こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。新緑が目に鮮やかな季節になってきましたね。ゴールデンウィークはどうお過ごしでしたか? 私はと言えば…全日本医師卓球大会と、新しい治療の研究に東京まで行ってきました。
全日本医師卓球大会というのは、全国の医師が集まる卓球大会です。なんとも細かいセグメントなんですが、世の中にはそんなのがあるんですよね~。医学生の卓球大会は西日本・東日本別や、近畿・中国四国などの地方別とかいろいろあるんですが、学生時代にそれらの大会で優勝していた強豪が集まり、中には全学(全ての学部)でも通用していた人もいるので、医師卓球大会って結構レベル高いんですよ。団体戦と年齢別の個人戦があり、個人戦は40歳未満と40代、50代、60代、70代、80代(!)に分かれています。80代でもかなり強い人もいて、60代で優勝した知り合いの先生なんて若者顔負けのフットワークでビックリ! 運動はアンチエイジングにいいって言いますけど、正にそれを証明しているような人がいっぱいいるんです。

団体戦では上の年代の人と当たったら1ランクにつき1点のハンディをあげないといけません。ハンディは最高2点ですが、80代に限り3点までOK。しかし若手の医者は忙しくてなかなか練習できないのに対し、年齢が上がって暇ができると週に4回とか毎日練習してる人もいるので、ハンディなんかいらないんじゃないの?って思ってしまいます。団体戦のチームは同じ出身大学か勤務先が同じ都道府県の人で組むようになっていて、うちの大学は今年は平成10年から20年代卒の歴代のエースを集めて挑んだんですが、全日本の壁は厚くて1勝したのみ。平成24年卒の当時のエース(30歳)が80代の人と当たって、必死でドライブしてるのに全部止められて「3点ハンディはきついっす…」ってぼやいてました。私は練習もろくにできてなくて久しぶりに出たので、自分の衰えぶりにガックリ。でも年齢が上がるとあまり動かなくても勝てる戦型にする人も多いようなので、私も戦型を変えてもうちょっと頑張ってみようかなと思っています。
卓球強い人って自然と仲良くなるので、久しぶりに他大学の仲良かった先輩や後輩たちと会えるのも楽しみの一つ。そして大会のもう一つの楽しみは何と言っても飲み会です。今年の大会は東京であったんですが、行きの新幹線から他大学出身の先生たちに誘われて新幹線の中で宴会。着いたら一緒に出場する後輩や先輩と宴会し、さらに試合後も応援に来てくれた先輩や後輩たちと出場した先輩・後輩と共に宴会。卓球しに行ってるのか宴会しに行ってるのかよく分かりませんが、とにかく楽しかったです。

さて…遊んだあとは本業のお勉強。新しい治療の研究のきっかけは、知り合いのY先生が美容系雑誌に載っていた事でした。アメリカのセレブが通うクリニックにY先生が行って究極のリフトアップ治療を受けたという内容。注入治療なのに、直後にY先生の二重顎がスッキリ引き締まって、綺麗にリフトアップしているではないか! これは早速聞いてみなければ、とY先生にTEL。
柴田 :「先生、雑誌出てましたね! 注入であんなリフトアップできるの? 何をどこに打つの?」
Y先生:「ああ、あれね。ヒアルロン酸とエランセを顎からフェイスラインに注入して、顎を前に 出すと二重顎の脂肪が前に引っ張られて目立ちにくくなるって理屈。でも雑誌社に頼まれ たから行ったけど、怖かったわ~。合計12ccも注入されてんよ。顔面動脈詰まったら顔 腐るのに、アメリカってそうなっても訴えませんみたいな誓約書とか書されるしさぁ…。 それにそんな大量に注入したら凄い値段になるでしょ。僕なんか70万円位かかってんか ら。先生がするんやったら、絶対○メッシュの方がいいよ」
ふむ…。雑誌の記事って、鵜呑みにしない方がいいみたいですね。エランセというのはPCL(ポリカプロラクトン)を主成分とする注入剤です。エランセに使用されているPCLは手術の際に使用する溶ける糸を細かい球状にした成分で、注入した部位のコラーゲン形成を促す事ができ、注入部位の弾力アップに効果があると言われています。しかしヒアルロン酸のように入れ過ぎたからと言ってすぐに溶かす薬がなく、吸収も遅いので慎重に扱わないといけない注入剤です。
Y先生の言う○メッシュというのは、そのPCLを細い糸状にして網目に組んだものだとか。固体なので血管が詰まるリスクもなく、流れないので少しずつ入れると好きな形が作れてとても良いという事で、再生医療で細胞の足場(細胞を育てやすくする家のようなもの)にも使われている素材で、最終的には自分の組織に置き換わるので安全だそうです。

