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第110回  (2012年05月) 「挑戦者達のお花見 」



こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はめっきり暖かくなって来ましたね。今年は桜も綺麗に咲いて、お花見も各地で盛り上がったようです。皆様はお花見には行かれましたか? しかし、今年は寒かったのが急に暖かくなったせいか、花粉症の皆さんは大変なようです。当クリニックでも花粉症に悩む方の相談は例年よりかなり多いように思います。花粉症のようなアレルギー系の疾患はステロイド以外ではこれ・・・と言った決定打のような治療方法がなく、ある人には凄く効くけど、ある人には効かないというものが多いので、結構色々と試してみて自分に合った方法を見つけるという事しかなさそうです。漢方が効くという人もいれば、ビオチンとかプラセンタで効いたと言う人もいます。当院ではプラセンタ点滴とビオチンの評判が結構いいのですが、いくつかのアレルギー対策治療を行なっていますので、お困りの方はご相談ください。



・・・ってなんだか宣伝ぽい出だしになってしまいましたが、お花見に話を戻しますと、私も4月のうららかな陽射しの気配が見えて来た頃、スタッフと一緒にお花見に行きました。しかし、当院のスタッフは私の性格を見抜いていると思われ、「お花見に行かない?」と誘うと、「あ・・・お花見ですか? 行きたいです! お花見の後はどこに行くんですか?」・・・とちゃっかり聞いてきます。私が花より団子派である事をすっかり見抜かれてしまっていて、お花見よりもその後に何を食べるのかが興味の対象になってしまっているようです。お花見と言えば毎年毎年行われる日本の伝統文化とも言える行事で、いつから始まったのかは分かりませんが、もう何百年も続いているはずですよね。毎年おんなじ事をやっていてよく飽きないものだと思うのですが、やっぱり桜の季節は心が弾みます。そしてなんと言っても「アフター花見 」! それはお花見の楽しみの一つなのでスタッフにアンケートをとると、今回は全員一致で六甲の串かつTに行きたい!・・・という事になりました。先月号のクリニック通信をお読みでない方のために説明しますと、串かつTは魔法のソースで食べに来た人を虜にしてしまうだけでなく、串カツ屋なのにアテとご飯が超おいしい摩訶不思議なB級グルメ界のワンダーランドなのです。(詳しくは先月号の通信をご参照ください。先月号の通信でこの串かつTを紹介した際の反響は凄まじく、患者さんはもとよりこの通信を毎月印刷してもらっている業者さんまで、「串かつTに連れて行ってください!」と言い出す始末でした・・・^^;)



このお店はB級グルメの一翼なので、普通であれば飲んで食べて一人2000円から3000円程度に収まります。しかし、当クリニックには超大食いのB君がいます。彼の大食いは見た目に関わらず、「超」がつく程の底無しです。外見だけで言えば丸々とした印象のS君の方がずっと食べるように思いますが、彼は意外にもちょっとのつまみで酒ばかり飲む典型的な「飲み助」であって、あまり多くの量は食べません。かたやB君は「ヤセの大食い」を地で行くタイプで、特にお肉とパンへの飽くなき食欲には目を見張るものがあります。B君によって底なしに串かつを食べられてはかなわないという事で、菓子パンと牛乳を大量に買い込んで、お店に行く前にB君に食べさせるという計画が極秘に立てられました。特にお肉が大好きなHちゃんは自分の串かつの取り分が少なくなってはかなわないと、必至にB君をおだて透かして菓子パンを彼に薦めていました。(本来、彼女も大食いで言えばB君に引けをとらないのだが・・・)その甲斐あって、串かつTに到着してまずはアテから頼んでいると、菓子パンと牛乳を大量に消費したB君がお腹が痛い・・・と言い出す始末。結局、彼は串かつは一本しか食べることができず、殆どの串かつはHちゃんを始めとした他のスタッフに綺麗に平らげられてしまいました。ここはHちゃんの作戦勝ち。生存をかけたサバイバル合戦は、このような小さな社会でも存在しているのです。



