top of page

第244回「私がYouTuberだったら…」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。暑くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…先日久しぶりに学会に参加しました。と言ってもまだWEB参加ですが。コロナが5類になり街ではマスクを外している人が多くなりましたが、5類になってもウィルスの感染力は変わらず有効な内服薬もまだ開発されていないため、病院ではまだマスクと消毒は必須なので学会も現地参加は当分先になりそうです。今回の学会は毎年メインの抗加齢医学会です。今年は会長が産婦人科の先生だったので更年期や女性のアンチエイジングに関する講演がたくさんありました。その中で面白かった内容を少しご紹介したいと思います。



今までも学会で発表された事を何度もこの通信で紹介してきましたが、正直言って学会ネタが一番頭を悩ませます。まず学会というのは、そもそもその分野の医者や専門家が集まって発表をしたり聴いたりするという事が前提になっていますので、どうしても内容が難しいんですよね。当然ながら一応科学者を自負する人の集まりなので、単に「毎日ヨーグルトを食べてたら健康になりました!!」みたいな発表は話にならない訳で、科学的根拠を求められます。まず上記の例で言えば、健康の定義から入って健康になるとはどういう事なのか…から始まり、被験者は何歳から何歳までの人達で、性別、基礎疾患がありなのかどうか…などの条件を定めます。そして何より、この実験なり研究なりが「条件を揃える事で再現性がある」という事にならなければ、科学とは言い難い訳です。再現性があるとは、簡単に言うと、条件を整えれば貴方がやっても私がやっても同じ結果になりますよって事ですね。実はその再現性ってやつが本当に難しいのです。逆に言うとこの再現性があるからこそ、科学が世界の共通言語になった訳ですね。



かなり昔に新聞を賑わして、このクリック通信でも取り上げた事のある小保方晴子さんのスタップ細胞についても、発表された論文を基に世界中で色々な再現実験を行ったのですが、再現実験に成功した人が現れなかったというのが決定的になり、この論文は捏造の烙印を押されたと言っていいと思います。ただし、純粋に科学の立場で冷静に見極めると、スタップ細胞のような世界を揺るがす発見はそう簡単にできるものではなくて、再現実験を行うにしても非常に難しいでしょうし、条件や器具なども揃わねばならず、他の人が簡単に再現できないからと言って、その研究がデタラメだとすぐに判断する事はできません。まぁ私はこの分野は専門でもないので、どうなんでしょうねぇ。その後何年も経ちますが、世界中でスタップ細胞の生成に成功したという話題を聞かないのは、残念な状況ではありますね。…そんな訳でヨーグルトが健康に良いという発表をするのであれば、再現させる為には条件を厳密に揃えなければなりません。なので単にヨーグルトと言うだけでは含まれている乳酸菌の種類も違いますので、菌の株や温度も特定し、菌の密度なども厳密に条件として揃えた上で実験をする事になります。なので学会の中で発表される報告って、まぁ普通の人が聞いてもなんの事か分からないし、面白くもなんともない…って感じの事も多いのです。(科学的根拠がある立派な研究になればなる程難しい事になります。)なので、YouTubeなどで見る「これ一日一粒飲めば病気知らず!」とか、「癌を克服する秘訣は毎日の◯◯にあった!」みたいな、超分かりやすくて今日から実践してみよう!みたいな話は基本的にありません。(そんなのあったら怪しまれるだけでしょうね…(^_^;)。まぁ、YouTubeに上がっているその手の話も、9割は眉唾だと思ってみた方が良さそうですが…。)



そんな訳で前置きが長くなってしまいましたが、学会ネタをお知らせする時はどうしても難しい単語が出てきたりして分かりにくいのですが、研究者の意図をできるだけ曲げずにお伝えしようとすると、どうしてもある程度発表された情報を正確に書かないと、私も医者の端くれである限りまずいよねぇ…って思う訳です。そんな事で今回は内容はできるだけ正確にお伝えしますが、最後に私がYouTuberだったらこんなタイトルをつけて動画を作れば人気が出るかも? というタイトルを記載してみました。内容は難しいので、結局なんなん?って思った方はそちらをご参照ください…(^_^)。



さて学会の内容です。近年は女性の2人に1人が90歳以上生きる時代になり、人生100年時代を迎えてると言われています。更年期は人生の折り返し地点なので、その後の50年を健やかに過ごすためには更年期からのフレイル対策と認知症対策が最も重要だ…との事ですが、更年期はそれまでの生活習慣を見直してリセットできるチャンスでもあるんだとか。例えばタバコ吸ってる人はやめようよとか、ちょっと太り過ぎてる人だったら少し痩せてみようかとか、逆に痩せてる人だったら少し体重増やしてみようかとか、検診受けてないんだったら受けに行こうかとか…。そういう見直しって大事ですよね。お肌の手入れをしてなかった人だったらシミシワ対策を考えてみたり、食事や睡眠に気を使っていなかった人だったら、少し気をつけてみるのもいいと思います。更年期からのアンチエイジングには食事・運動・睡眠が特に大切というのはどの講演でも言われていました。