柴田: 「それって注射?」
Y先生:「うん。細い針で入れるの」
柴田: 「固体なのに針の内腔通るの?」
Y先生:「うん。すごーく細い糸にするからね」
…この会話にちょっと行き違いがあった事は後になって分かるんですが、取りあえず詳しい話を聞こうと思い、クリニックを訪ねる前の日に久しぶりにY先生と食事に行く事にしました。Y先生が連れて行ってくれたのは銀座のお鮨屋さん。そこでは○メッシュの他にも赤ちゃんの脊髄幹細胞培養上清の話や美容関連その他の話で盛り上がりました。赤ちゃんの脊髄幹細胞の話は驚き。皆様も名前を聞いた事がある有名人が、胎児の脊髄幹細胞を若返りの為に注射していたという業界の裏情報です。脊髄幹細胞取られた赤ちゃんってどうなるのよ? いくら金に糸目を付けない人でもそれって倫理的にどうなの? かの楊貴妃が若返りの為に宮廷に若い女性を連れて来させて、その生き血を飲んでいたという話を聞いた事があるけど、それに匹敵するなぁ。ただこの手の業界裏情報ってどこまで本当なのかは全く分かりませんが…(^_^;)。最近は胎児を殺さずに脊髄幹細胞を取り出せるようになったという話ですけど。
でもそんな怖い話以上に驚いたのが、Y先生がクラブで夜な夜なDJをしているという話。(クラブって学校のクラブ活動じゃないですよ。ダンスする場所の事、まぁ私達の年代はディスコって言う方がピンとくるのですが…(^_^;)。私もいろんな医者が夜に別の仮面をかぶっている(いや…仮面を脱いでいる?)という話は聞いた事がありますが、クラブでDJやってるって人は初めてです。ほんまかいな?? 以前から彼は普通のドクターとは違う感じしてたんですよねぇ。インスタで海外のドクターや研究者と友達になって医療材料を作ってもらってるという話を聞いて、その交友関係の広さには驚いてたんですが、そういう医者らしくないところが友達が多い原因かもしれませんね。

それはともかく、翌日Y先生のクリニックへ。うちのクリニックはアンチエイジング治療が主流ですが、Y先生のクリニックは美容外科なので、芸能人や若い人を「より綺麗にする」「より可愛くする」という治療も多いようで「美を追求する」事が主流のようです。人間は人の顔の美しさを0.5秒で判断できるそうで、それは目など顔の上半分ではなくて、輪郭など顔の下半分で決まるそうです。ハート形の輪郭が一番綺麗に見えるので「ハートシェイプ」を追求すべきだという事は、美容外科学会でもよく講演されていますが、○メッシュは好きなところに入れて、彫刻のように理想の輪郭を作る事ができるんだとか。(美しい顔を追求するために、Y先生は彫刻の勉強もしようかなと思われているそうです!)○メッシュは細い糸状の材料がさらに細かいメッシュ状になっているので、そこに血管が入ってきて自分の組織に置き換わり、従来の糸よりもずっと感染の確率も低く、ヒアルロン酸のように血管が詰まるリスクもなく、いい事尽くめだというY先生論。

確かに輪郭が大事なのは若い人ばかりではなく、目の周りは一番早く老化が現れますが、一番老けて見える原因と言えばやはりフェイスラインがたるんで輪郭が崩れる事ですよね。加齢と共に骨・筋肉は委縮し、顔の上半分の脂肪は減って下半分の脂肪は増え、重力に逆らえず下がってくると、たるみに拍車がかかります。
私も自分の顔で一番気になるのはやはりフェイスラインのたるみ。去年の12月に潜入調査に行った時、えらボトックスをしてもらったら効き過ぎて、それからフェイスラインのたるみが余計気になってきたという話をY先生にすると「えらが戻ってきた時の事を考えると、フェイスラインは○メッシュよりもヒアルロン酸とエランセの方がいいかな」と言われたんですが、エランセは痛くて腫れると聞いて心配したら「じゃあ最小限にしよう」と、顎だけに○メッシュを最小単位入れる事を勧められました。

