こんにちは! 柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。梅雨も明けて暑い夏がやって来ましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば…この梅雨の間に横浜で開催された抗加齢医学会に参加したのですが、大雨に遭ってびしょ濡れになり、酷い風邪をひいてなかなか治りませんでした。おまけに学会の少し前に久しぶりに卓球をした時に膝を傷めたのが、東京グルメのために東京から横浜まで通ったために悪化して散々。東京グルメの1日は高校の同級生が数人集まってくれたんですが、泊まったホテルから1時間くらいかかる場所のレストランで、電車の乗り換えに階段が多くて閉口しました。年とるとほんとダメですねぇ。帰ってからプラセンタ点滴をしまくり、プラセンタの関節内注射をしたり筋トレをしたり、はたまたせんねん灸をしたりコラーゲンサプリを飲んだりしてやっとましになりましたが、ちょっと膝が痛いだけで家の中でも立ち座りや移動がおっくうになり、健康のありがたみを痛感しました。
最近ネットで読んだ記事の中にMRさん(薬メーカーの営業さん)が書いた「医者の不養生はマジやばい」というタイトルのものがあったので見てみたのですが、なかなか的をついた話で笑ってしまいました。MRさんっていうのは医者以上に激務の人もいます。(まぁ最近は少なくなったのですが、昔は本職である薬の説明以外に勤務医の接待っていうのがありました。はるか昔、私が勤務医の頃はそれこそ接待の方が本職という感じの人も多く、連日どこかで宴会が持たれ、営業成績の良いMRさんは使える交際費も青天井という時代もありました。あんな生活してたら早死にするよ…と言われているMRさんも結構いましたねぇ。今は本当に少なくなったと聞いていますが…。)そんなMRさんが見た「モーレツ医者の不養生」の例を色々と面白おかしく書いた記事だったんですが、「確かにあるある…」という話ばかりなんです。医者ほど自分自身の健康に無頓着な人はいないんじゃないかな…って思うくらいです。ちょっと怖くなってネットで調べてみるとこんな記事が…「開業医の死亡時平均年齢は70.8歳と低く、特に60歳代の死亡割合が34%と多いことが明らかになった」う…ん、こりゃ本当にやばいな…。皆さんにアンチエイジングの大切さを説く身であるからには、まずは自分からしっかり健康管理をしなければ駄目ですねぇ…(^_^;)。
まぁ、そんな訳で真面目に勉強しなきゃ…と思って参加した抗加齢医学会のメインのシンポジウムは「百寿社会の創造」。先月号のクリニック通信は「人生100年時代の到来」というタイトルでお届けしましたが、抗加齢医学会の偉い先生達も、「人生100年時代の到来」にあたって何をどうするべきかを考えていたんですね。昔は人生50年と言われていましたが、今や人生100年の時代です。この長寿社会をより良くするためには何が必要か? という事で6人の演者の講演とディスカッションが行われました。色々な話があったのですが、特に印象が深かった講演を(ちょっと難しくなっちゃいますが)一つだけご紹介します。
「百寿時代を支えるHealth and wellbeingの価値の共創:超高齢化社会の到来により、日本の資源の多くが社会保障分野へ投入されている。ヘルスケア分野では、AIなどのIT技術の活用に後押しされた医療の質改善や効率化、世界に対して競争力を持った産業の創出が模索される。データ駆動型社会における新しいヘルスケアの姿がどのように医療を変え、医療の価値を高めるのかという現状と展望を概説する。現在AIの世界の主軸は、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表される米国、中国、EUである。グーグルのAI「アルファ碁」が世界最強棋士に勝利したのは記憶に新しいが、同社はそのような技術を応用し、光学顕微鏡と連動した癌検出を支援するサービスを提案した。中国でもAIを活用した診断システムが医療の現場で使われ始めている。国内でもオリンパスがAIを搭載した内視鏡画像診断支援システムを発表したところだ。
20世紀に世界を動かしたのは石油だったが、2012年には石油メジャー4社の時価総額をデータメジャー4社が抜き、その後数年で数倍に伸びている。アマゾンの利益はクラウド市場で急激に伸張しており、マイクロソフトや中国のアリババがそれに続く。アマゾンは新しい医療ビジネスを開始し、アップルもApple Watchなどによりヘルスケア領域に大きく軸足を切り、中国では社会信用スコアの活用が進んでいる。そんな中、日本はどこに向かうべきなのか。病気にならない、病気を治すという従来の観点だけでなく、魅力的な生き方をしながら自然と健康になるといったライフデザインを作っていく必要がある。近年外科を中心とした日本の医療現場において、劇的な変化をもたらしているシステム「NCD(National Clinical Database)」では、全国5000以上の医療施設から手術症例が刻々と収集され、信用性の高い巨大データベースが構築されている。医療の質的な向上にビッグデータを有効に使い、新しい健康の価値を共に作り上げていく事がこれからの日本型ヘルスケアの理想と言える」
