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第13回 (2004年04月)「ピーリングの進化:その3」 ~ホームピーリング剤開発奮闘記 続編~

こんにちは!異人館通クリニックの柴田です。

桜のつぼみもほころび始め、春はすぐそこですね。皆様も外出の機会が増えてきて、綺麗になりたくなる季節ではないでしょうか。ピーリングの人気が出てくるのもこの頃です。しかし難点はやはり、クリニックに通い続けないといけないこと。ホームケア用ピーリング剤の発売を今か今かとお待ちの方も多いと思います。

前回ホームケア用ピーリング剤のお話をしたのはもう1年近く前になります。あれから1年研究を重ね、ついにその成果が実る時が来ました!昨年は開発奮闘記を途中までお送りしましたので、今回はその続編をお送りします。


ケミカルピーリングは、お肌がつるつるになって、シミ・シワ・ニキビ・くすみなどのお肌の悩みを改善できるので、大人気のメニューですが、クリニックに通い続けるのが大変です。なんとか続けてもらって、1人でも多くの人にきれいになってもらう方法はないかなぁと考え続け、たどりついたのがホームピーリング。

市販のホームピーリング剤と違って安全にするために、一度はクリニックに来て頂き、その方に合った酸の種類と濃度を選んで施術した後、それを持ち帰っていただく方法を考えました。遠くの方でも1ヵ月か2ヶ月に1回神戸に遊びに来て頂いて、異人館通の散策のついでに気軽にクリニックに寄っていただければ、どんどんきれいになれるというワクワクする方法です。


しかし、安全な酸の種類と濃度はこの方法で選択できますが、苦労したのはおうちで安全にピーリングできるピーリング剤の開発です。安全な酸の性質は最も重要ですが、酸の形状も大切です。ホームピーリングでは鏡を見ながら自分でピーリング剤を塗るので、座って塗っても目に入らないように、液だれしないものでないといけません。そのためにジェル状のピーリング剤をを作ろうとしていたのですが、ジェル基材に酸を混ぜると粘度が落ちてシャブシャブになってしまい、なかなかうまくいきませんでした。薬品会社の担当MR・A君の失敗にヒントを得、ジェル基材をクリーム基材にしようと思いついた所までは、前回の開発奮闘記でお知らせしましたよね。


そこで早速クリーム基材のホームピーリング剤を作ってみました。

これは結構うまくいき、シャブシャブにもならずクリーム状のピーリング剤が出来上がりました。後は試してみるだけ! まず自分とスタッフで試してみると、しっとりスベスベになっていい感じ。 「これはいける!」と喜んだのですが、モニターの方に試して頂くと、お肌の弱い方にはマイルドで好評だったのですが、お肌の強い方の中には「物足りない」という方も…。クリーム基材はジェル基材よりも油分が多いため刺激が少なくしっとりするのですが、ピーリング効果は落ちてしまうのです。やはり効果の高いものを提供したいので、クリーム基材は考え直すことにしました。喜んだのもつかの間、また一からやり直しです。


ジェルの材料そのものを見直し、違うもので作ってみたり、PH調整剤を変えてみたり…。そしてやっと、乳酸を混ぜてもシャブシャブにならないジェルが出来上がりました。「やった!」

しかしこのジェルは、乳酸だとうまくいくのですが、グリコール酸だとPH調整剤を入れた時点で分離してしまうのです。何回やってもうまくいきません。でも、皆様もお待ちかねですから、早く製品化しなくてはいけないし…。

「とりあえず乳酸だけでも作ってみよう。 」そうしてできたのが、お年玉プレゼントの「踵用ホームピーリング剤」です。これは「踵がつるつるになった!」と、皆様にご好評を頂いたのですが、悲しいかな30個に1個くらいが分離してしまいました。1個でも分離すれば製品化することはできません。しばし研究は停滞してしまいました。


