第179回「平成のバブルは次の世代へ続く」

  

 

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今年は例年になく寒いですよねぇ。皆様お正月はどう過ごされましたか? 私はと言えば…年末はいつも怒涛の忙しさ。しかも締め切りの迫った書類や忘年会が重なって大変な年末でした。

京大再生医科学研究所のT教授にも忘年会にお誘いいただき、京都まで出向いたんですがその日は雪の降る超寒い日。疲れ切った30日の仕事後は、恒例の中学の同窓会兼忘年会。そんな忙しい中年賀状の準備…。この年賀状をやめたらどんなに楽かって思うのは私だけでしょうか? 毎年くれる人も多いのでやめる訳にもいかず…。忙しい人はみんなそう思いながら年末を慌しく過ごしてるんでしょうね。年始はやっと落ち着いて、今年もO様から美味しいおせちをいただき幸せなお正月を過ごしましたが、年末の疲れが出て酷い風邪をひくはめに…。しかし年々進化するO様のおせちは、今年はなんとおそば付き。おせちは年末に届くので、年越しそばも一緒に…って事でしょうか。斬新なアイデアに感心した次第です。

そう言えば今年で「平成」は最後ですね。昭和の時代が終わり、当時の小渕官房長官が「新年号は『平成』です!」と宣言したテレビ中継のシーンを鮮明に覚えていますが、それすら過去の歴史になるとは…。誰もが歳を取っていくはずですねぇ。

 

 

さて今回は大好評企画のクリニック潜入調査です。そして今回のミッションは?「今回の君のミッションは美STでも話題の『サイトカイン療法』を調査する事だ。例によって君もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る…」

「サイトカイン」? 何それ? 皆様は「サイトカイン」って聞かれた事あります? 美容医療業界ではかなり話題になっている「サイトカイン」とは、細胞から分泌される成長因子などのタンパク質の総称で、細胞の増殖や分化などを調節する物質です。そして「サイトカイン療法」というのは、脂肪や歯髄・臍帯などから採取した幹細胞を培養し、サイトカインを多く含む培養上清(培養した細胞の上澄み液)を皮膚に注入したり点滴で投与して組織の若返りを図る再生医療です。

幹細胞というのは組織や臓器に成長する(分化する)元となる細胞で、幹細胞をうまく増殖・分化させると必要な細胞や組織を作り出せるので再生医療の花形ですが、細胞を使う治療は2014年11月から施行された「再生医療新法」(再生医療の安全性を確保するための法律)によって厳しく規制されるようになったため、クリニックレベルでできる治療ではなくなってしまいました。

そこで考え出されたのが細胞は使わず細胞から分泌されるサイトカインを利用した「サイトカイン療法」で、PRPが再生医療新法の制定によって非常にしにくくなったために考え出されたものと言えます。当院でも一時はPRPにかなり力を入れていたのですが、再生医療新法のおかげでPRPの申請が本当に大変になり、いまだに申請中です。申請書類がやたら複雑で膨大な量があり、診療に追われる医師がその合間に書けるような代物ではないんです。そのお蔭でPRPをやめてしまったクリニックも多く、高額な代金で申請を代行する業者も乱立しています。

 

 

厚労省に書類を提出する前に認定再生医療委員会という所に書類を出してチェックを受けないといけないんですが、この委員会もいろいろあって、PRPのキットを売っている業者と提携している所はそこのキットを使っていれば審査が通りやすかったり、申請費用もまちまちで、めちゃ高い所は書類を作ってくれたりして通りやすく、安い所は審査が厳しいという噂。

申請当初はよく分からなかったので割と良心的な価格の委員会を選んだらめちゃ審査が厳しくて、何回も細かい訂正の指示が出て書類が返ってきました。当院はその委員会が関連している会社のキットを使っていないからかもと言われましたが、そんなの変ですよねぇ。なまじ書類を自分で作成したため凄く時間がかかった上、この委員会で足止めを食らう羽目に。最初のチェックで直されなかった部分が後で訂正を要求されたり、何回も訂正した後で「写真入りのPRP作製マニュアルが必要だ」と言われたり(そんなん最初から言うてよねぇ!)もう嫌がらせかと思うほどです。しかし費用は前払いなので途中で委員会を変える訳にもいかず…。

