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第181回「またやってきますね、この季節が…」

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。春が近づいて急に暖かくなったかと思ったらまた寒くなったり、寒暖の差が激しい今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 今年は桜の開花が全国的に早いのだとか…。この通信を書いている最中はまだ開花していませんが、日本全体が春の訪れを感じる季節になりましたね。色々な意味でまた新しい出会い、そして別れのドラマが始まります。


さて私はと言えば…先月号でお伝えした暖房の件で管理会社とのハードネゴシエーションはまだ続いていますが、その合間を縫って(?)サイトカイン療法の調査やSNSの勉強、PRPの件などで忙しく過ごしています。え?サイトカインって何の事?…って思われた方は勉強不足です…(^_^;)。…ここ数ヶ月のクリニック通信をもう一度読み直してくださいね! こちらサイトカイン療法は先月よりさらにいろいろな会社にコンタクトを取り、資料を送ってもらったり話を聞いたりしましたが、調べれば調べるほど疑問が湧き、さらに調べないといけないという事に…。一番気になるところはやはり安全性で、自分の幹細胞でなければ感染症などの検査をきちんとしているのか、培養上清の作製前後にきちんと滅菌しているのかなどの点ですが、どこの会社も十分ではないようです。



臍帯血幹細胞の培養上清を扱っているところで、自社で産婦人科医院を持っていて、そこでドナー(提供者)の血液で感染症などのスクリーニング検査をきちんとしていて証明書もあり、世界最大規模の臍帯血バンクを持っているという会社があったのでいいかと思ったんですが、滅菌方法を聞くと「濾過滅菌」(細かい網目で細菌など網目よりも大きいものを濾して取り除く方法)のみなので化粧品扱いで、注射はできないとの事。骨髄由来の培養上清も同様でした。化粧品レベルではやはりPRPに代わる治療にはなり得ません。


Eクリニックで推奨されていた「日本で最高水準の技術を持つ研究所」を持つS社にもコンタクトを取ってみました。別のサイトカイン療法を勧めているH社からは「S社は大手で、個人の医院などは相手にしない」と言われましたが、コンタクトを取ってみると資料も送ってくれて、担当者が東京から説明に来てくれました。話を聞くと大手製薬会社との提携や共同研究などもしていてしっかりしてそう。でも滅菌方法を聞くと、滅菌はしていないとの事。「完全な無菌状態で培養し、最後に無菌性を確認しているので、逆になぜ滅菌がいるのか?という事です」と自信ありげな口調でしたが、小さなH社の培養上清でも濾過滅菌は採用していて(ガンマ線滅菌やガス滅菌よりは有効性は落ちるが)「最近は蛋白など熱で壊れやすい有効成分のものは濾過滅菌が主流である」という資料も取り寄せてくれたので、最低濾過滅菌くらいは必要なのでは?と思ってしまいます。でもS社もH社も皮膚への注射どころか点滴に使っても大丈夫と言うのですが、本当かなぁ?



この事をクリニック通信ではお馴染みのK氏に聞いてみると(K氏は普段グルメやヨーロッパ旅行の話ばかりで登場しますが、実は米国コーネル大学卒業後スタンフォード大学院で生化学の博士号を取った超エリートの専門家で、プラセンタのN社の社長兼学術担当なので、この手の話には非常に詳しいのです。人は見かけによらないもので…って失礼すぎ??)曰く、「通常滅菌は3種類の機序の異なる滅菌方法を組み合わせる事が推奨されている」との事。


プラセンタも主な有効成分は蛋白ですが、「胎盤を提供されるドナーのウィルス・チェック、海外渡航経験を確認した胎盤のみ、N社が直接契約した日本国内の医療機関から採取しており、工場受入時にB型肝炎・C型肝炎・HIV(エイズ)ウィルスについては全数汚染の有無をPCR法により検査する。更に最終製品についてはこれらの3つのウィルスに加えてHTLV(成人T細胞白血病)及びパルボウィルスB-19(リンゴ病)の検査を実施してから出荷する。製造工程におけるウィルスや細菌・真菌等の不活化処理については、最終的な121℃・20分間の高圧蒸気滅菌、有機溶媒(アセトン)による滅菌及び酸処理(pH2.0)による滅菌と、機序の異なる3種類の滅菌工程が組み込まれている。ウィルスに関する汚染についてはこれらの検査や滅菌処理で不活化されることは検証されている」という厳しい方法が取られています。


