こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。急に暖かくなって、春らしくなってきましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 3月と言えばホワイトデーがありましたね。ホワイトデーはバレンタインデー程習慣化されていないようで、バレンタインにチョコを贈っても、ホワイトデーにお返しをくれる人はほんの一部…って経験、皆様ありませんか? 私も例にもれず…だったんですが、今年はいつになくたくさんお返しをもらいました。去年の12月に癌を疑って来年は行けないかも…と思い、整形外科の同門会に20年ぶりに行ったので、久しぶりに会ってお世話になった整形の後輩たちにチョコを贈ったら、みんなこぞって倍返しくらいのお返しをくれたんです。整形って大学の中でも体育会系なので、先輩に贈り物なんかもらったら絶対お返しせなあかんやん!って感じなのかも。良く言えば上下関係や礼儀などがしっかりしているし、悪く言えば非常に閉鎖的な社会(もしかしたら自衛隊とかと似ているのかも…)なので、先輩後輩の関係は永遠に(?)続きます。私もこの歳になると後輩が教授になったりするんですよね。普通医学部の教授と言えば「白い巨塔」よろしく(相変わらず例が古くてすいません…)大変偉い人なんですが、そんな偉い人もかつての先輩に対しては何年経っても先輩として立ててくれますし、色々と便宜もはかってくれます。その中の一人、今は整形の教授をしているT君も可愛いお菓子を贈ってくれたので御礼の電話をして、12月の癌疑いの時にすごく心配してくれてたので進行癌ではなかった話もすると「先生、そら良かったですねぇ! ほんと良かったですねぇ!」と自分の事のように喜んでくれた時は「やっぱり持つべきものは良き後輩…」と再認識しました。

さてそのT君が、抗加齢医学会の講習会で「運動とアンチエイジング」という講演をすると言うので、どんな話をするのかなと思って申し込んでみました。内容は、健康寿命を延ばさない原因は骨折・関節疾患を含めた運動器の障害が一番多く、運動器の障害を予防する事が健康寿命を延ばすためには非常に役に立つという事で、骨粗鬆症や変形性膝関節症・ロコモティブシンドロームなどの説明とそれらの予防方法についてでした。ロコモティブシンドロームというのは、運動器の障害によって移動機能が低下した状態の事を言います。ロコモの診断基準として、立ち上がりテスト(40㎝の椅子から片足で立ち上がれなければロコモ度1、20㎝の椅子から両足で立ち上がれなければロコモ度2、30㎝の椅子から両足で立ち上がれなければロコモ度3)というのがあったのでやってみると、なんとロコモ度1だった!ガーーン!! 年末年始の腹痛事件でさらに筋力落ちたと思ってたけどやっぱり…(^-^;)。ロコモトレーニングも紹介されてたので頑張らねば。

最近は健康寿命を延ばすアンチエイジングのためのライン動画なんかもよく配信されてますね。その中で面白かったのが「尻活」という動画。「腸活」はよく聞くけど、「尻活」って何? と思って見てみると、肛門科の女医さんが発信している動画で、便秘には「腸で起こる便秘」と「肛門で起こる便秘」の2種類があり、日本人の便秘の8~9割は肛門で起こる「出口便秘」なので、まず治すべきは出口の便秘であるという内容なんですが、大阪弁でズバズバ言う先生の喋りが面白いんですよね~。(なんか大阪弁ってこういう話をズバズバするのにピッタリだな…と思うのが微妙に悲しいが…(^_^)。時折隣にいるアナウンサーが標準語で質問をするんですが、もう別世界の住人のようです…。)それでもって、その先生の話の中で、ある患者さんが肛門に便が詰まって「摘便して欲しい」と他の肛門科に行ったら、「そんな詰まってないから下剤飲んどきなさい」と帰されたらしく、その後脂汗が出るくらいしんどくなってその先生のところに来られたので摘便したら、カレー皿山盛りくらい便が詰まってたという事があって、「患者さんが気の毒で。摘便でけへんのに肛門科あげんなよ!そんなん肛門科医ちゃうやろ!て思た。医師免許持ってたら専門でなくても何科の看板でもあげれるけど、便が詰まってるかの診断もでけへんのに肛門科の看板あげたら患者さんに迷惑かかるからちょっとそれやめて欲しいな、肛門科の看板下ろしてください、て言いたくなりました。皆さん糞詰まりになったら本物の肛門科医のとこ行ってくださいね、偽物じゃなくて。偽物多いんでね」とおくびれる事なくズケズケとまくしたてます。真面目な医療の動画でなければあらゆる発言に「ピーッ!」という音で被せられているところ。まぁ肛門科の女医さんという事を知らなかったら、奥ゆかしさも何もないオバハン…という感じです。

