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第243回「革命前夜ってこんな感じですか?」

もうすぐ梅雨入りですね。皆様は新緑の季節は楽しまれましたか? 私はと言えば…年末に大腸ファイバーで起こした腹筋の肉離れもやっと回復し、気持ちのいい季節に散歩など楽しめるようになったのもつかの間、またもや体調に問題が…。ほんと年ですねぇ。クリニック通信4月号でお話した、今や整形外科の教授である後輩T君が講演で「骨粗鬆症と変形性膝関節症の予防には1日6000~7000歩の速歩が良い」と言っていたので実践してみたら、2ヶ月以上運動できなかった後急に頑張ったからか、今度は膝が痛くなってしまいました。トホホ…。私の母も酷い変形性膝関節症だったので私は整形外科に進み、自分で母のTKA(人工膝関節全置換術)を執刀した事は以前のクリニック通信でも書きましたが、それを知っている整形の親しい先輩に「おまえも絶対OA(変形性関節症)体質やから気ぃつけよ」と言われていたのを思い出しました。なんだか最近のクリニック通信は、私の病気自慢みたいな話が多くなってきましたが…(^-^;)。自分の体験を通じて何か役立つ情報を提供できればと思いますので、少しお付き合いください。



変形性関節症というのは関節の軟骨がすり減って痛みを生じる疾患で、最も多い部位が膝です。変形性膝関節症の主な原因は、加齢・女性である事・O脚・膝への負担が大きい仕事やスポーツ・遺伝・肥満・外傷や感染などですが…肥満と外傷や感染以外は全部当てはまるやん! 私の母はそれに肥満も加わっていたのでさらに条件が揃っていた訳です。その上何でもギリギリの性格で(悪い事に私も姉もその性格を受け継いでしまったが…)いつも仕事に遅刻しそうになって、毎日自宅から駅まで徒歩20分の道のりを走ってた事も膝に負担をかけていたと思います(^-^;)。変形性膝関節症が女性に多いのは、女性は筋肉形成に重要な男性ホルモンが少なく筋量が少ないので膝にかかる負荷を筋力で吸収し難く軟骨にダメージを受けやすい事、軟骨形成に重要な女性ホルモンが閉経後減少する事などが原因と考えられています。私の場合その女性である事や年齢・遺伝・O脚の他、整形外科時代に重いプロテクター(放射線の被爆を防ぐ為に鉛の板が入ったベスト…今思えば星飛雄馬がつけていた「大リーグボール養成ギプス」より凄いかも…(^_^;)。相変わらず古くてすいません…)を着て長時間立ちっぱなしの手術をしてたい事や、左膝の方が痛いのは卓球の時いつも左足で踏み込んでいた事が原因かなと考えましたが、最も大きな原因は筋力不足でしょうね。特にここ最近は、クリニックの移転で通勤距離が減ったりコロナで出歩かなくなった事に加え、痩せすぎて筋肉も落ちた事や腹直筋の肉離れでかなりの筋力低下に陥っていた所に負荷をかけたのが原因だと思います。以前かなり太っている人に健康のため減量を勧めたら、「年いってから痩せたらあかんって言うでしょう?」と言われていい訳だと思ってましたが、年いってから痩せすぎると筋肉も落ちて良くない、という事でしょうね。太り過ぎはもっと良くないですが、何事もほどほどに…って事ですよね。



さて速歩をやめたら膝の痛みは一旦ましになったんですが、その後所用で少し重い荷物を持って7000歩程歩いたら悪化して、部屋の中でもつたい歩き状態に…。これはやばい。なんとかせねばと思い、私のようなO脚の場合膝の内側に負荷がかかって軟骨が減るため、その負荷を減らすために足底の外側を高くする装具があるので、それを作る事にしました。装具だけなら後輩のクリニックでも作れたんですが、T君の講演で今後10年間に大腿骨頸部骨折を起こす確率を計算するテストの話があったのでしてみようとしたら骨密度が必要だったので一緒に骨密度も測ろうと思い、骨密度を測定する機械は大きな病院しかない為、以前骨密度を測定した事があるT病院の整形外科を受診する事に。そして立位での下肢全長のレントゲンや、FFV(膝の関節裂隙=関節の隙間が正確に写るレントゲン)も撮ってもらうと、O脚も酷くはないし関節裂隙もそれほど狭くなかったんですが、少し内側に負荷がかかっているので装具は作ろうという事になったんですが…。本当はこの装具を作るところで色々な問題が起きて、整形外科の闇みたいな事が露呈したのですが、紙面の関係からそこのグタグタは今回は割愛させてもらいます。…結論として装具は役に立たず、せっせと筋トレをして痛みはましになってきたもののなかなか元には戻らないので、S病院の整形で仲良しだったF君に相談してみました。F君はクリニック通信第238回にも登場した後輩で、京都の大きな病院の副院長をしています。F君曰く「MRIは撮ったんですか? え、撮ってないの? まぁT病院みたいな公立病院はいいMRIとかないからねぇ。最近はMRIもいい機械ができて、3T(テスラ)のMRIやったら半月板も綺麗に写るし、軟骨下骨の状態とかも分かるよ。MRI撮った方がいいですよ。近くに3TのMRI置いてる専門病院とかないんですか? まぁ大学病院やったらあるやろけど」…との事。