しかし、今回は負けたB君もきっとこの敗北から学び、次回はリベンジしてくるでしょう。そうやって適者生存の厳しい世界の中で進化を遂げて生き残ってきたのが我々人類なんですから・・・。う・・・ん。なんだか無理やりスケールの大きな話にしようとする意図がミエミエになってしまってますが、今は私の中では「宇宙」がマイブームなんです。「宇宙」について色々と思いを巡らしているとなんだか言い表せない「ワクワク」した感じが体を駆け巡るんです。

ま・・・マイブーム到来の話は後でするとして、そんな事よりやっぱりここのソースは美味しい。絶対に何か知らない薬品が入っているとしか思えない・・・。 あ・・・そう言えば注射器持ってくるつもりだったのに忘れちゃったな。次回こそはソースのサンプルを持ち帰って、遠心分離機にかけて成分分析しなきゃ。ただ、残念なのはご飯がやっぱり今ひとつだった事。Tのご主人も「ガンちゃんのお米が入らんようになったから・・・」と残念そうに言ってました。ここはガンちゃんの復帰を祈るばかりです。マジックソース開発のTの主人をしてこの言葉を言わしめるガンちゃんはやっぱりタダ者では無かったんだな・・・(^^)。



そんなこんなで普段は仲良く助け合いながら、時にはお互いの足を引っ張り合いながら・・・^^;)・・・私もスタッフのみんなと頑張っています。スタッフ参加のイベントと言えばお花見以外にも、今月は東京で開催された日本形成外科学会にYちゃんとS君と一緒に行きました。(この為、数日間クリニックをお休みにさせていただき、皆様にはご迷惑をおかけしてしまいました・・・すいません・・・m(__)m。 )

今回の学会ではFGF(線維芽細胞増殖因子)を生理食塩水に溶かして注射する方法の発表があったので聞きに行きました。FGFというのはコラーゲンやヒアルロン酸を産生する線維芽細胞を増やす成長因子で、傷を早く治す薬として使われている他、最近ではコラーゲンやヒアルロン酸を増やしてハリを出す目的で化粧品などにも配合されています。これをシワに注射したらよく効くんじゃないか・・・と考えたのは私だけではないようです。当院では2006年からFGFの研究を始め、現在もメソリフトやエセリスカクテル注射などの薬剤にごく微量加えていますが、この薬は非常に良く効く薬なので量の調節には細心の注意を払う必要があります。傷が良く治るという事は、量が多すぎると組織が増えすぎるという事も理論的には起こりうるので、当院では超微量から始めて検証を重ね、詳細なデータを基に安全で効果が出る量を一人一人の症状に合わせて微妙に調節し、打つ部位によっても量を変えています。PRPにFGFを混ぜる人もいますが、PRPの濃度も測らずにFGFを混ぜて(FGFの量にもよるんでしょうけど)注射した部位が膨らみすぎるという副作用が出て問題になっている事は以前のクリニック通信でも書いたとおりです。PRPは再生医療で自己の血液を使っていて安全なのがメリットなので、当院ではFGFとPRPは切り離して考えています。



FGF注入療法を発表していた先生は2007年から研究を始められたようですが、使っている薬の量が当院に比べると非常に多い上、誰にでも同じ濃度で、顔のどの部位にも均一に打っているようで、全然やり方が違うなと思いました。誰にでもどこにでも大量の薬を使うというのは理に適っていない気がします。「大丈夫かな・・・」と思っていると、やはり注射した部位が膨らみすぎる事もあるようでした。そして副作用の出た量や濃度を質問すると「研究会に入ったら教えてあげる」と言って答えてくれません。研究会の入会金は数十万円だとか。その上「いろいろノウハウがあるので、まねしてやったら失敗して大変な目に会うよ」と怖い顔で言われたり・・・。(新興宗教でも最近はもっと優しく勧誘してくれると思うけど。私が学生の時にはあのカルト宗教Aウムだって「美味しいカレーを食べて一緒にヨガしない?」って優しく誘ってくれてました・・・^^;) 人それぞれで色々なやり方があるのだとは思いますが、FGFはとても優れた薬剤だけに使い方は難しいと思います。効果が大きいという事はそれだけ副作用のリスクも大きい訳です。きちんと検証せずに安易に治療に使われる事で副作用が増えていたずらに危険だと言う噂が広まったり、行き過ぎた行政からの規制が入らない事を祈るばかりです。



