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第106回  (2012年01月) 「今風マラソンの楽しみ方 」



明けましておめでとうございます! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。 旧年中は皆様には大変お世話になり、ありがとうございました。お陰様で新クリニック4回目のお正月を無事迎えることができ、感謝に堪えません。今年もこの感謝の気持ちを忘れず、さらに良い治療を提供できるよう研究に励みますので、どうぞ宜しくお願い致します。

しかし、1年が経つのは本当に早いですねえ。去年は、地震があったり洪水があったり、世界の各地でも色々な自然災害が発生したニュースが記憶に新しく、本当に大変な年でしたよね。 今年こそは平和で穏やかな一年であって欲しいと願います。昨年は当院でも、ある社員が失踪してしまい、大変な状態で一年がスタートしました。もうてんやわんやの状態でしたが、幸いにも大学の後輩たちの応援や残ったスタッフの頑張り、有望な新人の登場でなんとか乗り切る事ができました。しかしほっとしたのか胃炎で3kgも痩せて胃癌かとハラハラしたり、胃炎が治ったと思ったらひどい風邪で声が出なくなったり、健康の大切さも考えさせられた1年でした。



そう言えば健康ブームなのか、最近は走っている人が多くなりましたね。去年の11月には神戸マラソンが開催されましたが、まぁ、あんなにも多くの人が参加するなんて信じられない・・・一体何時からこんなに多くの人がマラソンに興味持つようになったの?ってくらいの大盛況だったようです。11月末にはPRP療法研究会があったのですが、勤務医だった頃に実験に通っていた大阪歯科大学が主催だったので、知り合いの先生に発表を頼まれていました。胃炎のせいもあって準備がバタバタで(まあいつもの事なんですが)、発表当日までスライドと原稿を作っていて寝るのが朝方になったのですが、研究会は午後からだったのでまだ3時間ほど寝られると思って布団にもぐりこんだら、なぜかやたら外がうるさい。よく考えるとその日は神戸マラソンの日だったのです。しまった!と思ったのも後の祭り。なんせ我が家は市役所の目の前、神戸マラソンの出発地点です。朝っぱらから音楽は鳴るわ、なんか整理の放送はうるさいわ・・・結局寝られないまま研究会に出かける事になり、お陰で風邪をひいてしまったという訳です。


しかし長引く不況のせいなのかもしれませんが、「ひたすら走る」というお金のかからないスポーツは全国的にブームになっているようですね。ちょっと前に大阪マラソンもあったようですが、とにかく凄い人数が参加している事だけでもビックリしていたら、なんと本来はその数倍もの応募があって、実際に参加したのはその抽選に通った幸運な人だけだったのだとか・・・。私が学生だった頃の持久走同好会なんて、もう根暗人間の集まり・・・っていう雰囲気だったので、練習は同好会の所属を隠して、夜になって人通りが少なくなってから走っていたという感じだったのに・・・。時代が変われば世の中の評価も変わってしまうもんですね。今は若い人達の間でもマラソンは人気なんだそうで、コンパの席での自己紹介でも堂々と「僕の趣味はマラソンなんで、今度一緒に走ってくれる女性を募集中です!」なんてアピールするんだとか・・・。見栄や体裁に振り回されるのではなく、ひたすらストイックに自分の限界にチャレンジするというコンセプトが今の世の中になって見直されてきたという事なのかもしれませんね。



私もこの年になって、若いスタッフと話をしていると「昔はそんな事考えられなかったのに、今は違うんだなあ・・・」と思ったり、「え! 最近はそんな事が流行っているの? 昔はそんなの見向きもされなかったのに・・・」って思う事が沢山あります。歴史は繰り返すと言われますが、一時的に廃れてしまったものでも時代の変遷と共に見直されて見事に姿を変えて復活してくる事があります。・・・例えば、焼酎。(もっと高尚な話になると思った皆様には失礼しました・・・。やっぱり食べもんとお酒の話になっちゃうんですよね。歴史が変わってもこれだけは変わらない・・・。)私が学生の頃の焼酎と言えば安いお酒の代表で、もうお金がなくてどうしようもないけどとにかく酔っ払いたい人が飲むものでした。しかもまずくてそのままでは飲めないから、サワーとかライムのジュースと混ぜて酎ハイって名前付けてグイグイ一気飲みするもの・・・って思っていました。(私と同世代の皆様は絶対同意してくれますよね・・・(^^))ところが、最近のお酒と言えばすっかりプレミアム焼酎が市民権を得て、おしゃれなバーでも普通に焼酎が置いてあります。しかも、銘柄なんかもこだわりがあって、好きな人に言わせると焼酎の奥深さはウイスキーにも負けないんだとか・・・。う~ん。残念ながら私は焼酎の美味しさが全く分からないので普段飲むことはありませんが、これだけバラエティに富む銘柄の焼酎が料理屋さんのカウンターに主役として並ぶような事は、昔では想像もできませんでした。



