第188回「次はイスタンブールカクテル?」

  

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今年は本当に台風が多いですねぇ。こんなに台風で休診が多かった年は開業以来初めてです。皆様は大丈夫でしたか? 台風の日はどこへも行けないし、ネット検索やメールなどで過ごす事が多いのですが、そんな台風のある日、ネット検索をしていると「チベット体操」という文字が目に入りました。「白髪がなくなる!1日10分で15歳若返るチベット体操が凄すぎる!!」という見出し。「ほんとかなぁ?」そんな事があるはずがないと思いつつも、最近問題続きで白髪も気になってきたので(問題は常にあるので単なる老化かもしれませんが)つい読んでしまいます。続きには「すごく若返って久しぶりに会った友人に自分だと気づいてもらえなかった、脂肪と贅肉が取れた、白髪がなくなった、視力が回復して眼鏡がいらなくなったなど信じられないような出来事が続出!」とあります。本当か?? 調べてみると、チベット体操は古来チベットの僧侶が瞑想に入る準備体操として行っていた修行法を一般人が実践しやすいように変え、現代の健康・美容法としてのチベット体操という形になったそうです。またチベット体操はヒトの活力のツボであるチャクラを活性化し、内分泌の機能を高めて若さを維持するという理屈らしい。「若返りだけがチベット体操の効果じゃない。幸福感に溢れ、しかも急な出会いがあるとか」「チベット体操をやっていて、よく聞くのは”白髪が減りました”と。東洋医学では腎臓と肺を強化すると栄養が行き届いた肌と髪を作ると言われているが、チベット体操は腎臓と肺を強化するためと思われる」「腎臓の機能が低下すると、カルシウムの吸収率が悪くなり、髪の色素を作るメラニンの働きまで低下するので、髪の毛が細かったり白髪だったりするのは、腎が弱く精が失われているからである」などと述べているサイトもありました。

 

 

実はこのチベット体操は結構ブームらしく、長谷川博己や研ナオコ、美輪明宏もチベット体操をしているんだとか。しばらくすると体の毒素が排出されて眩暈や体のだるさ・異常な眠気などの症状が現れる「好転反応」が出る事もあるが、それが治まると調子が良くなるそうです。しかし体操で白髪が減るってほんとかなぁ?? 実は白髪の研究って、ハゲの研究よりずっと遅れてるんですよね。ハゲは目立つけど白髪は染めれば目立たないので、薄毛治療の方が需要が多いから進んだのだと言われています。ここ10年くらいでやっと白髪の原因が解明されたところで、黒髪のもとになる色素幹細胞がゲノム損傷ストレスにより分化成熟してしまい、自己複製しないため幹細胞が枯渇して白髪になる事は明らかになりましたが、まだ具体的な治療法などは開発されていないんですよね。薄毛の治療薬で若干白髪が減ったという人はいるようですが…。そこで、チベット体操のサイトにある「腎臓の機能が低下すると、カルシウムの吸収率が悪くなり、髪の色素を作るメラニンの働きまで低下する」というのは本当かどうか調べてみました。体の中に必要なカルシウムは腸管から吸収されますが、その時肝臓と腎臓で活性化されたビタミンDの力が必要です。しかし腎臓の機能が低下するとビタミンDの活性化ができなくなり、カルシウムの吸収が不足して血液中のカルシウム濃度が低下するので、「腎臓の機能が低下すると、カルシウムの吸収率が悪くなる」というところまでは本当ですね。

 

 

ではカルシウムが不足するとメラニンの働きが低下するのか?「カルシウムは、メラニンを生成するメラノサイトを活性化させてくれる栄養素で、牛乳や乳製品、海藻類、特にひじきはカルシウムが豊富です」などと書いてあるサイトは多いのですが、学術的な論文になるとそこまで書いてあるものは検索しきれませんでした。ただ、細胞とカルシウムの関係について詳しく述べた論文では「細胞内のカルシウムイオンはさまざまな生命現象のメッセンジャーとして機能する最も重要な物質の1つで、細胞外からの刺激によって生じる細胞内のカルシウムイオン濃度の変動は、細胞増殖や細胞死、筋肉の収縮、免疫応答などさまざまな生命現象に重要な役割を果たす。細胞内でのカルシウムイオンの役割は多岐に渡り、カルシウム恒常性が破綻すると細胞機能の低下や細胞死に繋がり、多くの重篤な病気の原因となり得る」という内容のものは検索でき、カルシウムが細胞活性に大きな役割を果たしているという事は確かなようで、カルシウムが不足すると髪にも(髪だけではないと思いますが)悪影響を与える事は考えられるので、まんざら嘘でもなさそうです。昔からわかめやひじきなどの海藻は髪に良いと言われていたのは先人の知恵かもしれませんね。

