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第107回  (2012年02月) 「2012年・預言者現る? 」



こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。毎日凍えるような寒さの中で2012年がスタートしましたね。(・・・って冬なんだから当たり前だけど)皆様はどんな年末年始を過ごされましたか? 私の年末は本当に久しぶりにテレビをつけて紅白歌合戦の後半から見ました。まぁ・・・今年は被災地へのメッセージがテーマだそうで、皆さん被災地へ元気を送るって事で頑張っていらっしゃったのですが、その中でどうしても体育会系男性歌手のNさんだけは「なんだかあまりにもトークがわざとらし過ぎじゃない?」って違和感を感じたのは私だけでしょうか?(もしファンの方がいらっしゃったらごめんなさい。)

それはともかく、元旦にも少しテレビをつけるとオウム真理教信者の平田容疑者が自首して来た・・・ってニュースばっかりで、それにビックリしてしまいました。お正月のニュースって、いつもどこかの正月行事を中継するやら、天皇陛下の一般参賀があったとか平和でほのぼのしたニュースばっかりだったのに、今年はホントにそのニュース一色って感じでしたね。そんな事で仕事を始めようとすると、今度は北朝鮮の指導者の方が亡くなったというニュース。そう言う意味では2012年は覚えやすい年の始まりになったのかもしれません。



新年早々からちょっと縁起の悪い話で恐縮なんですが、皆さんは2012年人類滅亡説って知ってます? 私は恥ずかしながら先日知人にその話をされ、「知らない・・・」って答えると「え?? 本当に知らないの? ノストラダムスの大予言と同じくらい有名な話なのに!!」ってビックリされてしまいました。(ホント?)う~ん。そんな事言われても知らないものは知らないし・・・。試しにGoogleで「2012年 人類滅亡」って検索すると、3,040,000件もヒットしたので「有名な話」って事だけは事実のようです。なんでもマヤ文明において用いられた暦が2012年12月21日までしかない為、その時点で人類は滅亡する事を予言されている・・・って事らしいですが。ただ、この手の話には本当に有象無象の色々な説があるので、興味がある方はGoogleで是非検索してみてください・・・。300万件も情報があるので、全部読む頃にはとっくに2012年12月21日を超えているのは間違いなさそうですが・・・(^^) ま・・・とにかく人間ってのは「予言が大好き」なんですね。歴史を見ると大昔からそうだったみたいで、人間のDNAの一部なのでもうこれはどうしようもない。お正月になると神社に行っておみくじをひいて今年の運勢を占ったり、初夢で一喜一憂したりなんて可愛いもんで、大昔の為政者は「占い」とか「預言者」の言葉で政治をしたり裁判までやってたなんて言われています。



実は私の友人Mの知り合いに「霊感占い師」の人がいます。私もその人は良く知ってるのですが、はっきり言って「え? いつの間に霊感占いなんか始めたん? それ最近違うん?」って感じで、まぁ・・・申し訳ないですが相当いい加減なもんです。(ただし、彼は常人にはない感性を持っている事は認めます。いい意味でも悪い意味でもあんな人は他にはいないでしょう・・・(^^))それでもって、私の友人Mがその霊感占い師の彼に尋ねたそうです。

友人M:「なんで霊感占いとか始めたん?」

占い師:「そりゃ・・・占って当たるから。面白い程当たるよ」

友人M:「当たることもあれば外れる事もあるでしょ?」

占い師:「そんな事ないよ。僕があなたはこんな星の元に生まれてるからこうした方がいいです・・・ってアドバイスすると、大抵の人が言う事聞いて本当にそうしちゃうのよ。んでもって結果として当たる・・・。これが面白い程当たるのよ」