柴田: 「○メッシュは腫れないの?」
Y先生:「腫れないよ。1週間くらい触ったらちょっと痛いくらい」
その日は夜にクリニック通信常連出演のK氏と東京グルメの予定だったので、パンパンに腫れるのもちょっとなぁと思ってたんですが、それくらいのダウンタイムなら、せっかくだから一番いいという最新治療を受けてみる事に。
柴田: 「入れるとこ見ててもいい?」
Y先生:「うん、いいよ。まず麻酔ね」
鏡を見てると、まず皮膚に麻酔をして針で穴を開けてから、長針をつけた注射器が登場。
柴田: 「それが○メッシュ?」
Y先生:「いや、これはまだ麻酔」
柴田: 「イテ! イテ!」
麻酔もえらい痛いやん! そして針に糸を付けたセットが登場。あれ? ○メッシュって注射とちごたん? …と思ってる間に糸と針がグリグリ入ってきます。えらい勘違いやったがな。

柴田: 「イテテテテ!」 麻酔してても痛いやん!
Y先生:「最小限の4本にしたから、すぐ済むよ。ちょっとだけ我慢してね」
そうしてイテ、イテって言ってるうちに終了。看護師さんが「1日だけテープ貼らせてくださいね。明日ははがしてもらって結構です」え? そんなん聞いてへん~! お蔭でテープ貼ったままレストランに行く羽目に。直後もジンジン痛かったんですが、麻酔が切れたらえらい痛いやん!! 術後に痛み止めを大量に処方されたので、なんでかな?と思ってたんですが、そういう事か! しゃべるのにも食べるのにも支障をきたすほど。テープを貼ったまま現れ、食べるたびに「イテ!」を繰り返す私にK氏は「今日の潜入調査は大変でしたねぇ!」と大笑い。今回は潜入ではなかったんですけど…と言いながら、シャンパンで痛みを誤魔化してしっかりグルメはしましたが、あ~痛かった~。

そしてその後は「触ったらちょっと痛い」どころかしゃべっても食べても痛いがな。
柴田:「痛いよ~。食べてもしゃべっても痛いねんけど…」
Y先生:「PCL系は1週間ほど痛みが出るので頑張ってくださいな。エランセ入れなくて良かった~。先生の場合は顎にボトックスを入れたら痛みましになると思うよ」
柴田:「なんでPCL系は痛いの?顎にボトックス入れたら痛みがましになるのはなんで?」(得意の質問攻め)
Y先生:「PCL等の再生医療系材料は周囲に血管を引き寄せるから痛いんだと思う。先生は オトガイ筋(顎の筋肉)をよく動かすから普通の人より痛いんじゃないかな。 ボトックスで筋肉を動かしにくくしたら痛みはましになると思うけど」
そうか…。でもボトックス入れたらどっちの効果か分からなくなるので、研究者としては我慢するっきゃない。そうして1週間ほど経ったら、だいぶ痛みはましになってきました。友人に話すと「そう言えばちょっとフェイスラインがスッキリしたかも」と言われ、Y先生には次の学会の時に○メッシュのセミナーにも誘われたので、経過と共にまたご報告しますね!
まぁ、そんな訳でY先生も夜な夜なクラブでDJしている割に(割に…って失礼な言い方ですが…)きちんと新しい事を研究しているのには敬服でした。(素直に人は見かけによらないもんだな…って思ったんですが、その言い方もやっぱり失礼か…(^_^)。この通信読んでたら、Y先生ごめんなさいね。)
美容治療って凹んだ所を膨らませたり、尖った所を削ったりしているだけと思われがちですが、人間は生きていて、何かの作用を与えると細胞や筋肉も変化するので、その相互作用を考えなければ思っていた効果は出ません。美容治療で失敗して凸凹になる事がありますが、あれが相互作用をきちんと考慮できなかった典型例です。どんな事でも新しい事は一定のリスクがあるので研究が必要ですが、この痛みも研究が進むと改善されていくかもしれませんね。いずれにせよ、新しい事はチャレンジの連続です。

そう言えば年をとっても卓球の強さが衰えない先輩方も、よく観察すると体力の衰えを補うような細かなフォームの矯正はしているようで、毎日の練習の中で自分を客観的に観察し、相互作用をきちんと考慮している人が強さをキープしているようです。年をとったら筋肉や骨が弱り、若い時と同じ打ち方をしていたらすぐに体に問題が出てしまいます。その為、弱った部分をカバーしながら最大の効果が出る方法を日々研究する必要があるのは当たり前ですね。
そんな訳で美容と卓球という全く関連性のないものでも、「きちんとした効果を出すには人間の体をちゃんと理解して相互作用を考慮する事が必要なんだ…」って改めて思った次第です。私はさすがにDJするのは無理ですが、美容と卓球についてはまだまだこの相互作用の研究を極めていきたいと思いますので、今後共宜しくお願い致します。