 

 

まぁ私も普段から運動不足で歩くのはほとんどが自宅とクリニックの往復だし、あまりにも体力の衰えを感じた3年ほど前から腹筋や背筋・腕立て伏せも5回から10回ずつくらいはしてはいますが3日に1回くらいだし、試しにやってみるか、とこのチベット体操を始めてみました。チベット体操は「5つの儀式」と名付けられた5種類の体操を深い呼吸と共にするもので、各儀式を最初の1週間は3回ずつ行い、1週毎に2回ずつ増やして21回まで増やしていくそうです。実際にやってみるとブリッジに似た体操もあり、普段しない運動なので結構きつい。瞬く間に筋肉痛が…。私が最初に見たサイトでは「朝食前にする」とあったので朝していたんですが、朝はバタバタするので3日に1~2回しかできませんでした。でも2週目から5回にしないといけないのかなと思って5回にし、少し慣れてきたのでいつもの筋トレも5回だけ追加してみたら、めちゃしんどくなってしまいました。最初しんどくなったのは台風の日だったので低気圧のせいかな?と思ったんですが、風邪でもなさそうなのに「なんでこんなにしんどいのかな?」と思うくらい体がだるい。2日目にふと「もしかしてこれが好転反応??」と思いつきました。プラセンタ点滴をしたら急に元気になったんですが、好転反応だったのか、毎日してないのに回数を増やしたり筋トレを加えたりして無理し過ぎたのかは分かりません。でもこの好転反応って、それだと思って放置してたら実は重病だったという人もいるようなので、気を付けた方がいいですね。

 

 

ただ、ここまで書いてお気づきの方も多いと思いますが、「それってヨガでもいいんじゃないの?」とか「最近密かに見直されているラジオ体操でもいいんじゃないの?」とか…「そう言えば最近は全く見なくなったけど、デューク更家のウオーキングじゃだめなの??」とかとか。はい。お答えしましょう…恐らくどれでも真面目にやれば同じような効果はあると思います!! 健康増進において一定のスローな運動を続ける事を否定する人は恐らく世界中のどの専門家でもいないと思いますね。まぁ結局のところ、ちゃんとやれば何でもいいんだと思います。ただ、今回なぜわざわざ「チベット体操」を取り上げたかというと、それは「チベット」ですよ「チベット」…。みなさんはチベットって言うと何を思い浮かべますか? 山奥に佇むチベット密教のお寺とかノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世であったり…ですかね。一言で言うとほとんどの日本人にとって「良く分からないけどなんか神秘的な秘境」ってイメージがあるのではないでしょうか? これって昭和世代の人達にとって「飛んでイスタンブール」を聞いた時に持った「イスタンブール」に通じるものがあるんですよね。今もってなんで「飛んでイスタンブール」というタイトルになったのかは知りませんが、当時の日本人にとってイスタンブールとは未知の都市で何か神秘的なベールに包まれた、東洋と西洋の文化が融合するエキゾチックな街で、そこに行けば自分の人生が変わるんじゃないかと思わせる不思議な響きだったと思います。何か知らないその不思議なイメージが物悲しいメロディーと混ざり合い、昭和の大ヒットソング「飛んでイスタンブール」を生んだと言ったら言い過ぎでしょうか? これがもし、誰でも知ってる熱海温泉とかだったら「飛んで熱海温泉」というズッコケそうなまるでイケてない歌になってたでしょうね。

 

 

まぁそれはともかく「チベット」にも同じような神秘的なイメージがあり、これが体操と結びついているのがいいんですよね。かくいう私もチベットについては残念ながら全くと言っていいほど知識がありません。人を遠ざけるように存在している山間に紅色の建物が立ち並ぶチベット仏教のお寺に、これまた紅色と黄色の衣装を着たお坊さんが行き来している…ってイメージするくらいです。そこでこれはせっかくの機会なので、少しチベットがどんなところなのかを調べてみました。まずは、一番有名な人であるダライ・ラマ14世をWikipediaで調べるとこんな記事が…(かなり長いのですが、著作権があるので改変せずそのまま引用しますね)。「3歳になるかならないかという頃、ダライ・ラマの化身を見つけるためにチベットの政府が派遣した捜索隊が、さまざまなお告げに導かれてクムブム僧院にやってきた。お告げのひとつは、1933年に死去したダライ・ラマ13世の遺体が埋葬前の安置期間中に頭の向きを北東に変えたこと。他には、高僧が聖なる湖で湖面にAh、Ka、Maのチベット文字が浮かび上がるのを「視た」、続いて、青色と金色の屋根の3階建ての僧院とそこから一本の道が丘につづいている映像を「視た」、そして最後に変な形をした「樋」のある小さな家を「視た」ことだ、という。

