムされていないはずだって事ですね。だとすればアンチエイジングにとっては朗報です。そもそも年をとっても自然治癒力が落ちる理由がないのであれば病気になっても「お手伝い」をすれば、元に戻る可能性があるのです。脳細胞のように一度死んだら再生しない細胞もあるので、全部が自然治癒する訳ではないですが、今知られている「年をとったらなる」と言われている病気や変化の多くは通常の自然治癒力で十分に治る可能性があるのです。この辺の事はまたおいおいこの通信でも紹介していこうと思いますので、楽しみにしておいてくださいね。



さて…K先生に教えてもらった「軽い筋トレ」をしようとしましたが、SLRで10秒止めると連続では20回どころか10回が限度。我ながら筋力の落ち具合にガックリ…💦。メールで10回ずつ二度に分けてもいいか聞いたら「できるところからで無理はなさらないでください」と返信があったので、少しずつ頑張ろうと思い直しました。しかし、せっせと筋トレしたら翌日はしんどくなってできない…ムキムキになれるのはいつの日の事やら。トホホ…と思いましたが気を取り直して、翌日しんどくならない程度に一旦回数を減らしてから、しばらく仕事だと思って筋トレに励むと、だんだん慣れてきて次の日もしんどくなくなり少しずつ回数を増やせるようになってきました。やはり、継続は力なり。「何歳からでも筋肉はつく!」とかネットでよく見ますが、本当かも。そして同時に膝の痛みもだんだんましになってきました。皆様も何か目標を立てて少しずつでも続ければ、きっと達成できますよ。「為せば成る」。アンチエイジングもしかり。少しずつ続けて、いつまでも生き生きと暮らせるように頑張りましょう!



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