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第148回 (2015年7月) 「これからのトレンド」



こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。梅雨に入り、暑かったり涼しかったりですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 気温差が激しいので、夏風邪などひかれないようにお気をつけくださいね。当院でも、コロコロしたスタッフたちは次々と風邪をひいています。いつもなら誰かが風邪をひくと私もすぐにうつって年のせいか一番重症化する・・・というパターンが多いのですが、今年の梅雨に入ってからは裏業で(?)まだひかずにすんでいます。

さて、先日母の四十九日の法要も無事終わり、少し落ち着いてきましたので、福岡で開催された抗加齢医学会と東京で開催された美容外科学会に参加してきました。(先月号のクリニック通信をお読みいただいた何人もの患者様から温かい励ましのお言葉をいただき、とても嬉しかったです。中には涙を流してくださった方もおられて感動しました。皆様本当にありがとうございました。)



しかしまぁ・・・なんですねぇ。抗加齢医学会の盛況な事、盛況な事。美容の学会も最近は盛況ではありますが、抗加齢医学会に比べると規模が違います。世界中で高齢化社会がかつてない勢いで進んでいますもんね。更に昔の高齢者と違って60歳なんて全然元気だし、70歳にもなれば仕事も子供も手が離れている上、ある程度貯金も持っている・・・って人が多いとなると、もう完全にターゲットロック・オン!ですよ。「抗加齢医学会」は世界トレンドの「ど真ん中」をいく本流って感じでしょうか。あらゆる標榜科(外科とか内科、婦人科など・・・)の先生方が「抗加齢」というテーマで研究と治療に取り組んでいるようです。通常の病人を対象とした伝統的な医療分野にあっては「美容」は非常に新しい世界ですし、医者の間でもアウェイ感があります。(実際に問題のある医者も多いんですよねぇ・・・。)でも抗加齢(アンチエイジング)となると、そもそも健常である人の加齢を食い止める・・・という事なので、美容形成をはじめとした美容関連の医師は結構注目されるんですよね。そんな時はこっそり「あぁ・・・ようやく時代が私についてきたのね・・・」って心の中でほくそ笑むのでした・・・(^^ゞ。



そんな訳で抗加齢医学会は時代のトレンドを先取りしている学会なんですが、最初に述べたとおりその規模はどんどん大きくなっていますから、最初からかなりテーマを絞って参加しないと、とてもじゃないけどすべての発表を見たり聴いたりする事はできません。今回は母が骨粗鬆症が原因と思われる骨折で入院した事がきっかけになり、最終的には免疫力の低下や心血管障害が重なって亡くなった事から、骨に関係するビタミンDやカルシウム、抗老化・健康長寿に関する講演を重点的に聴いてしまいました。その中で興味深かったのは、ビタミンDとカルシウムの講演や、アスタキサンチン・カカオポリフェノール・カロテノイドやフラボノイド・老化の原因となる「糖化」についての講演です。美容に関係するものでは、コラーゲンペプチドやフラーレン、顔面老化のメカニズムについての講演も面白かったです。



いつもの通信だと、このまま学会で得た最新情報を紹介して、あとは現地でのグルメ談議に花が咲く・・・ってところですが、今回はちょっと趣向を変えてみます。今回の抗加齢医学会は福岡県の博多で行われました。ご存知の方も多いと思いますが、博多は日本を代表するグルメ都市です。東京や京都のような超高級店は比較的少ないですが、現地の新鮮な食材を活かしたコストパフォーマンスの高いお店が多いという点では、北は札幌、南は博多というのが鉄板ではないでしょうか。コスパにうるさい私としては、博多・・・と聞いた時点で、学会の抄録を読む前にまず夕食の場所を探さねばならない、とリサーチを始めました。


