こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。ついにこのクリニック通信も200回目を迎えました。永年お読みいただいている皆様には感謝の言葉しかありません。今後とも宜しくお願い致します。
さて急に涼しくなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…現在この通信の原稿を書いておりますのが学会参加中のスペインなのですが、ネットのニュースを見ていると今まさに最大勢力の台風が関東地方を直撃するという事で注意を呼びかけているようです。大きな被害が出なければ良いのですが…。私の現在いるスペインは太陽がさんさんと降り注ぎ、まさに情熱の国と言うのにふさわしい非常に良い季節です。ここではこんないに良い状況であっても地球の裏側では台風で大変な状況になるというのですから、いくらインターネットで世界が狭くなったとは言え、実際には世界は非常に広いんだな…と実感します。
秋は毎年、学会が多く開催されます。すでに先日も舞浜で開催された日本美容外科学会に参加してきました。この学会は会員でないと学会費もすこぶる高くて、参加するのにもいちいち学会長に参加許可をもらわないといけません。10年ほど前、PRP(多血小板血漿)注入療法の研究をしている時に学会長からパネリストの依頼を受けたんですが、会員ではなかったので断ったら招待すると言われ、その後その学会長の推薦で会員になってからはほぼ毎年参加していますが、まぁ、ちょっと敷居が高い系…の学会になりますね。このような学会があるかと思うと、ほぼ知り合いや身内が家族のようにアットホームな感じでやっている小規模学会もあります。はたまた皆様もご存知の大手美容クリニックT院長が主催するド派手な学会もあります。(以前の通信にも書きましたが、当時TクリニックのテレビCMに出演していた郷ひろみさんが、この学会のアトラクションとしてミニコンサートをする事になりました。コンサートが始まると今までおとなしくしていたお医者さんの奥さんや看護婦さん達、そしてバブル世代を経験した女医さんなどが入り乱れて、もう「ヤンヤヤンヤ、きゃーきゃー!」の大声援です。この状態にさすがの郷ひろみさんもビビってしまって、「ええっ…皆さん、ホ…ホントにお医者さん達なの? ち…違うよねぇ…??」って言っていたのを思い出します。ただ、この学会の名誉のために言っておきますと、ド派手な演出があったりド派手な美容外科の先生が来てたりするものの、発表される内容は真面目で役に立つ情報が多いんです。)
そんな事で今回はちょっと敷居が高い学会に参加した話ですが、気になったのは輪郭形成の講演。中でも手術ではなくスレッドリフトとえらボトックスやボトックスリフト・輪郭注射などを組み合わせた輪郭形成術に注目しました。また、髪のアンチエイジングの講演も興味深く聴けました。美肌や健康と共に、髪もアンチエイジングの大切な要素ですよね。成長因子製剤や自家脂肪由来間葉系幹細胞、そして新しいものでは幹細胞由来エクソソームというものの注入治療の講演がありました。少し難しい話になりますが、エクソソームというのはエンドサイトーシス(細胞が細胞外の物質を取り込む機構の一種)により細胞内にできたエンドソームがさらに陥入する事で作られた膜小胞が細胞外に放出されたものです。エクソソームの表面には細胞膜成分が、内部には細胞内の物質が含まれるため、分泌された元の細胞の特徴を反映すると考えられています。近年エクソソームは、離れた細胞や組織に情報を伝達するための役割を担っている可能性が指摘されています。エクソソームには様々なタンパク質や脂質、RNAが含まれており、別の細胞に運搬される事によって機能的変化や生理的変化を引き起こすとされるので、幹細胞由来エクソソームは幹細胞の機能を他の細胞に伝えると考えられています。講演の内容はその幹細胞由来エクソソームを分離・精製した製剤を注入して効果を上げるというものでした。今後その方面の研究も進めていけたらと考えています。
ところで、講演の会場ではなんと大学の卓球部の後輩にバッタリ会いました。形成外科に進んだ子です。
後輩:「先生! お久しぶりです!!」
柴田:「わ~、久しぶり~! 何年目になったん?」
後輩:「もう6年目ですよ~」
柴田:「え~! もうそんなになるの?? 早いね~!」
と、久しぶりに昔話に花が咲きました。このクリニック通信の中で散々書いてきた事ですが、私達の研修医の頃は日本国憲法に定められた「基本的人権」が研修医にはなかった時代でして、医局が有無を言わさず研修先の病院を指定して、研修という名の下で倒れる寸前までこき使われて「体で仕事を覚える」というのが当たり前でした。今はそのような事はなくなり、研修医は自分で研修先を選ぶ事もできますし、なんと残業代も出るようです…(^_^)。私達の頃は「残業代ください」なんて言ったらどんな事になるかは分かっていたので、誰も怖くてそんな事言い出せなかったんですが…(^_^;)。たまにネットの記事を読んでいると、ブラック企業として有名な「Wタミ」とか「Uクロ」に潜入アルバイトをして如何にこの会社がひどい労働をさせるか…という事をレポしているのを読んだ事がありますが、まぁ私にすれば「え? それのどの辺がブラック企業なん? それって普通の研修やんね…」って思ってしまうんですよねぇ。まぁ決してそれがいい事だとは思いませんが…。
そんな昨今、後輩は大きな病院で研修医に指導する立場にあるのですが、彼女曰くは、最近の研修医は怒られずに育って来た子たちなので、ちょっと怒ったら怖がってダメなんだとか。
後輩:「注意してもらえるのはありがたい事やのに、それが分からないんですよね~。
きつく言ってるつもりもないのに『もっと優しく言ってくれたらいいのに~』
とか言うんですよ! もう下なんか教えられませんよ~」
柴田:「そう言えば、最近の現役生(後輩の学生)は試合の時ご飯に連れて行ったり試合で勝ったら祝勝会したりしても、疲れてるのに断りたくても断られへんから困るとか言うねんで~。どう思う?