…ちょっと難しいこの講演の演者はK大学の医療政策学の教授だったんですが、いかにも頭脳明晰という感じの講演内容とは結構ギャップのある、銀髪に革ジャンというFF(ファイナルファンタジー)キャラのようないでたちで、学会中の注目を浴びていました。「学会長の許可を得た」ファッションだと言われていましたが、時代変われば教授のキャラも変わるもんなんですねぇ。講演内容はなんのこっちゃ?って感じなので話を非常に簡単にまとめると、「今まで医者の経験や知識に頼っていた癌などの病気の診断は今後AI(人工知能)が行い、ほとんどの医者が目で見て診断するより正確に診断できるようになります。IT技術を医療に活用し、新しい健康の価値を作っていきましょう」って事です。
大体コンピュータの「将棋ゲーム」が人間の棋士と対戦して勝った事と癌の診断になんの関係があるの? と思われるかもしれませんが、実はこれは大いに関係があるんです。癌の診断ってMRIとか内視鏡の画像を医者が見て診断するんですけど、「特定のパターン」で診断できるような簡単な世界ではないんですよね。「この辺に白い影がある」という典型的なパターンばかりだったらいいんですが、実際にはそんなのは少数派で、素人が見たら癌かどうかってほとんど分からない事が多いんです(勿論、場合によりますが…)。コンピュータって永らく「パターン認識(○とか△みたいなパターン化できる画像の認識)」しかできなかったので、「癌の診断」ができるなんて空想の世界で実現はしないと思われていました。ちょっと前までのコンピュータは「猫」の映像を「猫」と認識する事すらできなかったんです。人間なら幼稚園の子供ができる程度の「認識」もできなかった訳ですから、癌を診断するなんて夢のまた夢ですよね。ところがこの「パターン認識」を打ち破り、この数年ですっかりメジャーな技術になったのが「ディープラーニング」です。今ではAI(人工知能)の手法と言えばこの「ディープラーニング」を指すようになりました。
これまた話が難しくなってきたので簡単に言いますと、「大量の猫の画像をコンピュータに見せて学習させると学習効果が上がってきて、やがて非常に高い確率で『猫』と認識できるようになる」って事です。ただ、たくさんの猫の写真を見せて学習させると言っても人間だったら絵本や図鑑を何冊か見るだけで学習できますが、コンピュータの場合は何十万枚もの画像を使って学習させる必要があります。これが実現できるようになったのはGoogleのおかげなんですね。彼らは世界中のネットから情報を集めていますから、何十万枚もの猫の写真を実際に持っている訳です。(Googleの画像検索で「猫」で検索してもらうと実際に出てきますよね。あれを使っているのです。)同じように将棋の世界も以前はアルゴリズム(計算)で相手の次の手を予測していたのでプロの棋士には全く刃が立たなかったのですが、ネットに登録されている何万という将棋譜の記録を学習させて賢くさせる事によって、初めてプロの棋士に勝てるように進化したという事です。…やっとここでコンピュータ将棋と癌の診断がつながったのですが、多分読むのに疲れちゃいましたよね…(^_^;)。
いずれにせよAI(人工知能)がどんどん導入されていくと普通レベルの医者が診断するより癌の診断などは正確にできるようになるので、寿命は延びる事はあっても縮む事はありえない…って事になる訳です。勿論癌の診断だけでなくあらゆる分野がそうなっていくので、事故や殺人でない限り死ぬのも難しい…という時代がやがて来る可能性がありますね。そのうち先進国では「自殺」が死亡率のトップとなる時代が来るという怖い予測をする研究者もいるくらいでして、一体なんのための医療なのか、人はなんのために生きるのかなんて事が改めて問い直される日が来るかもしれません。
