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第121回  (2013年04月) 「春なのに・・・」



こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はようやく暖かくなってきて、これから春本番って感じですね。この通信を書いている現在ではまだ桜が咲き始めたところなんですが、皆様のお手元に届く頃はもう桜は満開かもしれないですね。春って言うと皆様は何を思い浮かべますか? 寒かった冬がようやく終わりを告げ、春風の元で植物は新しい芽が息吹き始めます。学校や職場でも4月は新しい学期や区切りの始まりですし、新しい人が入学したり入社したりしてきますので、色々な意味で「新しい事の始まり」の季節ですよね。ただ、以前のクリニック通信にも書いたのですが、年間を通じて最も自殺が多いのも春なんです。元気一杯でやる気満々の人にとって「新しい事の始まり」って楽しみも多いのですが、精神的にそれほど強くない人にとって「古い事をやめて新しい事を始める」事ほどストレスが溜まる事はないのだと思われます。そう言えば私も小学校の時は、なぜクラス替えがあるのか本当に理解できませんでした。せっかく1年かけて仲良しになった友達とクラスがバラバラになって、また知らない人達と一から友達にならないといけない訳ですから、それはもう4月の新学期はストレスが溜まりまくっていたような気がします。初めのうちは新しいクラスの友達とうまく馴染めずに、休み時間になると仲良しだった友達のいる他クラスにわざわざ出向いて遊んだりした事もありました。勿論、今になって思えばそうやって強制的に何かをリセットする事で新しい変化を受け入れ、環境の急変に対応できる柔軟な人間に育てるという教育の一環だったのだな・・・って思えますが、当時の狭い世界で生きていた自分達からすると「全く何のためにクラス替えがあるのか解らない・・・」って思ってましたし、4月は大変なストレスを抱えていたような気がします。



ところで最近がグローバル化が進んでいて、当院でも留学生のアルバイトが多い事もあって、日本のように4月に新学期が始まるのは世界の中でも珍しく、多くの国では9月に始まるって事を聞くようになりました。確かに新学期っていつ始まってもおかしくないんだろうけど、やっぱり日本人と言えば「桜」ですよ。あの桜の季節に1年生がランドセル背負って入学式に行くって事がなければ、もうそれは新学期じゃないじゃないですかぁ。世界がどうであれ、日本人は4月の入学って譲れないんじゃないかな・・・って思っていたのですが、どうもそれがそんな事でもなく、明治維新直後の頃は欧米にならって新学期は9月から始まっていたそうなんです。皆さん知ってました? ちょっと調べてみると・・・



●江戸時代

・寺子屋、私塾、藩校などでは特に入学の時期を定めず、随時入学できた。

●明治時代初期

・明治維新により西洋の教育が導入され、高等教育では9月入学が主流となる。

しかし、富国強兵政策の影響もあり、その後様々な新年度が4月から始まるようになります。

●1886年(明治19年)

・政府の会計年度が4月-3月になる。

→会計年度に合うよう、小学校で4月入学が奨励されるようになる。

・陸軍の入隊届出開始日が9月から4月に早まる。

→高等師範学校が4月入学とする事を定める。(優秀な学生を軍隊に確保されてしまう事を懸念?)


●1888年(明治21年)

・全国の師範学校も4月入学となる。

●1900年(明治33年)

・小学校が正式に4月入学となる。

これに対し、帝国大学や旧制高校は9月入学を維持していましたが、

●1919年(大正8年)

・旧制高校が4月入学となる。

●1921年(大正10年)

・帝国大学が4月入学となる。

(出典:Http://allabout.co.jp/gm/gc/220653/)


なんだそうです。へぇ・・・。もう日本では昔っから4月に新しい事が始まる伝統があったのだとばかり思い込んでいたんですが、そうではないのですねぇ。いずれにせよ、日本では4月に新しい学校に入学したり新しい会社に就職したりするだけでなく、会社では転勤も4月に多いので、引越したり住む場所まで変わり、今までとは全く違った新しい生活をスタートさせる人も多いようです。お隣の国の韓国では学生の就職戦線は日本以上のようで、女子学生が就職に有利なように、就職活動の時期になると美容整形に行く人が増えるのだとか・・・。ま・・・それには賛否両論あるようですが、ある出来事をきっかけに古い生活スタイルを捨てて、今までにない新しい自分に生まれ変わるという変身願望を持った人は結構多いようです。そのような人が「変身」するのに最も適した季節が、日本ではこの4月なんですね。



