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第242回「船乗りの健康法」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。若葉が萌えてワクワクする季節になってきましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…先日、健康に興味のある人達の間で最近話題になっているという、グルテン・カゼインフリーの実験を自分でしてみました。グルテンフリーって結構前から話題になっているので、ご存じの方も多いと思いますが…。グルテンフリーというのは、小麦などに含まれるグルテンを摂取しない食事や食品の事です。元はアレルギー症状の出る人向けの食事でしたが、最近では健康志向の人も取り入れるようになっているみたいですね。アメリカでグルテンフリーを意識して小麦の摂取を控える事がブームになり、アスリートやモデル達がグルテンフリーの食生活を実践したところ健康になり、成績が上がったり美しく痩せたと話題になった事から、グルテンにアレルギーのない人たちにも拡がったようです。モデルのミランダ・カーやテニスのノバク・ジョコビッチが有名ですね。グルテンとは、小麦やライ麦などの胚乳に含まれる蛋白質であるグルテニンとグリアジンが水を吸収して網目状になったもので、小麦粉に水を加えてこねるとこれら2つのタンパク質が絡みあってグルテンが作られます。パンやお菓子などを作る時に生地がまとまるのはグルテンの作用というのはよく知られていますよね。欧米ではグルテンフリーのレストランがオープンするなど一般に定着しつつあるそうで、グルテンフリーの食事に切り替えたところ便秘や下痢・頭痛や不眠・生理痛や生理不順・疲労感・肌荒れなどが改善したりダイエット効果があったという人もいるようですが、グルテンにアレルギーがない人に対してグルテンフリーの食生活が健康に与える影響はまだ医学的には証明されていないので、なかなか実践には至りませんでした。



私がそれをやってみようかなと思ったきっかけは、先月号で紹介した「尻活」の先生が「騙されたと思て2週間小麦と乳製品抜いてみて! めっちゃ体調良うなるから!」って言ってた事です。もしあの動画を見た方がおられたら同意していただけると思いますが、もうオシの強い事と言ったら…あの先生が「絶対やった方がいいよ!」と言えば一度は試しておかなきゃ…と思う説得力と、大阪人特有の押しの強さがありますよねぇ…(^_^)。それに、何かを試そうと思う時って、誰に勧められるかの影響が大きいですよね。美味しいお店を教えてもらう時でも、この人が言うなら信用できる…って事はよくあると思います。

乳製品を抜くというのは、カゼインフリーって事ですね。乳製品に含まれるカゼインというタンパク質が腸の粘膜を損傷しやすく、そこからいろいろな不調が起こるという説(いわゆるリーキーガット症候群)があり、グルテンフリーのようにカゼインを抜いた食事をする事で体調が良くなる人もいるようです。ジョコビッチ選手も、グルテンフリーと共にカゼインフリーも実践したところ劇的に体調が改善し、テニスの4大大会「グランドスラム」をすべて制覇したという事で、それらの食事療法がブームになりました。もっとも、ジョコビッチ選手は小麦と乳にアレルギーがあったそうですが。そんな事で、健康は永遠の願いというのは私とて同じ事。早速チャレンジです!



さて、いざ小麦と乳製品を抜こうとすると…これは思ったより大変です。う…ん、普段食べていたものがほとんど食べられないではないか! パンや麺類はそこまで食べてなかったんですが、体にいいと思って食べていたヨーグルトや骨粗鬆症対策として牛乳の代わりに飲んでいた「毎日骨太」もNG。大好きなストラッチャテッラ(モツアレラチーズを生クリームで和えたもの)なんか全然ダメだし、何より悲しかったのは最近お気に入りのケーキ屋さん「C」に行けなくなった事。ケーキなんて小麦と乳製品の塊ですからねぇ。シェフに「グルテン・カゼインフリーの実験するので2週間来れないんです💦悲しい~」と言うと、「えっ、自分で試されるんですか? さすが研究者!」って言ってくれましたけど…。さてそれから、買い物の度に成分表示を見る生活が始まりました。すると…小麦と乳って、ほとんどのものに表示されてるんですよねぇ。特に小麦は、これやったら大丈夫やろ!と思ったほうれん草の胡麻和えや白和え、ひじきの煮物、菜の花の辛子和え…あらゆるものに表示されています。調べてみると醤油を作る際に小麦を使うので、醤油で味付けしたものにはすべて小麦の表示があるようです。しかし醤油中のグルテンはほとんど分解されているので、重度のグルテンアレルギーでなければそれ程気にする必要はないらしい。良かった…少し食べられるものが増えました。