リサーチを始めて改めて感じたのは、なにしろ博多は飲食店が多い・・・という事です。しかも評論家の皆さんからも、かなり高評価されている店の数も多いのです。さすが博多。う・・・ん。これでは決める事ができない・・・。そこで「地方都市に行く時はガイドブックを信用せず、地元の人が推奨する店に行くべし!」という某評論家の鉄則を思い出し、コネとネットワークを使ってジモピーが「絶対に行くべき!」と言うお店をピックアップしてリスト化してもらいました。まずは何をさておき、お目当ては「お鮨部門」です。博多と言えば、玄界灘で獲れるイキのいい魚をネタにしたお鮨は外せません。今回ピックアップしてもらった3店の情報をまずはネットで下調べ。なるほど、ジモピー推奨だけに食べログでも評点4を超えてるし、行った人のブログを読むと、「これは行かねばならん!!」と私の期待はうなぎのぼり。「よし!」まずはここから・・・って事で一軒目に予約の電話。結果は見事撃沈。金曜日や土曜日はもうすでに予約が一杯なんだそう。キャンセル待ちは?と聞くと、キャンセル待ちのリストもすでに一杯だとか・・・。幸先の悪いスタートだが気を取り直して2件目。結論から言えば、こちらはもっとひどい。半年先の予約まで詰まっているようだ。そして最後のお店にチャレンジ。まぁ・・・結論は言わなくてもお分かりかもしれませんが、この店に至っては予約の電話を受け付ける時間帯が午後2時から4時までの2時間に限定されていて、電話が全然繋がらない。やっと繋がったと思ったら、やはりここも半年先・・・なのでした。



なんだ・・・使えん!って事で気を取り直して、イタリアン部門、フレンチ部門、そして日本食部門も・・・。次々電話するも予約したい日が金曜・土曜という事もあってか、ジモピー推奨リスト掲載のお店はすべて完敗。なんだぁ! いっぺんに博多の事が嫌いになってきたぞ! 結局どうしようもなかったので、ジモピー推奨の別の寿司屋がやっている「回転寿司とは思えない回転寿司」に行く事にしました。「博多に行くなら一回は行ってみて!」と言われた回転寿司で、ここは予約が不可で行列ができるので、並ばなくてはならないらしい。(当然ながら本店の寿司屋の予約は無理なんだけど、ここがやってる回転寿司はネットの評判見ても「回転寿司の概念を覆すお店」と言われているみたいだし、誰かが並んでくれるのであれば、根性さえあればなんとかなりそうです・・・。運良く今回は並んでくれる人もいたので、ここで手を打つしかないか、という事で・・・。)



これが世の中のトレンドって事なんでしょうね。特に今はインターネットがあるから、ちょっと人気が出るといっぺんに火が付いてしまい、予約の取れないお店になってしまいます。まぁそれは神戸でも同じで、今まで普通に予約して行く事ができたお店が、食べログで高評価になった途端に予約が取れなくなってしまい、結局行かなくなってしまったお店も結構あります。食べログでそれなので、ミシュランガイドに掲載されるともう完全にアウトです。ミシュランに掲載されると予約が取りにくくなるだけじゃなくて、値段も一気に上がってしまい、「お一人様2万円のコースしかありません」なんて言われてしまう事もしばしば。あぁ・・・昔が懐かしい。この時だけはネットがなかった時代に戻りたい! と思ってしまいます。大昔は飲食店情報なんて「るるぶ」くらいしかなかったからロクな店紹介されてなかったし(「るるぶ」に掲載されたお店の皆さんには申し訳ありませんが・・・)、地元の人の口コミだけで行き着く事ができる隠れた名店って沢山あったんですよね。今はホントにそれがなくなってきている気がします。そんな訳で学会の時の恒例だったグルメネタは書かないのではなく、書く事ができない・・・って状況に陥ってしまいました。抗加齢医学会が盛況なのがトレンドならば、人気レストランはますます予約ができなくなるっていうのもトレンドなんですね。そういう自分も美容医療業界のトレンドを利用させてもらっている身なので、文句を言える立場でもないのですが。



