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第233回「長期努力のコツは?」


こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。今年は梅雨明け宣言が異常に早く、すぐに真夏が来たような暑さでしたが、その後はまた雨や曇りの日が続きましたね。お天気って分からないものですねぇ。でもこれから本格的に暑くなりそうですので、皆様熱中症にはお気を付けくださいね。私も最近外出(と言っても食料品の買い物くらいなのですが…)は日中を避けて夜少し涼しくなってからにしています。でも学会は相変わらずWEB参加で暑さには関係ないので、先日も抗加齢医学会にWEB参加しました。抗加齢医学会はアンチエイジング医学の情報収集には欠かせない学会です。今年の抗加齢医学会は「心身ともに若々しさを保つアンチエイジング科学とエビデンス」というテーマで開催され、会長が神経内科の先生だったので、「脳のアンチエイジング」に関する講演がたくさんありました。アンチエイジングには見た目も体も大切ですが、確かに「脳のアンチエイジング」は重要ですよねぇ。誰しもがボケたくはないですもんね。私もボケて周りに迷惑かけるのはいやなので、今からボケないようにあらゆる手を尽くそうと考えていますから、他人事ではありません…(^_^)。今回の学会は興味津々。講演を聴くのにも自然に熱が入ります…(^_^;)。



「脳のアンチエイジング」の研究で最も力が入れられているのは、やはり認知症の予防に関する研究です。ご存じの方も多いと思いますが、認知症とは脳の病気や障害など様々な原因によって認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態を言います。認知機能とは、物事を正しく理解・判断し、適切に実行するための機能です。加齢によって脳も老化し、健康な人でも「物忘れ」をするようになりますが、認知症の原因の70%以上を占めるアルツハイマー病の初期症状は「物忘れ」から始まる事が多いので、注意が必要なんですよね。そして年をとるほど認知症になりやすくなるので、超高齢社会の日本では認知症に向けた取り組みが今後ますます重要になる訳です。日本における65歳以上の認知症の人の数は2013年の統計では約440万人で65歳以上の人口の15%を占め、認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)を含めると30%近くに達していたというのは驚きです。さらに2020年には65歳以上の認知症は約600万人と増加しており、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されていると言いますから、他人事ではありません。

しかし若くても脳血管障害やアルツハイマー病のために認知症を発症する事があり、65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と言います。(そう言えば当院のアルバイトT君はたまにしか来ないので前回覚えた事を次に来た時は忘れていて、他のスタッフに「記憶障害」とか「若年性認知症」とかってからかわれていたなぁ…。彼の将来は大丈夫だろうか?? 本人に言わせるとパソコンなど「興味のない事は覚えられない」そうで、確かに得意な接客に関する事はよく覚えていましたが…。)



認知症の原因となる病気で一番多いのはよく知られているアルツハイマー病で、脳にアミロイドβとタウと呼ばれる蛋白質がたまり、脳の神経細胞が障害されて数が減少していく病気です。遺伝的な素因と後天的な因子(生活習慣など)の両者がリスクとなって発症すると考えられていますので、その予防にはやはり生活習慣が重要になってくる訳ですね。その他には、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害で脳が損傷されて起こる血管性認知症と、脳にレビー小体と呼ばれる蛋白質の塊がたまって神経細胞が障害されるレビー小体型認知症があります。脳血管障害の予防には生活習慣が重要な事は言うまでもありません。 こんな事を書きながらふと「いったい、いつの頃から認知症って病気と思われるようになったんだろう?」って考えてしまいました。私の小さい頃は近所のおじいいちゃんやおばあちゃんは日がな一日日向ぼっこしていたり、あまり喋らずにぼーっとしていたり、外出したら帰り道が分からず迷子になってしまって家の人が慌てて探しにいったり…というのはごくごく普通の日常だったような気がします。つまり「ボケる」とは、歳を取ればシワが増えるのと同じくらい当たり前の事であって不可避なもの…ましてや「病気に分類されるようなものであるはずがない」というのが共通の認識だったように思います。そんな世の中の認識がどうして変わってきたのかと言うと、「そうは言っても何歳になっても元気ピンピンの人もいるんだけど、あの『差』は何なの?」と思った人達がいたからですね。