しかしグルテン・カゼインフリーを実践しようとすると、どうしても和食に傾きますね。パンやパスタは食べられないし、米粉パンを買おうと思っても結構小麦グルテンは使われていて、グルテンフリーの米粉パンは近所では売っていませんでした。ネットだと大量に買わないといけないし結構高いので米粉パンは諦め、主食はご飯にする事に。でも最初に3日続けてお鮨や海鮮丼を買って食べたら、体重が3日で1kg増えてしまいました。白米恐るべし。そこで健康のために以前買った五穀米を白米と混ぜて炊こうと思ったんですが、五穀米は麦が入っているのでNG。も~食べられへんもんだらけやん! 仕方ないので玄米を買って、普段和食はあまり食べないためお土産にもらって置いてあった「のどぐろ姿飯の素」を活用する事に。また、蛋白質を摂ろうと思ってプロテインをよくスープに溶かして飲んでたんですが、スープもポタージュ系のものはほとんどが乳製品を含んでいるのでコンソメか味噌汁にせざるを得ません。味噌も麦味噌はダメとか、めんどくさ過ぎる…。プロテインはカゼインを含んでいない事を確認しましたが、実験を始めた時に既に買い込んでいたヨーグルトなどは全て冷凍して代わりに豆乳ヨーグルトを食べる事にし、毎日骨太の代わりに豆乳を飲む事に…。でも豆乳も摂り過ぎるとイソフラボンの摂取量が多くなり過ぎていけないとの事なので1日摂取量を計算して…あ~めんどくさ。まだまだ日本はグルテン・カゼインフリーを実践するには不便ですねぇ。本当にアレルギーの人はほんまに大変やなぁ…と思いました。忙しい時によく頼んでいたイタリアンの宅配も、ピザやパスタはもちろんダメだし、カプレーゼもチーズが入ってるし、サラダだってパルミジャーノがかかっているし…頼めるものがほとんどありません。かなり不自由な2週間でしたが、コンビニやスーパーの和風お惣菜に助けを借りてなんとかしのぎました。



こうして結構苦労して頑張ったんですが、肝心の体調はと言うと…ほとんど変わらなかったんです(^_^;)。でも「あぁ…体調改善しなくて良かった!」と、この時ばかりは思ってしまいました。どうやら私はグルテンアレルギーでもカゼインアレルギーでもなかったようです。もうちょっと変化あるかなと思ってたんですが…。でも、全然体調が良くならなかったという事は私にとってはありがたい限りです。だってすごく体調良くなったら、やっぱりグルテン・カゼインフリーを実践しないと…と思うだろうし、そうなるといろいろ楽しみがなくなってしまいますもんねぇ…(^_^)。体調改善しなくて喜んでる自分も変な気はしますが…。ところでこのグルテンフリーやカゼインフリーなどもそうですが、世の中の健康法には、ビタミンⅮの大量投与が良いとかカテキンを取ると良いとか、日本人は慢性的に鉄分が不足しているので鉄をサプリメントで取るべきだなど、色々ありすぎて何が何だか分からないですよね?? しかも、それらの「健康に良い」という話が出ると必ず「そんなのまやかしに過ぎない。サプリメントを飲んで健康が改善したとか寿命が延びたなどという科学的エビデンス(証拠)は一切ない」とバッサリと切り捨てる科学者もいて、本当に何をすべきなのか分からないと思いませんか? 私の中ではこれらの問題についての答えは既に出ています。皆さん、聞きたくないですか? …うん。聞きたいですよねぇ。



それは、「ほとんどの人にとってきちんと効果が出る健康法は、栄養のバランスが取れた食事をする事と運動を適宜行う事、そしてしっかり睡眠を取る事だけ。それ以外はその人の体質に大きく依存するので、やってみないと分からない。やってみて自分に合う健康法は他人が何と言おうと続けるべきで、合わなければ誰が勧めようがやめてしまって全然構わない」というものです。もったいぶった割にそんな事?って思うかもしれませんが、私はこれは真理だと思っています。健康の話をすると必ず出るのが世の中に出回るサプリメントですが、サプリメントはもうかれこれ100年以上にわたり、効果があるのかないのかという議論がされてきたのではないでしょうか…。そして今なお結論は出ていないように思います。なぜそうなるのか? それは効く人と効かない人がいるから、議論が永遠に噛み合わないのです。例えばサプリメントの大御所と言えばビタミンCですよね。もう世の中で知らない人はいない必須栄養素でして、栄養界の美空ひばりみたいなもんです(ふ…古すぎ…)。ビタミンCがなくては生きていけないにも拘わらず、体内で合成ができないという致命的な欠陥を持っているのが人間です。進化の過程で、遺伝子の突然変異のためビタミンCを体内で合成する力を失ってしまったんだとか…。普通だったらその時点で絶滅してるんでしょうけど、運良く当時のご先祖様が生きていた環境にはフルーツとかが豊富にあって、体内で合成しなくても食事でいくらでも補給できたので絶滅を免れたらしい。良かった良かった…(^_^;)。



