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第210回「プロの仕事」

こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。長い梅雨が明けたかと思うと猛暑が到来しましたが、皆様は夏バテなどされていませんか? コロナと共に熱中症にはお気を付けくださいね。私はと言えば…プラセンタのお蔭かナチュラルホルモン補充療法のお蔭か夏バテもせず、冬に比べて3㎏ほど痩せました。コロナ禍のせいで飲みに行くのが減ったのもあるかもしれませんが、おうちご飯でもワインやシャンパンは飲んでるし、このクリニック通信ではおなじみの東京のK氏なんかおうちご飯で酒量が増えて逆に太ったって言ってたから、やっぱりナチュラルホルモン補充療法のお蔭で代謝が良くなったのかな?と思っています。

今のクリニックに移転してから、お花屋さんから週に1回くらい生花を買って飾っているのですが、こう暑いと生花はもちが悪くなり、すぐにダメになってしまいます。お花屋さんの店長さんに言われた通り毎日水を替えて「切花長持ち液」を入れ、茎を水切りしてたんですがそう頻繁にもできず、ちょっと置いておくと茎が茶色くなってしまい、茶色いところを切ると茎がどんどん短くなって活けられなくなってしまうんです。「切り花長持ち液と水替えと水切りと、何が一番優先?」と店長さんに相談してみると、やっぱり水替えだそうです。水が濁らないように朝晩水を替えたら長持ち液は要らないんだとか。そして茶色くなった茎はやっぱり切ってしまい、短くなったら花瓶を替えた方がいいのと、暑い時期にクーラーを切る時はお花を冷蔵庫に入れた方がいいよと教えてくれました。そうか…お花屋さんの花を入れているところは、寒いくらい冷房が効いてますもんね。言われた通り水を頻繁に替えてクーラーを切る時はお花を冷蔵庫に入れるようにすると、かなりお花のもちが良くなりました。さすがこの道何十年の店長さんです。この店長さんは植物に凄く詳しく(「さかなクン」のお花バージョンみたいな人なんです)何を聞いても答えてくれるので、お花を買いに行くのが楽しみです。やっぱりプロはこうでなくっちゃね。



ところで、皆様はプロの仕事って言うと、どのような事を思い浮かべますか? ありとあらゆるところにプロは存在しているので、私には想像もつかないような仕事もあるんでしょうけど、誰でも思いつく身近なプロと言えば、やっぱり「レストランのシェフ」ではないでしょうか?(はい。そうなんです…。結局は自分の大好きなグルメの事を真っ先に考えてしまうのですが…(^_^;)。)家庭では出せない味と雰囲気で、人生に彩りを与えてくれるレストランのシェフはプロとして私の中ではなくてはならない存在です。このクリニック通信でよく出てくる友人Mと先に出たK氏は、二人共食べる事が好きで「グルメ」である事においては誰にも負けていないと思うんですが、ワインに対する考え方はかなり違っています。(…と言うか正反対です…。)K氏と一緒にレストランに行くと、彼はまずはボトルシャンパンから始まり、白と赤を一本ずつ開けた上で最後はデザートワインまでいくという「酒豪」です。まぁ最近はよる年波もありそこまで飲んでないと言われていますが、K氏がレストランに行ってワインボトルを一本も開けないというのは見た事がありません…(^_^;)。ワインリストを見つめる時の眼差しは真剣そのもので、恐らく仕事中にこんなに真剣な眼差しをする事はないのでは??と思うほど。フレンチやイタリアンはもちろんの事、お鮨屋さんや料亭でも、「まずはシャンパーニュを…」というほどのワイン好き。そしてお店のソムリエさん達とワイン談義に花を咲かせている時は本当に楽しそうです。



