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第235回「まず始めるべき事は…」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。台風の後は急に涼しくなりましたが、皆様台風は大丈夫でしたか? 先日、イギリスのエリザベス女王がついに亡くなりましたね。96歳で、70年間イギリス史上最長の君主として君臨したという事も凄いですが、特に驚いたのは亡くなる2日前までしっかり立って笑顔で公務をこなされていたという事です。まさにピンピンコロリ。理想的な生き方(大変失礼ながら死に方…?)だったのではないでしょうか?

私もそれを目指して日頃の運動不足を解消しようと、最近ウォーキングを始めました。きっかけは、健康オタクの友人Mがウォーキングマシンを買ったけどスピードが遅すぎて物足りないとかでもっと速くできる機種に買い替えたので、古い機種をもらった事です。ウォーキングマシンがあれば暑い日も外に出なくて済むし、景色を見ながら運動できて最高!と思って窓際にマシンを設置しました。早速一番景色の綺麗な夕暮れ時にウォーキングしようとしたのですが…あれ?機械がちゃんと動かないぞ? ざっと説明はしてもらったんだけど…。ネットでユーザーズマニュアルを探して調べていたら、外はすっかり暗くなってしまいました。残念。でも夜景でもいいか…と始めたところ、夜景を見ながら最近はまっているmerry-go-round of lifeをかけてウォーキングすると最高! つい調子に乗って音楽に合わせていると、ジョギングのようになってしまいました。しかし日頃多少の筋トレはしているものの、歩くのは通勤と買い物程度なのでいきなりのジョギングは続きません。昔から球技は得意だったけど走るのは苦手で、ランニングなんて学生時代以降してないし…。しかし有酸素運動でも10分以下の運動はカウントに入れないと主張する説もあるので、こらあかん…とスピードを落としてなんとか10分続けたら、足は痛くなるし翌朝は体中痛くて起きられず…日頃の運動不足を痛感しました💦。翌日の夕方になるとましになってきたので、前日よりはスピードを落として10分ウォーキングしてみたのですが…前日の無理がたたったのか、その次の日は筋肉痛が倍増。こらあかん…諦めてちょっと休憩。情けない…😢。結局運動を続けるには「運動を続ける事ができる体を作る事が初めにありき…」って事ですねぇ。なんだか禅問答のような感じですが…体を少しずつ慣らしながら、また頑張ろうと思います。



さて先日美容皮膚科学会にWEB参加し、久々に新しい美白剤をみつけました。システアミンとニコチン酸アミドいう有効成分が含まれた美白剤なんですが、システアミンはハイドロキノンよりも多くの経路でメラニンの合成を阻害すると共に、メラニンの脱色と角質の溶解作用もあり、ニコチン酸アミドはメラニンの角質細胞への輸送を阻害し、表皮の天然保湿因子の産生を促進する作用もあるんだとか。ハイドロキノンのような刺激や副作用もなく、ずっと使い続けられるというのも魅力的です。システアミンは以前から強力な美白効果がある事は分かっていたらしいんですが、臭いが強くて使いにくかったそうで、スイスのメーカーがその臭いを抑える事に成功し、久々の有効な新しい美白剤の登場!という事で鳴り物入りの発表でした。学会後、早速輸入業者に連絡してサンプルを取り寄せようとしたんですが、酸化しやすいので特殊な容器に入っていて、まだサンプルが作られていないとの事。「実際にお持ちすればその場で試していただけるのと、少しでしたらお分けできます」と担当者に言われたので、クリニックに来てもらう事にしました。



学会の講演やメーカーの資料では、レチノイン酸ほどではありませんが、美白剤単独にしてはまずまずの効果が出ていたので、早速試してみたんですが…。「えーっ、これで臭い抑える事に成功したって言えるん??」って思わず叫んでしまったくらい、めっちゃ臭い!!「僕も使ってるんですが、塗っていると慣れてきますよ」と担当者君。30代の男性でしたが、確かにお肌は綺麗です。「美白効果もいいんですが、お肌がモチモチになるって大好評なんで、ぜひ全顔に使ってみてください」と言われ、全体に塗っているうちに最初よりは臭いに慣れてきましたが、やっぱり臭い。朝洗顔せずに塗って15分置いてから洗い流すんだそうですが、15分も耐えられるかなというレベル。「洗った後のモチモチ感が嬉しくて、臭いは我慢できると皆さんおっしゃいます」と言われ、話しているうちに15分経ったので洗い流してみると、確かに少しモチモチした感じはしました。しかしその後…洗い流したのにまだ臭いんです。マスクをすると一層臭くて、担当者君が帰ってから洗顔料でも洗ってみたんですが、まだ臭い…。お風呂に入って、翌日やっとましになった感じです。これは1ヶ月も続けられないな…と思いつつ、でもせっかく少し分けてもらったので、全顔でなくシミだけに塗ったらましかな?と思って翌日はシミだけに塗ってみました。全顔よりはましだけど、ほんの少しシミに塗るだけでも結構臭いなぁ。しかし久々に出た新しい美白剤だし、我慢してしばらく頑張ろうと思って続けてみました。臭くてちょびちょびしか塗れないので、少し分けてもらった分でも1ヶ月くらいもちそうでしたが、1週間でクリームが酸化して赤くなってしまったので断念。1週間でシミが薄くなる訳はなく…。刺激がないというのはいいなと思ったんですが、この臭いはなぁ…。やっぱりシミにはレチノイン酸を超えるものはまだまだなさそうです。残念。