当院にも「変身願望?」を持った患者様がたまに来院されます。誤解の無いように申し上げますと、当院はシミ・シワ・たるみの改善を目指す美容皮膚科ですが、多くの患者様は「変身願望」なるものは持っていらっしゃらないように思います。むしろ極端な変化は望まれず、小さな改善を周りの人に知られずに行いたいという方の方が多いように感じます。おそらく変身願望を持っているような大きな変化を望まれるような方は、当院ではなく手術を主体としている美容整形外科の方に行かれるのでしょうね。その意味では当院ではどちらかというと保守的な患者様の方が多いようです。ただ、そんな中でも上記のような大きな「変身願望」を持たれている方が来られる事があるのですが、そのような方が望まれる治療の大半は「ダイエット」です。勿論、顔の気になるところを大幅に改善したいと望まれる方もおられますが、当院では外科手術ではなく注射を中心とした治療を主体としているので、初めから美容外科のような事は期待されていない場合が多いようです。しかし、ダイエットになるとかなり「無理」な願望の実現を期待される場合があります。確かに体脂肪率を30%から10%台にする事は可能だとは思います。ただ、理屈の上で可能な事と実際にできる事とは大きな乖離があります。やはりダイエットは食べたい事を我慢するという非常に大きな自分への制約が必要になります。そもそも、そのような自制ができる人はそこまで体脂肪率が上がる前に手を打っている訳で、「今日から決意しました・・・」って言うような事では普通は続きません。そのため、何度もダイエットに失敗した人は食欲抑制剤を処方して欲しいとか言われるのですが、正直に申し上げてそれは限界があります。やはり、日頃の食事制限をきちんと行い、一定以上の運動を行なっていただかないと体重は減りません。(逆に言えば、それをきちんと行えば殆どの人が確実に効果を出せます。)





そんな訳で残念ながら、極端な変身願望をお持ちの患者様のリクエストにお応えして結果を出すというのは本当に困難であり、最近では初めから「相当厳しいです」と申し上げる事が多くなりました。もっとも、脂肪吸引のような外科手術を行えば急激に脂肪を減らす事もできますが、それには大きなリスクが伴いますし、食生活が変わっていなければ確実にリバウンドします。そんな訳で極端なダイエットを期待する患者様にはきちんと説明を行い、無理な事は無理だとお答えする事が多いのですが、一方で「へ? 今のままでも十分じゃないですか? なんでダイエットが必要なんですか?」って言うようなお悩みを持っておられる患者様のご来院も結構あるのです。そのようなケースは一見すると全然太っていなくて、どちらかと言えば綺麗な方も多いのです。ところが話を聞くと「いや・・・実は服で必死に隠してるんですけど、この下腹部を見てもらえますか?」と言って服を脱がれると、「ああ・・・確かに・・・。ここにこんなお肉が隠れているのですね・・・」と言った感じです。もっと解りやすく言えば、体は健康で、全体としてダイエットが必要な状態でなくても、ご本人にすると体の一部に異常に脂肪がついていて、そこがどうしても取れない・・・って事でお悩みな訳です。早い話が部分痩せを望まれているのです。これが下腹部のように服で隠れている部分だとメソセラピー(脂肪溶解注射)でかなり確実に効果を出せます。ただ、お顔のように露出している部分であると相当難しいのです。なぜかと言うと、現在のメソセラピーは注射の後に腫れを伴う事が多く、露出している部分に打つにはあまり向いていないのです。しかしながら、部分痩せというのは非常に難しく、いくらダイエットしても気になる部位の脂肪はなかなか落ちません。無理にダイエットすればバストなど落ちて欲しくない部分の脂肪が落ちてしまう事から、メソセラピーのような方法で取り組まねば、まず満足のいく効果が現れないのです。そのような訳で最近は、目の下や頬などお顔の脂肪を取る時に、なんとか腫れが最小限になる方法はないか・・・と研究を行なっています。



お気づきの皆様も多いと思いますが、幸い(??)うちのスタッフにはコロコロした子が多いので、実験モニターには事欠きません・・・(^^)。新しいメソセラピーの薬剤や、混ぜると腫れを引き易くすると言われている薬剤を取り寄せ、顔やお腹の左右で組合せを変えて実験です。モニターは留学生のHちゃん・Nさん、そしてS君。私も最近1-2kg太ったのと、年と共に下腹の脂肪が落ちなくなってきたので、参加してみました。

さて、ダウンタイムや効果を比較するために写真撮影は不可欠です。S君はいつもマスクで丸い顔を隠しているので、撮影のためにマスクを取るだけでみんなに笑われ、不憫な事に・・・。おまけに二重顎を撮影する時は顎を引いて写真を撮るので、またその度に笑われるハメに。そして注射後も、元々顔がでかいためか、腫れているかどうかが判らん・・・。また、お腹と腰の肉も結構あったので両方に注射したのですが、腰に打った薬剤の組み合わせが悪かったのか、3-4日は歩きにくいくらい痛かったようです。いつものようにドスドス歩けないので、「ジジイ歩き」と言われてました。深く打ったのがいけなかったのかと、Nさんには同じ薬剤の組合せで浅く打ってみたら、痛くはなかったけど痒みが出てしまいました。う~ん、この組み合わせは却下。