この話を友人にぼやいたところ、「はぁ…ありがちな話だね。厚労省と医師会って仲がいいように見せかけて裏では牽制しまくってるから、中国とロシアみたいなもんだな」と意味深な発言。「どういう意味?」と聞くと友人曰く…「普通は役人って天下り先を管轄業界に確保したいから、規制しているようで実は裏でつるんでるってのが多いのよ。つまり仲良しクラブ。例えば通産省だったら道路公団みたいな所に天下ったり、金融庁だったら銀行とか証券会社の顧問に収まる事だってできるでしょ。でも厚労省は微妙で、天下り先を確保しても自分は医者じゃないから、力関係を見極めて医者を動かすしかないのよね。

今回のPRPの話だって、厚労省の役人は医者じゃないから自ら実験して規制枠を決める事ができないので、医者にその規制の枠組みを作って貰わねばならないのよ。本来は医療を規制する枠組みなんで医者に枠組み作りを依頼するのは矛盾してるんだけど、医師免許持ってない人が医学的根拠に直接口出しする事はできないから、役人はなんとかして医者をコントロールしようとするし、医師会はおとなしく言う事聞いてるようなフリして実は規制を骨抜きにしたり、自分達の学会だけ有利になるようにしたりとまさにドロドロの政治劇を繰り広げてる訳よ…」

 

 

ふ…む。そうなのかぁ。私なんか全く政治劇とは無縁だったので真偽の程は??ですが、確かに医療業界の申請とか許認可とかは理不尽な事が多いから、さもありなん…かな。

そして去年の最後は郵便局までもむかつく事に。年末に年賀状を取りに来てもらった時にPRPの書類も一緒に出したんですが、手渡しだと休みの間に届いてはまずいと思ってポスト投函と念押ししたのにもかかわらず、手渡しのゆうパックになっていたらしく10日以上経ってから「何回届けても事務所が閉まっていて届けられない」との連絡が。あれほどポスト投函にしてって言ったのに!! おかげで審査の日に間に合わず、また1ヶ月延びてしまいました。

年末の超忙しい時に必死でマニュアル作ったのに! こんなんって、どこに文句言ったらいいんでしょうねぇ。でも大詰めにはきていますので、もう少しでPRPも再開できると思います。永らくお待たせして申し訳ありませんが、もう少しだけお待ち下さい!

 

 

…と話がそれてしまいましたが、今回の潜入調査はそんな訳でPRPに代わる再生医療として、このサイトカイン療法をしているクリニックに行ってみたいと思ったからで、IMF(Impossible Mission Force)からの指示ではありません。(当たり前ですが…(^_^)。)そしてサイトカイン療法を扱っている業者も探して、説明を聞くことにしました。

まずはネットで検索し、サイトカイン療法を前面に打ち出している「Eクリニック」に行ってみました。このクリニックは「日本で最高水準の技術を持つ研究所と業務提携し培養された幹細胞上清を使用」と謳っています。それはどこの研究所なのか、ぜひ聞いてみなければ。

クリニックを予約して行ってみると、驚くほどゴージャスで、お城のような内装。去年は登美丘高校ダンス部のバブリーダンスが大ヒットして、そのお陰でダンシングヒーローを歌った荻野目洋子さんがオリコンカラオケチャートで一位を取ったり、平野ノラのバブルネタがブレークしたりと、にわかにバブルブームが再来しているようにも思うのですが、なんとここは時代を先取りしたのか(もしくは30年に渡り時代の流れから取り残されたのか…(^_^;)かつてのバブルで浮かれた時代がそのままの形で冷凍保存されていたかのようです。(O様のおせちも真っ青?)

