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第155回 (2016年2月) 「何事も自分で行動しないとね!」



こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。寒い日が続きますが、皆様風邪などひかれていませんか? 年末年始はどう過ごされたでしょうか。昔と違ってお正月と言ってもSOGOですら元旦から開いていますし、コンビニもスーパーも通常通り営業しているので、年々お正月って気分ではなくなって来てますよね。お正月を取り巻く環境も変わっていくし、各自の価値観も多様化するし・・・。もう数十年もすれば「昔はね・・・お正月って言えば実家で親戚の人が集まって、皆でおせち料理を食べて過ごすっていうのが普通の日本人の習慣だったのよ。あ・・・そうそう、初詣と言ってお正月にはみんなで神社にお参りに行ったもんだよねぇ・・・」ってしみじみ話をする時代が来るのかもしれません。



私はと言えば・・・昨年の年末があまりにもバタバタだったので、お正月はもっぱら骨休めでした。そんな去年の話を少しすると、なんと昨年大学の卓球部の後輩が3人同時に教授になりました。まぁ昔は「大学の医学部教授・・・」と言えば、選ばれた一部の凄い人だけがなるものだと思っていたのですが、この年になると「普通に同級生や後輩が教授になってしまう」ので、近年のお正月よろしく、なんだかありがたみが薄れてしまっています・・・(^_^)。おや、こんな言い方するとせっかく教授になった後輩に申し訳ないですねぇ。恐らく教授=博士=バック・トゥ・ザ・フューチャーに出てくるドグ(もしくは名探偵コナンの阿笠博士)・・・というイメージが一般に普及しすぎて、教授とか博士と言われる人は超変わり者で、得体の知れない研究をしては試験管で混ぜた試薬が間違って爆発するため顔が真っ黒で髪の毛はボウボウの格好で、口から煙出しながら「次は絶対に成功するんだ!」と言ってるような人・・・をイメージしてしまうんですよね。私が申し上げたいのは、教授になった後輩諸氏はそんな種類の人達ではなく極めて全うで、素晴らしい社会性のある人です・・・って事なんです。(一応、フォローになったかな?)そんな訳で昨年はOB有志からお祝いを贈ろうという事になり、成り行きで私がその幹事になってしまったので、お祝いの手配や連絡にバタバタでした。また、京大再生医科学研究所のT先生の教室忘年会に誘われて参加したり、その翌日には整形外科の後輩T君が亡くなってしまってお通夜に駆けつけたり(去年の夏にT君を囲む会をした時はまだ元気そうだったんですが・・・。何百人という参列者の多さが彼の人柄を表していました。本当に惜しい人を亡くしたものです・・・)、年末はかなり忙しかったです。お正月は、元旦は実家に帰って家族が集まったんですが、今年は母がいないのでめちゃ静かなお正月でした・・・(いつも母が一人で喋りまくってた事が判明)。おせちは毎年同様、O様が贈ってくださった最新冷凍技術のおせちを美味しくいただきました。(O様に感謝!)



他にもいろいろバタバタした事があったんですが、少し落ち着いたので久しぶりに友人Mと東京の孤高のグルメK氏と集まろうという事になりました。さて、お店はどこにする? という時にいつも登場するのが以前このクリニック通信でも紹介した、辛口料理評論家・友里征耶氏著の「ガチミシュラン」。この本は「ミシュラン東京」に載った半分以上の店を著者が自腹・覆面で食べ歩いて徹底検証した本です。(ガチミシュランについて詳しくは、クリニック通信第71・73回をご覧ください。)私の定番であるクリニック潜入調査はこの「ガチミシュラン」のコンセプトに共感して始めたものです。友里氏のコンセプトは「お店の評価を正しくするには覆面・自腹で行かないと本当の価値は分からない」というものです。彼のあらゆる評論の中で、お店から接待を受けて取材に行くレストラン評論家をこき下ろしており、「料理人が評論家を前に緊張して最高の料理を出すというシーンでまずいものを出す訳がない。誰だって一世一代の勝負となれば最高の食材と手間をかけて出すので美味しくて当たり前。そうではなく、普通の人が普通に訪れても美味しいというお店のみが本当の価値があるお店である」というものです。私もこの考えに共感しています。クリニックでも雑誌の取材で記者が体験治療を受けるというシーンでまともな施術をしない医者がいるとは思えません。そうではなく、普通の人が普通に訪れる際に満足のいく治療を提供しているという事に価値があると思います。そんな訳で私の潜入調査も覆面・自腹が基本になっています。



