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第14回 (2004年05月)「異人館通クリニック2年間の歩み 前編」



こんにちは!異人館通クリニック院長の柴田です。 新緑がまぶしい季節になってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

クリニックも5月でオープン2周年をむかえます。

思い起こしてみれば、いろいろなことがありました。 苦労した事も、笑った事もありましたが、ここまで来ることができたのも皆様のおかげと、感謝の気持ちでいっぱいです。

今回はクリニックの2年間を振り返って、思いつくままに綴ってみたいと思います。



クリニックのオープンは2002年の5月19日でした。今までの病院と違って、全く新しいタイプのクリニック作りを試みたため、すべてが新しいチャレンジです。以前から構想は練っていろいろ準備はしていたものの、正式に今の場所でのオープンが決定したのはオープンわずか3ヶ月前。内装工事からアンティーク家具の注文、ホームページの作成、ドクターズコスメの製作、スタッフの募集と教育…と、全てを超特急で進めたため、オープン前後は徹夜の連続でした。 スタッフ教育も十分でないままスタートし、不手際な上に予約の電話が殺到し、飛び込みの患者様も多かったのでお待たせすることも多く、皆様にはずいぶん御迷惑もおかけしました。それでもオープン当初から来て頂いている方もおられ、感謝に耐えません。



この2年間、日々研究、日々勉強の毎日で、治療内容もずいぶん変遷しました。自分で試してみることはもちろんですが、一番勉強になったのは、人間の肌は本当に千差万別という事を、患者の皆様から教えて頂いたことでした。


当クリニックをオープンする前は、ケミカルピーリングのセミナーや勉強会にも何度も出席していましたし、メーカーさんとの情報交換、美容外科クリニックでの実際の研修などもさんざん行っていたつもりなのですが、実際に何百人もの方に自分でピーリングをしてみると、肌質の違う人に同じ方法で十分な効果が上がる訳がなく、各人に合わせた酸の種類やきめ細かい濃度の選択が必要であり、改めて肌質や体質の違いの大きさに驚いた次第です。


そうして研究を重ねた結果、いろいろな濃度のオリジナルピーリング剤と、手の甲で8種類の酸をためし塗りしてその方に合った酸を選び、徐々に濃度を上げていくという方法が完成したのです。

さらにシミ・シワ・にきびなどの気になるところだけを高濃度にするという方法や、気になるところを2回ピーリングするダブルピーリングの開発で、いろいろなお肌のトラブルにかなりの効果が上げられるようになりました。しかし、ピーリングでお肌の悩みを解消するにはやはり続けることが大切なので、目標を達成するまでに通えなくなった方もたくさんおられます。そこで開発したのがホームピーリング剤です。

(これは発売間近ですので、もうしばらくお待ち下さいね。)



ピーリングでは太刀打ちできない部分的な濃いシミには、やはりレチノイン酸療法です。この方法は赤くなって皮がむけるばかりでなく、調節が難しいので、最初のうちはあまりお勧めしていませんでした。

しかし、やはり多くの方を治療していると、ピーリングだけではとれない濃いシミの方もおられます。思い切ってレチノイン酸療法を導入しましたが、この方法はうまくいけば面白いほどきれいにシミが取れます。しかし、シミの取れ方も皮のむけ方も個人差が大きいばかりでなく、自宅でも毎日クリームを塗って、皮膚の赤さを見ながら自分で塗り方を調節して頂かなくてはならない点が難しく、苦労したこともありました。うまく自分で調節できる方はいいのですが、赤くてヒリヒリするのに無理に塗ってはれ上がった方や、早く効くようにとレチノイン酸を塗った上からテープを貼ってかぶれてしまい、よけいシミが濃くなって薄くするのに時間がかかった方などもおられました。



毎週診察に来て頂いてこまめに濃度や塗り方を調節し、塗り方を忘れないように注意書きを毎回書いたりと工夫するようにしましたが、お肌の弱い方の中には途中までうまくいっても後でかぶれてしまう方もおられ、レチノイン酸と一緒に使うハイドロキノン(美白クリーム)に弱い方も時々おられます。現在はこのハイドロキノンに代わるいい薬はないかと模索中です。