「効果はその分落ちるが安全性を重視し、投与量や投与回数で効果をカバーする」という考え方だそうで、確かにその方が安心ですね。「無菌状態で培養しているから滅菌が必要ないなんて言う会社はやめた方がいいですよ」との事。確かに医薬品と同等に扱うには、何重にも重ねた安全確保は必要だと思います。




そんな中、京大再生医科学研究所教授の元気なT先生からまたもや直々に研究会へのお誘いが。「医工学フォーラム」という、医学・工学・薬学の専門家が集まって再生医療関連の研究成果を毎年報告する研究会です。折しも幹細胞培養上清の講演があるではないですか! 講演内容は、動脈硬化に対して脂肪幹細胞の培養上清を動物実験で血中投与すると効果があったというものです。幹細胞をそのまま血中投与すると塞栓(血管が詰まる事)のリスクがあるので、培養上清の血中投与を考えたという事でした。


確かに幹細胞培養上清の血中投与は、幹細胞移植に比べると塞栓や癌化のリスクがより少なく、手技や費用面でもメリットがあり、今のところ動物実験の毒性試験では安全性が確認され、癌を大きくすることもなかったという報告もあるようです。また糖尿病や脊髄損傷・アルツハイマーやパーキンソン病など、疾患によっては臨床試験で著明な改善がみられたという報告もあり、いろいろな可能性を秘めた治療とも言えますが、講演していた先生を捕まえて滅菌方法などを質問したところ、「今は濾過滅菌でしてますけど、これは動物実験なんで…。臨床応用する場合は考えないといけないと思います」と…。



T先生とも滅菌や培養上清の話もしましたが、T先生が使われているゼラチンハイドロゲルはEOGガス滅菌をされているとか。「最近美容医療界で幹細胞培養上清が雑誌とかに載って流行ってきてるんですけど、まだ安全性が確認できてなくて…」と言うとT先生は「先生、それそれ。まだ出てきたばっかりで効果も安全性も確認できてへんもん使こたらあかんよ。美容の先生はすぐそんなん使こてしまうからねぇ。ちゃんと動物実験から始めて次に臨床試験して、効果と安全性を確認してから使わな。患者さんで試したらあかんよ。そんなんしてたらまた規制かかりますよ。PRPかて一部の美容の先生がむちゃくちゃするから規制がかかってんからね。再生医療新法ができたんは美容外科が原因ですよ」


やっぱりそうだったのか。PRPの血小板濃度も計らず、効果が出ないからと言って大量のFGF(線維芽細胞増殖因子)を混ぜて使った美容外科の先生がいたために注入部が膨らみ過ぎて問題になった事から、規制をかけようという事で再生医療新法ができたらしい。(真面目に治療していた人達にとっては大迷惑ですよね。お蔭であんなに書類に時間取られるし…。)


今のところ幹細胞培養上清が動物実験で有効性が報告されている疾患は、脊髄損傷や脳梗塞・アルツハイマーやパーキンソン病などの神経疾患、肝疾患、心臓疾患、肺炎や関節炎、骨粗鬆症、アレルギー性皮膚炎や脱毛症などがあるようですが、シワやクマ・たるみなどの改善に関しては確認できていないので、雑誌に載っているような方法で患者様に使うのはまだ早いように思います。



…って今回のクリニック通信は珍しくお硬いお話で、横文字と英略語のオンパレードだけど皆さんついてきてます? 私も専門家の端くれなんで、普段はこんな真面目な話ばかりしてるんですよ…人は見かけによらないものです!!


散々難しい話をした後でなんなんですが、結論から言えばそうこうしているうちにやっとPRPの書類が認定審査委員会の審査に通ったという連絡が来ました! なのであんまり評価が定まってない事でその場をしのごうとせずに、めっちゃ手間かかるけど安全性は折り紙付きで効果も確実なPRPを、もう一度春の新企画として始めちゃいます!って事にしました。


認定審査委員会の審査に通れば、後は厚労省のホームページにアップした書類を厚生局にチェックしてもらい、電話でOKをもらえば印刷して郵送し、計画番号という番号が付与されれば認可が下りるという事でした。審査委員会の担当者Aさんからは、電話でOKをもらって郵送したらすぐに認可が下りると聞いてたんですが、郵送後なかなか計画番号が付与されません。おかしいなと思ってAさんに聞いてみると「お役所の人が忘れてる事もあるらしいですから、一度確認した方がいいですよ」って。こんな大事な事、忘れんとって欲しいですよねぇ!

