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第111回  (2012年06月) 「300年後の世界は・・・ 」



こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。新緑輝く、いい季節になりましたね! 今は四季のある日本で一番いい時期ではないでしょうか。最近は新緑の六甲山を眺めながら露天風呂を満喫しています。 5月と言えばゴールデンウィーク。皆様はどう過ごされましたか? 5月と言えば、この通信の原稿を書いているのが5月19日なんですが、来週の月曜日には金環日食が見られるとか。この機会を逃すと、もう300年も日本では見られないそうですね(一部の地域を除いて)。宇宙オタクの私にとってはこれは大変な楽しみです。もの凄い時間のスケールですが、300年先に起こる天体ショーのスケジュールを予告できるなんて、人類の英知は驚くべき・・・って思いませんか? ただ、そのスケールの大きさと裏腹に私の課題は小さくて恥ずかしいのですが・・・。月曜日の日食は午前7時半だって事ですから、こんな時間に早起きできるかしら・・・っていうのが私の当面の問題です。(皆様の中には午前7時半なんて既に一日が始まってて当然という方も多いと思いますが、残念ながら私は夜型人間でして、通常この時間はまだ熟睡状態です・・・^^;) 太陽の観測より星の観測の方が私には合ってるみたいです。)



さて、私のゴールデンウィークなんですが、今年は大学の後輩の卓球の試合を見に行ってきました。大会は3日間あるのですが、大抵の年は3日目には皆負けてしまって誰も残っていません。(早い話が我が大学の卓球部はお世辞にも強くないので、早々に負けて退散する訳です・・・。)しかし、今年は珍しく後輩達が3日目に結構残ったので、3日間応援に大阪まで通って、決勝戦まで見てしまいました。しかし最近の卓球って「福原愛ちゃん」のおかげなのか、昔のように暗い体育館で小さなテーブルの上の小さな球を無言で追いかける根暗なスポーツのイメージを一新して、すっごく明るいスポーツに変身してますよね。選手の着ているユニフォームもカラフルになっているし、体育館には冷房だって入っているし。応援だって皆でワイワイ楽しくやってます。テレビでよく愛ちゃんが「さぁ!!」ってかけ声していますけど、あのかけ声ってチーム単位で違うのって知ってました? ちなみに私達の学校では昔は女子は「さぁ、よし!」、男子は「よぉし、よしよし・・・」でした。時代と共に変わって、今は「よぉ・・・し・・・よっよっ・・・ 」とか、色々あるんですよ。・・・ってそんな事どうでもいいですか? ・・・ですよねぇ。こんな話をしても誰も興味を持ってくれないのは、まだまだマイナーなのかなぁ。ま・・・テニスのようなメジャー感はまだないにしても、卓球も最近は一応市民権を得たスポーツの仲間入りはしたかな・・・って思っています。


しかしなんと言っても今回の最大の収穫は、卓球部の後輩二人が当院にアルバイトに来てくれるようになった事です。前にも何度か違う後輩がアルバイトに来てくれた事があるのですが、やはり器具の名前一つにしても、医学生だとすぐに伝わるし、やりやすいんですよね。しかも、最近の医学生には意外にも美男美女が混じっています・・・(^^)(医学生の全員がそうだとはお世辞にも言えませんが、少数混じっているだけでも凄い事なんです。私の学生時代に比べたらもう・・・。)また彼らを皆様にご紹介する事になると思いますので、その節はよろしくお願い致します。