後輩:「え~、何それ!! 奢ってもらっといて文句言うんですか!?
もう最近の若いもんは何考えてるか分かれへんわ~!」
彼女もまだまだ若いんですが、時代の変化というのは最近早いようで…。以前のクリニック通信にも書きましたが、エジプトの碑文から「今時の若い者は困ったものだ」という言葉が見つかったと言うのですから、こうやって時代や世代を超えて永遠に「最近の若いもんは…」と人間は愚痴ってきたのでしょうね…(^_^)。
さて、学会には大抵レーザーなどの機器や化粧品のメーカーなどが新製品などを展示する企業ブースがあります。講演の合間にブースに立ち寄ってウロウロしてると、「柴田先生!」と声をかけられました。最初誰か分からなかったんですが、「Oです!」と言われて思い出しました。「久しぶり~! なんでこんなとこにおるん??」Oさんは、柴田エイジングケア・美容クリニックの前身である柴田美容皮膚科クリニックのオープニングスタッフでした。その前身である異人館通クリニック時代からいた旧スタッフにいじめられて(?)いったん辞めたんですが、旧スタッフがいなくなると戻ってきて柴田美容皮膚科クリニックの立ち上げに一役買ってくれた人です。その後化粧品の販売をしたいと言って大手の化粧品会社に転職したんですが、今度は新しい化粧品会社の立ち上げを手伝ってるんだとか。その新しい会社が学会の企業展示にブースを出したので、私が来ないかな~と探してくれていたそうです。
Oさん:「懐かしい~! 先生、全然変わりませんね~! 私はおでこのシワとか気になってきましたよ~。先生のとこ行こうかな?」
柴田: 「そう言えば、Kさん(Oさんの同期のスタッフ)は辞めた後しばらくうちに通院してたよ」
Oさん:「そうなんですか! Kさん元気かな~? あの頃のスタッフの同窓会しましょうよ! クリニック通信も、ずっと見てましたよ~!」
なんと11年ぶりの再会でしたが、昔のスタッフが頑張ってくれてて、今も忘れずにクリニック通信を見てくれてるなんて嬉しいじゃないですか。(クリニック通信を続けてて良かった…。)これも昭和世代だからなのかなと思いましたが、こういう義理人情みたいなものは時代を超えて引き継がれて欲しいものですね。
このように学会って、人の発表を聞いたり情報を仕入れるという事も大きな目的なんですが、「出会い」という事についても非常に大きな役割があります。特に開業医になると、日常はほぼ孤独な世界です。勤務医の頃にはいた同僚というものがなくなり、全ての判断を一人で行い全ての責任を自分一人で取るという、絶対的な孤独に陥ってしまいます。そんな世界にずっといると煮詰まってしまうので、たまに学会に参加するというのは非常に大きなリフレッシュになります。
話は変わりますが、最近大きな話題になっているニュースに、ある人がネットの掲示板に「都内の企業に12年間勤務して手取りの月給が14万円です。日本終わってますよね?」と投稿したそうです。多くは、その発言に対して同情や日本の問題を指摘していたのですが、かのホリエモン氏は「日本が終わってんじゃなくて『お前』が終わってんだよwww」と、「笑」を表す「w」を3つも入れて突き放すコメントをツイッターに投稿して、大炎上しているのだとか。勿論、炎上するって言うからには反対の意見やホリエモン氏に攻撃的な発言が非常に多いという意味ですが、一方で「いいね」のリプライをした人も6千人以上いて、彼を擁護する意見も多かったという事です。ちょっと解説を入れると、ホリエモン氏はこの人に対して「12年間働いて月給が14万円という事を受け入れて、自分が何も行動を起こしていない事について日本のせいするんじゃない、あんたが自ら行動を起こさないのが駄目なのよ」という趣旨で発言しているのだと思います。
実は私もこのニュースを読んで非常に思うところがあります。勤務医の頃って先に書いたように同僚がいるし、社会の中で生活しているので、ある意味サラリーマンとしてある程度均一の価値観があります。しかし、一旦開業すると全ての事を自分で決める訳ですので、その人の個性がどんどん強くなっていきます。そんな中で開業した後いつも不平不満を言っている人達もいて、まさにそのような人達は「日本は終わっているよ…」って言っている事を思い出しました。そしてそのような人達って学会に参加する事もなく、孤独の中に更に引きこもっていく傾向があるな…とも思います。勿論、全てがそうだとは言いませんが、一般的な傾向としてそんな気がします。前回のクリニック通信に「どうすればいいお医者さんを見分ける事ができるか?」というような話を書きましたが、「そのお医者さんがどのような学会に参加しているか」というのをホームページなどで確認するのも一つの指標になるかな…とも思った次第です。そんなこんなで、次回は今参加しているスペインの学会の話を書く事ができたらいいかな…って思っています。皆様には休診続きでご迷惑をおかけしていますが、学会で得た情報を基により良い治療を皆様に提供できるように頑張りますので、楽しみにお待ちくださいね。10月からは土曜日の診療も復活しました。今後皆様のご要望にお応えして日曜日の診療も復活する予定ですので、今しばらくお待ちください。今後とも宜しくお願い致します。