・・・って事らしいです。霊感占い師の皆さんが全員そうだとは言いませんが、随分といい加減な話ですよね。しかもそんな友人Mが昨年驚きの予言を授かったそうです。

占い師の彼から突然電話があり・・・



占い師:「ねぇ。Mさん。最近出張とかの予定ある?」

友人M:「あ・・・ちょうど明日から東京出張だけど・・・」

占い師:「あ・・・それは危ないなぁ・・・。よっぽど気をつけた方がいいねぇ」

友人M:「え? 何? 何があるわけ?」

占い師:「これは結構確かな政府系の研究所とかの人達も把握している情報なんだけどね・・・」

友人M:「だから何よ? 何?」

占い師:「実は明日もしくは明後日に富士山が大噴火するみたいなのよ・・・」

友人M:「はぁぁ・・・? なんじゃそれ?」

占い師:「富士山噴火したら日本経済も大パニックになるからねえ。銀行とかも一時閉鎖になると思うから、今日のうちに現金おろしといた方がいいよ」

友人M:「ふーん。じゃあ、あんたも預金おろしてきたわけ?」

占い師:「そりゃそうよ。銀行のコンピュータシステムとかが麻痺して、全財産が凍結とかされたら困るじゃないですか。こんな時は現金の方が安全ですよ」

友人M:「はぁ・・・。富士山が噴火ねぇ・・・」



こんな予言を授かった友人Mは富士山が噴火する事より、彼の友人でもあり占い師である彼が銀行からおろしたという全財産が7万円ポッキリであった事の方が驚いたそうだが・・・。

友人Mは「阿呆らし・・・」と思っていたものの、彼がわざわざ電話をかけてきて忠告してくれた事については誠意的だったし、本当に知り合いを助けてあげたいという純粋な気持ちだったみたいで、ちょっとは気になったので朝の新幹線で静岡県の富士山麓をを通過する時にTwitterで「富士山 噴火」って検索してみたそうです。そうすると驚いた事に数人の人が「俺、昨日富士山が噴火する夢見ちゃった」とか呟いていたそうな。勿論、日本の気象台に問い合わせてもらっても富士山が昨年噴火したなんて記録はありませんが、日本全国で何人もの人が毎日、どこかで富士山が噴火している夢を見ていて、その中の一部の人はちゃんと「昨日富士山が噴火する夢を見た」とか書き込みを入れているって事なんです。

その話を聞いて「なるほど予言ってのは当たるもんなんだぁ」って思いました。本当にどこかのタイミングで富士山が噴火すれば、必ず前日の夢でそれを見ている人がいる訳だし、「明日噴火すると思うよ」ってな事を人に喋った人がいる訳ですよね。それにTwitterのような記録に残るものに書き込んでおけば、本当に富士山が噴火した暁には翌日から大魔王のような預言者が何人も登場する・・・って事になりそうです。



私は・・・と言うと、科学を信仰する人間なので予言なんて事を信じるタイプじゃないんですが、今年は年始早々、ある預言者が私の前にフラリと現れたんです。

数年来の患者様はご存知だと思いますが、当院では今までにも何度か「痛くない注射」なるものに取り組んでいて、その度に「今回はうまく行くと思う・・・」って事を書きながら、なかなか「これ!」というところに行き着きませんでした。痛くない注射を開発しようとすると、簡単には2つのアプローチがあります。一つは中に入れる薬剤を調整して、薬を注入する時に痛くないようにする事。そしてもう一つは針を刺す事そのものがあまり痛くないようにする事です。中に入れる薬剤の調合は人間の体の酸性度=ペーハー(pH)に近づけるなどして痛みをできる限り抑えるという事は比較的順調にいったのですが、注射針を入れる時の痛みは麻酔以外ではなかなかなくす事はできなかったのです。痛みの感じ方は非常に個人差が大きいので、ある程度細い針を使うと普通の人は大丈夫なんですが、痛がりの人はやっぱり痛い。そこで、持てる情報とコネを駆使して、日本で入手できる一番細い注射針を取り寄せてみました。皆さんが蚊に刺された時に全く痛みを感じないのはあの針の細さにあります。蚊の針には遠く及ばないものの、できる限り針を細くする事で針を刺す時の痛みを少なくしようとするのは当然の試みだと思っていました。ちょっと裏話をしますと、注射針ってどこの病院でも使い捨てでバンバン使うものですから非常に安い消耗品なんですね。だから、一般的に普及しているものを利用すれば使い捨てする事も気にならないような値段なんですが、特殊なものを取り寄せようとすると特殊な用途に限定されるので、極端に値段が高くなります。(一回の使用で捨てる事を「ぐうっ・・・」とためらうくらい高い・・・^^; 私の母親だったら絶対に「モッタイナイ」と言って捨てずにしまっておくでしょうね。)



