第187回「センスはどこから来るのか?」

  

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。台風や大雨・地震と、このところ災害続きですね。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。台風は今年は2回も直撃! 友人の自宅や職場も停電し、かなり大変だったようです。その直後に北海道の地震が起きて驚きましたよね。札幌に住む知り合いの整形外科の先生にはラインで連絡が取れ、無事が確認できたのですが、いつも生ハムメロンを取り寄せている札幌のK屋の親父はアナログでSNSなんかしないので、電話が全然繋がらず焦りました。少し前にK屋がいつも生ハムを取り寄せてくれる肉屋の主人が亡くなり、生ハムが手に入らなくなってK屋が取り寄せた残りの2つで最後…という時だったので、K屋と生ハムの安否を心配していたのですが(生ハムの安否と一緒にするとK屋の親父に怒られそうですが…)、翌日やっと連絡がつき、K屋も生ハムも無事だったと聞いて一安心。札幌でも丸1日停電が続いたそうで、冷蔵庫にドライアイスを40㎏投入して、なんとか商品の無事を確保したそうです。大変だったんですね。皆様は大丈夫でしたか?

 

 

私はと言えば…台風や地震が落ち着いた頃に、東京へ潜入調査に行ってきました。今まで当院は「切らない美容」をコンセプトに、基本的に注射による施術を中心に美容治療を行ってきました。勿論この基本コンセプトを変更するつもりはないのですが、注射だけでは「たるみ」に対して大きな効果を出しにくいのも事実です。比較的若くて回復力のある方は注射によって綺麗にする事ができるのですが、年齢と共にたるみが酷くなるとかなり難しいので、たるみ治療については注射以外の方法も取り入れないといけないかな…と思ってきました。そんな訳で、今までスレッドリフト(糸を皮下に挿入して皮膚を引っ張ってリフトアップする治療)は感染のリスクが高かったり糸が出てくる・ひきつるなどトラブルの話を聞く事が多かったので避けて通ってきましたが、最近は糸も進化して良くなってきたので、本格的に研究を始めようと思っています。そうなるとやっぱり糸の挿入が上手いと定評のある先生のクリニックに行って話を聞かなければ…と思い、3年ぶりに代官山のDクリニックへ。DクリニックのS先生と言えば、フェイスリフトの手術やスレッドリフトが上手いと学会でも評判の先生です。有名なのに奢ることなくとても親切で、私の潜入調査の中では一番親身になってくれたいい先生。その後学会ですれ違った時に「ん? どこかで見たような…」という顔を何回もされたので、私が医師で潜入調査に行った事はばれたんじゃないかと思い、もしばれてたら「すいませんでした!」と謝ろうと思ってました。Dクリニックに行く前にスレッドリフトの糸の輸入業者に会って話を聞き、S先生のスレッドリフトのセミナーも今度あると聞いたので、今まではS先生のセミナーがあっても面が割れそうなので行けなかったけど、ばれたらそれも行けるな…という話をしてたんですが、実際にDクリニックに行ってみると、意外な事にばれてなかったんですねぇ。(またセミナーに行きにくくなってしまいました…。)

 

 

「その節はお世話になりました!」と神戸土産をお渡しすると、S先生はにこやかに受け取ってくださり「今度は糸を入れたいの?」「ええ、ちょっとだけリフトアップしたらいいなと思って…」と言うと「ちょっとだけだったら糸もいいと思いますよ。しっかり上げたいならフェイスリフト(手術)の方がいいですけどねぇ。10年は楽ですよ。糸は毎年くらい入れなくちゃならないんで…」と言いながらも糸を実際に見せてくださって、詳しく説明してくださいました。「このコーンが付いたPDOっていう素材の糸が一番引き上げ力が強いんです。この糸を中心に補助的な糸も何本か入れて、フェイスラインだと耳の方に引っ張ってからまた上にも引っ張る。その人に合わせていろいろな種類の糸を使ってます。どこから入れた方がいいかも人によって違うんで」なるほど。職人技なんですね。見せていただいた糸の中には、DJのY先生が開発したと言っていたのと似た糸もありました。「これもPDOですか?」「これはPCLって素材です」「重いものを1人で持つより、10人で持つ方がくたびれないでしょ。それと同じですよ。1本で引っ張るより10本で引っ張った方が1本にかかる力が少ないから引っ張りやすいし、長くもつんです」「私だと何本くらい要りますか?」「う~ん、10本ずつくらいかなぁ」「えーっ、そんなに入れるんですか?? 糸をたくさん入れてたら、その辺りに注射した時ばい菌が入ると感染しやすいって聞いたんですけど…」「それはほとんど問題ありません。糸を入れてる付近にヒアルロン酸を入れる事もありますけど」

 

 