話が飛んでしまったので友里氏の辛口評価に戻しますが、彼の評価はとっても面白くて的確なので、過去に何度もレストラン選びの参考にさせていただきました。勿論、普段は彼の高評価店を選んでいます。しかし彼が酷評するお店の話も読み物としては大変面白いので、何度も読んでいるうちに友里氏がここまでこき下ろす店はどんなんか一回行ってみたい・・・という好奇心がフツフツと湧いてきました。え? 私ってよっぽど変わり者だと思います? でも彼のこき下ろし方を見ると皆様も行ってみたくなる事請け合いです。まずはフレンチでは結構有名な「シェM尾」。ガチミシュランでの友里氏の評価のタイトルは「瀟洒な店の雰囲気でも隠しきれない粗悪な料理」「ミシュランのいい加減ぶりを証明する店」。そして本文での評価は「大きなお屋敷が建ち並ぶ住宅街の中の瀟洒な一軒家という雰囲気でも、レベルの低い料理をカバーしきれない、行ってはいけないフレンチ」ここまで書かれると、いったいどんな店なのか・・・そんな店がなぜミシュランの星を取り続けているのか・・・と興味津々。「以前はアラカルトがあったのですが、いつの間にか2万円のコース1本にしてしまった営業は、客の事を考えた経営とは思えません。もちろん肝心の料理はもっとダメ」と続きます。「これで2名で8万5000円超はあまりに高すぎです」「料理が全くダメなだけに、雰囲気だけでこの価格ではCP最悪。星を取った3ヵ月後でも客がわずか3組という実態が、この店のすべてを物語っています」・・・。うむ。そうなのか・・・。なんだかダメダメぶりが目に浮かびます。



もう一つ、有名なスペイン料理の店、「O笠原伯爵邸」の評価は・・・「何一つ良いところがなく、星なしは当然。ミシュランの一つ星評価に呆れるばかり」「料理ダメ、サービスも垢抜けず、雰囲気もぱっとしなくてCPも悪い。総合評価が星なしなのは当然です。しかしミシュラン調査員、よくまあこんなレベルの店に星をつけたものだと、ただただ呆れるばかりです」ここまで書かれると小気味良くてなんだか嬉しい・・・(^_^;)。六本木にある鮨と鉄板焼きの「M・XEX」などは「’NYスタイル’と豪語する『似非(えせ)』和食店」「料理はマズくCP最悪。食後の気分は史上最低」・・・(^_^;)。「この店では何一つ期待できる料理はないと言い切れます」「食後感は史上最低。HPでは『森本正治とXEXの出会い』とありますが、一般客にとっては出会ってもらいたくなかったと考えるのは私だけではないはずです」・・・等々。勿論、彼はこき下ろすばかりではなく正当な評価をしているお店も沢山あり、その評価には定評がありますし、私も一定の信頼を置いています。それだけに彼がここまで酷評するのは一体どんなお店なんだろう・・・って逆に興味を持ってしまった訳なんですね。(私の方が教授になる人達よりずっと変わってるのかな?)



さて・・・。この中からだったらどこへ行ってみようかと、友人Mと検討会を開きました。K氏に付き合わせるのはさすがに悪いので、K氏とはMのグルメ友達お勧めのイタリアンに行って、K氏との会合の翌日にガチミシュラン検証をしようという事になりました。でもディナーでめちゃまずくて高額だったらさすがにショック大きすぎなんで、ランチで試してみようという事に。いろいろと検討した結果、まずはやはりシェM尾に行こうという事になりました。そしてめちゃまずいと想定して夜には口直しができるようにと、東京出張の際によく行く白金のお鮨屋さんTを予約。そうして意気揚々とガチミシュラン検証計画を立て、いざ出陣! 当日はタクシーでシェ・M尾に向かいました。本当に大きなお屋敷が建ち並ぶ住宅街の中の瀟洒な一軒家です。場所が分かりにくかったので電話で確認すると、お店の人が玄関先に出て待ってくれていました。中庭の見える素敵な部屋に通され、サービスはなかなかスムーズ。綺麗な絵入りのメニューが一人ずつテーブルに置かれています。ランチで6,000円、8,000円、16,000円の3コースなのでかなり高額ですが・・・。いつもお昼はあまり食べないので、6,000円のコースを選びました。アミューズ、オードブル2品、お魚かお肉、デザート、コーヒーのコースです。さぁ! どんなにまずい料理が出てくるのか!・・・と、ドキドキワクワクです・・・(^_^;)。まず、アミューズは可愛いチーズ味のプチシューです。おそるおそる一口。うん! まずぅ・・・? あれ?? いや・・・。結構美味しい・・・。だいたいアミューズが美味しいかどうかで美味しいお店かどうかが分かるものですが。おかしいな・・・。きっとこんな時もあるのでしょう。何かの間違いでちょっと美味しいアミューズが出てしまう事だってあるよね、きっと。



