
こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はなんだかめっきり涼しくなって秋がもうそこまで来てる・・・って感じですね。この通信では文字通り「飽きる」ほど書いてますが、季節の変わり目は体調を崩す方が多くなりますのでお気をつけください。皆様はこの夏いかがお過ごしになりましたでしょうか? 同級生と話をしていると、この歳になって「お盆休みを利用してハワイに行った」という強者がいました。なんて若いんでしょうねぇ。ハワイかぁ・・・さすがに私はもう無理だなぁ・・・。時差ボケでボーっとしている中にあのギラギラの日差しに照りつけられ、お肉を中心とした食事を毎日していると一気に肌が10年は老化してしまいそうです・・・^^;)。まぁ人の好みはそれぞれですね。かく言う私も若かりし頃はスキューバダイビングとかにも行ってたんですが、あれがしみじみ懐かしむ青春って奴なのね・・・と冷房の効いた部屋で生ハムと夕張メロンとシャンパンで一時の贅沢に浸りながら、思い出に耽っていました。(うん・・・やっぱりハワイよりこっちの方がいいよ・・・(^^)。)8月から9月にかけて当院も数日連休になったので「先生も夏休みはどこか旅行に行かれたのですか?」と聞かれる事が多かったのですが、残念ながら夏休みではなくいつもの如く東京での学会参加でした。これまでの通信であれば学会の内容を紹介するよりもっぱら東京でのグルメ話になるところなんですが、今回は違います。

大好評企画、「クリニック潜入調査」・・・東京編!!「今回の調査対象は東京の美容クリニックである。ただし例によって君もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。なおこのテープは自動的に消滅する」(例によってここでミッション・インポッシブルのテーマ曲・・・♪ いつ聞いてもこの曲はいいな。宇宙戦艦ヤマトのテーマソングと同じで、これから起きる未知なる出来事に期待と不安で身体中のアドレナリンが出てくる感じです。)初めに申し上げますと、今回は怪しげなクリニックではなく、雑誌などでも取り上げられるような有名なクリニックや、学会や薬剤メーカーさんの間でよく名前の知られたクリニックを中心に回ってきました。ただ、東京に行く機会にいろいろ行ってみよう・・・と欲張った結果、6箇所も行く事に・・・。おかげで東京にいる時は「ちょっと顔が腫れたな・・・」っていう程度だったのですが、神戸に帰って来て数日もすると顕著に変化が現れて、明らかに顔のいたるところが突っ張ってきました。知り合いに会うと「え?どうしたの? なんかいつもの感じと違うよ、今日は・・・。あ・・・なんか顔をいじりすぎた芸能人みたいになってる」と言われる始末。確かに自分で鏡を見ても「こりゃ・・・やり過ぎだな」って思いました。最近は美魔女ブームのせいもあってかテレビや雑誌で「50歳を超えてもこの美しさ!」って紹介される人が多いですが、中には「ありゃ・・・これはやりすぎね」って思う人いますよね。まさにそんな感じです。人間の識別能力って本当に凄いなと思うんですが、自分の顔なので基本的なパーツは同じなのに、ちょっとした変化で大きな印象の違いをもたらすものなんだと改めて実感。特に左右のバランスが崩れたり、笑った時に普通に動いていた筋肉が動かなくなったりしているとやはり違和感を持つものです。私の治療方針は基本的に「自然な仕上がり」を目指していますので、効き過ぎないように初めは少なく、足りなければ様子を見ながら足す・・・という事にしていますが、時には患者様の「もっと! もっと!」という圧力に負けてしまう時があります。(せっかくお金をお支払い頂くのですから、その気持は私にも分かりますが・・・^^;)そんな時、私は「あ・・・やっぱり効きすぎちゃったな」って思うのですが、意外にも患者様はご満悦の時も多く、改めて人間の感覚の違いを知るのは難しいなと思います。逆に、程よく効いてても他のちょっとした変化が気になってしょうがないという方も稀にはおられますからね・・・。そんなこんなで今回は6箇所も回った為、一回で全部を紹介する事はとてもできませんので、まずは印象深かったところをご紹介。