そんな訳で焼酎は私には合わないのですが、最近、見直してきたお酒と言えば日本酒なんです。実はちょっとしたマイブームが到来中。これまでは食事の時はシャンパンかワイン一辺倒だったんですが、日本酒の良さを再認識しちゃいました。きっかけは以前勤めていた病院の婦長さんが田舎で農業を始められ、新米をいただいた事です。実はその元婦長さんからは毎年新米をいただいていたのですが、最近はしばらくお米のご飯を食べるという事から遠ざかっていて、もっぱらサラダとワイン、そしてチーズといった洋食に傾倒していました。ところが、今年その婦長さんからこんなお手紙をいただきました。「昨年大きな手術をした事もあり、趣味にしていたお米作りも寄る年波に体が言う事を聞かず、今年を最後に田んぼも近所の人に貸すことになりました。私が手をかけて育てたこれが最後のお米になります。どうかご賞味ください。」お手紙を拝見しながら、元気だった頃の婦長さんの姿が目に浮かびました。4年前に松山で学会があって久しぶりに会った時は私より元気そうだったのに。時間という残酷な魔物が婦長さんから体力を少しずつ奪い取っていったようで、ライフワークだったお米作りまでも奪ってしまったのかと思うと、なんだか悲しくなってしまいます・・・。ただ、それがきっかけで久しぶりに炊飯器を出してきて、その婦長さんの最後のお米を炊くことにしました。




炊き上がったツヤツヤのお米を一口頬張ると「な・・・なぬ!? 美味しい!」(最近はスタッフS君の口癖がうつってしまったようだ。)え?・・・新米ってこんなに美味しかった? そうだ、これがお米なんだ!・・・ってもう日本人のDNAに刻まれた眠れる獅子が突如として目を覚まします。それからは「やっぱご飯よね!」って事で、いきなり和食ブームの到来です。(婦長さん! ありがとう!) とにかくご飯が美味しいもんだから、逆にご飯を美味しくいただけるおかずを探すことに。そうなるとお刺身とかお魚の味噌漬けとか漬物とか・・・もうこれはいけません。今まで気付かなかったんですが、デパ地下に一歩足を踏み入れると、そこはもうご飯のおかずのワンダーランドじゃないですかぁ! 今まではワインをメインにしていたため洋食が中心だったのですが、美味しい洋食のお惣菜ってなかなかないんですよね。デパ地下でも見た目はすっごく美味しそうなんだけどお家で実際に食べてみるとがっかり・・・って事が何度もあったので、最近はお惣菜コーナーには近寄らず、もっぱら自宅近くの小さなビストロでサラダとかキッシュを持ち帰りするという事が続いていました。ところが・・・やっぱり和食となると違うんですね。洋食とはレベルが違います。お刺身なんか結構いけるし、最初は切り身のものを買っていたんですが、塊のまま買って食べる直前に切るとさらに美味しい。デパ地下の鮮魚コーナーも捨てたもんじゃなくて、下手なお寿司屋さんに行くより、炊きたてのご飯とお刺身の方がずっと美味しい事があるんですね。もう最近はお刺身をスパッと切れるように包丁研ぐ事にまで拘っています・・・(^^)・・・(これって手術用のメスの方が切れ味良くて美味しいんじゃないかな・・・なんて考えが一瞬頭をよぎったりもしながら。)



・・・そうなると、もうその先の展開は見えています。やっぱり和食にワインって訳にはいかないんですよ。そこでこの前日本酒を探していたら、「そごう」で日本酒の試飲販売をしていました。ちょうどその季節しか飲めない「ひやおろし」というお酒を勧められ、試飲してみるとこれがめちゃ美味しい! すっかりひやおろしにはまってしまい、得意のインターネット通販でいっぱい取り寄せてしまいました。(こんな事になると何よりも素早く手配できるのが不思議です。)

ひやおろしというのは、日本酒での製造過程で通常2回行われる「火入れ」という低温加熱殺菌のうち、2度目の「火入れ」をせずに出荷されるお酒の事です。調べてみると、その昔、冬にしぼられた新酒は劣化しないよう春先に火入れした上で大桶に貯蔵し、ひと夏を越して外気と貯蔵庫の中の温度が同じ位になった頃、2度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま、大桶から樽に「卸(おろ)して」出荷したことから、このお酒は「冷卸(ひやおろし)」と呼ばれ、秋の酒として珍重されたそうです。暑い夏の間をひんやりとした蔵で眠って熟成を深め、秋の到来と共に目覚める「ひやおろし」。豊穣の秋にふさわしい、穏やかで落ち着いた香り、滑らかな口あたり、濃密なとろみが魅力のお酒だそうな。毎年秋にしか飲めないそうで、季節限定ものに弱い私としては、これから毎年取り寄せる事になりそうです。そしていろいろ取り寄せてみると、同じ「ひやおろし」でも少しずつ味わいが違い、面白いものです。(この前パーティーに来たS君が日本酒が好きなので「味見する?」と少し出したら、「居酒屋よりたくさん日本酒がある!」と驚いていました・・・。)