一方で友人Mの方は…自称「ワイン好き」なんですが、レストランに行った時のオーダーはほとんどビールのみで、グラスワインを頼む事すら稀です。最初の頃は「本当はワイン嫌いなんちゃうの?」って言ってたくらいなんですが、本人は至って真面目に「いや…ワインは大好きだよ。本当に美味しければね…」と言ってはビールしかオーダーしません。ただMがワイン好きである事は間違いなく、しかもかなり「うるさい」方だと思います。(…ワインだけじゃなく何事にも「うるさい」…そして時々「うざい??」タイプなんですが…(^_^;)。)M曰く、レストランでワインを頼まない理由なんですが「日本のレストランの料理って本当にレベル高いと思うのよね。パリとかミラノで食べる本場の料理にも全然負けてない事が多いし、なにしろコスパがいい。こんなに値段が安くてレベルの高い料理を出すレストランがあるのって、日本が一番じゃないかな…って思うよ。でもね…ワインはいただけない。こりゃ本当に詐欺みたいな感じだねぇ。大体、ワインセラーにあるワイン持ってきてコルク開けて注ぐだけで、なんで普通に買う値段の3倍もふっかけるの? ありゃボッタクリだよ」



…もうレストランでのワインの悪口を言い出したら止まるところを知らず、「ソムリエ氏は『ワインの管理は難しいんです…』とかなんとか色々うんちく並べてるけど、実際はたいした管理なんかしてないじゃん? ワインセラーに入れてるだけで、別に優しく話しかけたり毎日撫でたりしている訳でもなければ、バッハの音楽聞かせて熟成を促進させてる訳でもないでしょ? まぁバッハ聞かせたからって別にどうなるもんでもないけど。コルク抜くのだって特殊な技能じゃないしね。あとはグラスに注ぐだけ…。それでなんで原価の3倍になるの? しかもボトルワインなんて美味しくなくてもお店は責任なくてお客の責任で飲み干さないといけない訳よ。そんなボッタクリでリスク取る位だったらビールの方が絶対に美味しくてノーリスク。ビールはまず裏切らないからね…。日本の有名店の料理はレベル高いんだから、料理の値段をもう少し上げてワインをリーズナブルにしてくれてもいいのにねぇ。料理が安い分をワインで補おうという発想がおかしいよ…。まぁそれでもソムリエの仕事って、昔は膨大なワインの中からベストマッチのものを推薦するという『歩く辞書』みたいな意味もあったけど、今はインターネットで自分で調べた方が情報が正確だしね。ワインは自分で買って持ち込みする以外はお店で飲む価値ないな」とバッサリ。もうケチョンケチョンです。



私はMほどではないのですが、レストランで頼むワインのコスパの悪さには同意するものの、やっぱりビールでフレンチってのも寂しすぎるのでグラスワインを何杯か頼むタイプでして、ボトルをまるごと一本というのはよほど飲む人と一緒の時でないとできません。なのでK氏とMの中間位の立ち位置なのかな? それでも大抵のソムリエさんの仕事ぶりには好感を持っているので、「そんな事言ったらバーテンだってお酒混ぜてるだけやん? あれはどうなん? プロの仕事なん?」と反論してみると…「ありゃ…。分ってないなぁ。バーテンダーほど天才と凡才の違いがはっきり出る職業はないよ。あれはもう才能がものを言う世界。確かに傍から見ると混ぜるだけって感じだけど、一部の天才的なバーテンダーが作るカクテルは本当に他の人は真似ができないものに仕上がるんだから。繊細な感性を持っているバーテンダーはプロと言うか、職人として尊敬されるべきだと思うな」という事で…Mによると大半のソムリエはあかんけど、バーテンダーは一部の才能を持った人に限定すればプロとしてOKらしい。私は強いお酒はあまり飲めないので、バーに行ってカクテルを頼む事などはめったになく、天才的なバーテンダーが作るカクテルの違いって分からないんですが…微妙な配合の差で、その違いが出るんでしょうね。そう言えば大昔、ワールドビルの最上階にあった「V&V」というバーのオリジナルカクテル「V&V No.1」というのが気に入ったのでレシピを教えてもらい、いくつかのバーで「同じのを作って」とバーテンダーに頼んだ事があったんですが、作る人によってだいぶ違ったので、バーテンダーってセンスのいる仕事なんだと思います。