雑誌などでもよく取り上げられるGクリニック。理事長のF先生がボトックスで有名な先生なのと、「スペシャルボトックスリフト」という、皮膚と筋肉両方に効かせるボトックスリフトというメニューがあったので、どんなものか興味を持ちました。「目を大きくするボトックス」や「鼻のオイルコントロール」という、他にはあまりないオリジナルのボトックスメニューもあるようです。F先生は「下手な医者がボトックスを使うとこんな副作用がある」「ボトックスは医者を選ばないといけない」というようなサイトも作っていたし、ボトックスのメーカーのトレーニングドクターの指導者だったり、いろいろな国際学会にも招待されてレクチャーしている先生ですので、ここは是非その技を拝見しようではありませんか。クリニックはすごく広くて2階もあります。なんでも都内一の広さらしい。各部屋もめちゃ広くて家具や絵画なども凝っていて、書斎のような点滴ルームや、テラスの見えるラウンジまでありました。ドクターの指名ができたので、お目当てのF先生を指名。診察は2台のモニターを使って、加齢はどうして起こるかの講義から始まります。加齢によって骨が萎縮し、筋肉や脂肪も萎縮して、皮膚がたるんで見かけが老ける。美しい輪郭というのはハートシェイプ・卵形で、加齢によりそれが四角くなってくるので、卵形に近付けると若く見える・・・うんぬん。先日受けたアラガン社(ボトックスのメーカー)の講習会のようだ・・・(^^)。

F先生:「どこが気になりますか?」
柴田: 「フェイスラインや頬・口周りのたるみですが、先生から見て治したらいいと思われるところがあればそこをお願いします」
F先生:「であればやはり、こめかみと顎のヒアルロン酸注入とえらボトックスですね。ボトックスリフトはするほどでもないですが、興味があればどうですかね」
柴田: 「スペシャルボトックスリフトっていうのはどんなのですか?」
F先生:「顎と口角は筋肉に、フェイスラインと首は皮膚に打つボトックスです」
柴田: 「(なんだ。マイクロボトックスリフトと顎・口角のボトックスを組み合わせただけか・・・と思いつつも)具体的にどの辺にどのくらい打つんですか?以前私は額に5単位のボトックスを打っただけでも効きすぎて重くなり、3単位くらいでいいと言われた事があるんですが・・・」
F先生:「おや・・・そうなんですか。そんなに効きすぎる事があるかなあ? 量より、打つ場所では?えらは片側15単位、ボトックスリフトも片側15単位くらいでいいんじゃないかと思うけど」
柴田: 「ボトックスは2週間から3ヶ月の間は再注入はしない方がいいと言われた事があるんですが、どうでしょう?」
F先生:「美容で使う量くらいなら、最近のボトックスは特に問題はないんじゃない?3ヶ月も経たないうちに大量に使うのが良くないくらいでしょう」

こんなやりとりがしばらく続きます。私としてはこのチャンスに色々と聞いておきたいと思いつつも身元がバレないように慎重に言葉を選ぶ・・・という感じで結構疲れちゃいました。価格の事を聞くと、後は看護師と相談してください、と。目を大きくするボトックス・鼻のオイルコントロールについては時間切れで聞く暇がなくなってしまいました。 やはりお値段はこのクリニックの豪華な内装に比例するのか、かなり高いようで、ヒアルロン酸は1本17万円。初回30%オフなので11万9千円だけど、他のところよりはかなり高い。こめかみだと3本は要ると言われた。スペシャルボトックスリフトは26万2千5百円、えらボトックスは20万円、目を大きくする・鼻のオイルコントロールが3万円。ボトックスは初回60%オフなのでそれぞれ10万5千円、8万円、1万2千円×2で合計20万9千円。悩んだ結果、スペシャルボトックスリフト・えらボトックス・目を大きくする・鼻のオイルコントロールのボトックスを受ける事に。顎はスペシャルボトックスリフトに含まれるけど、少し前にしたので要らないというと値段は変わりませんと・・・。今から考えると、スペシャルボトックスリフトは皮膚のボトックスリフト(14万円)と口角上げ(3万円)・顎(3万円)の組み合わせなのに、26万2千5百円なんて・・・高いなぁ。私のクリニックは良心的だ・・・と自画自賛。(自分で支払いする側に回ると身にしみますねぇ・・・(^^)。)