しかし肛門科なので、真面目に専門の話をしようとすればどうしても下の話になってしまう訳で、それはそれで専門家として事実をきちんと伝えようとすれば、はっきり話をしないといけないのは職業柄仕方がない事。むしろ、本当の事をオブラートに包む事なくズケズケ言いまくっている姿はある意味「本物のプロ」という感じではあります。(それでも流石に「うんこ、うんこ」とまくし立てずに「便が…」って言い方もあるんだけど…とは思いますが…(^_^;)。)
その先生も「医者は何でも知ってる、医者は完璧、なんて思ったらダメですよ。自分でちゃんと勉強して知識を身につけて、その上でかかってください」と言われてましたが、その通りだと思います。私も整形時代は手術も多く色々な修羅場を見てきましたが、いくら職業とは言え一人の人間なので、やはりできれば見たくないというものはあります。交通事故で緊急搬送されて一命はとりとめているものの、「もうこの足は切断するしかないな…」という場面に出くわした時など、緊急手術が終わった後はどっと疲れて動きたくなくなります。肛門科の先生だって人間なんで、肛門に便が詰まってると思われる時に下剤を飲んで摘便せずになんとかなるんだったらそうしてもらいたい…って人間の心理なんでしょうね。しかしこの先生は違います。もうそんな事はものともせず、やるべき事はバンバンやっていく感じです。流石にこれ以上肛門科の具体的な仕事内容を書くと、皆様の気分があまり良くなくなる可能性がありますのでやめておきますが、一人の人間として、専門家としてきちんと患者さんに向き合うというのはこういう事だろうな、と敬服しました。とても面白くて且つ非常に為になる動画だと思いますので、皆様も興味があれば是非見てみてください。https://sirikatsu.com/videoblog1/
(リンク以外にもYoutubeで「尻活」と入れればこの先生の動画がいくつかあるようです。)

そう言えば先日、ある患者さんからこんな話を聞きました。その方は去年から湿疹と酷い痒みに悩まされ、皮膚科に行っても治るどころかどんどん酷くなるという状態に陥っていたそうです。最初は入浴後や飲酒後に腹部から胸部に蕁麻疹が出て、3週間ほどで全身に広がったため近くの皮膚科に行ったらステロイドの軟膏を大量に処方され、最初は痒みはそれ程でもなかったのがステロイドを使用すると湿疹まで出て痒みがどんどん強くなり、夜も眠れない程になったらしい。一度ステロイドをやめて抗真菌剤を塗ると湿疹は改善したそうですが、突発的に体のあちこちに強烈な痒みが出る状態が続いていたので、別のアレルギーを専門にしている皮膚科に行ったら、「ステロイドは中途半端に塗っても効かないから、大量に使用するように」と言われたらしく、言われた通りステロイドを大量に塗ると、その時は少し痒みは治まるけどまた酷くなる…という状態が続いてたんだとか。全身に猛烈な痒みが出るというのが疥癬の症状に似ているので、そうじゃないかと知り合いの別の医者から言われた事があったらしいのですが、その時は本人も既にそれを疑って自分で拡大鏡を使って調べていたけど、違うと思ったそうです。疥癬というのは、ヒゼンダニというダニがヒトの皮膚の中に棲む事で生じる疾患で、ダニの幼虫や脱皮した抜け殻などに対するアレルギー反応で猛烈な痒みが出るものです。ヒゼンダニの大きさは約0.3mmで、見つけるのはとても難しいので、その棲み家である疥癬トンネルという長さ5mm前後の線状の皮疹を見つける事が診断のコツですが、疥癬を疑っていないと診断はなかなか難しいようです。

半年以上酷い状態が続いて、重症の蕁麻疹に使う、保険が利いても1回何万円もする注射を何回しても、内服薬を変えたり何種類も飲んだりしても全然良くならなかったので、本人がもう一回ネットで症状や経過を調べたらどう考えても疥癬の症状にドンピシャだし、痒くて湿疹になっているところは必ずしもヒゼンダニがいるところではなく、かつていたところで抜け殻や糞が残っていてそのアレルギーで湿疹が出ている事が多いのでダニは見つからない事が多いという事を知って、もう一度自分の体をくまなく観察して疥癬トンネルがないかを探したところいくつも見つかったので、疥癬に詳しそうな皮膚科をネットで調べて行ったらやはり疥癬と診断されたそうです。疥癬には専用の治療方法があり、日本ではイベルメクチンという内服薬を飲みます。(イベルメクチンは日本の大村智博士が静岡県の土壌から新種の放線菌を発見し、その放線菌から産生されるエバーメクチンが様々な寄生虫疾患に効果がある事を突き止めた事で開発された、非常に効果の高い薬です。大村智博士がこの功績で2015年にノーベル賞を受賞したのは、記憶に新しいところ。)幸いにしてこの患者さんは、イベルメクチンを服用してからは順調に回復してきた模様です。