大抵の人は歳をとると体が弱って杖をつかないと歩けなくなったり、顔がシワシワになったり、さっきご飯を食べた事を忘れるようになったり…と老化していく訳ですが、世の中には老化とは無縁なんじゃないか??と思うくらい若々しい老人?(年齢から言えば…)に出会う事がありますよね。テレビなんかでたまに元気はつらつのおじいちゃんがいて、レポーターが「失礼ですけどおいくつですか?」と聞くと「今年で80歳になります」なんて言って、会場のお客さんが一斉に「えぇぇえ!見えないぃぃ!」という反応をするシーン、ありますよね。あれです、あれ。そういう実例を見せられると人間の性として「あの『差』は何なの? 何が原因なの?」と思うようになっています。(例えばデヴィ婦人とか…もう82歳なんだって。なんであんなに元気なの??…(^_^))そこで超若い人と普通の老人…を比較研究すると、どうも超若い人はこのホルモンが沢山出ているとか、逆に普通の老人は血中にこんな物質の濃度が高いなどのデータが出てきて、実際その若さの原因と思われる物質を一般の老人に投与すると、本当に元気で若々しくなってきた…というような事がままあります。そうなると、薬を投与する事で若返るという事は「治せる病気の一種」という認識が高まり、今では「老化は病気であるので治すべき」と主張する研究者も多くなってきました。そのような中で「認知症」は多くの研究者が「病気」と認定しています。逆に言うと「病気なんだから防げるし、治す事も場合によってはできる(今の医療レベルで治せなくても将来治す事ができる可能性がある…という事も含めて)と考えられています。



ボケや認知症にはまだまだ無縁…と思っている方も多いと思いますが、アルツハイマー病はなんと発症する25年前から始まっているそうなんです。仮に75歳で発症するとすれば50歳から始まっている訳で、一旦発症すると今のところ良い治療薬がなく10年で進行して死亡…という事ですし、何よりも発症すると周囲の人が大変になってしまいますから、50歳から手を打ってなんとか発症しないようにしたいですよね。「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」の違いを区別するのはなかなか難しいらしいんですが、もの忘れの為に日常生活に支障をきたしているか、忘れっぽくなった事を自覚できているか、もの忘れの範囲などが参考になるようです。例えば経験の一部ではなく経験した出来事自体を忘れる、大事な約束を忘れる、物忘れの自覚がないなどの場合は認知症のサインだと言います。「昨日の夕食、何食べたっけ」ではなく「昨日夕食、食べたっけ」となると危ないという事ですね。あと、加齢による物忘れはあっても健康な場合は学習能力は通常維持されるので、新しい事が覚えられなくなったら要注意です。ただ、軽度認知障害(MCI)の場合はもの忘れが多いという自覚もあり、日常生活にはそれほど大きな支障はきたさないという事なので、「最近物忘れが多くなったなぁ」と思ったら、認知症発症のリスクである生活習慣を見直した方がいいかもしれません。



認知症はなってしまうと確実に治癒させる治療薬は現時点ではありませんが、英国の権威ある医学雑誌「LANCET」によると、認知症発症の危険因子の中で修正可能なものには、難聴・教育不足・喫煙・鬱・社会的孤立・大気汚染・運動不足・高血圧・肥満・糖尿病・アルコール摂取週21単位以上という12の危険因子があり、これらを改善する事で認知症の発症を遅らせたり、発症を約40%予防する効果が期待できるとの事です。これらの危険因子の中で、私が特に気になったのは「アルコール消費と認知症の関係」です。英国における23年間、9000人が参加した研究で1週間のアルコール摂取量と認知症リスクを調査したところ、1週間のアルコール摂取量が14単位(140g)を超えると摂取量に比例して認知症リスクが高くなるという結果が示されていました。1週間14単位という事は1日2単位=20gですから、アルコール度数12%のワインやシャンパンだと167ml、グラス1杯ちょっとです。こんなん完全にオーバーやん!! ちょっと前から健康長寿のために飲み過ぎには注意しようと思って、シャンパンやワインを控えて特別な日以外はなるべくビールにしてたんですが、それでも1日400ml。350ml1缶だといいけど500mlは飲みすぎって事ですよね。こらあかん! 控えたつもりやったのに。抗加齢医学会に参加しだした10年ほど前にワインは1日グラス1杯程度がいいと聞きましたが、本当だったんですね。当時は「そんなん絶対無理やん」と思っていましたが…。ちょうど南イタリアタッチのガーデンテーブルを買って、テラスでミニボトルのロゼスパークリングを飲むのにはまってたんですが、ローソンで売ってるアルミボトルのは280mlなので、それすらもオーバー。ガーーーーン!! 一時は目の前が真っ暗に…(大袈裟か、、)。

そんな時、例の友人Mが蕁麻疹が出てなかなか治らないからしばらくお酒はやめると言って、「ノンアルでワインの休日」という缶入りのノンアルワインを試したら結構いけると言うので、私も買ってみました。飲んでみると結構美味しいやん。そうや! これでロゼスパークリングを割ったらええんや!と思いつきました。



