第97回 (2011年4月) 「桜の木下で…」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。
東北関東大震災に被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。このクリニック通信の原稿を書いている時点で、すでに阪神淡路大震災を上回る死者が確認されており、死者行方不明者を合わせると2万人を超えてしまったようです。防波堤を乗り越え、一瞬にして車や建物を流して町を壊滅させてしまう津波の恐ろしさを初めて知りました。被災地ではガソリンの不足から孤立化した非難所に救援物資が届かず、食料や飲み水が欠乏している所が多数あるとお聞きしています。また福島原子力発電所においては、国内では最大規模の事故の中で消防隊や自衛隊の方たちが決死の覚悟で事故の拡大防止に努力されています。被災された皆様に重ねてお見舞いを申し上げると共に、助かった皆様にはこれから十分なケアと支援が一刻も早く届く事を、そしてまさに国家の危機に総力を上げて救援にあたっておられる皆様にはどうか無事でミッションを最後まで達成される事を心よりお祈り申し上げます。

 

 

私も16年前の阪神淡路大震災の際には芦屋に住んでいて、被災しました。当時の大震災の様子は心の中にしっかり刻み込まれており、被災地の映像をテレビで見るたびに当時の事を思い出して心が痛みます。しかし今回の東北関東大震災は阪神淡路大震災の規模及び被害を遙かに超えており、被災地も広範囲に渡っています。被災当時は自分の人生の中でこんなに大変な事があるのか…と思っていましたが、今回の東北関東大震災と比較すると、当時はまだ被災地はかなり限定的な範囲でしたし、少なくとも孤立化した地域は少なく、食料などの救援物資も数日中に運び込まれてきました。電気、ガス、水道などのライフラインが寸断された事は大きな不便をもたらしたものの、今回の震災のように物資供給が滞り、命が助かった人でも避難所でさらに悲惨な目にあうという事はなかったように思います。そして何より原子力発電所の事故もありませんでした。

  このクリニック通信をお読みいただいている皆様の中にも、阪神淡路大震災で被災された方が多数おられると思いますが、皆様も一生に一度の大震災と思われていたのではないでしょうか。わずか16年後に更に大規模な震災が日本を襲うとはとても想像すらできませんでした。

 

 

今回このクリニック通信を書くにあたり、震災の話題を取り上げるべきか非常に悩みました。実際に被災された方のお気持ちや、現状の対応についての受け取り方などは人それぞれですので、一個人が何か意見を述べるにはあまりにも大きな問題です。しかし、普段のお気楽モードのテーマでいつものような原稿を書く気分になれないのも事実です。という事で、やはり少し震災についての思いを書かせていただく事にしました。それに際しては、震災を乗り越えた神戸の住民として、当時の震災の中にあって良かったと思った点を取り上げたいと思います。勿論、震災は悲惨なものですので「良かった」というような書き方をすればそれだけでお叱りを受けるかもしれません。震災に遭っても幸いにして生き残っており、大きな怪我や後遺症に悩まされる事もないから言えるのかもしれません。しかし、敢えてここでは良かった面というものを書き残しておきたいと思います。

 

 

 

阪神大震災の時に良かったと思った事は、まず何を差し置いても、生き残った人間は亡くなった方々のためにもより良く生きていかねばならない…と強く確信した事です。恐らく昔の人達は飢餓や戦争など人の不慮の死に直面する機会が現代より遙かに多かったと思います。私たちは平和な世の中で生まれているのでテレビの映像以外では実際にそのような場面に直面する事は殆どありません。しかし阪神淡路大震災での被災では何よりも「生きている事そのものがありがたい…」と感じました。多くの皆様の不慮の死を前にしなければその事を意識できない事も問題なのでしょうが、実際に日常生活で「生きている事そのものがありがたい」と意識する機会は少ないと思います。学校の教育現場でも現代は道徳教育が欠如しているので、道徳教育を復活させなければならないという議論がよく見受けられます。勿論、その事に大きな異論がある訳ではないのですが、何よりも子供たちが「生きている事はありがたい事だ…」と意識する事は殆どないという事が根本の問題であるように思います。だからと言って、子供たちを無用な生命の危機にさらす事が良いという訳でもありませんから、とても難しい課題です。いずれにしても恥ずかしながら、私自身は「生きてて良かった。生きている事そのものに価値があるんだ」と感じたのはあの震災の時が初めてだったような気がします。机について道徳教育を受けるだけでは得る事のできない別の次元の「得難いもの」を得たように思います。  