ビタミンCが認知されるようになったのは、16世紀から18世紀頃の大航海時代。当時の船乗りは一度船に乗り込むと数ヶ月乗りっぱなしだったので、食事はどうしても乾燥したり瓶詰めにした肉や野菜になって、フレッシュな果物などを食べる事ができなかった。その結果、航海の途中で壊血病になってバタバタ死んでいく乗組員が続出して、当時は原因不明の病気として恐れられたそう。しかし1753年に英国海軍の軍医ジェームズ・リンドが、壊血病に罹った水兵に様々な食事を与えて比較実験を行い、新鮮な野菜や果物、とりわけオレンジやレモンなどの柑橘類を食すると著明な回復が認められる事を突き止めました。これが後のビタミンCだった訳ですね。…とここまでは有名な話だし、以前の通信にも書いたので皆様もご存知だと思います。ただ、この話には裏があるんです。乗組員がバタバタ死んでいった…と聞くと、そりゃもう大変だぁ!って事になるんですが、実際には大航海時代って言うくらいだからそんな事で航海が中止になったりしてないし、むしろどんどん航海に出ていく事が大ブームになっていた時代です。…って事は、「ビタミンC不足で壊血病になって死んだ人も沢山いたけど、同じ環境で生活したのに元気でピンピンしていた乗組員も沢山いた」って事なんです。そもそも皆死んでたら船が戻って来ないしね。先程も書いた通りビタミンCは人間の必須栄養素で体内で合成できないので、補給がされないままだと間違いなく死んでしまいます。しかし、その「死に至るまで耐え忍ぶ力」というのは人によってものすごく違うという事なんです。もしこれが若くてピンピンしている人と基礎疾患が沢山ある高齢者を比較していれば「耐性が違うなんて当たり前やん!」と思いますが、大航海時代に船乗りになろうなんて人は、体の弱い人が応募したとは思えないですよね。何ヶ月も船の上で力仕事しようって言うんだから、元気バリバリ、喧嘩相手にはいつでもなってやるぜ…というような若者が大多数だったのは想像にかたくありません。そのような健康バリバリの若者でも、一定の人は死に至るほど壊血病が進行するのに、元気で航海から戻って来れる人もいるという事なんです。



私はこの事実こそがビタミンCにまつわる終わりのない議論の本質だと思うのです。もし当時ビタミンCのサプリメントがあれば、壊血病で死にかけた人にとっては神様からの贈り物のようなありがたいサプリでしょう。もう文字通り救いの神です。航海から帰ってきたらこのサプリの販売代理店になる契約をすぐにして、知り合いや友達に勧めまくるでしょうね。一方で元気ピンピンで帰ってきた船乗り達は「あんなの、金儲けのまやかしもんだな。大体あんなの飲んで元気になったなんて言ってるヤツは単なる根性なしだぜ…サボりたくて仮病使ってたたかもしれないしな」と全否定するかもしれません。そうなんです…人の体質や耐久性、薬に対する効き目なんかって人によってこんなにも違うんです。なので健康法とかサプリの有効性などはどれだけ議論しても永遠に答えは出てこない訳です。結局は「試してみて良ければ続ける。体質に合う合わないは自分でしか分からない」って事になってしまいます。でも逆にそうだからこそ「色々と試してみる」って事は大切なんだと思います。医者が言ってるからと盲目的に信じるのではなく、有名な医者が言っていれば一回試してみて、合えば続けるし合わなければ続ける必要はない…というのが本質ではないでしょうか。私が言うのは非常におこがましいのですが、そういう意味で医者は決められた手順通りに施術を行うというのが仕事の本質ではなく、経過を観察してその患者さんの変化を確認し、最適な治療に試行錯誤をしてでも近づけていく…というのが本来の仕事のように思うのです。これは私の長年の経験から自信を持って言える事ですが、体質が同じ人なんて本当に一人もいないです。百人いれば百人の体質があるので、その人に合った方法を模索するというのは非常に面倒で手間がかかりますが、やはり王道であると思います。



さて実験を終えて2週間ぶりに「C」に行ったら、シェフが「解禁ですか?!」ってニコニコして迎えてくれました。2週間ぶりに食べた「C」のケーキやコムシノワのクロワッサン、ストラッチャテッラの美味しかった事と言ったら! からっからに乾いた喉で生ビールを一気飲みした時の感じですね…(^_^)。もう、グルテン・カゼインフリーの生活には戻れそうにありません。問題は、実践期間中に買った食材が永遠に残りそうである事ですが…。でも考えてみると、アレルギーではないのにグルテン・カゼインフリーで体調が良くなったりダイエットできたっていう人たちって、単に小麦や乳製品を食べ過ぎてただけ…っていう人もいるでしょうね。まぁ軽度のアレルギーがあって、本当にグルテン・カゼインフリーで体調が良くなる人も一定数いるのも事実のようなので、皆様も自分自身で体験してみて自分の体調を知るという事をお勧めします。世の中にはまだまだ学術的には認められてないけど健康やアンチエイジングに効果がある事ってたくさんありますよね。鍼灸なんかもその一つだと思いますが…。それらの中から皆様のお役に立ちそうな情報を集めてまた研究もしていきたいと思いますので、今後共宜しくお願い致します。





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