その中でも新しい視点で面白いと思ったのは「マイクロバイオーム(細菌叢)」についての講演です。題目は、「女性のエイジングとマイクロバイオームの変化から見た新しい女性ヘルスケアの展望」というものでした。マイクロバイオームというのは2001年に導入された概念で、マイクロバイオームは私達の身体空間を共有し、気付かないうちに私達の健康と病気の決定要因になっていて、体の免疫の調節や代謝に関与しているそうです。マイクロバイオームは消化管に最も多くその他鼻腔や口腔・皮膚・膣などに存在します。腸内細菌叢は、最近よく話題になっていますよね。その中でもエクオール産生菌は更年期障害の軽減・骨量減少や動脈硬化・乳癌や前立腺癌のリスクの低減など、体にいい作用を示しますが、エクオール産生菌が働くようにするには腸内細菌の種類が多い方がいいらしく、そのためには野菜や茸・海藻・納豆・魚を中心とした食生活と運動習慣の維持が良く、喫煙・便秘・外食・ラーメン・アルコール・珈琲は良くないそうです。膣マイクロバイオームは、ラクトバチルスという乳酸を産生する菌が多いと良いのですが、閉経後ラクトバチルスが減少すると感染や発癌リスクが増えるとの事。そして、膣と腸のマイクロバイオームはクロストーク(移動)するらしく、膣のラクトバチルスは腸由来だそうです。膣の健康を保つには腸の健康を保つ事が、閉経後は特に大切だという事ですね。閉経後の健康のためには、お酒は控えめ、食生活に気をつけて運動を習慣に。私も最近「ノンアルでワインの休日・地中海レモン」というのがアルコールを入れなくても美味しい事を発見して、ほとんどお酒は飲んでません! 以前からは考えられませんが、今月また一つ年を取った事だし、健康には一層気をつけないといけませんからね (^^)。

YouTubeタイトル:「閉経後の健康は、腸内細菌が決め手。毎日◯◯を取る事で病気知らず!」



2つ目は、「Fascia(臓器間の結合組織)」についての講演です。Fasciaという結合組織は、2018年に発見された器官で、コラーゲンとエラスチンの立体網目構造が、プロテオグリカンやヒアルロン酸で満たされたものです。昔の解剖ではホルマリン固定で消失してしまう為、見つからなかったらしい。Fasciaには臓器を支える他、筋肉の伸び縮みを制御したり、感覚器官・柔らかい骨格など多彩な機能が世界的に注目されつつあるそうです。加齢によってヒアルロン酸は減少して、閉経によってプロテオグリカンは減少し、不動(定期的な運動の欠如)によってもFasciaが膜状になって硬化し、さまざまな症状を引き起こすかもしれないとの事。Fasciaは皮下にも存在してネットワークを形成し、そのネットワークの破綻によって皮膚の加齢性変化に影響を及ぼすのではないか、という事でした。その加齢変化を防ぐには、マッサージや保温などの昔からされていた事が重要かもしれないそうです。最近になってこういう新しい器官が発見される事もあるんですねぇ。私も日々、新しい事を発見できるように感覚を研ぎ澄まさなければと思いました。

YouTubeタイトル:「見た目年齢5歳ダウン! 皮膚の若さを決めるFasciaって何?」



最後に老化細胞についての講演です。老化細胞を除去して老化を治療する研究は最近話題になっています。老化細胞とは、細胞分裂を停止した細胞の事で、老化細胞が分泌する炎症性物質による臓器や組織の慢性炎症が老化の原因だという事が最近の研究で分かってきました。老化細胞除去治療の1つは老化細胞の生存に必要なGLS1という酵素の阻害剤で、老齢マウスにGLS1阻害剤を投与すると老化細胞が選択的に除去でき、腎・肝機能・肺線維症・糖尿病・動脈硬化・筋力低下などが改善した、という研究結果が発表されていた事は第235回のクリニック通信で書きましたが、今回はさらに研究が進んで、老化細胞の一部がPD-L1を発現していて強い炎症性を示すと共に、CD8陽性T細胞の免疫監視を逃れている事が発見され、抗PD1抗体を加齢マウスや生活習慣病マウスに投与すると生体内から老化細胞が除去され、様々な臓器・組織の老化現象や老年病、生活習慣病が改善できる事が分かったそうです。抗PD1抗体は現在癌の治療に使われているので、老化の治療はまた一歩進んだという事ですね。人に応用できるようになる日も近いかもしれません。

YouTubeタイトル:「老化治療の本命! 老化は薬で治療できる日が来る?? 抗PD1抗体とは?」



…どうでしょう? え?YouTubeタイトルあってもなくても変わらない?? …そうかもしれませんねぇ(^_^)。今回はわざと目を引くようなちょっと過激目のキャッチコピーを考えてみたんですが、まぁ実際のYouTubeを見てみると過激でもなんでもなく、ごく一般的なタイトルかもしれませんね…(^_^)。という事で、実際に実用化されて皆様の手に届くようになるのはまだまだ先の事でも、研究発表というのはセンセーショナルな言い方で行われる事が多いんです。皆様も新聞やネットでニュースや動画を見られる時は、それには十分ご留意の上ご覧くださいね。ただし、このような研究がいくつも積み重なって、結果としては人生100年時代が実現しようとしているのも事実です。これはIT業界の友人に聞いた話ですが、IT業界には定説があって、1年後の未来を語ると人はあまりにも大きな早すぎる期待をして期待外れになる事が多いが、10年後の未来を語るとその変化が10年どころかずっと短い期間で来る事を過小評価する事が多いそうです。う…ん。なるほどこれはIT業界だけではなくて、美容医療やアンチアイジング業界でも同じになりつつありますね。世界は以前よりずっと早い速度で変化してる気がします。人生100年時代の後半を楽しく生きるためには、まず健康である事。そしてやっぱり、綺麗でいたいですよね。お肌の老化を防ぐ方法は、当院ではかなり進んでいますので、人生の折り返し地点にさしかかった方は是非ご相談ください。



Comments


bottom of page