受付の後広い部屋に案内され、興味のある治療の説明書を渡されます。ここのサイトカイン療法は「スーパープレミアム幹細胞・高度治療」と名付けられ「無限の可能性を秘める次世代型の究極アンチエイジング治療」!って、えらいたいそうな…ネーミングまでバブってる感じね…(^_^;)。それに「幹細胞・高度治療」って、幹細胞は入ってないのに。

また、ここのサイトカイン療法は歯髄幹細胞上清が中心らしい。一押しの「自家の歯髄幹細胞」と「歯髄細胞バンク」では、自分や子供など血縁関係に当たる人の乳歯や親知らずを用いる、とあります。血縁関係でも自分以外だったら「自家」とは言わないし、乳歯の歯髄が本当にいいなら成人の親知らずを一緒にするのは変だなぁ。それに「PRPとの違い」という項目では「PRPは成長因子やサイトカインをほとんど含まず、細胞賦活効果は期待できません」とあります。そんな事ないよ。打ち出し方は上手いけど、「?」マークのつく説明書です。

そしてそのお値段は、自家では1cc×30(30回分)がなんと350万円!! ひぇ…! そして細胞保管料が10年で40万円。秋に潜入調査に行ったSクリニックでは自家の脂肪幹細胞培養上清が確か40万円だったので、約10倍のお値段です。皮膚に注入するメソセラピーは1本20万円、点滴は1本10万円。なんか桁が違いますね。日本の安倍首相! 安心してください! アベノミクスの効果はこんな所にきちんと現れています!…と感心する事しばし。

 

 

さて、いよいよ院長が登場!派手な厚化粧でめちゃゴージャスな雰囲気の女医さんで、どことなく宝塚歌劇に出てくるような感じです。「ど~こが一番気になりますか?」と聞かれて「頬のたるみ」と答えると「ちょ~っと失礼~!」と頬を思い切りつねられました。「イテテ!」「や~わらかいですわね~! こ~れは、皮膚ではなく粘膜のたるみですわ~!」宝塚のセリフのようなたいそうな口調で(音声でお伝えできなくて残念です…。Tクリニック院長の田村正和調の再来のようでした。どうにかして紙面で雰囲気を伝えてみようと思いますので皆様もちょっと想像力を使って下さいね…(^_^;)

「どうして粘膜のたるみって分かるんですか?」と聞くと「そ~れは長年の経験からですわ~」院長は続けます。「ね~ん膜のたるみには、ね~ん膜を引き締める、い~い治療がありますのよ~!」…それはスマイルリフトというレーザーで、口の中から当てるそうです。目の下のたるみに当てる「アイリフト」というものもあるらしく、「こちらはわ~たくしが当てますの~」「目の下はどうやって粘膜から当てるんですか?」と聞くと「し~た瞼をひっくり返しますのよ~」「えーっ!!」「で~すからわたくしが当てるんでございますの~」そうなんですか…。

 

 

サイトカイン療法の事も聞きました。「先生はなぜ歯髄がいいと思われたんですか?」「し(脂)~肪ですと、し~肪吸引で取る訳ですから、糖尿病や高脂血症な~どの病気を持っている可能性がた~かい訳ですよ。乳歯の歯髄は、わ~かい細胞ですから、安全性も効果もた~かい訳です~」(…それだったらやっぱり自分の歯髄はいまいちですよね? )提携している研究所は聞き出せました。「先生はどうしてそこの研究所に決められたんですか?」「ちょっとご~縁がありまして…。それに、ほ~かの所はわ~たくしの質問に対して納得いく答えがな~かったものですから」あれ? この後サイトカイン療法の話を聞く予定の業者はダメだったのかな?