今回の東北関東大震災でも、下記のような心に染みるニュースが出ていました。
…2人の子供と私を残して亡くなった夫の荷物の中に指輪があった。ホワイトデーのプレゼントに、こっそり買ってくれていたらしい。以前、「たまには指輪とか欲しいけど、パパはプレゼントくれる人じゃないもんね」と、意地悪を言ったのを思い出した。…指輪を残してくれた夫に約束した。「この子たちは私が責任を持って育てるから」
…彼女もご主人を亡くした事は大きな悲しみですが、自分と子供達が生きている事の大切さをかみしめ、亡くなったご主人のためにも、より良く強く生きて行こうと誓ったに違いありません。

 

 

そして次に良かった事は、「真の人間の心の優しさ」に触れた事です。もうこれは被災された方であれば必ず同意していただける事だと思います。被災地の中にあって、ご近所の皆さんは、必ず挨拶の際に手を握って「大丈夫か? 何か困った事はないか?」とお互いに言い合っていましたし、すれ違う人の顔は皆笑顔とやる気に満ちていました。それまではマンションの隣の人でもどんな人が住んでいるかも知らなかったのですが、とにかく会う人会う人は皆「一致団結してこの困難を乗り越えよう」という思いを共有できていました。恐らくその頃には夫婦喧嘩なんてものも無かったんじゃないかな?って思うくらいです。一時的な買い貯めみたいな事は多少あったかもしれませんが、殆どの人はあるものを分け合おうとしていましたし、誰も何か物資を独り占めしようなんてしなかったと記憶しています。(あの日本最大の暴力団組織の人達でも近所の皆さんにおにぎりを配ったくらいですからね…。)人間ってこんなに心が暖かいんだ…と思いましたよね。また、被災されていない方はボランティアの仕事を進んで引き受けてくださいましたし、何かを依頼しても本当に「喜んで!」と笑顔で手伝ってくださいました。被災を免れた多くの地域の方たちが「困った時はいつでも言ってください!」と元気良く言ってくださったのです。今回の地震後も、海外を含めて義援金が次々と寄せられていますよね。

 

今も海外のメディアが「日本ではなぜ被災地で略奪が起きないのか?」というような記事を報道しているのを見かけますが、「そんな事あるワケないじゃん。被災地ではそんな雰囲気すらないよ…日本では略奪なんか誰もしません。そりゃ人間が何万人もいたら本当に一握りの無法者はいるかもしれませんが、被災地で集団で無法を行うなんて事はあり得ません!」って胸を張って言えるんじゃないでしょうか? 16年前に被災した神戸の皆様であればこれには同意してくださると思います。これって本当に幸せな事なんだと思いませんか?
つまり、震災の良かった面とは「生きている事は意味のある事だし、それに素直に感謝すべき」と心から思えるようになったという事と、人々の心の暖かさに触れる事ができたという事です。東北関東大震災で被災された方も今はとにかく大変な思いをされていると思いますが、生き残った方々は今後必ず同じ思いを抱けると思うのです。何年か経てば、結果として日本の中に心の優しい人の割合が少し増える…という事を、信じる事ができると思います。

 


 

 