 

 

僧は“Ah”は地名アムドのアだと確信して捜索隊をそこへ派遣したという。“Ka”の文字はクムブムのKに違いないと思ってクムブムにやってきた捜索隊は、クムブムの僧院が青くて3階建てであることを発見しその読みが正しかったと確信したという。捜索隊は付近の村を探し回り、やがて屋根にこぶだらけの杜松が走っている民家を見つけた。捜索隊は身分を隠していたのにそこに含まれていたセラ僧院の僧を「セラ・ラマ」と呼んだという。また、ダライ・ラマ13世の遺品とそれそっくりの偽物をいくつかその子供に見せたところ、いずれも正しい遺品のほうを選び「それ、ボクのだ」と言ったという。上にあげたようないくつかの確認の手続を経てさらに他の捜索結果も含めて政府が厳密に審査した結果、この子は3歳の時に真正ダライ・ラマの化身第13世ダライ・ラマトゥプテン・ギャツォの転生と認定され、ジェツン・ジャンペル・ガワン・ロサン・イシ・テンジン・ギャツォ(聖主、穏やかな栄光、憐れみ深い、信仰の護持者、智慧の大海)と名付けられた。」う…ん。駄目だ。この時点でギブアップ…。とても身近な存在に感じることができないのは私だけ? やっぱりチベットは不思議な魅力を隠した未知の国…って事にしておきましょう。

 

 

ただ、人間が「未知のもの」に憧れたり「不思議なパワー」とか「科学を超越した現象」に憧れるというのは歴史が始まってからずっと続いている事だし、その時代その時代に「奇跡」を目撃したという人は絶えません。その多くは当時の科学では証明できなかった不思議な現象だが、科学が進むにつれて科学的な証明ができるようになった事も多く含まれています。特に人間の心と体の関係はまだまだ科学的に証明できていない事が多く残っていて「不思議としか言いようのない現象」という事が今でもあります。例えば有名なところでは「心に大きなストレスを抱えると一夜にして黒髪が白髪になってしまう…」という伝説。これは「マリーアントワネットが死刑宣告を受けた時に心労がたたり一夜にして白髪になってしまった」という逸話も残っている事から、多くの人がご存知の都市伝説です。世界中の科学者がそのメカニズムを解き明かそうとしましたが、現在の結論としては「そのような事は絶対に起きない。都市伝説に過ぎない」という事になっています。私も科学の信仰者なので「そのような事は起きない」という説の支持者ではありますが、私の周りの人にも実際にストレスで白髪になって、ストレスがなくなったら白髪もなくなったという人もいますし、完全否定すると言うよりは「もしかしたら現代の科学では証明できないが、後世の科学ではその現象を証明する事ができる日が来るかもしれない」というように考えています。いずれにせよ、心の問題が体に与える影響は科学者が証明できる以上に大きなものであって、心の問題を切り離して体の健康だけを考えるのは不可能であるという事だけは間違いないでしょうね。「信じるものは救われる」という言葉がありますが、まさに「こうする事で体がみるみる変わって良い結果が出る」と強く信じて行う治療(それが単なる体操であってもかまいません)とそうでない人との間では結果が大きく違うという事は認めざるを得ないと思います。その意味では「この治療や施術をする事で必ず良い結果が出る」と信じてもらうというのも医者が行う治療の一環として大切な要素であると言ってもいいと思います。

 

 

そうなんです…ようやく結論に来たのですが…(皆さん長すぎて飽きてませんか??)

「チベット体操」って本当に良いネーミングだなぁと思うんです。だってこの体操嫌いな私でも「よし! いっちょやってみるか!」って思ったくらいなんですから…(^_^)。これから当院で開発する新治療も「イスタンブール・カクテル」とか「アトランティス・クリーム」とかにしてみようかな…(^_^;)。まぁこれは冗談ですが、私も長年美容治療をやってきて、非常に外科的に思える美容の世界に於いても、良い結果を出すには外面的な施術以外に内科的な治療、東洋医学における経絡やツボを使った施術、医食同源に見られる食事の問題、そして心の問題のケアなどを総合的に行わねば満足のいく結果に繋がらないという事を最近考えるようになってきました。恐らく、これらの問題を総合的にとらえてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)をいかに上げていくかという事がアンチエイジングの基本になるのですが、美容とはすなわちアンチエイジングであると言ってもいいのではないでしょうか。非常に若い方の美容外科手術はこの範囲ではありませんが、一定以上の年齢を迎えた方の美容とはアンチエイジングという観点から見直さねばならないと思う今日この頃です。このアイデアについては具体的に治療方法を変えていこうと思っているところですので、また構想がまとまれば皆様にもお知らせしたいと思います。ご期待くださいませ。