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第15回 (2004年06月)「異人館通クリニック2年間の歩み 続編」



こんにちは! 異人館通クリニック院長の柴田です。

紫陽花が鮮やかな季節になってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? おかげさまでクリニックも無事オープン2周年を迎えることができました。 2周年記念のホームピーリング剤お試し会も大盛況のうちに終えることができ、 皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。

前回はクリニックの2年間を振り返って、治療の変遷をご紹介しました。

今回はその続きを綴ってみたいと思います。


前回ご紹介した治療の変遷は、ピーリング・レチノイン酸療法・ヒアルロン酸注入・ボトックス療法に代表される、シミ・シワ・ニキビの治療についてですが、もう一つ忘れてはいけないのはプラセンタ療法です。



この2年間、トラブルなく喜ばれてきたのがプラセンタ療法で、ほとんどの方が 1回で 元気が出て、続けると肩こりや腰痛も良くなり、お肌もつるつるに! ストレスや食生活の欧米化によって最近増えているアトピーやアレルギーにも効果的です。

ただし、重症の方はやはり最初に間隔をあけずに続けた方が効果が高いようです。以前は「週に1回が限度」という方には無理に頻回の通院はお勧めしませんでしたが、やはり治療ですので、効果が少なければあまり意味がありません。実際に何百人もの方を治療していると、週に1回ではなかなか良くならない重症の方もおられます。

そういう方でも続けられると良くなるのですが、やはり早く良くなるに越したことはありません。ですから最近では、重症の方には無理を承知で「最初の1週間は毎日続けて 下さい」と勧めるようにしています。無駄に治療期間を延ばすよりは、最初は無理を してでも早く治って頂きたいと思うからです。そして症状が改善してくれば、徐々に間隔を開けて頂くようにしました。



その結果、以前にも増して治療効果が上げられるようになったのです。最近では皆様のご要望にお答えして新作の点滴メニューも作成し、ご好評を頂いています。

もう一つ、最近登場した強い味方が、プラセンタの内服薬です。頻回に点滴に通えない方や、症状が改善してからの維持、またどうしても注射が苦手…という方に大人気。点滴ほどの即効性はありませんが、徐々に効果が現れるという、心強い存在です。

このように、ほとんどトラブルなく人気のプラセンタ療法ですが、オープ ン当初、こちらにトラブルがありました。肩こりでツボ注射希望の方が殺到し、私が注射の打ちすぎで腱鞘炎になってしまったのです。一時はドアも引き出しも開けられず、ナイフとフォークも持てないほどでした。自分でプラセンタ点滴をして何とか回復し、危機を免れた思い出があります。現在ではそんな重症になる前に、疲れた時はプラセンタ点滴をし、美容と健康を維持しています。



さて、より効果的な治療法の研究と共に時間を費やしてきたのが、効果的な化粧品の開発です。化粧品は毎日使うものですから、その効果によってお肌の調子はずいぶん違ってきます。しかしこれも各人によって合う合わないがあり、万人にトラブルの少ないように作られている市販品は効果も望めない上、大量に生産して品質を保つため、多くの防腐剤が含まれています。それに反して本当にお肌にいい、効果のある化粧品を作ろうと、日々研究を重ねてきました。

そこで最初に注目したのが、ビタミンCの効果です。ビタミンCは、メラニンの産生を抑制し、代謝を促進してコラーゲンを増やし、皮脂の分泌を調節して活性酸素を除去するので、シミ・シワ・ニキビにオールマイティの治療薬。ビタミンCの難点は水に溶けると酸化されやすいことなので、使う直前に溶かして頂くようにしたのがNeigeシリーズです。しかし溶かすのが面倒だと言う方も多く、敏感肌や乾燥肌の方には刺激が強すぎることもありました。



そこで導入したのがVC-IP(油溶性ビタミンC誘導体)です。VC-IPは天然のビタミンCに脂肪酸を結合させたもので、吸収性が非常に良く、いくら高濃度にしても刺激のないビタミンCです。最近の研究では、VC-IPをお肌に塗ると活性型のビタミンCと遊離脂肪酸に分解し、この脂肪酸とビタミンCが表皮細胞の増殖を促進し、角質細胞間脂質のひとつであるセラミドの合成を促進して、肌のバリア機能を強化することも解っています。実際にVC-IP原液で肌荒れや湿疹・乾燥が治った方もおられました。翌朝のプルプル感が違うので、私もこれはお気に入りです。



ビタミンCと並んでオールマイティなのがビタミンA=パルチミン酸レチノールです。これはお肌の敏感な方には刺激が強いので、市販品の上限は2500単位ですが、それくらいではあまり効果も望めません。そこで市販品の2倍から60倍の濃度のものを作り、お肌に合わせて徐々に濃度を上げられるように工夫しました。現在最高の濃度のもので0.05%のレチノイン酸と同じ効力があり、レチノイン酸よりも刺激が少ないので、これは秀作だと自分でも思っています。実際私はこれを使って2-3ヶ月でシミが消えてしまいました。現在はレチノイン酸に代わる低刺激性のシミ・シワ治療薬を研究中です。


もう一つ、注目したのが外用プラセンタです。注射と同じ原料で、安全かつ効果的なヒトプラセンタ原液を入手し、シミ・シワ・ホルモンバランスの乱れによる大人のニキビ・アトピーやアレルギーの方の肌荒れや乾燥の治療に用いていますが、これは敏感肌の方も使えるので重宝しています。



最近研究しているのは、これらの効果的な成分を凝集した、「ピーリング後のお肌を日焼けから守るエッセンス」。夏場も気にせずピーリングをして、生き生きしたお肌を保てるための化粧品を開発中です。こうご期待!