ところで話は全然変わるのですが、先日ひょんな事から、ある海外の会社のサービスに申し込みをするために自分のパスポートのコピーを送る事になり、「Notary(公証人)にそのパスポートのコピーが本物である事を証明してもらってください」と言われました。たまに学会とかで海外に行く事はあっても仕事は国内中心ですし、どうすればいいのかも、Notaryとやらが何なのかも全く分からないので、ここは先に登場した口うるさい友人Mに相談するしかありません。(彼は海外でも会社を経営しており、普段は世界のあちこちに出かけているのでこの方面にはめちゃ詳しいのです。ただ最近はコロナの影響ですっかり国内で自粛生活しているようですが…。)流石にMはすぐに理解して「ああ…これね。海外ではNotaryって本当に誰でも使う身近なところよ。契約を結ぶ時に立ち会って、契約が間違いなく本人達によって結ばれた事を証明したり、今回みたいに書類のコピーを送る時に「これは間違いなく本物からコピーされたものだ」という事の証明書を発行したりするんだよね。まぁ、日本で言えば印鑑証明出すような感覚かな」じゃ具体的にはどうすればいいの?と聞くと「日本では公証人役場ってあるでしょ。そこに行ってパスポートのコピーが本物であるって事を英文で書いてもらうんだけど、まぁ公証人役場ってすごいところだよ。僕は絶対に自分の子供をあそこに連れて行きたくないな」…え? そんなに危険なところなの? なんで? と聞くと…「自分の子供が公証人の仕事ぶりを見て、『こんなに楽で稼げる仕事があるんだったら将来自分も公証人になりたい』って言い出す心配があるからね。誘惑の果実で満たされたエデンの園みたいなところだな。楽園から追放された後が大変よ。あの職場は感受性の高い若者に見せるのは教育上良くないな…」という事らしい。まぁ相変わらず口の悪さは天下一品なんですが、私もその言葉の意味を実際に公証人役場に行って理解する事に…。



私なりに公証人の仕事って何かを事前に調べたんですが、簡単に言うと公文書を作成したり、文書が公的に認められると認証する人の事らしい。例えば遺言書の作成や、会社の定款(基本規約)の認証などですが、「これが公的に認められます」という簡単な証明書を書いてサインするだけなので誰でもできる気がするんですが、凄く高い手数料を取られます。ははぁ…これがワインで言うところの「注ぐだけなのにぼったくるレストランと同じ…」と言うMの理屈ですな。しかも驚いた事に日本の公証人役場では海外では当たり前にある認証(このコピーは本物からとったという証明)ができず、パスポートのコピーに本人が「これは本物のコピーに間違いないです」という文を添え、その文に本人がサインをしているのを公証人が見て「自分の目の前で本人がサインしたのは間違いないです」という証明書を付ける事になっています。ええ? 何それ? なんでそんなややこしい事になってるの?と聞いてみると、公証人はそのパスポートが本物かどうか判定する力がないので「本物のコピーです」という言い方ができず、「本人が本物からコピーしたという宣言文にサインしたのを確かに見ました」という証明しかできないらしい。その為、海外では当たり前である「これは本物のコピーに相違ない」という文章がない為に、「これはNotary(公証人)じゃない人が作成したものだろう」と受け取り拒否される事がしばしばあるそうです。自分の目の前でサインしました、って証言するだけだったら小学生でもできるので、何のために有資格者が証明するのか分かりませんよねぇ。