そんな日本一細くて日本一高い注射針を使えば、さぞ痛くないだろうと期待ワクワクで自分で試したんですが、結果は「いぃ・・・痛い!」。なんでこんなに細い針なのに肌に刺した瞬間はこんなに痛いの? おまけに今までで一番ひどく内出血するし・・・ってもう訳がわかりません。その後も色々な細い針を謳っている海外製品を取り寄せては試してみたんですが、どれもイマイチ。クリニックのスタッフにも協力してもらい、色々打ってみましたが、正直な告白をしてもらうと、痛みに関しては一番安い汎用品の針でブッといヤツが一番マシなんじゃないか・・・って事で意見が一致してしまいました。そんな訳で注射針を工夫して痛みを減らそうという試みは完全に暗礁に乗りあげてしまっていた訳です。



ところが、全く意外なところから解決のヒントを提供してくれる人が現れました。その人は「新年のご挨拶」って事で何のアポイントもなしにフラッと現れた、注射器や針で有名な古くからある総合医療機器メーカーの所長さんでした。前述した通り注射針ってのは大抵の病院の中で使い捨て消耗品って程度の位置付けなんで、新薬の話ならともかく、注射針の事を話題にする医師なんて私の知る限りまずいません。ましてや外科系医師に至っては「注射なんてちょっと痛くて当たり前、メスで切るより全然マシでしょ」という認識があるので、どのメーカーの注射針を採用するかという事は医師ではなく、事務方の人が値段と数量で決めてしまう・・・てのが大半の病院の実情なんです。だから逆にアポイントを取ると医師は会ってくれない為なのか、この所長さんはアポイントなしでふらりと現れました。それが何の偶然かお昼休みだったので、ちょっとした世間話のつもりで、細い注射針を試しているが痛みは全然変わらないし、内出血も酷いように思う・・・って事を話したのです。


・・・その瞬間に彼の表情が「さっ・・・」と変わっていくのがわかりました。世の中に色々なオタク人種がいるようですが、まさに彼は注射針オタクだったのです。(いや・・・注射針オタクの預言者だったのです・・・^^; )ちょっと専門的な話で非常に恐縮なんですが、彼曰く、針の痛さや内出血を左右する要因は下記の通りです。



・ 針の精度・切れ(切れが悪いと痛い:針の研磨が悪くてザラザラだったり、先が傷み易いと切れが悪くなり易い。ザラザラだと血管も損傷し易い。もうこれは職人技というか、そこまで細かい事に拘る人がいるのか・・・というレベルで精度を高めている針は見事な切れ味を持つ。そんな精度の高い針は日本でしかなかなか作れない。)

・ 針先の角度:鋭角の方が痛くないが、鋭角だと先が傷み易いのでバランスが大事(針先を鋭角に、2段階に研磨しているものもあるし、針先を円錐形にして肌を一気に通貫させる事ができるように磨きがかかっているものもある。もうこれは日本の伝統工芸に近いレベルでの拘りを持ったメーカーでないとそのような加工は行えない。)

つまり刀職人が作る刀と同じで、誰がどのような思想で、そしてどのような拘りを持って作られたかで全くできが違うものなんです・・・それくらい針ってのは奥が深いものなんです・・・という彼の熱い、熱い想いが存分に語られたところで、完全に昼休みが終わってしまいました・・・(^^)。お陰でお昼ご飯を食べそびれてしまったんですが、私の中では最近にない爽快感がありました。一方の所長さんも「こんな話を医師の方とできるとは思ってもいませんでした。あ・・・なんか積年の胸のつっかえが取れたようです・・・」と満足気にお帰りになりました。勿論、これから本格的に「痛くない針」を探す旅が始まるのですが、この所長さんが全面的に協力してくださる事になったのは言うまでもありません。今年こそは長年の夢である「痛くない注射」へ本格的に近づけるかもしれません!


さあ・・・2012年ですが、どんな事がある旅になるのでしょうね。

皆様はどんな年になりそうですか?



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