第81回 (2009年12月) 「研究者への道 」

  

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。すっかり寒くなりましたが、皆様は風邪などひかれてないでしょうか。11月はどのようにお過ごしでしたか? 11月と言えば、ボジョレーヌーボーの季節ですね! 以前は、ヌーボーなんて美味しくないのに、なんで世間はあんなに騒ぐんだろうなあ?と思ってたのですが、東京のK氏の会社挙げてのヌーボー・パーティーに招待された時に(詳しくはクリニック通信第57回をご覧ください)、お祭り騒ぎをするための口実と聞かされて妙に納得してしまいました。K氏の会社のパーティーは、去年は移転後で木曜日が休みでなくなったこともあって欠席しましたが、今年はちょうどその時期に東京で学会があったのでお邪魔することにしました。一昨年は「パーティーではお客さんが多くてあまりお相手できないかもしれませんので、友達をたくさん連れて来てください」とK氏に言われて、勤務医時代に仲良しだった元プロパーさんで東京に転勤になったワイン好きのUさんを誘って行きました。その後Uさんに「あれからお礼もしてないので、一度K氏と食事でも・・・」と言われて今年の5月の学会の時に3人でのグルメの会が実現したのですが、その時はK氏の行きつけのモダンスパニッシュと和の融合したお店に行ってK氏がご馳走してくださったので、Uさんがお返しをしたいという事で、ヌーボーパーティーの前日にUさんお勧めの目黒のお鮨屋さんに行くことになりました。(しょっぱなからグルメの話ばっかりですいません。)なのでパーティーにはもちろんUさんも参加です。その他に今年は、8月の学会で知り合いになったS堂研究室のSさんとMさんを誘って、4人でお邪魔することになりました。

 

 

そして今回は学会とパーティーだけではなく、東京の美容クリニック見学にも行ってきました。クリニック見学に行こうと思い立ったのは、やはり同業の先生がどんな事をしているかも研究する必要があると思ったからです。10年ほど前、神戸でフレンチの最高峰と言われた「ジャンムーラン」(皆様の中には、よく通われた方も多いのではないでしょうか・・・?)のシェフは、休みの日にはレストラン巡りをして、料理を研究する事に余念がなかったそうです。だからこそフレンチのトップであり続け、55歳で店を閉めて世界中を旅するという夢をかなえることができたんですよね。私も学会で勉強するだけではなく、実際に他のクリニックを訪問することで、自分を見つめ直すこともできるだろうし、いろいろな勉強ができるのではないかと思った訳です。
 しかしクリニック見学は学会の少し前に思い立ったので、見学するクリニックの選択からオファーまで、結構日が迫っていてまたバタバタでした。学会の開催地とK氏の会社がある渋谷~表参道の近くで探そうとしたのですが、そもそも東京には美容クリニックは山のようにあり、その中でも表参道には美容クリニックが乱立しているので、ホームページでその辺りの美容クリニックを調べても同じような所がいっぱいあるし、美容関係の雑誌を買っても最近は新しい所ばかり載っていて「ここが見たい!」と思うような所が見当たりません。仕方ない、K氏に聞いてみるか・・・。(困った時はついK氏に頼ってしまうのですが、それでもほとんどの場合何らかの情報をくれるのがK氏のすごいところ。)

 

柴田:「渋谷近辺で、ここは見ておくべきというような美容クリニック
       はありますか?」
K氏:「そうですねえ…有名所と言えばまずはMクリニック&スパで
       しょうかね。それとTクリニック。化粧品の会社なんかも作られ
       てて、スパもありますし・・・そうそう、それとK先生のAクリニッ
       クがいいんじゃないですか? ここぞという所はその3つくらい
       ですかねえ・・・」