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厚生局に電話してみると「2~3週間かかる事もある」って…! えーっ、1回書類チェックしてOKしたくせに! なんで2~3週間もかかるん??「えっ、そんなにかかるんですか?? 今月中には下りますか?」と聞くと「ええ、今月中にはなんとか…」って、さすがお役所やわ。ほんまびっくりしますね。しかし2週間以上経っても音沙汰がありません。しびれを切らして再度催促の電話をすると「今日明日中にはなんとか…」って、蕎麦屋の出前かいな。そうしてやっと2回目の催促の翌日に認可が下りました。やった~! 長い道のりだった…。


その直後に再生医療学会があったので、私の苦労を知っていた業者の人達に祝福され、「みんなこんなに苦労して書いてるんかなぁ?」と聞くと「いえ、ほとんどはキットを売ってる業者が書いてるんですよ。先生はそこのキット使ってないから、嫌がらせされたんちゃいます?」って…正直者は馬鹿を見る世界なんでしょうか…。でも皆様を大変お待たせ致しましたが、とにかくまたPRPができるようになりましたので、興味のある方は是非またご連絡くださいね。


とはいえ、物事何でも先進的な事をしないと進歩しないという面もあるので、サイトカイン療法の調査や情報収集は続けていくつもりです。動物実験や臨床試験で効果や安全性が確認できて、自分でも試して劇的な効果が出れば、また検討しようと思います。



話は変わりますが、先日、以前当院でアルバイトをしていた中国の留学生Nちゃんから久しぶりに連絡がありました。彼女は鍼灸学校に通うために当院を辞めたのですが、辞めてからも時々手伝いに来てくれたり中国に帰った時はお土産を持って来てくれたりしていましたが、今回は「報告したい事があるので挨拶に行きたい」と。何の報告かなと思っていたら、なんと自分で美容鍼灸エステサロンを開業する事になったと言うんです! 鍼灸学校を卒業してからエステや美容クリニックに勤めて勉強し、ホームページやパンフレットなども自分で作って開業にこぎつけたんだとか。


いやぁ、頑張ったねぇ…って感心すると共に、嬉しかったのは彼女が「ここで勉強した事が一番役に立ちました。他のクリニックにもいろいろ行ったけど、ここみたいに研究とかしてないし、全然違いました。開業できたのは先生のおかげです」と言ってくれた事。「先生、ぜひサロンに来てください。先生の肩こりも治せますよ。先生やったらお金要りません。先生のおかげでできたサロンやから!」とも言ってくれました。なんと嬉しいではないですか…! 私でも少しはスタッフの役に立てたのかな~と思うと、感無量です。



桜が咲く季節にクリニックを卒業して離れた人が、私の知らないところで色々と勉強と苦労を重ねて一回りも二回りも大きく成長し、また桜の季節に元気な姿を見せて、自身のお店の開業報告をしてくれるなんて…。聞く所によると中国でも日本の桜は凄い人気のようで、この季節になると日本のどこが一番桜の名所であるという情報がSNSで氾濫するのだとか。勿論、中国国内でも今では至るところで日本と同じ桜を見ることができるそうなのですが、やはり本場で桜を見たという事は結構自慢だそうで、日本人もあまり知らないような穴場に行って桜の写真とともに自撮りした写真をSNSに上げる事が流行っているそうな。Nちゃんには是非、桜と一緒に自分の新しいクリニックをバックにして自撮りして、おおいに中国の友達に自慢して欲しいものです。


もしかするとこのクリニック通信がお手元に届く頃は既に桜も満開、もしくはちょっと散っているかもしれませんが、最高の自撮り写真を完成させたい方は是非クリニックにご来院ください!(慌てて宣伝しても、もう遅いか…(^_^;) これからも、一人でも多くの人の役に立てるよう研究に励みますので、今後とも宜しくお願い致します!



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