それと、ピーリングと同様、レチノイン酸療法には日焼けは禁物です。レチノイン酸でシミがきれいに取れたと喜んでいた私の先輩二人(どちらも面白いおじさんです)は、その後すぐにゴルフをいっぱいして見事にシミが再発し、日焼けが厳禁であることを証明してくれました。



シワ治療の代表であるヒアルロン酸注入も、一般的には半年から一年もつと言われていますが、実際に注入してみると個人差が大きく、すぐに吸収されてしまう方もおられました。特にお肌にヒアルロン酸が不足している方はいくらでも吸収されるようで、何回か注入して初めて少しもつようになった、と言われる方もおられます。 実際には一般的に言われている程長持ちしない方も多いので、今では(もっても2-3ヶ月)と説明してイベント前に注入されることをお勧めし、満足して頂けるようになりました。

また、ヒアルロン酸注入前に血液検査やアレルギーテストをするクリニックは少ないのですが、当院では念のためにアレルギーテストを行い、血液検査も最初はしていませんでしたが、稀に内出血を起こす方がおられたため、出血傾向やアレルギーの有無をみるため検査をするようにしました。しばらくして他院でヒアルロン酸注入後にアレルギーで著しく腫れた方が受診され、検査の大切さを思い知らされたこともありました。



それからシワにはなんと言ってもBOTOXですね。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、私は美容界における20世紀最大の発明品だと思います。今でも「ボツリヌス菌を注射して中毒にならないのですか?」という質問をたまに受けるのですが、BOTOXはボツリヌス菌そのものではなく、ボツリヌス菌が生成する毒素成分を利用して作られた医薬品です。もちろん中毒などをおこす心配は全くありません。


一般的に医薬品の開発というのは膨大な時間と費用がかかるものです。また、「偶然」というチャンスを神様が与えてくれなければ、画期的な医薬品はできません。ある種のカビが細菌を食べるという観察からペニシリンが開発されたことは有名な話ですが、ボツリヌス菌が生成する「神経麻痺を引き起こす毒素成分」を希釈してごく微量注入し、ポイント的な筋肉麻痺をさせることでシワの生成阻害に利用するという方法は、画期的な発明だと思います。論理ができても、十分に安全で効果が出る医薬品にするためにはそこから先に気の遠くなるような努力と研究が必要なのですが、この研究結果を私達が利用できるということはありがたいことだと思いますし、危険な毒を薬へ転換する先人の英知を思い知らされます。



もちろんBOTOXも効き方に非常に個人差があり、私も効きすぎて怖い顔になったので研究を重ねました。そして筋肉に注射せずに皮下(皮膚のすぐ下の浅い部分)に、最初は少なめに打って足りなければ追加するという方法を開発し、他のクリニックではあまりしていない目の下のシワにも効果を出せるようになって、多くの方に喜んで頂けるようになりました。

しかし問題なのは目の下のたるみの強い方です。少しくらいのたるみであればBOTOXでも改善するのですが、たるみの強い方は効きにくく、シワもたるみもある方は、シワが改善するとたるみが目立ってしまう方もおられます。最初にその説明をしても忘れてしまう方もおられ、最初の自分の顔を忘れてしまう方も多く、説明に苦労したこともありました。現在では目の下のたるみの強い方には、BOTOXで十分な効果が得られない場合はヒアルロン酸注入を組み合わせることにしています。



2年間で得た事、感じた事はまだまだ沢山あって、とても一回では書ききれないので、次号に続く…ということにさせて頂きたいと思います。

最後に、本原稿を書いている時点でも世界ではイラクを始め局地戦争が絶えることなく、テレビを見ていても痛ましい映像や情報が入ってきます。当クリニックのオープン時に掲げた「よりよく豊な生活を実現させるために医療技術を使い、美容生活医療という新しい概念を作りたい」という思いは「平和」があってこそできる事であって、世界の至るころでは医療はまだまだ「命を救う技術」である事を思い知らされます。それでもいつの日にか、彼の地の人々にも平和が訪れて「美容生活医療」で豊かな人生を実現できる日が来ることを願ってやみません。




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