その後、貼る麻酔を目から下にベタベタ貼られ、同意書を書かされる。ここはボトックスは初回は平均使用量より少な目にするが追加は有料と書いてある。だいぶ待った後に広い注入室に移動し、リクライニングのベッドを起こした状態で座ります。F先生が入ってきて看護師がメニューを伝えると、手早くマーキングしてすぐに注入。説明を聞く暇はなく、目の下と鼻にどれくらい打つのか聞くのがやっと。目の下は片側4単位、鼻は10~15単位かな、と。(決めてないの??)注入はこれまためちゃ痛かった。「顎は要らないんだね。口角は打っときますよ」その時の針がちょっと内向き過ぎなんちゃうかな、と思ったのだが・・・。(ボトックスってこの注射の針の向きがすごく大事なんです。後で詳しくお話します。)注射は麻酔をしてても結構痛くて、「いて! いて!」と言いながら注入終了。ホッ。(これまたされる側になると身にしみる・・・。)
術後3~5日くらいはなんとなく綺麗になったと言われてご機嫌だったが、6日後くらいからどんどん効き過ぎて、笑いにくいし喋りにくいし食べにくい。目は大きくなったが笑っても目が笑ってないし、目の下に余計なシワができ、唇が歪んできた。確かに凄い「効果」が出てきました。しかし・・・こらあかん。口を動かすと下唇が左だけ下がるので顔がめちゃ歪むのだ。ちょっと専門的な解説をすると、これは右の下唇下制筋にボトックスが効いてしまったからです。口角ボトックスというのは、口角下制筋を緩めて口角を上げたりマリオネットラインを浅くするボトックス療法なのですが、口角下制筋の内側の下唇下制筋にボトックスが効いてしまうと下唇が下げられなくなり、片方だけ効くと唇が歪んでしまうため、口角ボトックスの際には針を内側に向けてはいけないというのが鉄則です。口角に打つ時に針がちょっと内向いてるなあと思ったのだが、やっぱりこんな事に。

皆様も他のクリニックに行く機会があれば、ボトックス注射の際に先生が針の向きにまできちんと気を配っているかを確認してみてください。ただ、「嫌な患者が来たな」と煙たがられる事は間違いないでしょうけど。一番いいのは浮気をせず柴田美容皮膚科クリニックをご愛顧頂く事ですね・・・(^^)。・・・という訳で、今回の学会で「マイクロボトックスの失敗例」として発表されていた、皮内に打つべきボトックスが筋肉まで効いて、目は笑ってないし全体に間延びした「残念な顔」そのものになってしまったではないか! ボトックス指導医の権威のF先生にしてもらったのになぜ??? 御意見番K氏に話すと「まあ偉い先生が上手だという訳ではないという事で・・・」と笑われたけど、実際に実技の指導もしてるはずの先生なのになぁ。弘法も筆の誤り? 私が何万人に一人の効き易い体質なのか? でも口角は右だけだし・・・解せん。 それにしてもちょっと日常生活にも支障が出る感じだったので、8日目にGクリニックに電話して症状を伝え、何かいい方法はないかと、どこにどれだけの量を打ったか教えて欲しいと言うと、F先生はいなかったので看護師がカルテを見て、目の下に5単位ずつ合計10単位、鼻に10単位、えらに15単位ずつ合計30単位、口角を含むボトックスリフトに頬から首全体に合計60単位も使ったと。えーっ? 先生はボトックスリフトは左右15単位ずつ合計30単位、目の下は4単位ずつってはっきり言ったのに。診察の時に私もすごく少なくても効き過ぎたって言ったのに・・・。全部で110単位も打ったの~?! そりゃ多いでしょう。もっと少なくしてって強く言ったら良かったのかなぁ~。アセチルコリン打ってみようかな。(ボトックスが効きすぎた時にそれを緩和させる為の治療法と言われています。試した人は少ないようですが・・・。)受付の人曰くは1週間後というのは一番効果が強く出る時なので、2~3週間様子を見てくださいと。「変化があるのは効果が出てるという事ですから」と、よく言われるセリフ。ま・・・そりゃそうなんですけど。こんな嬉しくない変化ばっかりじゃねぇ・・・。取り敢えず2日後に先生が来るので、もう一度お電話しますという事に。