取りあえずスマイルリフトを受けてみようと思ったのですが、質問しすぎて次のアポイントまでの時間が迫ってきてしまいました。仕方なく治療は次回受けるという事にして初診料だけ払ってクリニックを出ましたが、受付ではDr.Eコスメのサンプルセットをくれました。ここはコスメもホームページも打ち出し方が上手く、凄くやり手のコンサルタントが付いてる感じです。外に出るとまるで24時を過ぎたシンデレラ城を後にした気分で、何もかも日常の風景に戻っていました。

 

 

その後、サイトカイン療法の業者の人に会って話を聞きました。現在サイトカイン療法に使われている細胞には骨髄・脂肪・臍帯・臍帯血・歯髄があり、自家だと脂肪が取りやすいが手間がかかり、効果から考えると若くて増殖能の高い乳歯髄がいいとの事。

生化学が得意な東京のK氏にサイトカイン療法の事を聞いた時も、サイトカインはタンパクで遺伝子がないので、自己も非自己も認識されないため自己である必要はないと言われてました。PRPの代わりという事であれば「自分のものの方が安全」という打ち出しの問題かもしれません。そしてその業者のサイトカインカクテルの特徴は、培養上清を精製して死細胞や細胞の老廃物を除去し、安全性を高めた事らしい。

「Eクリニックの院長とは話されました?」とその業者の担当の人に聞くと「あそこは院長の旦那様が実業家で、ベトナムに50分院を作る計画なんかもあるらしいですから、うちみたいな小さな会社は相手にされないんです…」提携の研究所もすごく大手で、個人のクリニックなどは普通は相手にしないんだとか。それも旦那様の手配らしい。「ご縁があって…」ってそういう事だったのか? 凄腕のコンサルが付いてる気配はこれだったのかも。まぁいろいろ裏事情もあるようですが、サイトカイン療法は始まったばかりの治療も多いので、まだまだ情報収集が必要そうです。

今回も滅菌方法まで質問攻めにして担当者を困らせたようでしたが、めげずに何社かあたって情報を集め、効果と安全性が確認できたら試そうと思っています。ちなみにスマイルリフトはその業者が輸入している器械だったので、次回試せることになりました。それも含めてまたご報告しますね。

 

 

最近新聞には日本の景気は長期に渡り拡大しており、その長さではかつての「いざなぎ景気」を超えたと書いています。そう言えば昔社会の教科書で確か「いざなぎ景気」とか「神武景気」とかあったなぁ。一方でどの新聞にも「統計的には景気拡大しているが、庶民には景気拡大の実感が全く湧かないらしい」と。

私は経済の事はよく分からないのですが、クリニックをやっていると「安くていいもの」を求める嗜好と「高くてももっといいもの」を求める嗜好の差がどんどん開いているような気はします。かつてのバブル経済の頃は「本質はさておき、誰もが高いと認めるもの」を求める人が多かったように思いますが、今は「値段はある程度高くても質が良いもの」を求める人が多くなったような気がします。やっぱりそういう人が増えてきたという事は経済が拡大しているのでしょうかね? ただ、当院でもいわゆるお金持ちの方も多いのですが、意味なく高いものを求められる事はほとんどありません。やはり品質や効果、そして安全性が伴い価値があれば、高価でも仕方がないという考えを持たれている方が多いと思います。ボトックスやプラセンタ点滴のように一定の手法が確立しているものの価格は今後も下がっていくように思いますが、一方で今回のサイトカイン療法のような今までにない効果がありそうなものはどうしても料金が高くなる傾向があります。

今回の潜入調査はたまたまバブリーなクリニックだったので少し茶化して書きましたが、それとサイトカイン療法そのものの効果は別の話です。(そしてEクリニックさんの名誉の為に記載しますと、取り組みは先進的ですし、いい加減な治療をされているとは思いませんでした。ただ、値段が庶民的な私の肌感覚からすればかなり高価だと感じたに過ぎません。)私自身はサイトカイン療法は非常にポテンシャルのある治療法だと思いますが、新しい治療なので安全性の確認が大事だとは思います。一方でPRPも非常に手間がかかる手法ですが、効果は確実にあります。このように多少高価であっても価値があればやりたいという患者様はおられるので、このような新しい治療法の研究にも引き続き取り組んでいくつもりです。平成の次は何という年号になるのでしょうね? この取り組みは次の年号になっても続けていく事になりそうです。このような方面にも興味のある方は、乞うご期待!!