さすがK氏! 私は土地勘がないのでその3つのクリニックが表参道にあるとは知らず、すぐには浮かばなかったのですが、言われてみれば3つとも有名なクリニックです。特にTクリニックとMクリニックは、雑誌にもテレビにもバンバン出てるし、雑誌Vのベストクリニックにも上位に選出されていて、知らない人はいないのではないか・・・というくらいの有名所。T先生は化粧品とヒアルロン酸注入が特に有名で、以前ホームページに載っていた「お目元再生プログラム」(塗り薬だけで目元の小じわを改善する治療)などには注目した事があります。M先生はいろいろな美容技術や海外の薬剤・化粧品などを日本に導入した美容の元祖的な先生で、Mクリニックは有名雑誌でも「美容クリニックの老舗」と紹介されています。5年ほど前に、M先生が導入された米国の化粧品のセミナーでM先生を紹介してもらって名刺交換をした事がありますが、かなりのイケメンで有名人なのに、気さくに話してくださいました。かたやK先生はホームページにすごく学術的な美容コラムを載せておられる学者肌の先生で、私も開業当時はそのコラムを読んで勉強したものです。K先生の開発された化粧品はかなり有名で雑誌でもよく取り上げられていますが、メディアへの露出度は上記二者ほどの派手さはない感じ。しかしM先生以外は面識はないし、面識のあるM先生も5年も前なのできっと覚えてられないだろうし、超忙しくてたくさんの診察室を次々廻って診察されると聞いた事があるので、見学できるかどうか心配です。

 

 

 

柴田:「急に頼んでも、見学なんかさせてもらえるかなあ?」
K氏:「T先生はよく知ってるので私の名前を出していただければ多
       分大丈夫だと思いますよ。M先生もK先生もオープンな先生
       なんで、大丈夫なんじゃないですか?」

おお、さすがK氏。そんな有名所と知り合いなんて。K氏の話では、T先生にはかなり有力なコネがあるようで、M先生とも何度もお食事をされているようです。やった! これなら急に頼んでも見学できるかも。そんな有名なクリニックってどんなんかな?と思うととても楽しみです。M先生の名刺はとっていたのでメールしてみようとしましたが、メールアドレスは書かれていなかったので、ホームページからメールしてみました。Tクリニックはホームページにメールコーナーがなかったので電話してみました。
 ところが・・・TクリニックはK氏のコネが有力なはずだったのに、「見学はお受けしてません」とあっさり断られてしまいました。M先生のクリニックからも返事がありません。やっぱり有名クリニックは見学なんかできないのかな。まあ、「時は金なり」と言いますし、米国では医者のカウンセリングはもちろん、弁護士の電話相談なんかも有料だって聞きますから、いくらコネがあっても見学だけっていうのも厚かましいかも・・・と思い、Mクリニックには「何か治療も受けられたら受けてみたいんですが」とメールしてみました。それでも返事がありません。こらあかん。これではK先生のところはK氏のコネも薄そうだし、名刺交換もしてないし、診察を受けたいと言ってもちょっと無理かなあ・・・と思いながら、勇気を出して電話してみました。そうすると「他のクリニックの先生も結構来られてるので大丈夫ですよ」との事。良かった! Mクリニックにも電話してみると、院長の秘書さんという方から折り返し電話があり、「私も院長も留守をしておりまして、ご連絡が遅くなり申し訳ございません」との事で、後はスムーズに予約が取れました。しかし秘書付きなんてすごい。やっぱり有名人は違いますね。

 