まぁ遠い先の話はさておいて、実際に私達の時代のアンチエイジングにまた話を戻しますね。抗加齢医学会でよく使われる言葉は「ピンピンコロリ」。死ぬ直前まで元気でピンピンしてて、コロッと逝くのが理想だという事です。そう言えば最近亡くなったジャニー喜多川さんはその理想に近かったのでは? 倒れる直前まで元気で仕事してて、倒れてからも一時奇跡の回復を見せて可愛がっていたジュニアたちと楽しい時を過ごしてから、すぐに亡くなったんですものね。確かに、あちこち痛かったりしんどい状態で長生きしても楽しくないですよねぇ。死ぬ直前まで美味しいもの食べて、好きな事して楽しく生きたいですよね。そのためには何が必要か? 食べ過ぎて太らないようにする事と、適度な運動をして筋力を維持する事が必要というのは今や定説です。当院ではそれにプラスαできるものを模索し、皆様に提供していきたいと考えています。プラセンタの点滴やサプリメントはその一つで、確実に元気で長生きをサポートしてくれると思います! プラセンタの会社の社長K氏のお母さんがプラセンタ点滴をずっとしていて、80代でピンピンしてて60代にしか見えなかったのがその証でしょう。
そして最近情報を得たものには、NMN(ニコチンモノヌクレオチド)があります。NMNはビタミンB3に含まれる物質で、あらゆる生物の細胞に存在していて本来は体内で自然に生成されるのですが、加齢に伴い体内でのNMNの生産能力が減退すると、様々な身体機能の修復機能が失われていくと考えられています。NMNは私達が身体の機能を保つのに必要なエネルギー代謝の根源的な物質であるNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)に変換されるので、NMNを補えば代謝が促進されて老化が防げるという事で、ワシントン大学の今井教授がマウスにNMNを1年間投与したところ、骨格筋・肝臓・目の機能・エネルギー代謝の状態などが人に換算して20歳くらい若返り、NMNに顕著な抗老化作用があるという結果がはっきり出たそうです。
またNMNは7種類ある全ての長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)にエネルギーを提供して活性化すると考えられており、若返りや抗老化作用が期待できる物質だそうです。長寿遺伝子とは、操作をすれば老化を遅らせ、寿命を延ばす事ができる遺伝子の事です。この長寿遺伝子は普段は眠っていて働いていませんが、そのスイッチをオンにすると老化のスピードが緩やかになり、寿命を延ばす働きがあります。老化をもたらす要因としては「活性酸素による酸化ストレス」や「免疫細胞の暴走」などが考えられますが、長寿遺伝子が活性化すればこうした老化の要因を抑え、進行を遅らせる事ができるようになるんですね。
そのメカニズムは、長寿遺伝子が活性化すると、細胞が分裂するたびに短くなっていく「テロメア」という染色体の末端部分がすり減るのを抑えられるという事だそうです。細胞は分裂を繰り返すたびにテロメアが短くなり、テロメアがある一定の長さまで達すると細胞分裂ができなくなってしまいます。細胞は約50回分裂すると分裂しなくなり、老化細胞になってしまうのです。そして老化細胞は炎症性物質を多量に分泌するため、年を取ると病気になりやすくなるそうです。長寿遺伝子が活性化すると、テロメアが短くなる事が抑えられ、老化細胞が減って若々しさを保てるという訳ですね。赤ワインに含まれるポリフェノールの一種「レスベラトロール」が長寿遺伝子を活性化させ、老化を防ぐ働きのある事はすでに知られており、肉などの動物性脂肪を多く摂っていながらフランス人に心臓病が少ない「フレンチ・パラドックス」は、フランス人は赤ワインを通じてレスベラトロールを日常的に摂取しているから起こるのだというのは有名な話ですが、レスベラトロールは7種類ある人の長寿遺伝子のうち1種類しか活性化しないのに対して、NMNはその7種類全部を活性化してくれるという話なので魅力的ですよね。
ちなみにこのテロメアは細胞の寿命を示す「寿命の回数券」とか「老化時計」などと呼ばれています。テロメアの回数券がなくなると細胞が分裂できなくなり、若い細胞が生まれなくなってしまうんですね。テロメアの長い人ほど若々しく、短い人ほど老けて見えるので、テロメアは「寿命のバイオマーカー」と言われており、テロメアの長さを検査して長寿になれる可能性が高いか低いかを調べる事もできるそうです。テロメアの短縮を加速させる原因は肥満や喫煙、運動不足、精神的ストレスなどが挙げられるので、生活習慣の見直しも大切ですね。私もお酒を少し控えて運動をもっと頑張り、さらにNMNを試してみようと思っています。なんだか不謹慎な言い方かもしれませんが、私もこの「ピンピンコロリ」が理想的な人生だと思うんです。どう考えても「自殺が死亡率のトップになる社会」よりずっと健全だと思いますし…。このようにアンチエイジングの世界もどんどん新しい発見があって進化しているのですが、その知識と技術を研究者達だけの中に留めずに、一般の人も恩恵にあずかれるようにアレンジしていくのが「柴田エイジングケア・美容クリニック」の使命だと思っています。今後も皆様と共に「素敵な加齢」に取り組んで行きたいと思いますので、よろしくお願い致します。