さて次の料理は冷たいオードブル、「柑橘と香草で低温コンフィした手長海老 シェM尾嗜好」。なんとも大層な名付けの料理ですが、名付けが大層なだけで、この辺でミシュラン調査員の味音痴露呈か? と期待を持って一口。・・・あれ? これも結構美味しい。??? 次の温かいオードブルは「温かい栗のポタージュと帆立貝のグリエ 燻製の香りをまとった牛乳のムース」・・・。これも仰々しい名付けですが、私は以前のクリニック通信でも書きましたが帆立で酷いアレルギーを起こしたので、それ以来帆立は避けています。「帆立はアレルギーなんですが・・・」と伝えると、代わりにフォアグラのソテーを出してくれました。帆立の代わりにフォアグラなんて、なかなかサービスいいではないか。そしてそのフォアグラも美味しい・・・。友人Mも「帆立と栗のポタージュも結構いけてるんだよねぇ・・・」と残念そうな様子。何を期待してるんだか・・・。)メインはお魚は「北海道産タラのシェM尾嗜好」、お肉は「フランス ランド産鴨のロースト赤ワインソース ゴボウのグラッセと根セロリのピュレ」を一つずつ頼みましたが、どちらも結構いけてる・・・いや、まぁまぁ美味しいぞ! うむ・・・。大絶賛と言うほど美味しい訳ではないけどそこそこ美味しいので、ガチミシュランの酷評とはだいぶ違います。なんか拍子抜けで、「えー、なんで・・・??」の連発。デザートとコーヒーの後、帰りのタクシーを待つ間に中庭に出ると写真を撮ってくれたりと、サービスも結構いいんですよねぇ・・・。うむ・・・。



あまりの期待はずれな結果(?)に、夜の鮨屋をキャンセルしてもう一軒の酷評店「O笠原伯爵邸」に検証に行こうかという話も出たんですが、昼間からフルコースを食べたので、夜になっても一向にお腹がすきません。仕方なく「O笠原伯爵邸」の検証は諦めて、白金のよく行くお鮨屋さんへ。しかし全然お腹がすいてなくて、せっかくのお鮨屋さんでもあまり食べられず残念・・・。ガチミシュラン検証は意外な結果に終わってしまいました。う~ん、おかしいなぁ。なんでガチミシュラン友里氏の評価と実際はあんなに違ったんだろう? その話を後日K氏にすると、「シェM尾の本店ですね。僕は仕事でよく青山サロンを使うのですが、悪くないですよ。友里さんとは評価が合う時も合わない時も・・・。レストランのサービスや料理も、お客さんの態度や雰囲気で微妙に変わってきますものね。仕事柄、友里さんがとても感じの良いお客様とは思えないので・・・ね(^^)」という答えが返ってきました。そうかぁ・・・。お店とお客さんも合う合わないがありますもんね。当院でも患者様のためにと思ってしている事でも、診察のたびにメイクを落としたり、注射の後はメイクを禁止したり、他院で受けた治療の詳細を問い合わせていただいたりする事が、面倒だとか慎重すぎるとか言われる事も多々あるので、相性というものは大切だなぁと思います。そんな面倒な事も乗り越えて、当院に通い続けてくださっている皆様には本当に感謝です。



それにしてもイメージが定着するって本当に怖い事なんだなぁ・・・って思います。今回検証したシェM尾も、もし自分で実際に行かなかったら恐らく一生「ミシュランのいい加減な調査員が推薦する雰囲気だけの料理がまずいお店」と思い続けたと思います。自分の後輩が教授にならなかったら、教授とか博士と呼ばれる人達は「ボサボサ頭に爆発のために真っ黒な墨を顔につけてる社会性の無い世捨て人」というイメージを持ったままかもしれません。(もっとも、「白い巨塔」に出てくるような腹黒い人達が渦巻いているっていうのも一面の事実ではありますが・・・(^_^;)。いずれにせよイメージや思い込みで判断するのではなく、自分の目と耳、そして感性で判断しないと駄目だな・・・って改めて思いました。そのためにはやっぱり行動あるのみですよね! いくらインターネットが普及して現地に行かなくても情報が取れると言ったって、結局は自分で体験するのと話を聞くのとでは全然違う・・・という事は、今後もあり続けると思います。そんな訳で2016年はやっぱり行動と実践を続けるぞ! と心を新たにしました。今年も潜入調査は実行しますし、学会に出かけての最新情報の収集も続けます。そして何より、さらに安全で効果的な治療を実現するために、自分自身でその治療を試して検証する・・・って事は継続するつもりです。初心忘れるべからず・・・を自分への戒めにし、2016年も皆様のためにより良い治療を研究開発していきますので、何卒宜しくお願い致します。


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