先輩後輩という事で言えば、先日ある整形外科時代の先輩と飲む機会がありました。 久しぶりに昔話に花が咲いたのですが、ちょっと意外なお話が・・・。

N先生:「そう言えばこの前、教授に呼び出されてさぁ」

柴田 :「そうなんですか・・・あのハゲジジイですか?(私の学部教授のあだ名・・・ 勿論本人には内緒です)」

N先生:「そうそう。うちの病院にM君って言うそこそこできる奴がいるんだけど、 Mがどうもハゲに直訴したみたいでね」

柴田 :「え・・・なんて言ったんですか?」

N先生:「俺と一緒にやっていくのはイヤなんだってさ」


と言うと、N先生はグラスに残っていたシャンパンを一気に飲み干しました。


N先生:「まぁ・・・世間ではよくある話だよ。ありふれた・・・話」

柴田 :「それで、どうなるんですか?」

N先生:「転勤だな」

柴田 :「えぇ・・・そんなのありですか??」


既にN先生は大きな病院の部長だったので、普通はこのクラスになると転勤人事はないものです。転勤されたって事を私も初めて聞いて驚きました。


柴田 :「も・・・もしかして、それって左遷ですか?」

N先生:「そうでもないさ。角を与えて飛車を逃したって感じかな・・・」

柴田 :「はぁ??? なんですか? それ・・・」

N先生:「将棋知らない? あ・・・じゃ羽生善治も知らない?」

柴田 :「・・・知りません」

N先生:「ちょうどその頃に他の病院から声がかかったから僕がその話を受けた訳で、 積極的に変化を受け入れたのよ。世間では左遷って言われるかもしれない けど、気にしてないしね。あ・・・そうそう、彼の「結果を出し続けるために」って本、面白いから読んでみたら?」



なんでもN先生は、その羽生さんがテレビで「思い通りにならない事を楽しむ事が大事」と言っているのを聞いて、ちょうど自分の境遇と重なったので、意外にもあっさり決断しちゃったそうです。(後で他の人に話を聞くと、羽生さんって超有名な将棋界のプリンスなんですってね・・・知らなかった・・・^^;) 世間では色々なところに王子様はいるんですねぇ。なんで私の前に現れないのかしら・・・。)

早速N先生のお勧めに従って私も羽生さんの本を読ませていただきました。特に印象的だった言葉は「結果を出し、自分の道を進むためには、やっていこうと決めた事に対して、自分のペースで少しずつハードルを上げながら課題をクリアしていく事。自分の予想通りにならない事を楽しむ事。そして何より、続ける事」。まさにその通りだと思います。この本では彼の勝負に対する人生観が出ていて、将棋という世界だけでなく、人生そのものにも通じるエッセンスがあると感心しました。さすが「天才」!です。



しかし・・・同時にやっぱり「天才」だからなんだな・・・って風にも思います。彼の年令でこの人生観に到達できるっていうのはもう「天才」以外には到底無理なんじゃないでしょうか・・・。そもそも若い時にはその肝心の「やっていこうと決めた事」がなかなか見つかりません。私自身の人生を振り返って見ると、今でこそ自分のやっているクリニック及び治療方針などは「やっていこうと決めた事」だとはっきりと認識していますし、その為にはどんな苦難も乗り越える覚悟があります。また、逆境があってもそれは自分がステップアップする為の一つの試練であるとも思えます。しかし、そう思うようになったのはこのクリニックを始めた後でして、わずか10年程前。その時は私はもう40歳を超えていました。昔のように人生50年だったら、40歳を過ぎてようやく信念を持ってやっていこうとする道が見つかるなんて、遅すぎて話にもならなかったでしょうね。確かに私のケースは遅いかもしれません。でも遅すぎた・・・とは今でも思えないのです。多くの後輩達と接していても、表面では現代を刹那的に生きている今時の若者・・・って感じがしますが、深層では「自分が本当にやりたい事」が見つからずにあがいているような気がします。なんか昔の自分を見ているようです。


そんな複雑な思いを巡らしているところに、後輩の一人から相談のメールをもらいました。後輩達もこの通信を読んでいる人が多いので、その人のプライバシーを守る為に詳しい内容は記載できませんが、早い話が「医学の道に自分は向いてないと思うので、大学をやめるべきか続けるべきか悩んでいる」という内容でした。