試してみるとなかなか美味しい。ロゼスパークリングがリニューアルした時ちょっときつい味になったな…と思っていたので、ノンアルで割るとちょうどいい感じ。これならロゼスパークリングは1日半本で十分なので、140mlやしOKやん! そこまでして飲まなあかんか…という感じですが、これだけが楽しみなもんで…。それにその英国の研究結果のグラフでは、全く飲まない人も認知症リスクが少し高く、アルコール摂取量が週に4~14単位の人が一番リスクが低かったので、節度を保てばアルコールにもアンチエイジングに好ましい側面があるという事を示しているのかもしれないと、講演していた先生も言われていたし…。(自分に都合の良い事は妙に記憶に残るんですよねぇ。T君の事言えないな…。)



そんなこんなで認知症は「病気なんだ」という意識をまず持つ事で「病気なんだから予防すべき」という風に発想を切り替えていきたいと思っています。先に話したように超元気な高齢者ってその元気さは羨ましい限りなんですが、不思議と「だからと言ってその人になりたいとは思わない…」って気がするのは私だけでしょうか?? 分かりやすい例を挙げると「デヴィ婦人の元気さは羨ましいが、デヴィ婦人のようになりたいとは思わない…」って事なんですが、あまりにも失礼すぎ?? まぁ芸能人とか目立つ人を想像するから特にそうなってしまったのかもしれませんね…。ただ、この「元気な老人=うるさい・自己主張が強く個性的すぎ」というイメージは私が昭和の価値観を抜け出していないからなのかもしれません。(あ…決してこのイメージはデヴィ婦人の事言っている訳ではないですよ…え?しつこい?)これからは元気が有り余っているような人だけが運良く生き延びて高齢者になるのではなく、ごく普通の人が普通に長生きして高齢者になっていく時代になるのです。


しかしながら、これからますます「格差」は広がっていきますね。経済の世界では「格差社会」と言われるようになって久しいですが、所得が高い人と低い人の差は、昔は何倍…という程度だったけど、今では何十倍何百倍の違いなんて当たり前になってしまいした。同じように高齢者の健康問題も、確実に格差が広がります。その秘密は「長期投資ができるかどうか」にあるからです。経済の世界で所得の差がどうして生まれるかと言うと、何年も先を見据えて自分への投資を継続できるかどうか…が鍵を握っているという事を否定する人はほぼいません。逆に何年先なんて短期であって、何十年単位で投資を継続するかどうかが大切と言う人も多いです。同じように健康って、先のアルツハイマーの例で言えば何十年も先の自分の健康に投資を継続するという気持ちがないと予防に取り組めない訳です。逆にそれができる人は確実に実りを得る事ができます。十年以上先を見据えて今から投資や努力を続けていく…って、言うのは簡単だけど実行するのは恐ろしく難しい事ですね。 私自身も長期間にわたって行うべき事のモチベーションを維持するにはどうしたらいいのかな?と悩んでいたんですが、ある人から素晴らしい事をお聞きしました。「そんなのは大昔に哲学者のデカルトが言ってますよ。長旅をするには自分の乗る船をまず快適なものにするべきだ…って」つまり何年も旅を継続しようと思うんだったら、乗り込む船を快適な空間で過ごしやすくストレスの少ないものにしようとしない限り、続けようにも続かないよね…って事です。一旦乗り込む船をそのような気持ちの良い乗り物に仕上げると、人間ってそれを維持したいという気持ちが働いて、自然とその方向に努力をするので気付けばその努力が何年も続いている…という事です。



当院の話をさせてもらいますと、「美しい人」はその美しさを維持する為に大変努力をされますが、本人はその努力に対して苦痛をあまり感じてないという人が多いなといつも思います。一旦美しさを手に入れると、それを失う寂しさを考えると維持する為の努力は大した事ではないように思うのだと思います。同じように健康な人ほど健康を維持する事に対して継続した努力をされているように思います。健康な人から必ず聞く言葉は「健康が一番大切ですよね」って事です。つまり私なりに分析した結果なんですが、長期にわたり努力を継続させる一番良い方法は、一旦一気に水準を引き上げて、その後はそれを「失いたくない」と思うモチベーションによって努力を継続したくなるようにする…という事です。ここで「一気に引き上げる」というのが重要です。努力すればそのうち良くなる…というような事については必ず途中で息切れしてしまいます。一旦一気に引き上げるという事が大切だと思います。(まぁ「結果にコミットするライザップ」みたいなところも短期間で一気に引き上げるからいいんでしょうね…(^_^)。)私もアンチエイジング治療をやっていて本当に感じる事は、患者さんの水準をある程度一気に引き上げると、その後の維持の為の努力は本人が勝手にするという事なんです。そしてその努力を何年もしていると、実は以前の水準より勝手に上がっていくんですよね。この一気にある程度引き上げる…というのが私に課せられた使命なんだ、といつしか思うようになりました。まだまだ非力ではありますが、皆様の長期的な努力のお手伝いが少しでもできるようになりたい…と日々研究に励んでおりますので、これからもご支援をよろしくお願い致します。




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