流石に何の事言ってるか分かりませんよね(^_^;)? 少し解説をしますと…MRI(核磁気共鳴画像法)は皆様もご存じだと思いますが、T(テスラ)は磁力の単位で、3TのMRIはより鮮明な画像を得られる機器です。医療機器の世界は本当に日進月歩で、私が整形外科医だった頃よりもずっと良くなっています。つまり昔は医者の経験とカンが診断の大きな要因だったので、経験の長い医者の方が患者さんも安心できて治療の効果も良かったんですが、近年の検査機器の進歩のため医者個人の経験や知識は依然として重要なものの、1. 最新の検査機器があるのか? 2.その最新機器を使いこなす柔軟な頭を医者が持っているのか? 3.医者だけでなくチームとして医療を支える技師達がいて機能しているのか…の方が重要になりつつあります。もうあと十年すれば生まれた時からコンピュータを使いこなしてスマホネイティブな世代が医者の最前線になりますが、彼らの方が経験豊富なおじいちゃん医師の診断を遥かに凌駕する時代になるんだろうなぁ…って気がします。

柴田:「大学病院か~。K大整形のK先生(教授)やったらメール知ってるから相談してみよかな」F君:「えっ、K先生知ってんの?? 先生顔広いな~。それやったら相談してみたら?」

K先生とは以前研究会で膝の軟骨の再生医療について発表された時に質問したのがきっかけで、私の中学の同級生がK大の整形でK先生と親しかったり、この通信にも登場した京都の再生医科学研究所のT先生とK先生が親しかったりという関係で学会や研究会でお会いする度にお話するようになり、以前も膝の痛みについて相談した事があったんです。



ちょうどその頃、東京の関節鏡センターにいる整形の後輩H君が7月に超音波学会の会長をするので抄録集にクリニックの広告を出して欲しいと頼まれたので、膝の事も聞いてみたところ

H君:「初期のうちにPRP(多血小板血漿注入療法)とかしときはった方がええんちゃいます?K先生膝の専門やし、K大はPRPもやってるやろから相談してみはったら?」

柴田:「H君の病院でもPRPしてるん? 前にK先生に膝の相談した時PRP勧められて、

下の先生に聞いたら『効くかどうかは人による。半々です』って言われたけど」

H君:「それ妥当な答え…うちでもそんな感じ。先生もPRPは結構されたんちゃうんですか?」

柴田:「うん。皮膚には結構したよ。PRPの濃度って測ってる? うちはPRPの濃度測って、シワ・たるみには220万/μLが一番効果出るって割り出したけど。効果が人によるのは誰にでも同じ作り方したら元々血小板濃度高い人はPRPの血小板濃度も高くなるけど、元々血小板濃度低い人はPRPの血小板濃度も低くなるからでしょ? 人によって作り方変えて一定の高濃度にしたら、みんなに効果出るんとちゃうの?」

H君:「おっしゃる通りです。普通のとこはバカチョンのキットで作るから効果は人によりますよね。そやけどそんなよう知ってる人患者やったら嫌がられそう~(^-^;。医者やっていうだけで嫌がられるのに…ホンマにこんな人患者で来たら嫌やなぁ…(^_^)」

そんな話を友人にすると「最初は身内に診てもらった方がいいんちゃう?何かと聞きやすいし」と言われたので、それもそうやな…と思ってF君にもう一度電話してみました。



柴田:「膝の件やねんけど、Fちゃん3TのMRI撮って診てくれへん?」

F君:「先生、近くで撮るとこないの? MRIは3T置いてる病院にいつも外注出してるから撮れますよ。放射線科の診断も付けてくれるし。そやけど僕やったら放射線科の診断の方が確かやけどなぁ」

これも業界暴露話になってしまいますが、整形は膝・股関節・手など色々専門が分かれていて、F君は私と同じ手の外科班なので膝は専門外なんです。皆様は整形外科なんで膝の治療は専門でしょう…って思うでしょうけど、専門が違ったりすると難しい診断は膝専門の先生に頼んだ方がいいんです。勿論きちんとした医者なら自信がなければ専門医を紹介しますが、そうでもない医者もいるので要注意なんですね。

F君:「うちの病院やったら膝はHがやってるねんけど。月曜の午後やったら僕もHもいてるから、月曜に来る? それやったらMRI予約して撮った日に僕とHとで一緒に診ますけど」