そうなのかぁ…。私は元々整形外科の出身なので、どうしても感染に慎重になってしまうんですよね。整形外科は手足の骨や関節の問題を治すのがミッションなんで、手術が日常茶飯事です。そんな手術の時に、骨や関節は細菌が入って感染してしまうともう大変なんです…ホントに。なので整形外科ではとにかく「感染対策を完璧にする事!」という事を研修医の頃から叩き込まれますので、感染には非常に気を使います。ただ、皮膚は骨や関節に比べて血行がいいので感染はめったにしないのですが、私は整形外科医の頃の癖が抜けず、消毒は滅菌器具を使って念入りにし、注射後も3時間は触らずメイクは翌日にしてもらっています。また糸やプロテーゼなどの異物が入っていると感染した時に治りにくいので、その付近に注射する事は極力避けてきたのですが、最近は糸も進化したので感染しにくくなっているみたいですね。(実際にこれだけ美容治療が一般的になると器具や手技の進化の速度は凄いものがあって、10年前には考えられなかったような事が安全で簡単にできたりします。なので医療の知識は常にアップデートしないといけない訳ですね。)「糸はちょっと検討します」というと見積を出してくださったので、その日はシミを少し薄くして肌を綺麗にするM22というIPL(光治療)を受けて帰りました。4年前にフォトシルクプラスというIPLを受けた時は痛くてギブしたので心配してたんですが、器機も進化しているようで、痛かったけどなんとか我慢できました! 翌日少しお肌がツルツルになった感じ。でもシミは回数が要りそうです。

 

 

翌日はDJ・Y先生のクリニックへ。糸は相談だけで、当日はエンディメットというたるみ治療を受けたいと電話では伝えたのですが上手く伝わっていなかったようで、Y先生は糸を入れる気満々。「ちょっとだけ上げる糸ってあります?」と聞くと「ちょっとだけ上げるんだったら、PCLのコグ(棘)付きの糸の細いのが出たからさ、それがいいよ」「コーンとコグとどっちが引き上げ力が強いんですか?」「コグのこの形が一番引っ掛かりがいいから引き上げ力も強いんだよね」「PCLは感染しにくいんですか?」「うん。再生医療用の糸で小さな穴がたくさん開いてて、血管が入りやすいからね。感染がゼロという訳ではないけど」「PCLはなんでいいんですか?」「コラーゲンを増やす力が強いし、柔らかいから表情を作ってもひきつれたり糸の入ってる線が見えたりしないんだよね。線が見えるって言っても、思いっきり表情を作った時にちょっとだけ見える程度だけど、僕はそんなんもいやなのね」「その細い糸だと、何本くらい入れるんですか?」「先生だったら、5本ずつくらいかなぁ」「えっ。そんなに入れるの?」「先生は顎をもうちょっと出したらフェイスラインの糸は少なくできるよ。顎はもうちょっと出したいんだよね。まだシワも残ってるし…」「えっ、顎にまたあのメッシュの糸入れるの?? 痛かったんだけどなぁ…」「そうか~、痛がりさんだったね。もっと細い糸で、コグのないのを何本も入れる方法もあるよ。目の周りなんかはいいんじゃないかな」ここは潜入調査ではないので何でも聞けちゃいます。調子に乗って「S先生のとこも行ってきたんですよ。S先生はこう引っ張るって言ってたけど…」というと「僕は引っ張るのはもう古いと思ってるから。引っ張りたかったら引っ張る先生に入れてもらったらいいけどさ、引っ張ったおばさんみたいになるからね。僕のやり方は輪郭を整えて小顔にするイメージで、彫刻のように好きな形の顔を作っていくって方法だから」…ありゃ? ちょっと機嫌を損ねちゃったかな? でもいろいろな方法があるんですねぇ。どちらにしてもY先生の美へのこだわりは相当なもんです。

 

 

実際に糸を入れるのはもうちょっと研究してから、と思ってたんですが「じゃあ今日はこれとこれで…」とY先生が手術を進めようとするので慌てて「あ、糸は今日は相談だけで…。エンディメットを受けたいんですけど」というと「エンディメットならもっと新しくて脂肪もちょっとへらすやつがあるから、それがいいよ」スタッフの説明ではそれは1回3万円という事でしたが、その後看護師に代わって施術の説明を受けると、脂肪を吸引しながら凍らせて減らす器機だそうで1回20万円だと。あれ?ちょっと違うんちゃう? また連絡が上手くいってなかったみたい。脂肪を吸引して凍らせる器機は1時間半かかるそうで、時間もなかったので最初に勧められた高周波の器機の治療を受けました。これは痛くなく直後は引き締まった感じがしたので、これやったら糸要らんのちゃう?と思ったんですが、4-5日で戻ってがっかり。これも回数が要るんですね。やっぱりもっと糸の研究を進めようと思いました。

 

 

