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第23回 (2005年02月)「2005年 おせち対決」



こんにちは。 異人館通クリニックの柴田です。 皆様はどのようなお正月を過ごされましたか? 私はお正月は比較的ゆっくり過ごせたのですが、その後は あわただしい毎日で、気づけばもう月末・・・2005年も1/12過ぎてしまったようです。 本当に時間が経つのは早いですね。


昨年のクリニック通信にも書いたのですが、私はお正月は毎年おせち料理とお酒を仕入れて、寝正月の準備を整えるのが恒例です。 おせち料理と言えば、昔はどの家庭でも家の女性が作るのが当たり前で、一大行事でしたよね。 今ではデパートなどでも簡単に買うことができるので、ご利用される皆様も多いと思います。



私もご多分にもれず、おせちは購入する人なのですが、今年は更にパワーアップし、いつもの淡路島のホテル、近所の料亭、灘区のお寿司屋さんと3個所から取り寄せ、2005年おせち対決!・・と食いしん坊の友人を呼んでイベントを開催しました。(私は主催者兼、審査委員長です・・・(^.^) )


世の中広しといえども、3箇所からおせちを取り寄せる物好きはいないと思いますが、すべてを自宅のテーブルに広げると圧巻です。 どれもが評判の料理の鉄人たち作だけに、それぞれに個性があり、味わいあり、審査委員長として思わずこぼれてくる笑みを抑えながらの職務遂行です。


ただし・・・いくらなんでもこれは食べきれない、とは思っていたのですが、 やっぱり無謀な試みであったとはっきり理解したのは3日目。 実家に持って行ったり友人にあげたりと最善の努力をしたのも空しく、まだまだ沢山残っています。 結局おせち料理は7日くらいまで食べるはめになりました。



さてさて、今年の優勝の栄冠に輝いたのは灘区のお寿司屋さんでした。 もうこれは圧勝です。 素材・味・ボリュームのどれをとっても文句なし。

お重は他の何倍もの大きさで、ずっしり重く一人では持てないほど。 子供の頃のおせちの記憶と言えば、母のつくる保存食・・というイメージしかなかったものが、完全に覆されました。 本当に奥が深いですね。 野菜の質が全然違うのです。 味付けというのはどれも一流の方が行って いるので美味しいのですが、ここは素材の持つ滋養が違うように思います。 なんだかうまく言えないのですが、野菜が生きている・・という感じです。 人間は本来自分の必要なものとか、健康によいものは自分の舌で感じる 事ができると言っていた人がいますが、まさに今回はそれを実感したように 思いました。 ただ、来年はさすがにこんな無謀なことはやめなければ・・ 食べ過ぎによる健康障害の方が先にきそうです・・・(^_^;)



今月号は本当はこのおせち対決を中心にまた、食いしん坊ネタ満載にしよう と思っていたのですが、1/7に読売新聞の記事を読んで、それどころではない・・という事でまたまた企画変更。急遽その記事について記載することにしました。 ご存知の方も多いと思いますが、読売新聞に当院でも使用しているプラセンタ「ラエンネック」に関する副作用の記事が掲載されました。 その記事と私の見解はホームページに記載しましたので、是非ご欄ください。




医療の業界にあって、医薬品の副作用の話は実は珍しいことではありません。 誤解を恐れずに言えば、「日常的」と言ってもよいでしょう。 薬は飲みすぎれば毒となる・・というように何らかの副作用を持っているのが普通なのですが、その中にあってラエンネックは副作用症例がない稀な 医薬品でした。 メーカーも今回が始めての届け出と言う事です。 医者の常識と一般の方の常識はかなり違っている事は私も認めていますが、 今回の副作用については特に驚くにあたらない・・という気持ちでした。



ところが・・・ この新聞記事は別の意味で「驚き」に満ちたものだったのです。 詳しい内容はホームページに記載しているので簡単に書きますが、この 記事を書いた記者は本当に医学の最低限の知識があるのだろうか・・と 疑いを持ってしまうようなものだったのです。 副作用と言うよりはアレルギー反応が出たと言うのが正しく、しかもその患者さんの体調不良はそのアレルギーが原因というよりも他の医薬品によって引き起こ された可能性の方が圧倒的に高いと思われます。 更にメーカーから取り寄せた報告書と新聞記事に書いている患者所見や 服用期間・経過などは全く違うものでした。 一体なぜ、記者がそのような 事実を歪めて記載をしたのかさっぱりわかりません。 そして極めつけは「生物由来の医薬品は未知のリスクがある」ということが今回の副作用になったかのような記載です。 これは読者の恐怖心をあおる為の意図的な問題のすり替えとしか思えないのです。