この手の悩みは恐らくかなり多くの医学生が一度は通るものだと思います。医学部を目指した動機というのは、高校時代の成績が良かったので医学部を受験してみようと思ったという人が多く、「人の役に立つべく医師道を目指す」という高い志を持った学生は正直言って少ないと思います。そのような学生にとっては医学部に進学する事が目的であり、その後に待ち構えている「医者になるための試練」は想定外・・・って事がよくある訳です。彼に対して私は概ね下記のような返事をしました。 「大学生の頃に自分が本当にやりたい事とかやるべき事が見つかっていないのは仕方がないし、普通なのよ。私だって学生の頃はそれで悩んで一旦は辞めようと思って一年間学校に行かなかった時期がありました。(私が一年留年したのはそのせいで・・・決して成績が悪かった訳じゃないから、あの留年したS君と同じにしないでね・・・^^;) 自分の人生をよく考えて、本当に向いていないと思うのであれば留まる必要はなく、むしろそこから飛び出して、人生の早い時期に本当にやりたい事を探す旅に出た方が良いと思います。常識に縛られると本当に探している事が見つからないと思う。もっと言えば私のアドバイスなんか聞く必要すらないのよ。所詮自分で見つけるしかないんだからね。悪いけど両親とか親しい友達のアドバイスも聞く必要ないよ。(あ・・・お父さんに私がそんな事言ってたって言っちゃダメよ・・・気を悪くするから・・・^^;)人生は旅に出るのが一番。何も荷物を持たずに旅に出て生活してみるといいよ。それで戻りたかったら戻ればいいし、旅先の生活が良いと思えばそのままそこに留まればいいんです。所詮答は自分の中にしかないんだから・・・」



そうしたところ、「先生のようなアドバイスをいただいたのは初めてで、正直言って驚いています。誰に相談しても、せっかく入学したのだから卒業して医者の資格だけは取っておけ、また考え直す時が来るから・・・という話ばかりでした。先生には目からうろこの助言をいただいて感謝しています。しっかり考えてみます」という内容の返事が来ました。そりゃそうでしょうねぇ。私の大学でも入学して医者になっていない人などは本当に数える程しかいないはずです。(その内の一人はわりと有名な映画監督になった人ですが・・・あまりにも珍しいケースなので、未だに学内での語り草になっています。)医学部を辞めると言えば、親をはじめ親戚も友達も大半は「やめておけ」って言うでしょうね。でもその理由は「もったいないから」なんです。「せっかく医学部に入ったんだから辞めるなんてもったいない・・・」って理屈です。私はこれってやっぱりおかしいと思うんです。人生で何がもったいないって、「本当にやりたい事」が見つからないまま終わってしまう、もしくは時間切れになってしまう事じゃないでしょうか? 常識という荷物を持たずに旅に出ないと、凡人たる私達は本当にやりたい事なんて見つからないような気がするので、荷物の多い現代の学生達には少し同情してしまいます。



思えば300年後にある金環日食って、何世代も先の話・・・と考えれば遠い未来だし、宇宙の歴史からすれば一瞬なんですよね。宇宙全体だって未だに変化しているそうで(まだ宇宙も若者で成長しているのかもしれませんね・・・(^^))、成長の過程にある数々の出来事の一つにすぎません。学生時代っていうのも長い人生の中ではほんの一瞬の時代でしかないのですが、その時代を生きている人にとってはそれがすべてのように感じてしまいます。我々のような凡人には、それが一瞬の出来事であり長い人生の中においては大差ないという事が、年齢を重ねてみないと解らず、後から思うようになるのでしょうね。しかし羽生さんのような「天才」は早くからそれを悟り、自分の定めたゴールはまだまだ先にあるので、現在起きている色々な問題はその通過点にしか過ぎないと思う事ができるのでしょう。

だから「思い通りにならない事を楽しむ」なんて事ができるんでしょうね。やっぱり天才たる人達はスケールが大きいんですね。私も今更・・・なんですが、少しでもそれにあやかれるように、まだまだ努力を続けねばならないな・・・と改めて思った次第です。来週の月曜日は、300年後の未来の事をあれこれ想像しながら、早起きしてみようかな・・・(^^)。


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