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第105回  (2011年12月) 「生きるエネルギー」



こんにちは。 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。あっという間に今年も終わりに近づいてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 11月は暖かい日が続きましたねえ。その後急に寒くなってきたようですが、このままいきなり冬に突入なんでしょうか? 最近は本当に季節の感覚が麻痺してきた気がしますが、やっぱり世界的な異常気象のせいなのか・・・。季節感というのが昔の経験では分からないようになってきたと思うのは私だけでしょうか?


季節の変わり目のせいなのかどうかは分からないのですが、今月はちょっと体調を崩してしまいました。今までも食いしん坊の割に(食いしん坊が過ぎて?)時々胃の調子が悪くなってたんですが、その合間を縫って良くなる度に学会での飲み会や友人との飲み会をしていたのが祟ったのか、先日急に胃のあたりが酷く痛くなって背中まで痛くなってしまいました。いわゆる「背部への放散痛」ってやつで、内科の教科書的には膵炎の疑いです。薬を飲んでもおさまらないし、間歇的な痛みがだんだん強くなる。これはやばいかも?と思って後輩のいる大学病院の消化器内科を救急受診してしまいました。


結局血液検査では膵炎の疑いは晴れ、痛みは数時間で治まったのですが、その後胃の調子がおもわしくなく、食欲が全くなくなってしまったのです。食いしん坊のこの私が何が食べたいとも思わないし、お腹も全然すかない上に、食べようとしてもあまり食べられない。その前から最近少し体重が減って来たなと思っていたのですが、どんどん減って3kgくらい減ってしまいました。こうなると胃癌かも・・・と心配になって来て、心配するとよけい胃には悪いようで全然症状が回復しません。一向に良くならないのでついに胃カメラを飲むことになりました。カメラを飲んだ途端にスキルス(悪性度の最も高い胃癌)が広がっていたらどうしよう・・・とハラハラでしたが、肉眼的には悪性所見はなく、生検の結果も1週間後に出て良性でした。ほっとした途端に胃の調子はましになって来ました。やっぱり「病は気から」ですね。


しかしこの騒ぎで、スタッフや大学の後輩たち、友人との飲み会などをキャンセルしたのでみんなすごく心配してくれて、人の温かさに触れる事ができました。でも2-3週間でそんなに飲み会をキャンセルしなくてはいけないという事は、やはり飲みすぎだったんでしょうね。いつまでも若くはないので、好きなワインもちょっと控えようと思いました。



もう一つこの胃癌騒ぎで良かった事は、旧知を深める事ができた事です。胃カメラは下手な医者がするとめちゃ苦しいと聞いていたので、上手いと定評のある消化器内科の同級生にしてもらいました。彼女は私が神戸に来る前に5年間勤めた病院に勤務していて、久しぶりにその大阪の病院に行ったので、懐かしい当時の仕事仲間と10年ぶりに会う事ができたのです。整形外科の先輩や後輩医師、他の科の先生達、手首の軟骨のMRIを撮る研究を一緒にしていたレントゲンの技師さんや、当時の病棟の婦長さんなど懐かしい面々に会えて、しばし病気の事は忘れて話に花が咲きました。驚いたのは、当時よく一緒に遊んでいた新人の看護婦(今は看護師って言うんですねえ)2人が、揃って婦長ならぬ師長になっていた事。月日が経つのって本当に早いですねー。


そしてちょっと嬉しかったのが、皆が「えーっ、柴田先生?? 誰か分かれへんかったー!! 若なったんちゃうー??」と驚いてくれた事。10年前はどれだけ老けててん、って事ですが。今の仕事に転向して良かった、とつくづく思いました。だって私は10年前より若返ったと驚かれたのに、皆は10年分老けていて、「今度シワ取りに行くわー!!」って大騒ぎだったんですから。やっぱりアンチエイジングって早めにするのと放っておくのでは全然違うんだなあって改めて思いました。


ところで一定の年齢を過ぎると、話題の多くが自分の健康の事になる・・・って本当ですねぇ。最近は同窓会に行っても医者の同級生を見つけると「実は最近、血圧が高いんだよね」とか「腰の痛みがもう数年続いている」とかボヤかれるのはまだしも、「自分のコレステロール値はこんなに高い」という奴の話を聞いて「いやいや・・・そんなの全然マシだよ。俺なんか○○なんだからね」とコレステロール値や血圧の異常値自慢が始まる始末です。若かりし頃は友達が集まると「今度どこのスキー場に行こう!」とか「やっぱりダイビングの方が感動的だな」なんて話をしていたのが嘘のようです。まさかそれがコレステロール値の自慢に変わるとは・・・(^^;)。

