top of page

第182回「しっかりツボをおさえないと…」

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。ようやく暖かくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? お花見は行かれましたか? 私はと言えば…バタバタしてたのでお花見は近場でささっと済ませ、去年行けなかったモナコの学会に行ってきました。


モナコと言えばイタリアとフランスの間にあるヨーロッパの小国で、お金持ちの多い事で有名な国ですね。同じヨーロッパにはリヒテンシュタインとかバチカン市国とかいう小国もあれば、飛び地(ある国の中にぽつんと存在する外国の領土)があったりと、細かく見るとモザイクのような所が沢山あります。それもそのはず、ヨーロッパは今でこそ平和が続いていますが歴史を紐解くと、年柄年中戦争してたと言ってもいいくらいどこかで常に戦争してたんですよね。その為国境も歴史の流れと共にどんどん変わり、新しい国が生まれたり、どこかの国がどこかに吸収されたりと、本当に目まぐるしく変わっていました。そんな中でモナコやリヒテンシュタインといった小国が残っているのが本当に不思議です。その訳は、どちらの国もどこかに吸収されたり滅ぼされたりしそうになりながら、微妙なバランス感覚で大国間の調整役になっていたからだと思います。そういう意味では体のツボのように、ギュッと押せばどこかがギャ!というような役割をしてきたのでしょう。



さて、去年久しぶりに行ったイタリアがあまりにも良かったので、モナコに行くついでにちょっとイタリアにも寄ろうと計画を立てました。イタリアと言えばやはり毎年ヨーロッパに3週間は行くというクリニック通信常連のK氏と、イタリアに100回以上行ったというこれまた常連の同級生Gさんです。2人に「モナコの学会に行く」と言うと「じゃあ、チンクエテッレが近くだから行けるね!」と声を揃え、K氏はまたもや「一生に一度は絶対行った方がいいですよ!」攻撃。そう言われるとやっぱり行った方がいいのかな…と思うのは人情です。チンクエテッレというのは世界遺産の一つで、海辺に並ぶ小さな5つの村。その中でも「マナローラとヴェルナッツアは絶対行った方がいいですよ! ポルトベーネレも素敵ですしね♪」とK氏。モナコからは少し遠いかなと思ったんですが、一生に一度は…というK氏の言葉に動かされ、行ってみる事にしました。


イタリアからモナコへは鉄道で移動しなくてはいけないので(K氏はいつも車らしいんですが、私は国際免許を持ってる知り合いもいないので…)英語ができて「てっちゃん」(鉄道マニア)である事を条件に荷物持ちを公募しました。すると今回は仕事をしている後輩が立候補。ところが1か月くらい前になって仕事の都合で行けないかもしれなくなり、諦めかけていたところに「行けるようになりました!」と連絡があったのが出発の10日前。それから飛行機を取ったりでバタバタでした。なかなか予定が決まらず皆様にはご迷惑をおかけしてしまいましたが、なんとか無事出発する事ができました。



今回はミラノから電車でラ・スペッツィアという街まで行って、そこからタクシーでポルトベーネレという世界遺産の村へ。行けるかどうかはっきりせず、直前までキャンセル無料のホテルしか押さえられなかったので、K氏お勧めの世界遺産の中では少し離れたその村でしか良さそうなホテルがなかったんです。(K氏が泊まったっていう素敵なホテルなんかは3か月前からキャンセル不可だし…。)


電車の駅からは車で海岸線の細い道を延々と走るんですが、めちゃ遠い! そうか…K氏のようなゆったり3週間もヨーロッパ旅行を楽しむ人と、学会ついでにちょっと足を延ばそうという私とは状況が違うので、真似しようとするとえらい目に遭う事が分かりました。(そう言えばK氏は「マナローラには3泊しかしませんでしたから」なんて言ってたなぁ…。)しかもホテルのホームページを見て素敵なテラス付きの部屋を予約したはずが、着いてみるとテラスがないではないか。おまけにお風呂はシャワーだけで、バスタブがない! フロントに抗議に行くと、予約した部屋は同じ値段でもテラスがあるのとないのと2つのタイプがあり、バスタブは800ユーロも高いスイートルームしか付いてないんだとか。写真に騙された!ガックリ。


まぁ村自体は建物がお洒落でとても可愛かったんですが、前回勧められたポジターノとよく似てて、K氏の好みがはっきりしたって感じでした。でも交渉の甲斐あってバスタブは無理でしたがテラス付きの部屋に変えてくれたし、トリップアドバイザーで探して行った近くのレストランはシーフードがめちゃ美味しかったので、いっぺんに機嫌が直ってしまいました。(分かりやすい…。)