抗加齢医学会の盛況と人気飲食店の予約が取れないという2つのトレンドですが、これが全然関係ないものかと言えば、すごく密接な関係があるんだな・・・と気づくようになりました。共通の鍵は「健康」です。いくら人気のお店が予約を取りにくいと言っても、普通の飲食店は数えきれないほどあって、先々の予約が一杯になるのはほんの一握りのお店しかありません。そのようなお店は一様に「健康に良い食材を美味しく安全に調理しているお店」という共通項が見えて来ました。お鮨屋さんなどは典型的な健康食のデパートのようなものです。


今回の学会ではビタミンDの効能について講演がありましたが、一部抜粋しますと・・・ビタミンDには、きのこなどの植物性食品に含まれるビタミンD2 と魚や肉・卵・乳製品などの動物性食品に含まれるビタミンD3 があり、これらを総称してビタミンDといいます。ビタミンDは小腸でのカルシウムの吸収を高め、カルシウムが骨や歯に沈着するのを助けて骨や歯の形成・維持に働く・・・という事はよく知られていましたが、最近では筋力をアップして転倒を予防したり、免疫力をアップして風邪やインフルエンザを予防したり、糖尿病や心疾患・アレルギーや認知症・癌を予防する働きもある事が判り、死亡率を下げるという報告もあるそうです。



体内のビタミンDの80%は紫外線によって皮膚で合成されるので、美白やシワ予防のために紫外線を避けすぎるとビタミンD不足になりがちですが、紫外線を浴びるのは手の甲で毎日10分程度、木陰でも30分程度で最低限のビタミンDは維持できるみたいですね。冬に風邪やインフルエンザが流行するのは、日照時間が短くなる事でビタミンDが合成されず免疫力が低下する事によるそうで、2010年にアメリカ臨床栄養ジャーナルに発表された研究では、冬季に毎日1200IUのビタミンDを摂取した生徒は、摂取しなかった生徒に比べて42%も季節性インフルエンザに罹患する率が低かったという報告があり、ビタミンD800IUの摂取で風邪の罹患率が1/3に減って、2000IUの摂取でなんと風邪の罹患率は0になったそうです。(講演後にビタミンDがもらえたので、早速飲んでみると、学会後のひどい疲れがすごくましになったんです! きっと私は全然日に当たらないので、ビタミンDが不足してたんだなぁ・・・。今回コロコロS君の風邪がうつってないのは、このビタミンDのお蔭ではないかと密かに思っています。)

他には、丈夫な骨のために大切なカルシウムの講演。体内のカルシウムは女性では50歳前後から閉経期を境に、急速に減少します。「カルシウム摂取量が350mg/日未満の中高年女性は、700mg/日以上の女性より2倍腰椎骨折を起こしやすい」という報告もあり、日本人はカルシウムが不足しているので、1日1本牛乳を摂った方がいいそうです。また、動植物に存在する赤色、黄色などの天然色素カロテノイドは抗酸化作用と細胞保護効果があるとの事。緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンやトマトに含まれるリコピン、鮭やいくらに含まれる赤い色素アスタキサンチンが代表的ですね。(野菜と牛乳がいい・・・という事なので、それから青汁牛乳を毎日飲んでいます。・・・影響されすぎ?)



これらはほんの一例ですが、今回の学会では食べ物と健康に関するテーマの講演はまだまだ沢山あって有益なものも多く、とてもこの紙面だけでは紹介しきれません。今回得た情報を基に、クリニックでも体の中から健康で美しくなる方法を研究していきたいと思います。現在も日本食は世界的な健康ブームの中で注目を浴びている食事ですし、美味しくて健康的な食事を提供するという意味では日本の飲食店業界が世界から注目されていると言っても過言ではないと思います。そういう意味では私達は幸せな国に生まれたんですね。これからも美味しくて健康的な食事をして、いつまでも綺麗で元気に、皆様と一緒に素敵な年の取り方ができればいいなと思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。


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