第159回 (2016年6月)「美人は本当に得するの?」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。新緑が綺麗な季節になってきましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私は先日、東京で開催された美容外科学会に参加してきました。美容外科学会なので手術の講演が多かったのですが、やはり最近は手術よりダウンタイムの短い治療が好まれるようで、糸によるリフトアップや注射による治療の講演もたくさんありました。ライブサ―ジェリーと言って実際に治療している場面を中継したり、顔面の解剖をビデオで映したりという講演もあり、なかなか勉強になりました。リフトアップは手術だけでは難しい部位もあり、最近では皮膚を引き上げる糸(いわゆるスレッドリフトってやつです)と組み合わせたりもするようです。よく患者さんがフェイスラインなどを手で引っ張って「たるみがなくなってこうなりませんか?」と言われるんですが、手で引っ張るようにはなかなか手術でも難しいんです。引っ張って上に余った皮膚はどうするの? 消えてなくなったりはしないんですよねぇ。手ではいろいろな方向に引っ張って一時的にそこだけのたるみをなくす事は可能ですが、他の部位にしわ寄せが来ないように引っ張る事も、それを保つ事も、手術でも糸でも至難の業なんです。でもそういう患者さんの要望に少しでも応えようと試行錯誤している先生もおられ、糸も最近は進化してきて早く溶けて引き締め効果があるものも出てきたようです。以前は糸でのリフトアップは溶けない糸で異物反応(炎症や感染など)が出たり、引きつれが起こったり、糸の端が何ヶ月か後に皮膚を突き抜けて出てきたりする副作用の報告も多く、引っ張っても皮膚は若返らないし戻りも早い・・・とあまり学会での評判は良くなかったんですが、時代の流れと共に糸も技術も進歩するもんですね。



まぁ・・・ともあれ女性の顔を「確実に」美しくする方法が確立されれば人類の歴史始まって以来の快挙で、開発者は大金持ちになる事間違いなしでしょう。「顔は女の命」と昔から言われますが、女性の美しさに対する執念(特に顔に)は凄いものがあります。それもそのはず、あまり大きな声では言えませんが、美しい女性とブスの女性では生涯の経済格差は3600万円にものぼると推定する研究があるくらいですから・・・。え!? 何? 聞き捨てならない話だって? そりゃそうですよね。私だって「美人の方が得してるよねぇ・・・」というくらいの感覚は持っていますが、「金額にすると3600万円も得するって、そんなに格差ないでしょ。そんなの格差じゃなくて殆ど差別じゃない?」って思います。でも逆に言うと美人になりたいという人がこれだけ多いので、その方々が相応の金額を払ってくれる事で、健康保険の効かない美容業界で美顔にはこれだけの研究がしのぎを削っていける事実も理解しています。この3600万円ってどこから出てきたのかと言うと、最近読んだ「言ってはいけない-残酷すぎる真実-(著者:橘玲)」という本の中で紹介されているのですが、ちょっと面白い話なので紹介します。(でも他の人には言わない方がいいです。殴られるかもしれませんから・・・^^;)



これは経済学者ダニエル・ハマーメッシュという人の研究なのですが、統計の実際の取り方は長くなるので省くとして、美貌を5段階で評価し、平均を3とした場合に、平均より上(4または5)と評価された人は平均(3の人)より8%収入が多かった。それに対して平均より下(2もしくは1)と評価された女性は平均より4%収入が少なかった。経済学ではこれを美人は8%のプレミアムを享受し、ブスは4%のペナルティを払っていると言う。まぁ・・・その程度であればそれなりに納得できる数字のように思いますよね? ところがこれを生涯賃金に当てはめると大卒者の生涯賃金は3億円と言われているので、美貌による生涯収入の格差は3600万円にもなっちゃうんです。ひょえ・・・! それは聞き捨てならん!(ただこれってアメリカの研究だからだと思います。ちょっとネットで調べると日本では大卒者の平均生涯賃金は2億5000万円だそうです。なので、美人-ブス格差は日本では3000万円程度になるんじゃないかな。・・・って言っても、3000万円だって十分に多いぞ!)ただ、この話は「美人で得するのって若い時だけでしょ。結婚相手見つけたり就職したり、若い時にはそれなりに美人が得するかもしれないけど、それが一生続く訳じゃないし、年取ればそんな収入格差ないよ! 年取れば一緒だって!」って反論する方もおられますよね。最初私もそう思いました。しかしこのハーマンさんはそんな事もちゃんと考察に入れていて、若い時に見つけたいい男から得られる見返りは生涯に渡り続く可能性が高いって言ってるんですよね。例えば弁護士で言えば若い時は美人もブスもむしろ収入格差はそれ程ないが、美人弁護士は若い頃に裕福なクライアントをゲットできる可能性が高く、年を取るにつれてそのクライアントの違いから収入は開いて行く一方なんだそうです。