こんな風にこの通信では新しい治療への取り組みなどの裏話をどんどん書いてしまうのですが、たまに友人の先生から忠告される事があります。「先生、あんな風に裏話書いちゃうとこの治療は初めたばかりだと思われて損ですよ。他の先生はちょっと講習会に行ったりモニターで何人かしただけで『経験豊かなベテラン先生』って売り込んでるんだから…」まぁ確かにそうですよね。でも先程紹介したように本当にベテランでその方法に何年も取り組んで自分でも改良している先生も確かに存在しますが、そのような方はめちゃくちゃ少ないんです…。これも裏話になっちゃいますが、恐らく皆様が想像されている以上にまともな美容の先生は少ない…というのが事実ではないでしょうか? ただ、ここが難しいポイントなんですが、「経験が多い=いい先生」とは限らないんですよね。誰しも施術を受ける際は失敗されたくないですから、経験豊かな先生の元で受けたいと思うと思います。しかし「経験が多い=いい先生」とは本当に言えないというのが、同じ医者の立場から見た事実なんです。

 

 

先にも書いた通り私は元々整形外科医でしたので、沢山の整形外科の先生達と一緒に手術を行ってきました。又、一緒に執刀しなくても色々な先生の手術の結果を何例も見てきました。その経験で言える事は「手術の上手い先生は初めから上手く、下手な先生は何例行っても変わらない…」という衝撃の事実です。(まぁ、こんな事を言うのは整形外科をやめたからで、その世界にいるとそんな恐ろしい事はとても言えないのですが…。)医者って頭でっかちと思われがちですが、実際の手術には論理以上に「センス」がものを言います。骨が折れたら繋げば良い…と思っているような先生に当たるとこれは悲劇で、「綺麗に繋げない」とその後の生活に支障が出てしまいます。「きちんと綺麗に繋ぐ」というのは職人技のようなものでして、生まれつきの「カン」と「センス」が8割以上の要素を占めていると思わざるを得ないんです。流石に「どうしようもなくセンスがない人」は周りの医者が手術をさせなくなるので淘汰されるのですが、「まぁ…繋がってはいるけど、どうして綺麗に繋げてないの? ちょっと患者さんが可哀そうだなぁ」って思うレベルの人は意外に沢山います。そして残念な事にそのような先生でも大きな病院では患者さんがひっきりなしに来ますから、症例や経験を積むには事欠かず、何年かすると症例数何十という大先生になっていきます。(全部の先生がそうじゃないですよ! 誤解のないように…そういう方も結構いるって事で、患者さんからは見分けがつかないという事なんですね。)この「センス」ってどう解釈していいのか分からないのですが、ある人にはある、ない人にはない…としか言いようがありません。例えば絵が上手い人は小さい頃から上手いですよね。そのような絵心がある人が専門教育を受けると大家になる可能性はあっても、そもそも絵心がない人が教育を受けても、絵心のある教育を受けてない人にも及ばない…って言うと理解してもらえるでしょうか。そう言えば知り合いのシェフでその世界ではかなり有名なSさんという人がいますが、彼も「料理って美味しいか美味しくないかはシェフのセンスが大半を占めるから、修行の年数とか本当はほとんど関係ないんですよね。でもそれを言っちゃうとこの世界の秩序が乱れるから、なかなか言えないんだけど…」って言ってました。

 

 

皆様がどのように解釈されるかは分かりませんが、人には得意不得意があるように、この分野はセンスという教育や訓練ではどうしても超えられない壁が存在していると思います。 私の場合もITとかの分野はからきし駄目で、多分大学でITの教育を4年受けても、ITが好きで独学で勉強した高校生のレベルにも達しないのではと思うんです。(本当にこれって問題なんですよねぇ…何とかならないもんかなぁ。)一方で手術とかの手技は整形外科の頃から「センスがいい」って言われてきました。芸術的な才能はありませんが、「綺麗にきちんと繋ぐ」とか「手術する前からどこをどうやれば結果はどうなる」という想像などは、ほとんど教えられなくてもできた…と記憶しています。勿論その程度で自慢する事ではありませんし、何事も謙虚に鍛錬を積む必要がある事は十分に承知していますが、いきなり患者さんを実験台に新しい施術を行うなんて事はしないものの、今回のスレッドリフトなどの施術を仮に取り入れたとしても「安全で綺麗に行う」という事については自信があります。勿論、評価は患者様が行うものだと思いますが、経験年数とか症例数などをごまかしたりせずに正直にこれからも告知しますし、この通信などでも裏話も正直にお伝えしていこうと思っています。もしスレッドリフトをメニューに入れる暁には、そんな訳で私を信じて「最初の患者になります!」って言ってくださる方は是非ご連絡くださいね。「信じる者は救われる」…って事で…(^_^)。勿論、モニターになってくださるのですから料金は無料ですよ…(^_^) 乞うご期待!