そして、実際に公証人役場に行ってみると…めちゃくちゃ暇そうな「先生」と呼ばれるお爺ちゃん達と事務のおばちゃん達がいて、なんか事務のおばちゃんまで偉そうです。そして上記のような簡単な証書を作るのに2万円以上手数料を取られました。確かにMが「子供に見せたくない」と言っていた意味が分かります。しかもそうやって作成した「宣言文」は今回の海外でのサービス申し込みには通用せず、再度弁護士に「これが本物のコピーです」という証明を英語で付けてもらう事になってしまいました。何のこっちゃ! そらまぁ、本人が「これは本物です」というサインをするのを見てた…というだけの証明が公文書になるとは考えにくいですけどね。公証人って何の役に立つの??って感じです。流石に苛立って調べてみると、公証人というのは、裁判官と検察官たちが定年前からその枠の獲得に狂奔するほど「おいしい」天下りポストらしい。年間の手数料収入は、公証人1人あたり約3000万円。司法書士や弁護士が整えてきた書類を事務員がまとめるので、公証人の仕事はそれに目を通して本人確認する事だけ。一日数件で十分おカネになるので、本当に暇なんだとか。公証人の9割以上が裁判官・検察官・法務省職員の退職者で、公証人が優先的にやりたがる仕事が会社の定款に認証を与える「定款認証」だそうです。企業を設立する時には定款を作って公証人と面談せねばならず、公証人は定型文に目を通すだけで10分で終わるのに、1回5万円も手数料が得られます。10分で5万円、時給にすればなんと30万円! 公証人1人あたりの手数料収入のうち、約3割(900万円)をこの「定款認証」が占めるそうな。2018年に起業促進のため法人設立の全手続きをオンライン化するという政策が出た時は、オンライン化すると定款認証の手数料がゼロになるので、公証人達とそれを仕切る法務省が猛反発したらしい。「不正防止のために公証人の面前認証は絶対に必要だ」というのが表向きの理由ですが、実際には「公証人の収入が激減する。このレベルの天下り先を確保するのは困難だから、絶対に阻止したい」からだそうです…。こういう既得権益って何なんでしょうね? プロの仕事って何なのか?と改めて考えしまいます。



そう言えば、プロのバーテンダーの仕事ぶりについて面白い話を聞いた事があります。マティーニという有名なカクテルはジンをベースにベルモットを混ぜるのですが、ベルモットは甘いので、「通」になればなるほど辛いマティーニを好み、ベルモットの配合量が少なくなるらしいんです。文豪ヘミングウエイの「河を渡って木立の中へ」という小説の中で、主人公がバーテンダーに「モンゴメリー将軍で頼む」と言ってマティーニを注文するシーンがあります。これはアフリカ戦線総司令官モンゴメリー将軍がドイツ軍との戦力比が15:1にならないと攻勢を開始しなかった…という逸話にひっかけて、ジンとベルモットの比率を15:1にしてくれという意味です。(つまり、相当辛いハードドライ・マティーニを好んだ訳です。)そんなマティーニなんですが、ある「通」の客がバーテンダーにハードドライ・マティーニを頼んだ時、どうも甘くて気に入らないと伝えたところ、バーテンダーは極限までベルモットの比率を下げてこれなら気に入ってもらえると思って出すも、その客は気に入らない。そこで今度はベルモットを全く入れずに、キリリと冷えたジンに「ベルモット」と囁いただけのものを出すが、それでもこの「通」の客は気に入ってくれない。それでもバーテンダーはプロとしての誇りをかけて最後に出した一杯でとうとうその「通」の心を捉えたそうな。その客が「今まで色々なバーでドライマティーニを試したが、私が満足するドライマティーニに出会ったのは今日が初めてだ…一体どうやってこれを作ったのかレシピを教えて欲しい」と言ったところ、バーテンダー曰く「最後の一杯は『ベルモット』と小声で囁いたのです…」。なんともまぁ示唆に富んだ話ではないでしょうか? 私はこの話を聞いた時に「ああ…これこそプロの仕事だ」と感心しました。決して諦める事なく、お客様が満足するまであらゆる事を試してみるという態度は、私自身も肝に銘じて今後も対応していかないといけないな、と改めて思い直した次第です。まだまだ私はプロとしての力量が足りないとは思いますが、継続した努力をしていく所存ですので、今後とも宜しくお願い致します。




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