う・・・む。認めたくはないが確かにそのような事例は周りにもあるなぁ・・・。まさにこの著書のタイトル通り「言ってはいけない・・・」って事なんでしょうけど、この事実が広く知れ渡っているのがお隣の国韓国でして、若い頃の美容整形は日本の比ではないくらい一般的になっているようです。韓国では明らかに「美人の方が経済的に得するので若い時(特に就職前など)に美容外科に行く」という考えが広まっているみたいです。一方で、教育による生涯収入格差は日本では広く知られているところで、大学卒と高校卒の平均生涯年収の違いは約6000万円だそうです。だから世の中のお母様方は教育ママゴンとなって有名大学にご子息を入れようと奮闘する訳ですが、実は投資として考えると教育にお金をかけるのは十分に割が合う訳です。だって6000万円も差が出る訳ですから、塾や大学の学費なんて安いもんですよね? ん? ちょっと待てよ・・・じゃ、美人とブスの格差である3000万円を考えれば、美容外科に支払う金額なんて全然大したことないじゃん!! もしブス高卒と美人大卒の生涯格差を計算すると、一体どんだけになるの? まあ・・・あんまりこの話題を続けるのは色々なところで問題になりそうなんで、そろそろやめておかねば・・・と思いますが。(ホントに殴ってくる人がいそうだな・・・^^;)。ただ殴られる前にちょっとだけ私の持論を書かせてもらえば、大卒者の生涯収入が多いのは「大学に行った結果」ではなく、そもそも論理的思考能力が高く、あらゆる競争で勝ち抜くアグレッシブなタイプの人は生涯収入が多くなる傾向にあり、たまたまそんな傾向の人が大学に行く機会が多い・・・って事だと思います。じゃ・・・美人とブスの格差はどうなの? 生涯収入が多くなる能力のある人が美人である傾向が強い? う・・・む。それは違う気がするなぁ・・・。やっぱりこの話はしない方が良さそうです。)



そろそろ話を本題の美容外科学会に戻しますね・・・。糸のライブサ―ジェリーを実際にされていたのは、去年私が潜入調査したDr.SクリニックのS先生でした。食いしばり治療でこめかみに打ったボトックスで右眉が下がった後に一生懸命修正方法を考えてくれた、今まで私が潜入調査した中では一番真面目で親切だった先生です。長年形成外科の勤務医をされていた正統派の先生で、手術も上手と定評のあるS先生。そのS先生が、実際にクリニックでスレッドリフトの施術を中継しながら会場からの質問にも答えてくれるという企画でした。多くの美容ドクターが極秘にしたがる自分の技術を惜しみなく公表し、手術のコツまで教えてくれるなんて、なんていい先生なんだ! 学会からの謝礼なんてそう多くはないと思うんですが・・・。糸を入れるデザインから麻酔方法、糸の刺入方法などを実際に施術しながら解説してくれ、リアルタイムで会場からの質問にも答えてくれます。学会では有名な先生が次々と質問していましたが、印象的だった質問は・・・「先生は上手だからいいけど、僕とか若い先生がやって、糸が皮膚を突き抜けて出ちゃっても抜けるんですか?」S先生は「う~ん、突き抜けたことはないんで分からないんですけど、多分抜けると思いますよ」と答えていました。なるほど。S先生は有名な先生たちの間でも飛び抜けて手術が上手いようだ。手術ってセンスですからねぇ。つまり、S先生がいくら技術を披露してくれても、真似できる先生は極少数だって事ですね。やっぱり手術や糸は、センスのある先生にしてもらわないとなかなか上手くはいかないようです。まぁ、注射だってそうですが。(でも自称?ヒアルロン酸注入の権威で田村正和風のT先生は「なんで自分の技術を教えなきゃなんねえんだよ・・・」って言ってましたけど。・・・やっぱりS先生はいい人だ。)




翌日もS先生は手術と糸の組み合わせ治療の発表をされて、糸の引き上げ力は手術には到底かなわないけど、最近はダウンタイムの少ない治療が求められるので、できるだけ小さな切開での手術と糸を組み合わせたり、糸も極力ダウンタイムを少なくして、その代わり年に1回くらいメンテナンスするようにしていると言われてました。そんなに手術が上手な先生でも、時代の流れに沿った治療に変えていかれるのはさすがだなと思いました。それだけ患者さんの要望に応えようとされてるんですよね。私も見習わないと・・・。美容外科学会の会場は狭かったので、S先生と何度も近くで出くわしてしまい、「あれ? どこかで見た顔だなぁ・・・」というような顔をされました。やばい! 潜入調査がバレたかも・・・。「その節はお世話になりました」とお礼を言いたい気もしたんですが、潜入調査なので当然偽名を使って行ったし、その時も「もしかしてドクター?」と聞かれてびびり、何とかごまかしたので何と言っていいか分からなくて、そそくさとその場を立ち去ってしまいました。本当は挨拶でもして、いろいろお話できたらな~と思ったんですが・・・。次回会った時には挨拶してみようかな。(^^)