化粧品の開発は、化学の実験のように地味で面倒なもので、夜中まで色々な物を調合して、うまくいかない時は疲れてしまいます。ホームピーリング剤開発奮闘記も苦労の連続でした。しかし、いいものが完成した時は喜びもひとしおです。それに私は勤務医時代、朝方までウサギを追いかけたりという、もっと悲惨な実験生活も経験しているので、それに比べると全然ましなのです。

化粧品やピーリング剤の開発の苦労は苦労と思いませんが、この2年間で一番苦労したのは、もしかしたらスタッフ教育かもしれません…。



スタッフ募集に応募してくる若い女の子の中には、本当にいろいろな人がいます。今でも語り継がれているのは、「ケミカルピーリング」を「ピリカルケーリング」と言ってのけた人がいたことです。彼女はインターホンに「はい、異邦人クリニックでございます!」と出て(ああ、懐かしいなぁ。「異邦人」は私のお気に入りの曲でした…♪ )、お茶を出す時にはメニューの裏面(メディカルエステのお知らせになっている)を見せて「お飲み物いかがですか?」と聞いていました(勧められた患者様も真剣に飲み物を探して、その場が凍りついたようになったのに他のスタッフが気づき、あわてて駆けつけてメニューを裏返しにしたところ、患者様にも安堵の笑みが戻ってきたのですが…)。 もちろん、この人は皆様に御迷惑をおかけする前に辞めてもらいました。



クリニックのオープン時には「ヤンキー」と呼ばれていた人もいて、彼女は2日続けて当日欠勤をして、事務長に辞めさせられました。

「ぶっ飛びバスガイド」と呼ばれ(彼女の前職がバスガイドだったので)、掃除機の使い方が解らなかった人もいれば、何を教えても覚えられず、出勤2日目から来なくなった人や、新人歓迎会で散々飲んで、翌日から行方不明になった人もいました。

数え上げればきりがありません…(もちろん面接を行って採用しますが、なぜか面接の時にはそのような兆候を見せない人が時々紛れ込んでくる訳です。と言う事は面接で落とした人はここでは書くことができない程ひどい人や、ある意味面白い人達が沢山いました。まさに私の目からみると「異邦人」達が、世の中には多数いるものなんですね…(^_^;) )。「経営者は諦めが肝心」とよく友人に言われていましたが、最近になって諦めが良くなったのがこの2年間の進歩かなあ、と思う今日この頃です。



クリニックのオープン時に作成したパンフレットが先日ついになくなり、新しいパンフレットを作成したのですが、2年前の初回作成時に掲げた「クリニックの5つの目標」を読み返していると、この目標は今でも陳腐化しておらず、まさに「初心忘れずべからず」だと自戒いたしました。 その目標は、「健常者に必要な医療を提供する」「総合的な医療を提供する」「医療はサービス業であると考える」「高品質でかつ低価格の医療を提供する」「広がりのある医療にチャレンジする」というものです。

この中で、「広がりのある医療にチャレンジする」というのは、例えばインターネットを使った遠隔地からの診断や医療行為、自宅でできるホームケアなどを積極的に取り入れることで、特定のエリアや特定の人達だけでなく、広く多くの人達に良いものは受け入れて頂けるよう、広がりのある医療を目指すということです。



この遠隔地診療の一環として現在取り組んでいるのが、ホームピーリング剤の普及です。おうちにいながらにして、クリニックに毎週通うのと同じぐらい、綺麗になれたら、素晴らしいことだと思いませんか?

先程取り上げたプラセンタの内服薬や、家庭用イオン導入機もしかり。

処方化粧品も最近は、メールやFAXでの問診やカウンセリングを通して、郵送できるようなシステムを取っています。今後は遠隔地用の検査キットも導入し、一人でも多くの方に綺麗に、元気になって頂けるよう、遠隔地診療の充実を目指していきたいと考えています。


私は幼い頃、海岸を散歩するのが好きでした。 いつも海岸にうち寄せられているボトルを探していました。どこか遠い国の人が誰かに拾ってもらうようにその中に手紙を入れて海に流していて、それを自分が拾うはず…と信じていたからです。(実際にはこの年になってもボトルに詰められた遠い国の人の手紙を拾った事はないのですけど…残念。)なんだか遠い人と何かの縁でつながりが持てると言うことに、「夢」を感じてしまうのです。皆様もそんな気持ちになったことはありませんか?



そんなこんなでいろいろなことがあった2年間でしたが、皆様に支えられてここまで来ることができました。皆様に喜んで頂けた時は、クリニックを開いて良かったとつくづく思います。(同窓会に行く度に「若返った」と言われる時も、ちょっぴり思いますが…。)これからも皆様の「綺麗」と「元気」のために、そして今後は遠くの方も綺麗で元気になれる遠隔地治療を発展させるべく、頑張っていきたいと思います。


今後ともよろしくお願い致します。


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