「生物由来の医薬品は未知のリスクがある」・・というのは事実です。 たとえば狂牛病などはその典型です。 最初は人間には感染しないのではないかと思われていたのですが、その後の研究で人間にも感染する事が判明。日本では食肉牛のBSD全頭検査を実施していますが、アメリカではそれが義務化されていないために、アメリカ産の食肉の輸入ができずに、吉野家から牛丼が消えてしまったのは記憶に新しいことです。 (ちなみに私は吉野家の豚丼の味は、言われないと牛丼と見分けがつかないくらいうまくできていると思うのですが・・。 世の中、牛丼でなくては駄目と言う方が多いらしく、業績は苦戦されていると聞きました・・(^_^;))


テレビでは足元がおぼつかなくなって歩くことすらままならない牛の映像が繰り返し放映され、あの病気が人間にも感染する・・と言われただけで牛肉を食べる気がしなくなった人も多いと思います。



そうです。「未知のリスクは存在します」 しかし、そのリスクがどの程度のものか・・という事を把握することも重要なのではないかと思います。 世界には牛肉を食べている人は何億人もいると思います。 いや何十億人ではないでしょうか。その中で狂牛病に感染したかもしれないという報告は全世界でも150人程度(平成16年1月現在)。しかもそれはBSDではなくvCJDというものが原因であり、おそらくBSDと同じ仲間ではないか・・と言う事で詳しいことは完全には解明されていないと言う状況です。(つまり今の段階では確定的ではない。) 日本で交通事故で亡くなる方が年間に1万人程度いらっしゃることを考えると今日外出して交通事故で死んでしまう可能性の何千分の一のです。 もちろんBSDについては拡大防止策を講じているからこの程度で済んでいるのでしょう。そういう意味では原因が判明したことに対して更なる被害の防止策を講じる事は私も大賛成です。



ところが今回の読売新聞の記事は「未知のリスク」としか言及していません。つまり、吉野家がなんとか豚丼で業績挽回しようとしているところに「豚丼もBSDのような未知の感染症リスクがあります!」と言っているようなものです。確かにこれは事実です。豚丼を食べて、未知の不活性プリオンを摂取し、新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病にかかるリスクは存在するのです。そのような記事が書いてあっても、豚丼の場合は笑って済ませる人が多いでしょうが、医薬品の副作用(しかもその記事の内容が間違っている)と同じところで、「未知のリスク」について言及するのは人間のパニック心をあおろうと言う意図が見えているように思うのは私だけでしょうか・・・。


今回のクリニック通信は異例の・・(^_^;)・・まじめな内容になってしまいました。私は決して新聞等のマスコミを批判するような気持ちもなければそのような立場でもございません。 クリニックがたまに雑誌に取り上げられたりすると喜んで記事の切り抜きを持ち歩いたりしているミーハーな人間です。ただ、このことを敢えて取り上げたのは、マスコミや噂などの怖さ・・・というものを痛感したからです。(思えば数年前のかいわれ大根もO157の汚名を着せられていましたが、結局どうなってしまったのでしょう・・お気の毒です・・)



以前の通信にも書きましたが、世の中情報が氾濫してしまい、食べ物一つとっても一体何を食べたらよいのかすらわからないようになってしまっています。私が言うのも変なのですが、最後は自分の舌を信じることが一番よいのかもしれません。自分にとってよいものは生物の本能でわかる・・という説もあながち馬鹿にできないと思っています。滋養味あふれるという言い方の滋養・・とは一体何なのか説明しろと言われてもなかなか困るのですが、自分の体が感じる元気の元とでも言うものでしょうか。


今年のおせち対決では野菜の持つ滋養と言うものを考えながら、一年の 始まりを迎えました。 そして医薬品とは本来自然の持つ滋養分をヒントにそのエッセンスを抽出したもの・・・とも言えます。 そのエッセンスを駆使して、皆様とともに健康な1年をまた過ごせますよう、少しでもお手伝いができれば幸いに思います。


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