柴田:「うん。それでお願い。来週の月曜日でもいい?」

F君:「分かりました。そしたらお昼過ぎに整形の受付に直接来てください。受付には言うとくから」

と、トントン拍子に話が進みました。やっぱり持つべきものは後輩ですね。MRIで原因が分かり、良い治療法が見つかる事を祈るばかりです。しかし体のどこかに痛みや不調があると、本当に不自由ですよねぇ。自分がこうやって健康を損ねてみると、治療より予防の方がはるかに大事だという事が身に染みて分かります。皆様もシワやたるみは症状が進む前に早めにお手入れされる事をお勧めします…(^-^;。



なんだか今回の通信は色々な専門用語などが出てきて分かりにくいと思うのですが、言いたい事の中心は、今医療の世界が本当に大きく変わろうとしている…という事です。大学で、初めて医学について学ぶ時には医療進歩の歴史も勉強しますが、過去において医療の世界は何度か大きな変革期を迎えています。過去の最も大きな変革は「顕微鏡」が発明された事だと思います。それまで見えなかったものが見えるようになったからですね。それまでの医療は科学的な根拠がなくても経験的に効果があった…という口頭伝承みたいなものが全てでした。それが顕微鏡の発明をきっかけに、きちんと科学的根拠を基に病気を診断し、原因を追求して原因を取り除く事で治療するという方法がようやく確立した訳です。その後光学顕微鏡が発展して電子顕微鏡になる事で、細菌だけでなくウイルスなども発見され、この100年の間に過去1000年分以上の進化を遂げたと思います。そして、現在起きている医療革命はこの過去1000年の発見を遥かに凌駕する革命が起きる前夜のような感じです。その革命の内容としては二つあります。一つは、「見る」という世界は電子顕微鏡で限界を迎えています。現代の技術で最高の電子顕微鏡は分子レベルの映像まで見えますが、そのままでは医療の世界では使えません。なぜなら生きた人間を解剖して組織を見る訳にはいかないからです。人間を解剖せずに中身を見るという意味ではレントゲンの発見はまさに当時の革命でした。しかしこれも限界があります。レントゲンはあくまでも見える部分を見ているに過ぎないのです。そこでMRIが登場します。皆様もMRIの映像を医者が確認しているところを見た事はあると思いますので、MRIはレントゲンの様に体の中の写真を取るものと思われているかもしれませんが、あのMRI映像はコンピューターを使って人間がイメージし易いように合成したいわばモンタージュ写真なのです。(モンタージュ写真と言えば、昭和の大事件である三億円事件を思い出してしまうのが、ちょっと悲しいですが…(^_^;)。)MRIは量子力学という最新の物理理論を使って作られています。本来はMRIはレントゲンのような映像ではなく、データが出力されるだけなのですが、そのデータを使って医者がイメージし易いように映像化してるんですね。



そして次の革命は人口知能(AI)です。現在はスマホでも指紋認証や顔認証機能があるように映像をコンピューターが解析してそれが誰なのかを判定できるのは一般的になってきました。これも多くの場合顔認識の技術が進化したと思われがちなのですが、近年になって急速に実用化された理由は機械学習の為のサンプルがいくらでも手に入るようになって機械学習のコストが大幅に安くなったからなんですよね。ちょっと意味が分かりにくいと思いすまが、要するにインターネット上にいくらでも学習用の画像ファイルがあって無料で使えるので、その無料のデータを使ってコンピューターに学習させる事でコンピューターの判断能力が上がったという事です。ちょっと難しい話が続いてしまいましたが、要するに、世界中にあるMRIが吐き出すデータをネットにアップしてデータベース化して、それをコンピューターが機械学習する事で経験豊富な医者が診断するよりもずっと早くそして正確な診断を自動でできる時代がまもなく来るという事です。

そうなると、過疎地域の無医村問題なども大きく変わります。無医村問題とは、地域に医者がいない事だと思われがちですが実際はそうではなく、複雑な病気の診断をきちんとできる医者が過疎地域にいないという問題の方がずっと大きいのです。診断が正確にされて、入院が必要であるとか手術が必要であるとなれば、救急車や場合によってはヘリコプターで大きな病院に搬送する事もできます。しかし、現在はその緊急を要する病気であるかどうかの診断が正確にできないのです。診断が正確にできれば投薬を含めて遠隔地でできる治療も沢山あるのです。



皆様どうですか? 本当に革命的な事が起きようとしてるってお分かりいただけたでしょうか? まぁ問題は、私自身がその革命を見るまでちゃんと元気で生きていられるのか??って事なんですが…(^_^;)。え?? そんないつ来るかわからない革命の時まで待てない?? そうですよねぇ…。そんな時は私にご相談ください。経験豊富な、信用できる医者を紹介する事はできると思いますので…(^_^)。 

いずれにせよ、人生100年と言われるようになり、健康に対する重要性はますます大きくなっています。私自身もまだまだ努力が必要ですが、皆様と一緒に、健やかな人生を送る事ができるようにこれからも勉強を続けていくつもりですので、よろしくお願い致します。



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