さてその美容皮膚科学会ですが、最近美容皮膚科を始める先生が増えてきたという事で、近年シミやたるみの治療方法のまとめなどの講演が多く、同じ先生が何回も登場して同じような内容の話をするのでちょっと飽きてきたなぁ…と思っていました。ところが今年は美容皮膚科学会にしては珍しく、変わった特別講演が2題あったんです。どちらも「老化細胞の除去」による「老化の治療」に関する講演でした。近年、「老化は自然現象ではなく疾患である」という概念が浸透してきています。ではその老化はなぜ起こるのか?と言うと、細胞分裂を停止した「老化細胞」が分泌する炎症性物質による、臓器や組織の慢性炎症が原因だという事が最近の研究で分かってきました。「老化細胞」とは、一定の回数分裂を繰り返してそれ以上分裂できなくなった細胞の事ですが、分裂を繰り返してDNAのテロメアが短くなる事以外にも、酸化ストレスやDNAに傷がつく事によっても細胞の老化は引き起こされます。そのような老化細胞を除去すれば、慢性炎症による老化によって引き起こされる癌や心血管疾患・糖尿病などの代謝疾患・神経系疾患・免疫疾患など様々な疾患を予防・改善し、若返りが可能になるのではという研究が近年盛んに行われているようです。マウスでは老化細胞を除去すると若返って動脈硬化が減り、癌による死亡も減って寿命が延びたそうです。また老化細胞を移植すると老化が加速して運動能力が低下し、寿命も短くなったとの事で、老化細胞が老化の鍵を握っている事が分かります。



老化細胞除去治療の1つは、老化細胞が生きていくのに必要なGLS1という酵素の阻害剤です。老齢マウスにGLS1阻害剤を投与すると老化細胞が選択的に除去でき、腎機能や肝機能・肺線維症・糖尿病・動脈硬化・筋力低下などが改善したそうです。ヒトでも加齢に伴ってGLS1が増えていく事が分かっているので、ヒトでもGLS1阻害剤で老化を予防し、様々な疾患を改善できるのではないかという事で、今後治療薬の開発を目指しているとの事でした。

もう一つは「老化細胞除去ワクチン」です。老化細胞に特異的なGPNMBという抗原に対する抗体を作るワクチンを作製してマウスに投与したところ老化細胞が除去でき、内臓脂肪が減って糖尿病や動脈硬化・筋力低下が改善し、寿命が延びたそうです。老化細胞除去薬というものは既にあるらしいんですが、抗癌剤の一種なので副作用もあるのに対し、老化細胞除去ワクチンはそのような副作用もなく、効果の持続期間も老化細胞除去薬より長かったという事です。ヒトでも老化細胞に特異的なSAGPという抗原が分かっており、それに対する抗体もできているようで、この抗体を使ってPET検査をすると、体の中にどれくらい老化細胞が溜まっているかというのを見る事ができるようになるそうです。さらにSAGP抗原に対するワクチンや、老化細胞が分泌する炎症性物質に対するワクチンも開発中との事でした。これらが開発できると健康寿命120歳も夢ではないという事ですから、今後が楽しみですね。



まぁ医療となると、どうしても「病気になったものを治す」という概念に囚われてしまうのですが、実際には「病気にならないようにする」方が何倍も楽です。この老化炎症も老化する前に老化の原因となる炎症を止めたり、炎症を起こさないようにするという予防に労力を割く方がずっと簡単な訳です。皆様も自分で簡単にできる慢性炎症に対する予防方法としては、サプリメントを使うという事が挙げられます。…と言うと、「え?サプリって高いだけで効果は全然ないし、普通にきちんと食事をしていればそれ以上にサプリを取る必要なんてないって、テレビでも専門家が言っていたけど…」と思う方も多いと思います。有名なところではビタミンCとかビタミンDなどのビタミン療法や、鉄・亜鉛などのミネラル投与、そしてDHAなど健康に良いと言われる油や食材を取り入れる方法などがありますが、サプリメント大国のアメリカでは、サプリを使った栄養療法は立派な治療としての地位を確立しています。これは恐らくアメリカには日本のような健康保険制度がなく(健康保険はあっても保険料が高いばかりか、実際に病気になった時の自己負担額もすごく高い…)簡単に医療機関に行くことができないという事情があるので、サプリメントを使った自己治療というのは日本とは比較にならない切実な需要があるからだと聞いています。私もたまに自分で飲んだり、患者様に処方する為にアメリカからサプリメントを取り寄せる事がありますが、アメリカ製のサプリを買った事がある人だったらまず最初に思う事は「で…でかい! 一粒がこんなにでかいと飲めないよぉ!」って事じゃないでしょうか…。あんまり大きくて飲み込めないので、サプリカッターなるものがAmazonなどにも売っていて何等分かにカットしたり、すり潰して粉にするような機材まで売っているようです。それもそのはず、含有量を見ると日本で売っているサプリとはまるで違います。