「何かいい方法はないかなあ…。」

仕事がうまくいかなかったり、ストレスがたまると持病の肩こりが倍増する私。そんな時、タイミング良く例のMR、A君が…。

A君 「こんにちはー! あれ、先生どうしたんですか?浮かない顔して…」

柴田 「うーん…肩こってんねん…」

A君 「先生、よう肩こりますねー。あ、僕、今日はいいもの持ってますよ!」


A君がおもむろに鞄から取り出したのは、某薬品会社に勤めている友達からもらったという「ア○メルツよこよこ」。

柴田 「あんた、懐かしいもん持ってんなー!」

A君 「これ、結構肩こりに効くんですよー。

   僕これ好きで、××製薬の友達に会う度にねだるんですけど…」

柴田 「それぐらい、ねだらんと買うたら?」

A君 「そんなん、もらえるのにもったいないですやん。

   僕、貧乏やし…。まあ、先生もいっぺん使てみて下さいよ」

柴田 「私の、重症やからこんなんで効くかなー?」


そう言いながらア○メルツをもらって塗ってみました。久しぶりに使うと、スーっとして結構いい気持ち。

柴田 「あれ? 結構ええやん、これ」

A君 「あなどられへんでしょー?」  A君は得意げです。

柴田 「肩こりひどなったら、腕までこるねんなー」

腕にも塗ってみると、薬液が程好くスポンジから滲み出て、いい塗りごこち。

…その時、ひらめいたのです。 「これや!」

ア○メルツの容器にピーリング剤を入れてみたら、液状のピーリング剤でもスポンジから適量滲み出すので液だれせず、座っていてもうまく塗れるのでは?

柴田 「あんたもたまには、ええもん持ってくるなー!」

A君 「よかった! 僕、めったに先生の役に立てませんからねー…」


早速ア○メルツ様の容器を探して、サンプルを取り寄せてみました。そしてピーリング剤を入れて顔に塗ってみると…グリコール酸はスポンジから程好く滲み出て、座っていてもうまく塗れたのです。 「これはいける!」私はうきうきしてきました。


話は変わりますが、実はホームピーリングには一番難しい課題があります。 クリニックで行う場合は、訓練されたスタッフが肌の状態を観察しながら行うので、赤みを帯びてきたりかゆくなった場合は拭き取る、など適切な処置が可能です。しかし自宅で行って頂くとすれば、酸を塗布する人が自分の肌が今どうなっているのか、適切に判断し自分で調整しなくてはなりません。ただ塗ればよい、と言うものではないのです。一人一人に合った酸を配合するのは今までのクリニックでの経験で実証済みですが、家庭での利用の際にはどうやって「安全」を確保するか…これが難しいポイントになります。

 実はここに至るまでに色々な実験を行って配合する酸に工夫をこらし、一定のレベルまで浸透すればそれ以上の浸透はせずに「安全」に利用できる酸は開発済みでした。

(こちらの酸の配合のお話は専門的で難しいお話になりますので、ここでは割愛します。ここで化学の話になっちゃうと皆さんも学生時代を思い出し、眠たくなってしまうでしょうから…(^_-)。私は博士号を取るために数年間は、仕事が終わってからずっと実験室で過ごしていたので、今になってやっとその経験が役に立ちました。その当時はなんて自分は不幸な人生なんだう、って嘆いていたのですが…。医学の実験は皆様の想像以上に地味で忍耐力が必要なものなんです。徹夜作業なんて当たり前で、よく朝帰りをしてマンションの管理人さんに怪しい人と思われていました(^_^;))


さてさて話は戻るのですが…今度は乳酸がうまくいきません。乳酸はグリコール酸よりも粘度が高いので、スポンジからうまく滲み出てこないのです。おまけに取り寄せたア○メルツもどきの容器は硬かったので、容器を押さえて酸を滲み出させることもできません。「こらあかん…」


何かいい容器はないかと、スタッフと相談していた時のこと。

柴田  「アラビックのりみたいな容器、ないかなー?」

スタッフI 「のりと言えば、先生、ソック◎ッチの容器はどうですか?」

柴田 「ソック◎ッチ? えらい古いもん知ってるねー!」

スタッフI 「えー、古いですかー? 知ってますよー」

スタッフS 「先生、この子らの時代のソック◎ッチは、ルーズソックス止めるやつですよ。

      先生と私の時代は、ハイソックス止めてましたけど…」

さすがSさん。彼女はうちのスタッフの中でなぜか一人、古い言葉を良く知っているのです。(実際の年は結構若いんですけど…)皆様はもちろん、あのソック◎ッチはご存知ですよね。どちらのソックスを止めていたかはさておいて…。


そこでソック◎ッチに似た容器を取り寄せてみました。しかし、グリコール酸を入れて塗ってみると、液だれして全然ダメ。

「なんや、これ全然あかんやん。せっかく取り寄せたのに…」

しかし乳酸を入れて塗ってみると、これが結構良かったのです。ロールオンタイプなので絞らなくても液が出てくるし、粘度の高い液体なら液だれせずに適量が塗れるということが解りました。やはり何でも実際に試してみることですね。

こうしてホームピーリング剤の容器は、グリコール酸はア○メルツ、乳酸はソック◎ッチもどきの容器にするということが決まり、後は皆様に使い勝手を試して頂くばかりとなりました。

長らくお待たせしましたが、ホームピーリング剤の発売は間近となりました。乞うご期待!

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