同じく自分の趣味趣向も年と共に変わってしまうようでして、昔は女友達が集まればよく温泉旅行の話が出てたのですが、それも最近は時間とお金がかかる割には温泉宿の料理がイマイチ・・・と思ってしまい、足が遠のいていました。それでも個室露天風呂付宿だけは捨てがたいと思っていたのも、以前のクリニック通信で紹介したベランダ設置の自分専用露天風呂でなくなってしまいました。




ただ、人間贅沢になるとまたその上を目指してしまうようで、今度は「なんかお湯張るのが面倒くさい・・・温泉宿だったら24時間いつでもお風呂入れるのに・・・」なんて思ってしまいます。(まぁ・・・トンデモなく堕落した奴だ・・・と自分でも思うのですが。)しかし、必要は発明の母。パーソナル露天風呂の時と同じく24時間いつでもお風呂に入りたいというニーズは昔から「24時間風呂」という形で商品化されていますよね。「そうだ!この24時間風呂装置をマイ露天風呂につければ完璧だ!!」そう思い立ったら居ても立ってもいられず、ネットで24時間風呂を探してみると、意外にも最近は安くなっていて10万円台で多数販売されていました。そんな訳で我が家のマイ露天風呂に24時間風呂装置がついてしまい、「本当にいつでも入れる露天風呂」にグレードアップしたのです・・・。こりゃもう、すばらしい・・・ホント病みつきです。朝晩自宅の露天風呂に入れるなんて、朝風呂好きで身上潰した小原庄助さんですら羨ましいと思う事でしょうね。2011年のマイブームアワード大賞間違いなし・・・です。(これが朝酒に繋がらないように自分を律しないといけないなぁ。) この24時間露天風呂のせいで今まで夜しか入れなかったのが朝に入れるようになると、ベランダから見える風景が夜と朝ではこんなに違うものか・・・と感心してしまいます。今までは夜しか入らなかったので真っ暗な状態が基本で、電気のついたビルと月の光を楽しむ・・・って感じだったのですが、こうして朝風呂に浸かって外を眺めてみると、林立するビルや道路を行き交う人や車の騒音が、何とも形容しがたい躍動感を与えてくれるのです。


そしてふと見上げると、そこに「空」があるのです。秋の空に白い雲が流れています。そんなの当たり前じゃない・・・って事ですが、こんな風景を眺めるのは何十年ぶりでしょう。ここ何十年も慌ただしい日々を過ごして来て、ゆっくり空を眺めるなんて事はなかったように思います。思い出せば小学生の頃はよく空を眺めていたなあ。昼間は流れる雲、夜はきらめく星を見るのが好きでした。そう言えば小学校の時は時計台の屋上を秘密基地みたいにして、仲のいい友達とこっそり登って遊んだものです。こうやって青空に流れる雲を見ていると、時計台の屋上に寝転んで流れる雲を眺めていた幼い頃を思い出してしまいます。何十年も経って世の中が変わっても、自然の空と流れる雲は変わりませんね・・・。自然は年を取らないのに、人間だけが年を取って変わって行くのかぁ・・・。


そんな変わらない自然を眺めていると、必死に老化・・・(この言葉は嫌いなのでエイジングと呼ばせてもらいます)エイジングに対して抵抗している自分が滑稽に思える反面、視点を空から再び地面に向けると人間が作った巨大なコンクリートのビルが林立し、その間を人や車が休むことなく移動しているんですね。このエネルギーがやっぱり「生きている」って事なんだし、何かをしたいとか何かを変えたいという欲望があるのが人間であって、その思いを持ち続ける事の方が人間の自然な生き方なんだ・・・とも思えるのです。人の生き方は人それぞれなんで、こうしなきゃいけないという事はないのですが、私はやっぱり「何かをやりたい」というエネルギーを持った人に惹かれてしまいます。