2日後、看護師から電話が。注入した量がカルテと先生が診察の時に言った量と違うと言うと「先生に確認します」と。結局目の下が3単位ずつ合計6単位、鼻が10単位、えらが15単位ずつ30単位、口角が3単位ずつ合計6単位、ボトックスリフトが54単位で総計106単位だという事だった。先生はボトックスリフトは15単位ずつ30単位ぐらいでいいだろうと言ってたのにどうして倍量も打ったのか? 下唇が左だけ下がって歪む理由は? 修正はしてくれるのか? と聞くと、もう一度先生に確認して折り返します、と。その後の電話では、先生に確認するとボトックスリフトの量は、首のシワが思ったより多かったので、術中判断で多くしましたと。いくらシワが多かったからって、倍量にするかなあ? 下唇の歪みについては、右だけ先に効いてくる事もあるので、あと1~2週間様子を見てくださいと。うまい事言うなあ。絶対下唇下制筋に入ったに違いないのに。

そんな訳で他のクリニックの潜入調査をすると自分でも色々と勉強になります。ちなみにF先生の名誉の為に申し上げますと、確かに効果は出ていて顔がシャープになり、小顔になったという印象はありますし、周りの人もそう言ってくれます。(もし実際に確認したければ私の顔を見るために是非クリニックにご来院ください・・・ハーブティーくらいならご馳走しますよ(^^)。)なので若返った印象を与えるという「狙い」としては非常にいいと思います。(表情さえ作らなければ。)それにボトックスは時間と共に効果が薄れてきますので、初めは支障があっても時間が経てばそれなりに戻ってきますから、リスクという点でも限定的です。なので「高いお金払ったのに変わらないじゃない!」って言われるくらいなら少し多めに打っておいた方がいいと思うドクターの気持ちも分からないではないです。ただそれにしてもねぇ・・・。業界に詳しい人にこの話をすると、ボトックス指導医の権威っていうのは「まあ周りが持ち上げてるっていうのもあると思いますけどね。学会なんかに呼ぶと見栄えがする先生っているじゃないですか。重鎮の先生とか・・・」なるほど。そういう面もあるかもしれませんね。もし持ち上げられてるだけじゃなくて技術的にも優れた先生だったとしたら、何千人、何万人もボトックスをしてるうちに、量にしても針の角度にしても慣れてきて「これくらいは大丈夫」というのがあって最初よりは慎重でなくなり、そこにたまたますごく効き易かったり筋肉の付き方が変わっていたりという人が当たると、こうなってしまうのかもしれないな。私も千人以上ボトックス治療はしてますが、たまにびっくりするくらい効き易い方もおられますもんね。「初心忘れるべからず」とか「人の振り見て我が振り直せ」とか昔の人はいい事言ってるなぁ・・・と、この年になるとしみじみ思いますが、今回も自分への戒めとしなければ。何年もやってると「ボトックスはこんなもの・・・」って考えてしまう事もあるんですが、やはり人の顔に注射をする訳ですから、慣れても常に慎重にしなければなりませんね。まだまだGクリニック以外にもお話したいクリニックがありますので、それはまたの機会にご紹介させてください。
「なおこのテープは自動的に消滅する・・・ The・End♪」