そういう訳で日本酒がすっかりマイブームになってしまったのですが、嬉しいのは日本酒は安いのと、ワインほどはずれがないこと。ちょっと辛すぎるとか甘すぎるとかはあるけど、ワインほど飲めないものはないですよね。最近は少なくなってきましたが、一昔前までは日本で手に入るワインには飲めないほどまずいものもありましたよねえ。やはりここは日本なんで、西海岸で飲むカリフォルニアワインやイタリアで飲むイタリアワインのように、安くてもはずれがないのは日本酒なんですね。そう言えば昔パリに行った時、お惣菜やさんにフランス料理のパテやゼリー寄せなど日本では高級フレンチでしか食べられないものがずらりと並び、シャブリのハーフボトルが300円で売られていたのでびっくりした事があります。まあフランスなんで当たり前の事なんですが・・・。やっぱり地元ではご当地のものを食べたり飲んだりするのがリーズナブルで美味しいという事でしょうか。パリのお惣菜やさんのパテが日本のデパ地下のお刺身といったところなんですね、きっと。



そんなこんなで、婦長さん作の最後の新米とデパ地下で買ったお刺身と漬物で美味しくご飯をいただき、「ひやおろし」をチビチビ舐めながら、今までの人生を改めて振り返ってみたりするような事が何日かありました。(ちょっと最近は体調を崩したりしたせいか、少しセンチメンタルな気分になっちゃったのかもしれません・・・。)自分の人生をマラソンに例えると「もうとっくに折り返し地点は過ぎたはずなんだけど、いつまでこの集団についていけるんだろうか?」・・・とか「マラソン選手って、ゴールのテープを切った時でも、喜びよりも苦痛で顔を歪めて倒れこんでしまう人も多いけど、自分の人生のゴールもあんな感じなのかなぁ?」とか・・・。

でもそこでふと気付いたんです。「ああ・・・自分の思ってるマラソンって、競技マラソンしか頭にないんだ・・・」って。小さい頃からマラソンというのはテレビの中で選手達が一生懸命走ってて、沿道には皆が応援に駆けつけて、選手達は皆の期待を一身に背負ってスタートしたんだけど、一人脱落、二人脱落して、最後にはほんの一握りの選手だけがなんとか先頭集団にしがみついて、最後のゴールではデットヒートで精根尽き果てる・・・ってドラマしか知らなかったから、マラソンってそういうもんなんだと思い込んでいたような気がするんです。でも今回の神戸マラソンの事を考えると、殆どの人は勝負なんてしている訳じゃないんですよね。タイムなんて自分が納得すればいいだけだし、気持よくみんなで走ろうよ・・・ってコンセプトの元に集まってきた、純粋に走ることを楽しむ為のイベントなんですね。改めて「そういうマラソンの楽しみ方があるんだな・・・」って気付かされました。



「そっか・・・。別に競争で勝つために走らなくてもいいんだ・・・」って思うと、なんだかとっても気持ちが楽になってきました。楽しみ方は人それぞれ。時間の使い方も人それぞれ。2時間で走ってタイムを競う人もいれば、8時間かけてゆっくりと走って沿道の風景を楽しむ人がいてもいいし、そもそも走る事より大会後の飲み会を楽しみにしている人だって沢山いたはずだし、アニメキャラクターの着ぐるみを着て完走した人もいたみたいだし。人それぞれ、自分の楽しみ方でマラソンを楽しむ・・・そんなイベントなんでしょうね。だからこんなにも多くの人が参加してブームになってきたのでしょう。人生もよくマラソンに例えられるけど、そんな気持ちでそれぞれが自分のペースで楽しめばいいんだろうな・・・って思いました。できれば私は笑顔でゴールのテープを切れるようにしたいし。ゴールの後は完走した人達で集まって美味しい日本酒で一杯・・・ってのもいいかもね。それぞれの人がそれぞれの走り方でレースを振り返って思い出を語り合えば、宴会も朝まで続きそうです・・・(^^)。

まだゴールまで少し遠いけれど、宴会の話に事欠かないように、この一年も一生懸命生きていきたいと思います。今年も何卒よろしくお願い致します。


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