イタリアからモナコ近くのビルフランシュというフランスの街(モナコのホテルはただでさえ高いのに学会時は暴騰し、1泊10万円以上のところしか空いてない事が多いので、バブリーでない私は近くの街から電車で通う事にしています)に移動の日は電車の乗り継ぎが2回あったんですが、特急ではなかったのでしっかり遅れ、1回目の乗り継ぎに失敗。その日はビルフランシュに着いたら、2013年にモナコの「世界一のスパ」で知り合ったニース在住のエステティシャンで、当院のアルバイトに可愛い甥っ子M君を紹介してくれたTさんと会う予定だったんですが、約束の時間に間に合いそうにありません。何時頃に着くか連絡しないといけないので時刻表を検索すると、次の国境の街での乗り継ぎ時間がまた5分しかないではないか。これは間に合いそうにないなぁと言ってたんですが、そこで電車を降りるとホームに表示される電車の番号が変わった事をてっちゃんが察知。なんと乗り継ぎだと思ってた電車は同じ電車だったんですねぇ。時刻表には違う電車に乗り継ぐように書かれてたんですが、そこの街から電車の番号が変わるだけだったんです。紛らわしいではないか! 降りてウロウロ探してたら乗り遅れるところでした。やはり荷物持ちはてっちゃんに限りますね。


驚いたのは、イタリアの電車の検札はiPadを持っていて、切符を予約したサイトのスマホ画像を見せてQRコードを読み取るだけでOKなんです。フランスはチケットでないとダメらしいので、イタリアの方が進んでますね。そんな事が分かるのも旅の楽しみの一つです。



そうして無事ビルフランシュに着き、Tさんと2年ぶりの再会! なんとTさんはキックスケーターでニースからモナコまで通勤されてるそうです。フランスの電車はキックスケーターや自転車も乗せてもいいそうで…。Tさんとは甥っ子M君や前回同行した韓流B君の話で盛り上がりました。私はTさんが日本に帰った時に必ず買うと言われていたカレールー(日本では普通にスーパーで売ってるハウス◯◯カレーとかの類です。これらはニース製より日本製が断然美味しいらしく、ニースに住む日本人は日本に帰国したら必ず買って帰るのだとか…)をお土産に持って行ったんですが、Tさんもお土産にフランスワインをくださいました!


さらに嬉しかったのは、ビルフランシュで2年前と同じホテルに泊まったらフロントの人が覚えてくれていて、予約時は狭い部屋しか空いてなかったんですが、もっと眺めのいい角部屋をスペシャルプライスで提供してくれた事。そのホテルは100年以上続いているらしいんですが、やはり長く続くところはサービスもいいんですね。このように規模は小さいけど歴史があって、コンシェルジュの人が親子代々勤めているというようなところをブティック型ホテルと言うのだそうですが、大型チェーン店にない良さがあり、特に年を取るとそのようなブティック型の良さが身にしみてきます。(そう言えばK氏も大型ホテルよりブティック型ホテルの方が好みだって言ってたなぁ。K氏も私より年上なんで…。)



そんなこんなでやっとたどり着いた学会会場。例年同じ会場なんですがとてつもなく広く、目的の講演の部屋や展示ブースを探すだけでも大変です。世界中からアンチエイジングに関する注射やサプリメント・化粧品などを扱っている会社が集まって競って展示をしていて、その規模は半端ない。広大なフロアがなんと7階建てになっていて、中2階などがあって入り組んでおり、日本の学会とは比べ物になりません。講演の大きな部屋も7つあり、それぞれで注射や手術・糸・レーザーなどの機器による治療・化粧品やサプリメントなどの講演が並行して行われるので、何を聴くかも迷ってしまいます。


全体的に見ると世界の趨勢も手術より糸、糸より注射治療や機器による治療といった、より負担やダウンタイムの少ない治療に傾いてきているようです。注射治療はまだまだボトックスやヒアルロン酸注入が主流で、新しいヒアルロン酸なども次々と出てきていますが、アミノ酸入りのヒアルロン酸や、コラーゲンを増やすコハク酸とヒアルロン酸注入のコンビネーション治療なども発表されており、幹細胞や幹細胞培養上清の発表もちらほら見られました。また今年はケミカルピーリングや育毛に関する発表も以前より増えていたように思います。