少し解説しますと、ステロイドを使用してから湿疹が出て痒みがどんどん酷くなったというのは、ステロイドを大量に使うと免疫力が落ちるので、その為疥癬に感染したのではないかと思います。ステロイドは炎症を抑える薬ですが、炎症というのは人体の免疫反応で、体に外部から異物が入ってきた時に炎症を起こす事で異物と戦っている訳です。よって、炎症というのは人体を守る為に絶対必要な反応で、免疫の基本反応なんです。ただ免疫機構が異物と戦って無事に異物が体からなくなれば、免疫隊も解散…となって炎症も治まるのですが、異物が体からなくなっても免疫隊が解散しなかったり、本来異物として排除する必要のないもの(花粉やハウスダストなど)にずっと反応して炎症が治まらない事があります。これがいわゆるアレルギーでして、そのアレルギーを抑える代表的な薬がステロイドです。では、どうやってステロイドは炎症を抑えるのかと言うと、実は強制的に免疫を抑え込んで炎症を抑えるのです。つまりステロイドは過剰な免疫反応には効果的ですが、同時に正常な免疫も抑え込んでしまうので、感染症にかかりやすくなってしまうのです。よって、アレルギーが原因の湿疹にはステロイドを塗ると効果的なのですが、細菌が原因のニキビや真菌が原因の水虫などにステロイドを塗ると、免疫を抑え込む事でかえって悪化する訳です。

つまりこの患者様のケースは、本来ヒゼンダニという外部からの侵入者に対して免疫反応が起きて必死に体が追い出そうとしているにも拘わらず、ステロイドを塗る事で免疫を抑え込んで、かえってヒゼンダニが増える環境を作っていたという事になります。つまり、これって医原性ですよね? しかし、彼がずっと通っていたアレルギー専門の皮膚科の先生は、一度も皮膚を実際に見て診察した事がなかったらしい…。これには私も「えっ、1回も? 皮膚科で症状が出てる皮膚を見ないってどうなん??」って驚きました。また疥癬は脇や陰嚢の結節が特徴なので、それがあったか聞くと「陰嚢には大きいのができたので『こりゃまずい』と思って最初の皮膚科の先生に見せたんだけど『あぁ…これって汗疹の大きくなったもんだね。陰嚢はステロイドの吸収がいいから、弱めのステロイド出すのでそれ塗っておいて』って、ステロイド出された。ずっとそれ塗っても全く治らなかったからまた相談したら『おかしいなぁ…でもなかなか治らない人は多いのよ。他にできる事ないから治るまで根気よく塗るしかないね』って言われた。でも塗れば塗るほど悪くなっていく感じがして、陰嚢に塗るのはやめました。今考えると、本当に皮膚科の先生ってどういうつもりなんでしょうね??」と、怒りとも諦めともつかない表情で話してくれました。そして、「まぁ、その皮膚科の先生の対応はコントみたいな話だけど、アレルギー科の先生よりは『見ただけでもマシ??』って考えないと寂しくなりますね…(^_^;)」と言われていました。確かに…本当に悲しい話です。

この話を聞いてネットで体験談などを見てみると、同じように長い期間湿疹が治らず日常生活がまともに送れないという人が多いのに改めて驚きました。そして多くの人が「どの皮膚科に行ってもまともに皮膚も見ず、ステロイドを出して『これ塗っておいて』と言われて1分で診察が終わる事がほとんどだった」と書いていました。また、ステロイドを塗っても症状が改善しないと訴えると、効果の強いステロイドを出され、ステロイドの副作用が出るまで塗り続けた…という体験談がなんと多い事か。湿疹や蕁麻疹というのは原因不明な事が多く、何年も治らない事も多いのは事実なんですが、もしも対応した皮膚科の先生がきちんと皮膚の状態を見ていれば、このような患者さんの何%かは、本来は救われているかもしれないと思うと悲しくなりますね。勿論本当に原因不明の皮膚疾患というのは多いので、現代医学の限界については仕方ないとは思いますが、一回も皮膚を見る事なく、「抗ヒスタミン剤出すからそれ飲んで、ステロイド出すからそれ塗っておいて。薬がなくなったらまた来て下さい」という診療はいかがなものかと思います。少し皮膚科の名誉の為に私見を申し上げれば、確かに抗ヒスタミン剤を飲んでステロイドを塗ると治る皮膚疾患は非常に多いので、恐らく8割以上の患者さんはそれで本当に治っているとは思いますし、きちんと患者さんに向き合っている先生も多いとは思います。ネットには大抵嫌な思いをした人が書き込みするので意見は偏っているとは思いますが、同じ医者の目から見てもそういう診療をしている皮膚科も確かに結構あるな…というのが正直な感想です。先の肛門科の女医さんは「摘便でけへんのに肛門科あげんなよ!」と名言を残していますが、その言葉を借りれば「皮膚も見んと皮膚科あげんなよ!」って事ですね。そして前述の患者さんは最後に「まぁ今回学んだのは、自分がしっかりしないといけないって事ですね。医者とか弁護士とか専門家に任せておけば安心って言う人いるけど、そんな事絶対ないと思う」とも言われてました。皆様もしっかり勉強して、医者は選んでくださいね。私も身につまされる思いです。自分も本物の医者と言われるようにさらに精進しますので、今後共宜しくお願い致します。