講演は治療に関するものがほとんどでしたが、特別講演として「女性の職場におけるリーダーシップ「選ばれるクリニックになるためのファーストクラスのおもてなし」「JALを顧客満足度世界一に導いたコミュニケーショントレーニング」といった、JAL出身の人材開発トレーナーによる講演もあり、結構面白くて勉強になりました。「女性の職場におけるリーダーシップ」では、女性脳と男性脳の違いから、女性が多い職場で上手くいく指導方法などを講演されていました。女性の脳は、感情を司る右脳と理論を司る左脳を連携する神経線維が男性より20%太いため、思考が感情に左右され易く、「自分の気持ち」が思考の基軸となり易いらしい。男性は結果を評価されたがるが女性はプロセスを評価されたがるので、女性の場合はプロセスをよく見て細かい変化に気付くようにし、まずは相手の言葉を繰り返すなど共感を与えて、解ってもらえたと感じさせる事が重要なんだそうです。そして女性は他人に認められたい気持ちがより強いので、承認や励ましをベースに自己重要感を高める事(「自分が重要とされている」と感じさせる事)が大事だとか。挨拶も「おはよう」「お疲れ様」ではなく、「○○さん、おはよう」「○○さん、お疲れ様」と名前を呼ぶ方が良く、褒める時は「○○さんに頼んで良かった」という風に・・・。注意をする時もまずは評価やアドバイスを含まず事実を伝え、相手に好意を示しながら、目指すべき目標やビジョンを共有する事が大切との事でした。



うむ・・・。これは私の最も不得意な分野です。皆さん、「話を聞かない男、地図が読めない女」っていう本覚えてます? 男は昔から狩猟をしていたので空間能力が優れているが左右の脳の連絡が悪いので一度に一つの事しかできず、女は木の実を拾って子供を育てていたので視野は広いが空間能力には劣り、地図を読む事ができず車庫入れや縦列駐車も苦手・・・ってやつです。私はこの本や右脳と左脳の本によるとかなりの男性脳なんですよねぇ。昔から姉と違って地図や時刻表を読むのは大得意、車庫入れや縦列駐車もめちゃ得意で切り返しなんかした事がありません。しかし一つの事に集中すると他の事ができないんです。勤務医時代は整形外科で男ばっかりの中でも「先生が一番男らしい」と看護師たちに言われていたくらいなので、思考がほぼ男で、女の子の気持ちが分かりにくいんですよね。なんで美容皮膚科に転向したの??って言われそうですが、患者さんもスタッフも女性が非常に多いこの世界に入った事を後悔した事もありました。昔辞めたスタッフに「先生は私を愛してくれてない」と言われて意味が分からず、目を白黒させた事も。細かい変化に気付くのも不得意で、ちょっとは気付かないと、と思って「○○ちゃん、髪切ったね」って褒めようとしたら、「先生、もう2週間も前に切ったんですけど・・・」なんて言われる始末。プロセスより結果を評価してしまうし、注意する時もまず共感を・・・なんてせずにズバッと本当の事を言ってしまうので、傷ついたりすねたりされる事も・・・。「ほんと女の子って難しい・・・」って、いつも思ってしまうんですよねぇ。



そんな訳ですから、もし間違って私が絶世の美女に生まれてきたとしても、男勝りの性格が災いして3000万円の美女プレミアムをゲットできたかどうかは非常に怪しいところです。まぁ・・・美女になる事について経済プレミアムが本当に存在するのかどうかはよく分かりませんが、私が今まで美容のクリニックをやってきて思う事は「綺麗に変身した女性は間違いなく性格が明るくなって笑顔が素敵になる」って事です。これだけは誰がなんと言っても否定できない私の経験則です。初診の時はなんとなく暗いイメージの方でも、治療で綺麗になると明るくなって、素敵な笑顔でよく話されるようになります。綺麗になる事でその人の人生が明るく開けて性格がオープンになり、周りにも良い空気を作るという事だけは間違いないので、それこそが私の今の仕事の生きがいだと思います。人間の価値観とか社会は時代の変遷と共に変化してきたので、昔の価値観と今の価値観は変わっている反面、まだまだ保守的な価値観も共存しています。どちらがいいのか・・・というのはよく分かりませんし、私が何か言えるようなものでもないのですが、単純に「綺麗になった時に喜んでいただいた笑顔を見るのが好き」って事で、この美容の仕事を続けていったっていいんじゃないかな・・・と思うのです。これからも末永く皆様と一緒に、笑顔で毎日の生活を過ごす事ができれば幸いです。