さて、学会の合間に念願のクリニック見学です。まずは超有名所のMクリニック&スパへ。ビルの2フロアを占有している広いクリニックで、1階と2階の間はらせん階段があり、部屋も広くてゴージャスな雰囲気。人気のクリニックらしく、待合室はいっぱいです。(この点は、すぐに個室に案内できて待合であまり人と顔を合わせないのはうちのクリニックのメリットだなあと思いましたが・・・。)待合にはいろいろなメーカーの化粧品がたくさんディスプレイされていました。M先生は多くの化粧品会社と関わりがあるとのことで、化粧品も開発されています。しばらく待った後、会議室のような広い部屋に通されてM先生とお会いでき、「何でも質問してくれたら」と言われていろいろとお話することができました。PRPはあまり効果が出ないので今は推奨していないという事で、突っ込んだ話ができなかったのが残念でしたが、「手術をしなくても注射や塗り薬でこれだけ綺麗になれる」という治療前後の写真集や治療の説明書が解りやすく、これは見習わないと、と思いました。
M先生とお話するうち、米国の美容で有名なドクターと一緒に研究されてたとか、今では美容で一般的な薬の話が出るたびに「あ、それも僕が日本で始めて使い出したんだよ」とかいうものが多くてびっくり。いろいろな組織や大学と共同開発されたいくつかの化粧品が他の研究の偶然の産物だったという話は面白かったのですが、そうやって化粧品などを開発したり海外のものを導入したりして有名になると、メーカーがうるさく言って来て大変なのだとか。それで最近は講演などは辞めていると言われていました。

 

Mクリニックはシワ・たるみの治療だけでもレーザーや高周波などの機器による治療から注射・塗り薬など多岐にわたっているので「たくさんの治療をされていますね」と言うと、「いろいろ選択肢を用意した方が、患者さんが選びやすいでしょ? でもエステ的なものは効果の持続時間が短いんだよね」との事。またM先生は、美容をしている医師の中には勉強不足や技術不足、いいかげんな医師も多くて失敗例がたくさん回ってくると嘆いておられました。まだまだ真剣に美容医療に取り組んで、熱心に研究する医師というのは少ないようです。話の途中でM先生は何度か呼ばれて診察に行かれ、最期は秘書さんが来て「院長はこの後診察が詰まっておりまして・・・」と言われたので、エレクトロポレーションを試して、M先生開発の化粧品を買って帰りました。新しい化粧品の開発にヒントを得る事ができたし、有名クリニックを見る事ができて勉強になりました。

翌日はK先生のクリニックへ。こちらはMクリニック&スパとは違い、こじんまりした感じです。待合には化粧品のディスプレイもありましたがK先生が開発したもののみ数点で、狭い待合にも待っている人はほとんどいません。Mクリニックのような派手さはなくて、どちらかというと地味な感じ。治療メニューも少なめで、Mクリニックと印象が全然違います。

 

しかし診察室に通されると、その印象は全く変わりました。K先生は丁寧な挨拶の後、Aクリニックでのシミ・シワ・たるみ治療やいろいろな研究のお話を、パソコンで症例写真や図を駆使しながら1時間以上にわたって詳しく説明してくださったのです。K先生は米国で3年もメラニンの研究をされていたそうで、ビタミンCの研究でも有名な先生ですが、オリジナルの化粧品や注射もいろいろと研究開発されています。そしてその理論について話したり、その成果を症例写真などで見せたりするのがとても嬉しそうなのです。こんなに教えてくれていいの?というぐらいいろいろな事を教えてくださるし、研究の話になると生き生きされてて、もう研究が好きでしょうがないという様子です。最新の薬剤についても現在研究中で、自分の腕に注射してその効果を試されているそうです。「もう少ししたら生検(皮膚などを少し切り取って顕微鏡で組織を観察する検査)しようと思ってるんですよ」と嬉しそうに話される様子から、その研究者魂がひしひしと伝わってきました。私がK先生オリジナルのリフトアップの注射に興味を示し、「私は左半分に自分でPRPをしてるので右が下がってると思うんですが」と言うと、「そうですね。じゃあ右半分だけ打ちましょう! 上がりますよ!!」と意気揚々。注射するところも鏡で見せてくださるし、「この打つ場所がコツなんですよ! 先生、後でご自分で写真取られたらいいですよ! 針跡が残ってますから」・・・! Aクリニックは治療費もとても良心的で、カウンセリング時間も患者さんに合わせるので決まっていないそうです。K先生の人柄がすごく表れてるな・・・と思いました。Mクリニックも素晴らしく、M先生もとても立派で素敵な先生だったのですが、私はなぜかK先生にすごく魅かれてしまいました。