しかし一番疲れたのは、会場が広すぎて荷物を預けたクロークが帰る時に分からなくなって探し回った事。会場の係員や展示ブースの人に聞いても誰も分からないんです。インフォーメーションをいくつか廻ってやっと発見。はぁ~疲れた~。



学会で疲れた後に長い飛行機でさらに疲れ(この進化した世の中で、なんで飛行機だけは速くならないんですかね? 直行便でも10時間以上かかるし、格安航空券で乗り継ぎなんかするともっとかかってしまいます。海外の学会は楽しみも多いけど疲れる事も多いですよね…)、時差ボケもあって帰国後1週間は大抵点滴とマッサージ漬けです。しかし今年は、先月号で紹介した元スタッフが開業した鍼灸エステに誘われ、帰国後3日目に行って鍼をしてもらったらあら不思議…疲れと肩こり・腰痛が大幅に軽減し、マッサージはその週帰国直後の1回しか行きませんでした。中国三千年の歴史はやっぱりすごいかも!


鍼灸で使う鍼ってめちゃくちゃ細くて、刺してもほとんど痛みはありません。体の中に鍼を入れると一定の刺激がある事は間違いないんですが、注射のように薬剤を注入する訳ではないので、本来なら効果なんてなくてもおかしくありませんよね。しかし人間の体にはツボが存在するため、非常に弱い刺激でもツボにハマればそれが関連する体の部分に作用を与えるようです。中国医学では「体には気が流れる経絡という道が存在し、その中を流れる気が体の表面に出てくる場所がツボ(穴)」と言っているようですが、西洋医学の見地では体を解剖しても経絡というような線は存在しませんし、ツボが特殊な作用をするという証拠は見つかりません。それでもツボを鍼やお灸・指圧などで刺激する事で、体の不調を改善できる事実を否定する西洋医学者もほぼいないと思います。


…って事は、今の医学では良く分かってなくて説明は困難だけど、経験的に凄い効果があるのがツボだとも言えます。(そう言えば笑いのツボもハマると笑いを止める事ができなくなっちゃいますもんね…(^_^)。これもどうして面白いのかを説明するのは非常に困難な事が多いし。)



まぁ兎にも角にもこのツボの場所をきちんと勉強し、相互作用を考え必要なツボを刺激して症状を治すのが鍼治療です。しかしツボの刺激は体に良い事ばかりではなく、悪い作用もあるので素人が安易に鍼なんかでツボを刺激すべきじゃないし、鍼灸院でもヤブのところでは鍼は打たない方がいいとの事。まぁ、そりゃそうでしょうね。薬になるものは毒にもなる訳だし。


そう言えば、冒頭で紹介したモナコもお金持ちが沢山住んでいる訳は、税金がほとんどないから世界のお金持ちがこぞって移住してきたからなんですが、当然ながら移住される側は良い気はしていません。なぜなら本来自国に住んでいれば多くの税金を収めてくれるはずのお金持ちを、モナコのような国が「無税」という甘い餌で釣って引き込む訳ですから、考えようによっては「そんな国潰しちゃえ」って圧力がかかってもおかしくないですよね。それが不思議に潰される事なく存在している理由は、体のツボと同じで下手に刺激するとおかしな所に反応が出て大変な騒ぎになるからなんだとか…。(政治家とか有名人の隠し財産とかがゴソッと出てきたりする…という意味。)なので当たらず触らず、微妙なバランスの中で生き延びてきたのがモナコなどの小国のようで、いずれにしてもツボは上手に使わねばならないようです。




さて、その元スタッフが開業した鍼灸エステですが、当院の患者様で行ってくださった方も、美容鍼をして直後はすごくリフトアップしたと言われていましたので、ご興味ある方はぜひお試しくださいね。さて、彼女が一緒に写真を撮ろうと言ったので、そこで写真を撮ったんですが、その後「私の友達が先生の写真を見て、先生30代に見えるって言ってましたよ!」ってラインが来ました。学会疲れの残っている時に撮ったので30代はないでしょうけど、お世辞でも嬉しいではないですか。やっぱり今後も体力付けて海外の学会も積極的に行き、新しい治療を見つけて自分でも試し、若さを保ちながら皆様にも良い治療を提供できるように頑張ろう!と思いました。


私のクリニックも規模は小さいのでチェーン店には知名度で負けてしまいますが、しっかりとツボを押さえたブティック型のクリニックとしてこれからも頑張っていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。

bottom of page