一方で今回は私たちは非被災者でした。地震の当日は私も神戸にいましたが、かすかな揺れを感じたものの実際には全く被害を受けていません。震災のニュースをテレビで見て何ら変わらない日常生活を享受できるという今度は逆の立場になりました。今回は多くの人がなんとかしてあげたいという思いに駆られたと思います。テレビのニュースを見ていると居ても立ってもいられないという気持ちがこみ上げてきます。しかし、ここからは私の個人的な見解ですが、阪神淡路大震災の経験から申し上げると、非被災者の皆さんができる最大の貢献は「限りなく今までの日常生活をそのまま続ける事」に尽きると思います。何度も被災地に電話したり、ましてや被災地に勝手に赴くなどは慎むべきだと思うのです。敢えて誤解を恐れずに言えば、震災初期の段階で素人が被災地に行くのは迷惑にしかならないと思います。震災後すぐの段階では瓦礫の山から生存者を見つけて助けだしたり、寸断された道路を復旧させたり、水や物資をヘリコプターを使って届けたりしないといけない訳ですから、素人が何かできるような状況ではとてもありません。ここで活躍できるのは訓練を受けて組織として行動のできる自衛隊と警察、そして災害救助専門部隊の人達だけだと思います。さらに今回は原子力発電所の事故があるので、頼みの綱は自衛隊の人達であると言い切ってもいいんじゃないかと思います。一般の人がボランティアとして被災地に入って何か役に立つのは震災から一ヶ月くらい経過して落ち着きを取り戻してからではないでしょうか。  

 

結局一番良いのは非被災者の皆さんは日常通りの生活をして、自分にできる最大の寄付を物ではなく、お金でするのが最善の事だと思います。物を送ると中身を整理するだけでも大変なので、阪神大震災の時もかえって困ったという事もありましたから。また、これだけの規模の災害になると善意の寄付だけでまかなえる訳ではありませんから、何らかの形で税金として多くの人から少しずつ徴収をして被災地の再建をする事になると思います。そのためにも非被災地の経済活動が停滞する事が最も良くない事だ思うのです。気持ちとしては日常通りの生活をする気になれない…という事はあるかもしれませんが、色々な自粛ムードが高まって経済活動が停滞する方がずっと被災地の再建にとっては良くない事につながると思います。(勿論、関東エリアで電力が逼迫しているという問題があるので関東地方の皆様は節電だけはしていただかねばならないのでしょうけれど…。)
そう考えていたら、同じような事を考えている人達がいる事が判りました。ホリエモンも「自粛ムードで経済を停滞させることが本当は放射能より怖い」と言い、西日本の首長や阪神大震災の被災者らからも「むしろ今こそ、西日本がこれまで以上に元気を出していくべきだ」という声が出始めたらしいのです。「過度な節電は、経済を停滞させる。多くの人を引きつける行事はしっかりと行い、人々の心を癒すとともに、収益をあげて寄付につなげたい」「大阪、関西は通常以上にしっかりやって、被災地をサポートしていこう」「関西まで意気消沈していては、日本は沈没する。これまで以上に元気に仕事をして、東北の人を励ましたい」という声が上ってきています。こんな時こそ元気を出して、経済を停滞させずに被災した方たちを励まし、支えようという気持ちは皆同じなんですね。

 

 

ですから、関西に住む私たちはできる限り今までの通りの日常生活をしていくことが私たちにできる最大の貢献であると信じています。そういう信念に基づいて、当クリニックでは自粛という事は行わずに通常通りに新メニューを発表しますし、皆様が綺麗になる事のお手伝いに邁進させていただくつもりです。やはり春になって外出する機会が増えますので、今月は新しい治療方法であるPRPカクテルをキャンペーン価格で提供させていただく事にしました。(詳細は最新情報をご覧ください。)

  最後になりましたが、被災地ではまだまだ寒い日が続いているようでナす。避難しておられる皆様が一刻も早く通常の生活に戻る事ができるように、そして、被災地の復興と春の訪れをお祈り申し上げます。
津波ですべてが瓦礫となった大地に復興の証として桜の木が植えられ、何年か経った時に生き残った心の優しい人達がこの震災を忘れる事なく、桜の木に集ってうららかな春の日を迎える事ができますように…。