そんな訳もあって、最近お会いしたエネルギッシュな方をちょっと紹介させていただきます。少し前から勉強のために美容関係のお店をいろいろと訪れていますが、居留地にある有名な美容室でオーナーのYさんにカラーをお願いしました。Yさんは有名店のオーナーとは思えないくらい気さくな方で、ジーンズにはさみをいっぱい入れた仕事着が似合う、こだわりの職人さん・・・という感じの方です。いろいろな事を知っていてすごく熱心に説明してくれるし、カラーだけに行ったのに若々しく見えるヘアスタイルの提案もしてくれ、私がカラー剤にアレルギーがあると言うとパッチテストまでしてくれました。「話が長くなってごめんなさいね。でも納得してから受けていただきたいので・・・」と、こっちが聞いていない事まで説明してくれるんです。神戸でも人気の美容室と聞いていたし、何店舗も展開している大きな美容室だったので、カラーをしてもらいながら「このお店をここまで大きくできた秘訣って何ですか? 常に心がけておられる事とかあります?」と聞くと、「何でしょうねえ・・・。今どうしたらいいかって事をその時々に一生懸命考えてやってきただけなんで・・・」という控えめな返事。


でも、帰りにもらった会社のパンフレットを見て解った気がしました。「人生のエンジンに、火を入れた日」と題した彼の自伝。「震災の日。僕は美容師を辞めようと思いました。」という一文から始まっています。彼はスタイリストデビューの直前に震災に遭い、家も職場もなくなってしまったそうです。「希望も展望もない避難所生活。やがて仮設住宅に移り住みました。・・・これからいったいどうなるのか。・・・空気は重く、沈んでいました。僕も、沈んでいました。」彼はスタイリストになる前で、美容室に就職できてもすぐに稼ぐ事はできないので、家族のために美容師には戻れないと思っていたそうです。しかし仮設住宅での生活が長引く中、ある日お母さんの髪が伸びていたのを見て切ってあげると・・・「異変が起きたのはその翌日の事です。私の家族の仮設住宅に、人が訪ねて来たのです。あのー、私の髪も切ってもらえへん?・・・何人も、何人も訪ねて来るのです。母のヘアスタイルが変わった事に、周囲の人たちが気付いたのです。・・・それからは大忙しです。僕はたくさんのお客様に囲まれる事になりました。まだデビュー前なのに。僕は一生懸命に切りました。・・・すると不思議な事が起こります。仮設住宅に暮らす人たちの表情が変わっていくのです。それが街全体の雰囲気さえも変えていく。明るく変えていく。すごいな。素直にそう思いました。美容師って、すごい。美容師、やるしかない。僕の人生のエンジンに、火が入ったのでした。」・・・これを読んで、彼のエネルギーをすごく感じました。それから彼は、風が流れるお洒落な神戸の街に合うヘアスタイルで、神戸の女性をもっと綺麗にして、そのかわいい女性を街にたくさん送り出す事で、神戸の街をもっと素敵にしたいと思って美容室を開いたそうです。彼の情熱がこのお店をここまで大きくしたんだなと思いました。彼のアシスタントに「Yさんってどんな人?」と聞くと、「周りを巻き込むパワーのある人ですね」と言ってました。


やっぱり幾つになってもエネルギッシュな状態でいるって事は必要だと思います。当院でも、治療をして綺麗になった患者様はとても明るくなられます。神戸の女性を綺麗にする事で、街の雰囲気まで明るくできたらいいな・・・。私もそう思いました。(当院に来られる患者様は神戸の方ばかりではないですけれど。)そして、お肌を綺麗にするだけではなくて、ヘアスタイルやメイクでもその方の良さを引き出し、女性をトータルに綺麗にするというコラボレーションを彼と組む事にしました!


先日コラボの打ち合わせを兼ねて、Yさんにセットとメイクをしてもらったのですが、あまりの変身ぶりに我ながらびっくり!(その違いは今月号のお知らせでご覧ください。うむ・・・治療・ヘアメイク前の写真が指名手配のようではあるが・・・。)

その日は何も予定を入れてなかったのですが、あまりのウキウキ気分に友人を呼び出して無理やり出かけてしまいました。やっぱりお肌を綺麗にしたら、ヘアスタイルとメイクも綺麗にしないともったいないですよね。皆様にもぜひこの感動を味わっていただきたいと思います。こうご期待!

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