メソセラピーは少しダイエットもした方が良く効くという事で、みんなでメニュー表もつけてみました。やっぱりメニュー表をつけてカロリーを計算してみると、太っている原因が良く判りますね。S君は「そんなに食べないのに太るのは燃費がいいからだ」と自分では言ってましたが、実際にはお酒のカロリーが莫大だった事が判りました。やっぱり太ってる人って大抵食べ過ぎか飲み過ぎですよね。彼の場合は飲み過ぎの典型だったという訳です。私も結構お酒のカロリーが多かったのですが、S君ほどバカ飲みはしていなかったせいか、それほど制限しなくてもメソセラピー後は体重も少し落ち、下腹も少しスッキリした感じ。今までの経験からも、BMI20以下の人は食事制限なしでも効果が出る事が判りました。そこで3月は、BMI20以下の人のための、痩せても落ちない部分のメソセラピーを「ボディメイクセラピー」として、食事制限が必要な人のメソセラピーと分ける事にしました。BMIが高い人はやっぱり食事制限は必須のようで、こればかりは今のところどうしようもない感じです。脂肪溶解注射の薬剤は脂肪細胞の外に脂肪を出しやすくする薬剤なので、細胞の外に出した脂肪を代謝しなければなかなか痩せません。そもそもが肥満体質・・・と言うか食べ過ぎの人は、細胞の外に出した脂肪が代謝しにくいので、脂肪溶解効果が出にくいのは過去の臨床データからも明らかです。

さて、2-3週間すると、S君もNさんも丸々した顔がスッキリしてきました。写真撮影すると、みんなS君を絶賛! 「めっちゃ顔痩せたやん!! 前は相撲取りみたいやったのに!」「前は二重顎が顔の倍ほどあったのに、顎減ったやん!」(褒めてるのか何なのか分からん・・・。)

確かに二重顎の脂肪は半分ほどになって顎がちょっと尖ったし、メソセラピー前はあまりに顔が丸々していたので顔の中心に寄って見えていた目鼻も、ちょっとつぶらに見えています。

「えーっ、このまま痩せたらS君、イケメンになるんちゃう??」 Yちゃんのお世辞(?)にS君は有頂天。「そうかなー?♪」 腰は痛かったのでトラウマなようですが、顔のメソセラピーはやる気満々のS君でした。S君もこれをきっかけに「彼女いない歴○○年」の人生が変わるといいのですが・・・(^^)。みんなの努力(?犠牲?)の甲斐あって、顔用の少し腫れにくい薬剤の組み合わせも判ってきました。まだまだ実験は必要ですが、少し光が見えて来たという感じです。これからも実験を重ねて、実際に患者様に提供できるメニューになるよう頑張りたいと思っています。こうご期待!



ところで、当院でも4月の新しい風は吹いて来ています。留学生のホープで何でもテキパキとこなしてくれ、クリニックのムードメーカーだったHちゃんが大学を卒業して、日本の大手企業Gに就職する事になり、愛知県に引っ越してしまいました。Hちゃんは口が悪いので、いつも上記のコロコロS君に対して失礼千万な事をズケズケと言ってはみんなの爆笑を引き起こしていました。(勿論、S君以外の笑い・・・ですが。)S君にとってHちゃんはもう「天敵」と言ってもいい状態だったのですが、おそらくHちゃんが卒業する事で最も寂しい思いをしているのはS君のような気がします。その代わり、Hちゃんは「自分よりも頭が良くてできる人」という触れ込みで、彼女のルームメイトを紹介してくれたので、新人Mちゃんが留学生アルバイトとして働いてくれる事になりました。MちゃんはHちゃんに負けず劣らず、S君にズケズケ失礼な事を言ってはみんなの笑いを誘う才能があるので、S君もHちゃんのいない寂しさを少しまぎらわせる事ができているようです。



社会人になるとどうしても保守的になってしまいますし、ある程度の年齢になると大きな変化を嫌ってしまうようになりますが、春になるとやはり世の中は変化しているし、春は新しい出会いと別れの季節なんだな・・・って思います。思えば新しい出会いって、それが良かったって実感するのはその人と仲良くなってからなんで、少なくとも普通は夏以降ですよね。反対に別れは確実に春に実現する訳ですから、春って新しい出会いの季節って言うよりは自分の記憶を辿っても「別れの季節」と言った方が良いのではないかと思います。もうかなり昔にヒットした「春なのに・・・」って歌をご存知ですか? 中島みゆき作詞作曲で柏原芳恵が歌って80年代に流行ってました。(また古い話ですねぇ・・・^^;)。しかし「昭和の男」と呼ばれるほど古い事を良く知っていて、本当は26歳の時に「46歳」とか「64歳」とかって留学生たちにからかわれていたS君なら絶対に知っているはず・・・。) 「春なのに・・・」は春の別れを歌った曲で、とっても物悲しい歌です。(中島みゆきさんってこんな歌作らせたら天才なんですよね・・・ホントに。)「春なのに・・・春なのに・・・ため息またひとつ・・・♪」 私も正直言うと春は悲しい季節のように思います。ただ、そんな悲しい春を忘れさせてくれるために桜が咲いてくれるんじゃないかな・・・って思うのです。あの満開の桜が新しい変化に期待を持たせてくれるからこそ、この悲しい季節を乗り越える勇気と希望が湧いてくるような気がするのです。昔の人が新学期を9月から4月にしたのは大正解だったのではないかな? またお花見に行くのが楽しみになって来ました。(ま・・・その後の団子の方がもっと楽しみなんですが・・・。)皆様もよいお花見を!


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