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第2回 (2003年05月)「ピーリングの進化~各人のお肌に合わせる大切さ~」



こんにちは!異人館通クリニック院長の柴田です。


クリニックももうすぐオープン1周年をむかえます。思い起こしてみれば、よくここまで来れたなあと、皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。全く新しいタイプのクリニック作りを試みたため、することすべてが新しいことばかり。準備期間も短かったため、最初のうちはバタバタして皆様に御迷惑をおかけしました。

診療内容や化粧品なども改善のための研究を日々重ねてきましたが、半年を過ぎた頃に、大きな転機をむかえるような出来事がありました。それをきっかけにピーリングの方法も進化し、以前よりずっと効果を出せるようになったのです。


今回は、そのきっかけを作ってくれた友人のお話を…。


秋も深まったある日、高校の同級生から久しぶりに電話がありました。


友人 「久しぶり!新しい美容医療のクリニックを開設したってA君から聞いたんやけど。僕もキムタクが打ってる注射なんかしたら、きれいになれるかなあ?」

柴田 「どうしたの?急に…」

友人 「実は、津軽三味線のコンサートをクリスマスに開くことになってね」

柴田 「クリスマスに津軽三味線??」

友人 「それがお洒落やねんて!でも最近練習のしすぎか、この年になってにきびができだして…。せっかくの男前がだいなしやろ。コンサートまでにつるつるお肌にして欲しいねんけど」

男前かどうかは疑問の残るところだが、つるつるお肌にするのは得意技。


コンサートまで2ヶ月もないので早速治療を始めることにし、ピーリングとイオン導入、プラセンタ点滴をすることになりました。

柴田 「にきびは治せても、キムタクみたいにはなれへんよ。元が違うねんから」

友人 「相変わらずきついなあ。キムタクにはならんでもええけど、早くきれいになるように濃いピーリングにしてな。僕、面の皮は厚いから」

柴田 「面の皮厚いのは知ってるけど…。あんまり濃くしたら、真っ赤になって仕事できなくなるよ。まあ、あんまり仕事してへんからいいか」

(彼は親の会社を継いだ若(バカ?)社長です。)


ホクロの手術をするとよくわかるのですが、男性は普通女性よりかなり皮膚が厚いので、友人の希望もあって普段の初回ピーリングより少し高い濃度で始めました。額で試し塗りをしても大丈夫だったので、全体に塗ります。


柴田 「ちょっと濃いのでしてるけど、ピリピリしない?」


友人 「大丈夫、大丈夫。もっと濃くてもいけそうやけど」


ところが!ピーリング中はなんともなかったのに、冷却の後洗顔すると、彼の顔は真っ赤になってしまったのです!



ホクロの手術をするとよくわかるのですが、男性は普通女性よりかなり皮膚が厚いので、友人の希望もあって普段の初回ピーリングより少し高い濃度で始めました。額で試し塗りをしても大丈夫だったので、全体に塗ります。

柴田 「ちょっと濃いのでしてるけど、ピリピリしない?」


友人 「大丈夫、大丈夫。もっと濃くてもいけそうやけど」


ところが!ピーリング中はなんともなかったのに、冷却の後洗顔すると、彼の顔は真っ赤になってしまったのです!


柴田 「あれ…!そんなにデリケートだった?」

友人 「うーん。そういえばようひげそり負けするかなあ?」

柴田 「え…!(もっとはよ言えよ…!)」

友人 「まあ、ええやん。皮むけたらきれいになるんやろ?」

柴田 「それはそうだけど…」

冷や汗の私を尻目に、本人はいたって楽観的。


確かに彼の言うように、深いピーリングをすると皮がむける代わりに、うまくいけばつるつるになります。しかし、女性には赤くなったりかさぶたができるのはいやがられるし、東洋人は皮膚の再生の過程で色素沈着を起こすことが多いので、あまり赤くならない程度の浅いピーリングを繰り返し行なう方が無難なのです。

(しかし、どうしてあんなに赤くなってしまったんだろう?)


私はあれこれと考えました。

ピーリング剤にはいろいろな種類の酸があって、浅いピーリングには主にグリコール酸と乳酸が使われます。酸の濃度も5~50%程度までいろいろありますが、一般にPH(酸性度)はあまり低い(酸性が強い)と赤くなりやすいので、2.0以上に調節しなければなりません。彼に使ったのは20%の乳酸でした。


(「面の皮が厚い」と言う彼の言葉を信じて初回にしては濃い目の乳酸を使ってしまったが、そんなに高い濃度でもなかったし…。PHが低すぎたのか?しかし彼に使ったのはメーカーの既製品なので、PHは一定しているはずだ。彼自身の体質の問題か?)



そこで、試しにピーリング剤のPHを測ってみました。

すると、一番気に入ってよく使っていたA社のグリコール酸のPHは3.0と記載どおりで一定していたのに対し、彼に使ったB社の乳酸はPH2.2と記載されていたのに、実際には1.4と非常にPHが低かったのです。メーカー品の記載も信用できないものもあるということが解りました。



ピーリング剤は自分であれこれ試して一番いいと思ったA社のグリコール酸を第一選択とし、グリコール酸が合わない人に乳酸を使っていたのですが、B社の乳酸は濃度が低くても刺激が強かったので、低めの濃度のものを使っていました。その刺激の強さはPHが原因だったことが解ったのです。

 さらに、彼自身の体質の問題があったかどうか調べるために、かさぶただらけになった彼を「早く治るプラセンタ点滴をしてあげるから!」と呼び出し、両手の甲にPHを調整したいろいろな濃度の乳酸とグリコール酸を試し塗りしてみました。すると、グリコール酸を塗った方は適度にすべすべになったのに、乳酸を塗った方は皮膚が薄くなってむけかけてしまいました。彼の皮膚は、乳酸に異常に反応するタイプだったのです。そういう肌質の彼にPHの低い乳酸を使ったのが、真っ赤になった原因でした。


文献的には「ひどいにきびには乳酸の方がいい」という意見がありますが、彼の肌には乳酸は向きませんでした。彼のような肌のタイプはまれですが、やはり肌質は千差万別なので、メーカーや文献に頼らず、一人一人の肌に合ったものを厳選して使うことが大切だと痛感したのです。


それから、メーカー品は信用できないものもあるし、10%刻みの濃度しかないので、自分で5%刻みの濃度のピーリング剤を調合し、PHも調整することにしました。そして手の甲で何種類もの酸を試し塗りしてその人に合ったものを選ぶようにすると、本当にいろいろな肌質の人がいることや、その他さまざまなことがわかってきたのです。


(その内容はまたのお楽しみ…!)

その後ピーリングは進化をとげ、どんどん効果が上がるようになりました。ピーリングだけでなくイオン導入や化粧品も、いろいろな肌質の人に合うように進化しつつありますが、その進化は三味線の彼が身を持って教えてくれた教訓のおかげだと思っています。


結局、三味線の彼はかさぶただらけになってしまいましたが、プラセンタ点滴でそれがおさまってから新しく作ったピーリング剤を使うと、みるみるうちにつるつる卵肌になり、ご機嫌でクリスマスコンサートに招待してくれました。コンサート当日には、三味線を手にしたキムタクの姿が…!

(工藤静香ちゃん、ゴメンナサイ!)


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