 

さて、学会とクリニック見学が終わった後は、K氏のヌーボー・パーティーです。K氏の会社の内装はまるでアルタミラの洞窟のような漆喰作りで、壁はなんとピンク色なのです。・・・とは一昨年のクリニック通信にも書きましたが、その時は玄関周りと応接室部分だけ解放されていたのでそこだけだと思っていたのですが、今回は奥の事務部門まで解放されていて、見るとなんと会社中の壁がピンク色! そして机は事務机ではなくクリーム色のペンキを塗ったいろんな形をしたテーブルで、戸棚は水色、蛍光灯の傘は緑色のペンキを塗った木製のもので、蛍光灯の傘にはフリルのような縁取りがあり、戸棚の取っ手はお洒落なアンティーク様です。すごい会社・・・。美味しいすっぽん鍋と出張板前、ヌーボー飲み放題は一昨年とほぼ同じでしたが、今年違ったのはロックの演奏があった事と、出張板前の鮨屋が変わった事(いつもの鮨屋が急に連絡が取れなくなったそうです。やはりここにも不況の波が押し寄せてるんでしょうかねえ・・・)、そしてS堂のSさん達を始めとした研究者達が集まって研究談議に花が咲いた事。(K氏も実は研究者なのです。)私がK先生のクリニックを訪問して感動した話をすると、
K氏:「それは良かったですね。やっぱり研究好きな人っていうのは魅かれあうもんなんですねえ」
Sさん:「そうそう、同じ匂いがするんですよ」
K氏:「DMAEの事もK先生にも聞いてみたらいいかもしれませんね」
そうだ、K先生も「いつでもメールください」って言ってくださったし・・・。

 

帰ってからK先生にお礼のメールを出し、DMAEの文献を送って先生のご意見を伺えますか? という事と、クリニック通信に先生の事を書いてもいいですか? と聞いてみました。K先生は早速了解の返事をくださって、メールの最後には「お互い頑張りましょう」と書いてくださいました。K先生のような方と知り合えた事は今回の東京行きの最大の収穫でした。いろいろな事が勉強になりましたが、特に心打たれたのはK先生の研究者魂です。ゴージャスなブランド志向ではなく、どちらかと言えば地味なくらいの良心的なクリニックで、ひたすら研究に励むK先生の姿に、私の目指すべきはこの道だ、と思ったのです。レストランで言えばお洒落なブランドのフレンチではなく、こだわりの鮨屋です。例のN屋のように、良心的な価格でひたすら味を追求し、自分の美味しいと思うものを自信を持って勧めるーそのための研究には余念がない・・・そういったところ。新しいものをすぐに手広く導入するよりは、時間はかかってもK先生のように研究者魂と職人魂を忘れず日々研究に励み、メニューは少なくても本当に効果のある治療を自信を持って勧める・・・そんなクリニックを目指したいと改めて思いました。

そう言えばボジョレー・ヌーボーも、今年はペットボトル入りの安いものが出たんですよね。ペットボトルと言っても、写真を見るとワインの瓶の形をしていて、なかなか可愛いじゃん。瓶じゃないと、と言う人もいるようですが、重要なのは中身なので、ペットボトルでもいいんじゃないの? それでCPが良ければそれに越したことはない、と思います。味見はしていないので、もちろん中身が美味しくなくてはダメですが、中身さえ良ければそれでも良いと思うのです。この時代、CPはとても大事です。うちもさらなる研究を重ね、中身で勝負する良心的なクリニックを目指して日々精進しようと思いを新たにしたのでした。「神戸一CPの良い実直クリニック」を目指したいと思います!