ところで、ちょっと学会発表とは違うのですが、今回の参加で印象に残った講演があるので、そのお話を是非させてください。毎年、形成外科学会では医療という分野に拘らず、各界の一線で活躍する方をお招きして講演をしてもらうというスペシャル企画があります。過去には数学者の秋山仁さん、漫画家の永井豪さんなどが招かれて講演されていて、この企画は私の楽しみの一つです。


今回は小惑星探索機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーを務め、世界で初めて地球引力圏外の小惑星からサンプルを採取して戻るというプロジェクトを成功させた、宇宙科学研究所教授の川口淳一郎先生の講演でした。私は宇宙戦艦ヤマトで育ったものですから、もう宇宙関係のお話はそれだけでもワクワクしてしまいます。(ま・・・現実の世界はヤマトとはかけ離れている事くらいはわかっているつもりですが・・・それでもねぇ・・・。同じ宇宙船なんだから、そのうち波動エンジンとか搭載されるはずですよ・・・きっと。)

「はやぶさ」は2003年に打ち上げられ、地球引力圏外の天体に着陸し、7年間60億kmの人類初の往復宇宙飛行を達成して、小惑星の試料回収にも成功したそうです。その間数々のトラブルに遭遇し、燃料ガスが漏れて7週間通信が途絶えたり、エンジンが寿命を迎えて飛翔の危機に陥ったりしたらしいのですが、プロジェクトメンバーは「はやぶさのゴールは地球なのだ」という目的を共有し、これらの困難を克服して地球帰還の成功へとつなげたそうです。う・・・ん。やっぱり宇宙を舞台にしたスケールの大きなドラマがここでも展開されている訳なんだ。(実際にその物語は映画にもなったようです。)



今回の講演ではそのプロジェクトの苦労話や裏話を交えながら、新しいプロジェクトを成功させるために必要な事、今後の日本に必要な事を説かれていました。その中でも私が特に印象に残った名言を書き留めたのですが・・・


・「無知の知を知れ」 失敗した時、無知に初めて気付く。成功経験だけでは教訓は伝わらない。

・「新しい事をするなら自らを規制するな」 規制を一旦はずして考えろ。

・「やれる理由を見つけて挑戦せよ」

・「高い塔を建てなければ新たな水平線は見えてこない」新しい事に果敢に挑戦せよ!



やっぱり新しい事や未知なる事にチャレンジする人達の思いは同じなんだな・・・。あの宇宙戦艦ヤマトの乗組員だって生きて帰れる保証なんて全く無かったのですが、そんな事よりも地球を救うという大きな使命と可能性にかけて地球を旅立った訳ですから、未知なるものを追求するというロマンの根本は同じなんだな・・・って改めて思い知った気がしました。 私も色々な実験を繰り返していますが、思ったような成果って本当に簡単には出ないんですよね。何週間、何ヶ月も取り組んでも何も発表するような成果が生まれない時には、もう諦めるというより「自分はこの世界に向いてないんだ・・・」って挫けそうになります。でもこのような言葉を聞くと勇気が出てきますよね。


私達も微力ながら未知なるものへのチャレンジを続けなきゃ・・・と強い励ましをもらったように思った次第です。常にチャレンジ精神を持って新たな事に取り組んでいる人達が、毎年変わらぬ桜の季節に花見をして心を癒す・・・って、なんだか人間って不思議な生物ですね。


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