例えばビタミンBにはビタミンB1からB12まであって(途中欠番もありますが)、ビタミンB群には独自の名前が付いているビタミンも含まれるので、一体どれを飲んだらいいのか分からないと言う人が多いため、大抵はマルチビタミン…という形で販売されています。これはほとんどの場合はビタミンB群に所属する何種類ものビタミンをそれぞれ必要と思われる分量を混ぜて一つの錠剤にしているというものですね。だから詳しいことは分からなくても、とりあえずマルチビタミンを飲めばビタミンBについてはバランスよく摂取できるという便利なものです。このマルチビタミンという商品は日本でも沢山売られているのですが、アメリカ製との違いは何と言っても一粒に含有しているそれぞれのビタミンの量です。詳しいことは省略しますが、通常は少ないものでもアメリカ製のものは日本製に比べて3倍くらい、多いものでは50倍くらい含有量が違う事もあります。そりゃあ一粒も大きくなる訳ですよね。これは日本とアメリカでのビタミンに対する考え方の違いを反映していると思います。日本におけるビタミンの摂取推奨量はビタミン欠乏症の予防に必要な量…という事を想定していますが、アメリカでは疾病を治療する為に必要な量…という事を想定している事が多い為です。



ビタミン欠乏症で有名なのは、ビタミンCが欠乏する事で発生する壊血病であったり、ビタミンB1が欠乏する事で発生する脚気であったりですよね。でもこれらの病気は、名前は聞いたことがあるかもしれませんが、自分の人生の中でそのような病気になった人に出会った事があるでしょうか? 私は一人も出会ったことがありませんし、恐らく皆さんもそうでしょう。って事は、現代の先進国においてビタミンの欠乏によって発生する病気はすでに克服されていると言っても過言ではありません。ビタミンB1の摂取量が最低限これを下回ると脚気などの病気になる可能性があります…というのが欠乏症予防に必要な量になります。それは非常に少量なので、現在の日本において欠乏症になるような人は事実上いないのから、わざわざ高いお金を出してサプリを摂取するのは馬鹿げている…というのがサプリメント否定派の意見です。一方でアメリカではビタミンを大量投与する事で慢性炎症や慢性疾患を治癒させようという発想ですので、投与する量が全然違います。例えばご存知の通りアメリカは肥満大国ですが、それは大量の糖質を食事から取っておりそれを消化した結果です。実は糖質の消化吸収には大量のビタミンB群が使われます。かなりの肥満であるというだけでも、ビタミンBは脚気になるほど不足はしていないが、慢性炎症を治癒させるには全然足りない…という人がものすごく多い訳ですね。このような慢性炎症を抱えた人たちは生活習慣病予備軍になるので、当然ながら発症する前の段階で予防治療を行った方が良いという事で、大量ビタミンの投与が行われています。そのような訳で「治療目的」でビタミン大量摂取を行おうとすれば、残念ながら日本のドラッグストアで売っているようなものよりも、アメリカ製のサプリを購入した方がコスパも断然良いというのが実態です。アメリカ製のサプリがあまりにも大きくて飲みにくい場合は、日本製でも医療用の含有量の多いものを多めに飲むという手もありますが。



そうそう…それから老婆心ながら一言。私がウォーキングマシンを使って運動を始めようとして、実はウォーキングマシンで運動できるレベルの体力を先につけなければならない…というトホホな結果を恥ずかしながら暴露したのには理由があるんです。自己流で「サプリメントを使って色々と試してるんですが、全然効果が出ないんです…」と相談される患者様が当院にも時々来られます。それって、話を聞いたり血液検査などをしてみると「そもそもサプリをきちんと吸収できる腸内環境になっていない」って事が多いんですね。ご存じの通りすべての栄養は胃腸で消化吸収されますので、胃腸の環境が悪いと必要な栄養素を吸収しないばかりか、不要な毒素を吸収してしまいます。そこでまずは胃腸の環境を整える事を先にしないといけないんですが、それができていなくてせっかく飲んでいるサプリメントを吸収できていないって人が意外に多いんです。ただ、改善したいと思っている問題そのものが胃腸の不良から来ているというケースも多いので、まさに胃腸の健康はすべての健康の源ですね。 

私もこの年齢になれば人生の中で一番重要だと思う事が「健康」になってきますし、次に「美しく活き活きとした生活を続ける」、そして最後に「イギリスの女王陛下のようにピンピンコロリを目指す」って事ですね。(英国王室ファンの皆様には決して女王陛下を侮辱するような意味ではありませんのであしからず…むしろ尊敬しておりますし、何より素晴らしい生き方をされたと思っています。まさに尊敬に値する生き方だと思います。)これからも亡くなられた女王陛下をお手本に、最後の最後まで健康で美しく生きていく為の努力を皆様と一緒に追求していきたいと思いますので、よろしくご支援をお願い致します。




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